事業再構築補助金の採択率を上げる方法5つ!事業計画書の作成手順も解説

 事業再構築補助金は、大きな額の補助金が交付される一方で、申請すれば給付されるといった類のものではありません。この記事では、事業再構築補助金の事業計画書を作成する上で、どういった観点で審査されるのか、どんなことを書くすべきか、どのように分析をするかについて解説をしています。

 中小企業経営支援事務所は、経営コンサルタントの立場として事業計画立案の支援を行っています。具体的な事業計画書の書き方について、お困りのことがあれば、お気兼ねなくお問い合わせください。相談無料で受け付けています。

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事業再構築補助金の採択率の現状

 中小企業庁によれば、第6回事業再構築補助金の採択結果は、応募件数15,340件に対し、採択件数は7,669件、採択率 49.9%でした(参照:第6回公募 採択結果丨中小企業庁)。

 事業再構築補助金のこれまでの採択率は、第1回が36.0%、第2回が44.9%、第3回が44.4%、第4回が44.8%、第5回が46.1%とおおよそ45%〜50%程度で推移しています。

 なお、事業再構築補助金は、必須要件が少なく補助金額が比較的多い通常枠(一般的には通常枠で申し込む場合が多い)と、より多くの条件が求められる「回復・再生応援枠」や「最低賃金枠」といった特別枠に大別されます。実際は、特別枠が採択率を押し上げており、通常枠の採択率は若干低くなります。通常枠の採択率は、第1回が30.1%、第2回が36.3%、第3回が37.0%、第4回が37.9%、第5回が39.6%、第6回が45.4%でした。

 いずれにしても、採択率だけみると、2社応募したなかで1社採択されるくらいの数字なので、比較的容易に採択されると感じる経営者も多いのではないでしょうか。

 しかし、事業再構築補助金は、実際は非常に難易度が高い補助金です。応募するにあたり、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた「認定経営革新等支援機関」と一緒に作成することが求められます。提出される事業計画書は一定程度の水準は担保されており、その中での競争となるため、いわばプロ同士の戦いの様相を呈しているともいえます。

事業再構築補助金の採択率を上げる5つの方法

 

 では、採択率を上げるには、具体的に何をする必要があるのでしょうか。当社では次のポイントをおさえることをおすすめしています。

  1. 説得力のある事業計画書を作成すること
  2. 優良な認定経営革新等支援機関を選定すること
  3. 補助金コンサルタントに丸投げしないこと
  4. 採択率の高い枠に応募すること
  5. 事業再構築補助金の趣旨を理解すること

説得力のある事業計画書を作成すること

 事業再構築補助金が給付されるか否かは、経営者が挑戦する新たな事業を、審査員に「これは成功する」と確信させるかどうかにかかっているといっても過言ではありません。

 補助金の原資は、私たちの税金から賄われています。無駄に税金を使わないという観点からも、成功の見込みがない事業に対して、補助金が給付されるということはありません。

 投資家に投資を求めるときに事業の詳細や将来性を説明し、自社を選ぶメリットを説得力をもってプレゼンすることが必要なように、補助金申請では戦略、将来のビジョン、経営者の想いを盛り込んだ事業計画書を作成し、審査員にPRすることが不可欠となります。

 事業計画書の具体的な作成方法は、次章に記載します。

優良な認定経営革新等支援機関を選定すること

 

 採択率を上げるには優良な認定経営革新等支援機関の選定もとても重要です。いくら熱い想いをもっていて、事業計画書も素晴らしいものだったとしても、組む相手を間違えてしまったために採択につながらないことはよくあります。

ただ、認定経営革新等支援機関が本当に優良なのか、力量はきちんとあるのか、サポート体制はしっかりしているのかなどを見極めることは、とても難しい面があります。

 そこで、採択率を基準として認定経営革新等支援機関を選定するのがおすすめです。

事業再構築補助金事務局の「事業再構築補助金 第6回公募の結果について」に、認定支援機関別の採択率のデータが掲載されています。

士業ごとの採択率を確認すると、

  • 税理士 36.2%
  • 公認会計士 41.1%
  • 行政書士 39.9%
  • 中小企業診断士 56.5%

と、中小企業診断士の採択率が非常に高いことがわかります。中小企業診断士は、経営全般に関する知見を一定程度有しているからでしょう。

 経営の知見がない方が、新たなビジネスモデルの事業計画書の作成を支援することは極めて難しいと思いますが、可能性がまったくないわけではないので、まずは中小企業診断士に相談するのが無難です。

