事業再構築補助金のグリーン成長枠とは?事例や申請のポイントを紹介
事業再構築補助金のグリーン成長枠とは、グリーン成長(環境に寄与する成長)が期待できる14の分野に積極的に取り組む事業者を支援する補助金です。最大1億5,000万円という大きな補助額が設定されていますが、その分だけ要件が厳しく、採択されるには内容をよく確認する必要があります。
この記事では、事業再構築補助金のグリーン成長枠について、一からわかりやすく解説しています。参考事例や採択率を上げるポイントも紹介しているので、申請の一助してもらえたら幸いです。
中小企業経営支援事務所は、経営コンサルタントの立場として事業計画立案の支援を行っています。事業再構築補助金について手続き全般の支援も行っていますので、お困りのことがあれば、お気兼ねなくお問い合わせください。相談無料で受け付けています。
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もくじ
事業再構築補助金グリーン成長枠とは
事業再構築補助金グリーン成長枠とは、環境に寄与する事業を行う事業者の支援を目的とした補助金です。
事業再構築補助金に定められた「枠」のひとつで、2050年のカーボン二ュートラル(温室効果ガスの排出量から吸収量を引いた数値をゼロにすること)の実現に向けて、今後成長が期待される14の分野(グリーン成長戦略「実行計画」14分野)のいずれかに取り組む事業者に最大1億5,000万円が支給されます。
なお、2022年12月に「事業再構築補助金 2022年度第二次補正予算」が成立し、要件を緩和したエントリーと呼ばれる類型が創設され、グリーン成長枠のみエントリーとスタンダードの2種類が用意されることになりました。
出典:事業再構築補助金 2022年度第二次補正予算の概要 p.2丨中小企業庁
(1)事業再構築補助金グリーン成長枠が設けられた背景
事業再構築補助金のグリーン成長枠が設けられた背景には、政府が掲げる「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」があります。
この戦略は、日本が2020年10月に宣言した「2050年カーボンニュートラル宣言」(脱炭素社会を実現すること、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを2050年までに実現する)にもとづいて策定されました。
事業再構築補助金のグリーン成長枠は、この「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」で掲げられた、成長が期待される14の重要分野に合致する取り組みに対して補助をするというものです。
(2)グリーン成長戦略で掲げられた14の重要分野
グリーン成長戦略で掲げられた14分野は以下のとおりです。
出典:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 p.29丨経済産業省
なお、具体的な取り組み内容については、中小企業庁が各分野の現状と課題を取り上げながら事例をまとめた資料を公開しています(参照:事業再構築補助金「グリーン成長枠」想定事例集丨中小企業庁)。
事業再構築補助金グリーン成長枠ならではの特徴
事業再構築補助金のグリーン成長枠には、以下5つの特徴があります。
(1)他の枠に比べて難易度が高い
グリーン成長枠は、前述の通り、計画されている事業が、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて今後成長が期待される14の分野(グリーン成長戦略「実行計画」14分野)に合致する取り組みをしていることが必須要件です。この重要分野において高度な課題が設定されており、これを解決する取り組みが求められることから、他の枠に比べて、難易度が高いといえます。
(2)補助上限額が他の枠と比べて高い
グリーン成長枠は、中小企業の補助上限額が1億円、中堅企業の補助上限額が1億5,000万円と、他の補助金制度のなかでも、突出して補助金額が大きいことが特徴です。
(3)売上高10%減少要件が求められない
事業再構築補助金は、新型コロナの影響を受けて売上の回復が厳しい事業者が、その状況から脱却するために、新分野展開などの思い切った事業再構築に挑戦する事業者を後押しすることを目的として設計をされています。
このことから、事業再構築補助金では、新型コロナの影響を受けて売上が減少していることが要件として定められています。
しかし、グリーン成長枠は、例外として、コロナの影響による売上の減少が応募要件として定められていないことも特徴です。
(4)一度採択された事業者も2度目の申請ができる
事業再構築補助金の他の枠では、一度採択を受けると、2回目以降応募することはできません。しかし、グリーン成長枠は、例外として、過去他の枠で採択をされた事業者も応募することができます。
(5)研究開発・技術開発計画書または人材育成計画の策定が必要
グリーン成長枠では、事業計画書に加えて、研究開発・技術開発計画書または人材育成改革の策定が求められます。これらは採択不採択を決める極めて重要な書類となるため、綿密かつ実行力のある計画が求められます。
事業再構築補助金グリーン成長枠の対象者と補助額・補助率
事業再構築補助金のグリーン成長枠の詳細を、「事業再構築補助金 2022年度第二次補正予算の概要」を中心にご紹介します。
(1)事業再構築補助金グリーン成長枠の対象となる事業者
事業再構築補助金グリーン成長枠の対象となるためには、全枠共通の必須要件、およびエントリー・スタンダードごとの要件を満たす必要があります。
【全枠共通の必須要件】