補助金コンサルタントに丸投げしないこと

 

 そもそも、事業再構築補助金は、「事業計画書を認定経営革新等支援機関等と共同で策定すること」が、要件として付されています。つまり、丸投げで作成されえた事業計画書は、事業再構築補助金の申請要件を満たさないということになります。

 こうした丸投げで作成する業者の中には、短いヒアリング時間を売りにし、雛形を使い回して、体裁を整えて作成する業者がいます。事業再構築補助金と同じ経済産業省のものづくり補助金では、同一若しくは極めて類似した内容の事業である場合、採択されず、さらに二度と応募することができなくなるというペナルティが課されます。事業再構築補助金においても、このルールは流用されると考えられます。

 雛形で作成された事業計画書を提出して、類似と判定された場合、取り返しのつかない事態に発展しますが、補助金コンサルタントは責任を取ることはないでしょう。経営者が責任を負うことになりますので、十分注意が必要です。

採択率の高い枠に応募すること

 通常枠に加えて、一定の条件が付されたとした応募枠は、通常枠に比べて採択率が高い特徴があります。例えば、第6回公募の結果を見てみると、通常枠が45%であるのに対し、最低賃金枠は86%、回復・再生応援枠は67%と通常枠に比べて、優遇されていることがわかります。一方で、これらの枠の補助金上限額は、通常枠に比べて低いという特徴もあるため、付されている条件や挑戦する事業の投資額なども鑑みて、どの枠で応募するかを決定することをおすすめします。

事業再構築補助金の趣旨を理解すること

 事業再構築補助金は、一見すると、コロナで苦しむ経営者を支援するという救済的な意味合いをもっていると、思われがちですが、実態は大きく異なります。

 以下は、事業再構築補助金の公募要領の抜粋です。

本事業は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とします。

引用:令和二年度第三次補正・令和三年度補正・令和四年度予備費 事業再構築補助金 公募要領(第7回)p.2丨中小企業庁

 ここに、規模の拡大など思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことが目的であると明記されています。 

つまり、事業計画書では、「コロナ禍で苦しい経営状況であるから補助金を給付して欲しい」という趣旨を説明するのではなく、経営者自身が意欲的であり、規模の拡大や日本経済の構造転換に資することを前提に事業計画書を作成することが、採択率を上げる基本となります。

事業再構築補助金の採択率を上げる事業計画書の作成手順

 前述したように、事業再構築補助金の採択率を上げるとき、最も重要なのが事業再構築補助金の審査員に「この事業は成功する」と思わせるように事業計画書を作り込むことです。実際に事業計画書を作成するときは、次の流れで行うとよいでしょう。

  1. 自社の強みが、新たなビジネスを行う上でどう活かせるかを整理する
  2. 事業環境を分析する
  3. 競合分析、市場分析をする
  4. 地に足をつけた販売戦略を練る
  5. 経営者の想いを盛り込みながら説得力のある文章でまとめる

手順1. 自社の強みが、新たなビジネスを行う上でどう活かせるかを整理する

 

まずは、自社の強みが、新たなビジネスを行う上でどう活かせるかを整理します。

例えば、保険会社が、「最近、近所でラーメン屋が流行っているようなので、うちでも開業したい」と考えた場合はどうでしょうか。料理と無関係な保険会社が、ラーメン屋で成功すると審査員にPRすることは、極めて難しいでしょう。

それでは、旅行会社が、ラーメン屋を開業したいと考えた場合はどうでしょうか。

① 旅行会社の添乗員は全世界を飛び回っており、食に精通している

② 飲食店との関係性を活かして料理人を招聘できる

③ 旅行会社の顧客会員は食に対して関心が高い人が多いため、既存の顧客基盤を活用できる

④ ホスピタリティーが高い添乗員がサービス提供を行える

⑤ 旅行会社が有する予約管理システムを転用できる

など、この旅行会社が堅実に経営してきた中で培ったノウハウや知見を新事業で活かせる、というそれなりに筋の通った話ができることもあるでしょう。審査員にうまくPRできれば、保険会社よりは給付してもらえる可能性があります

 一般的には、新規事業の成功確率は10~30%程度と言われています。この成功確率を上げる重要なファクターのひとつが自社の強みをうまく活かすことであるため、事前に自社の強みをしっかりと整理し、それを事業計画書に盛り込むことは極めて重要です。

手順2. 事業環境の分析をすること

 事業環境の分析にはPEST分析、3C分析、5フォース分析、バリューチェーン分析など、さまざまなフレームワークが存在しますが、事業再構築補助金においてはSWOT分析を用います。

SWOT分析は、経営戦略や新規事業の立案に必要な現状分析を行うときに用いられるフレームワークであり、この分析で明らかにされた内容を事業計画書に記載することが公募要領で求められているからです。

 

SWOT分析は、まず事業を内部要因と外部要因に切り分けます。。

内部要因を考える上での観点

・顧客基盤
・販売チャネル
・ブランド力
・立地
・技術やノウハウ(知的財産権)
・インフラ
・価格
・品質
・ブランド力
・システム
・人材
・組織力
・資産(機会・建物など)
・企業風土

外部要因を考える上での観点

・市場動向
・政治動向
・法律や規制
・税金
・海外の社会情勢

・技術革新
・株主
・競合他社動向 

内部要因・外部要因に切り分けたら、それぞれのプラスの要因・マイナスの要因を考え、内部要因×プラスの要因(S:強み)、内部要因×マイナスの要因(W:弱み)、外部要因×プラスの要因(O:機会)、外部要因×マイナスの要因(T:脅威)の4つのカテゴリーに分類しながらまとめます。

  • S:自社の強み

自社独自に保有する技術、顧客基盤、製造装置など、経営する上で役に立つ資産・技術・人材について列挙します。
これらは、日本一、業界一である必要はありません。例えば、従業員が50人いるといったことでも強みとして捉えることができます(従業員50人以上の企業は日本の企業の中の2%程度です)。

  • W:自社の弱み

自社の弱点や不得手なことを列挙します。列挙する上で、同業の競合他社と比べてみて、劣っていることを思い浮かべてみることもよいでしょう。

  • O:自社にとってチャンスとなる機会

自社のビジネスに追い風となるような環境変化について記載をしていきます。マクロ(世界経済・日本経済全体)の視点も大切ですが、ミクロ(自社に直接関係がある範囲)についても細かくみていくことも極めて重要です。

例えば、学生服の販売業者は、全国の学生数の動向を分析してもあまり意味がありません。商圏内の学生数が増加しているといった粒度で分析をします。

  • T:自社にとっての脅威

自社の強みを打ち消してしまう危険性のある環境の変化や、競合他社の動きなどを分析します。外部要因ですので、自社の企業努力だけでまかなえない部分もありますが、脅威を知ることで新たなビジネスチャンスの抽出が可能です。

以下、金属加工の製造業の例です。

 プラスの要因マイナスの要因
内部要因S:強み・交差0.005mmの加工精度・RA0.2の鏡面磨きの加工技術・社内に設計部があることW:弱み・熟練工の高齢化・取引先A社へ依存体質・デジタル化の遅れ
外部要因O:機会・電気自動車産業の好調・取引先A社から増産要請・政府の政策 免税措置 等 T:脅威・製品aの需要が減少していること・アジア各国の製造業の台頭により販売価格の暴落・円高による材料価格の高騰

 

ここで注意したいのが、SWOT分析はあくまで現状分析をするフレームワークである点です。分析結果を新事業(事業再構築補助金の事業)の立案に活用するためには、クロスSWOTという手法を用いる必要があります。

クロスSWOTとは、SWOTのいろいろな組み合わせを考え、事業の方向性を考える手法です。

強み × 機会(成長戦略)ビジネスチャンスに対して自社の強みを生かすことで成長につなげます。
強み × 脅威(差別化戦略)脅威に対して自社の強みを生かすことで、他者が実現できない分野を探ります。
弱み × 機会(改善戦略)ビジネスチャンスに対して自社の弱みを改善することを模索します。
弱み × 脅威(縮小・撤退戦略)自社の弱みに対し、脅威を避けるためには、事業の縮小または撤退を検討します。

事業再構築補助金においては、強み×機会(場合によっては、強み×脅威)をまとめていくことが定石です。例えば、上図の例では、自動車産業が好調であり、新たに精密部品の設計や製造が増えていくことが考えられます。そこから「当社は、精密加工技術と設計ノウハウを有しているため、新たに自動車精密部品の製造に挑戦する」といった方向性を見出すことができます。

手順3. 競合分析、市場分析をする

自社と比較対象となる競合他社、自社と直接関連する市場について分析します。

競合分析について、例えば、地域密着の小規模のスーパーマーケットである場合、イオンやコストコなど大規模小売店と比較することは得策ではありません(ただし同一商圏に店舗がある場合などは除きます)。直接、お客様や市場を奪い合う関係の会社を選定することが望ましいでしょう。

市場分析についても同様なことが言えます。マクロの観点も重要ですが、それ以上に、自社に密接に関わる市場についても触れる必要があります。例えば、美容室を開業する場合、全国の美容院の数の分析よりも、美容室の商圏内の人口趨勢や競合他社の美容院の数を分析するほうが、出店計画を立案する上で有効になるはずです。

マクロ分析とあわせて、ミクロの分析(自社が直接関係する市場)について、しっかりと分析を行うことが極めて重要です。

手順4. 地に足をつけた販売戦略を練る

 

新規事業を成功させるためには、地に足をつけた販売戦略を立案することが極めて重要です。

事業計画書を見ていると、以下のような記述を多く見かけます。

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「大福」の全国の消費量は、2018年から2021年3年で10%伸びていることから、需要が大きく高まっていることがわかります。本事業で販売する「バナナ大福」は、最先端のIT技術を活用するとともに、インスタやTwitterなどと電子決済システムを活用したWeb販売を行うことで、商圏を全国に拡大します。

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しかし、すでにインスタ登録者数が多くいる場合などは別ですが、一般的な中小企業事業者がWeb販売を始めて全国で売るためには、相当工夫をする必要があります。

また、このような販売戦略は、企業名を変えても違和感はありません。こうした文章は、その企業独自の販売戦略と言うにはほど遠いでしょう。

こうした販売戦略では、当然ながら審査員は納得しません。体裁の良い言葉を並べるのではなく、地に足がついた具体的なアクションを落とし込むことが極めて重要です。そのためにも、4P(Price:価格 Place:流通経路 Product:製品 Promotion:販促)の観点で、ビジネスの実態に合わせて整理するのがよいでしょう。

手順5. 販経営者が強い想いを持って説得力のある文章でまとめる

 

分析を通して具体的な戦略や現実的な将来のビジョンが明確になったら、審査員に実際に提出する事業計画書を作成します。

このとき大切なのは、経営者自身の想いを文章に込めることです。公的機関に提出する文章なので感情をむき出しにする必要はありませんが、この事業は成功する、成功させるんだと強い想いを持って書く姿勢が重要となります。

もちろん、わかりやすい文章にすること、「なぜそうなるのか」という根拠を忘れないことも大切です。

作成が終わったら認定経営革新等支援機関の担当者に見てもらい、ブラッシュアップしていきましょう。

 

事業再構築補助金の採択率を上げたいなら中小企業経営支援事務所へ相談を

優れた認定支援機関は、会社の新事業について、マーケティング理論を用いた顧客分析や運営管理の観点からの工程分析、意思決定会計を用いた財務分析をするとともに、経営者と密にコミュニケーションをとることで、事業計画書をより実践的なものに昇華させていきます。優れた認定支援機関と共同で策定することで、新規事業を行う上でのバイブルとなるような事業計画書に仕上げることができるでしょう。

当社では、補助金をとるためだけの事業計画書より、こうした実務に耐えうる事業計画書を策定することが採択される一番の近道であると考えています。

当社は、採択率については、全国トップレベルの水準を維持しています。「丸投げ」による事業計画書作成は一切受け付けておりません(そもそも応募要件に満たしませんし、雛形を使った計画書は、審査員に見抜かれます)。応募申請まで、最低でも3回の面談(Zoom含む)を行います。初回のヒアリングでは、業種にもよりますが、半日のお時間をいただくこともあります。

また、当社の事業計画書は、補助金申請にとどまらず、投資家、銀行、ファンド、株主向けの説明資料としても、十分耐えうる品質を担保しています。

経営者様の新たなビジネスの成功の一助となるよう、誠心誠意、尽力してまいりますので、意欲あふれる経営者様は、ぜひお問い合わせいただけたら幸いです。

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