A:事業再構築指針に沿った事業計画を認定経営革新等支援機関と一体となって策定すること(補助額3,000 万円超は金融機関も必須)
B:以下のいずれかの達成を見込む事業計画を策定すること
・補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠によって異なる)以上増加
・従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠によって異なる)以上増加
【エントリー】(必須要件Bについては、付加価値額の年率平均4.0%以上増加)
①グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取り組みとして記載があるものに該当していること。かつ、その取り組みに関連する1年以上の研究開発・技術開発、または従業員の5%以上に対する年間20時間以上の人材育成を行うこと
②給与支給総額を事業終了後3~5年で年率平均2%以上増加させること
【スタンダード】(必須要件Bについては、付加価値額の年率平均4.0%以上増加)
①グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取り組みとして記載があるものに該当していること。かつ、その取り組みに関連する2年以上の研究開発・技術開発、または従業員の10%以上に対する年間20時間以上の人材育成を行うこと
②給与支給総額を事業終了後3~5年で年率平均2%以上増加させること
(2)事業再構築補助金グリーン成長枠の補助額と補助率
事業再構築補助金グリーン成長枠の補助額と補助率は、エントリーとスタンダードによって異なります。
【エントリー】
【スタンダード】
事業再構築補助金グリーン成長枠の対象事業例
中小企業庁では、前述したように、事業再構築補助金「グリーン成長枠」想定事例集を公表しています。いくつか参考となる事例をご紹介します。
(1)物流業界
物流分野においては、二酸化炭素(CO2)をいかに削減するかが目下の課題となっています。グリーン成長枠の要件を満たすためには、こうした課題解決に資する取り組み内容である必要があります。例えば、次のような事例が想定されています。
<想定する申請事例>
製造事業者、卸販売事業者及び小売販売事業者と連携し、在庫データの共有化等を通して、配送業務を集約・効率化した配送受託業務に取り組む(引用:事業再構築補助金「グリーン成長枠」想定事例集 p.8丨中小企業庁)。
(2)蓄電池
蓄電池は自動車を始めとしたモビリティの電動化を進めるうえで重要なものとされており、中国や韓国が伸びているなかで日本が成長するためには、蓄電池の軽量化・小型化・価格低減などが不可欠とされています。そのため、次のような事例が想定されています。
<想定する申請事例>
既存事業で培ってきた板金加工技術を活かし、今後拡大が期待される蓄電池市場向けリチウムイオンバッテリー部材の製造を行う(引用:同上 p.5)。
(3)情報通信業
情報通信業では、いまだほとんど進んでいない企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が目下の課題となっています。そこで、次のような事例が想定されています。
<想定する申請事例>
電気工事業で培ったノウハウを活かし、既存顧客(~300人規模の製造業)向けに、設計から、ソフトウェア提供、保守までを一気通貫で行うデジタル化支援事業に進出し、事業再構築を図る(引用:同上 p.6)。
事業再構築補助金グリーン成長枠の申請から受け取りまでの大まかな流れ
事業再構築補助金グリーン成長枠の申請から受け取りまでの大まかな流れは、以下のとおりです。
- 事業再構築補助金の公募が開始される
- 事業計画書を作成する
- 必要書類を準備する(事業計画書のほか、研究開発・技術開発計画書または人材育成計画書、別事業案件および能力評価要件の説明書など)
- GビズIDを取得する
- 電子申請項目を入力する
- 電子申請をする
- 採択が発表される
- 交付申請をする
- 交付が決定される(補助金額の確定)
- 補助事業実績を報告する
- 確定検査が行われる(補助金交付額の決定)
- 補助金を請求する
- 補助金を受け取る
なお、事業終了後(補助事業実績報告後)5年間にわたって、事業化状況報告・知的財産権等報告を行う必要があります。
事業再構築補助金グリーン成長枠の採択結果と採択率
下記の表は、事業再構築補助金事務局が公表している、第7回公募の応募件数と採択件数を示したものです。
第7回公募全体の採択率(採択件数÷応募件数)は、51.2%でした。一方、グリーン成長枠の採択率は40.0%と、全体の採択率と比べて11.2ポイント低い結果となりました。グリーン成長枠の採択率の低さは、他の枠と比べて補助金の上限額が高いため審査が厳しいことや、実施する事業がグリーン成長枠で求められる要件を満たしにくいことなどが起因していると考えられます。
事業再構築補助金グリーン成長枠の採択率を上げるには
事業再構築補助金グリーン成長枠の採択率を上げるポイントは、以下の3つになります。
- 説得力のある事業計画書を作成すること
- 優良な認定経営革新等支援機関を選定すること
- 補助金コンサルタントに丸投げしないこと
事業再構築補助金の採択率を上げるポイントは、「事業再構築補助金の採択率を上げる方法5つ!事業計画書の作成手順も解説」で詳しく解説をしていますので、あわせてご確認ください。
事業再構築補助金グリーン成長枠の採択をお考えなら中小企業支援事務所にご相談を
事業再構築補助金グリーン成長枠は、極めて難易度が高い補助金です。取り組み事業が、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」に合致している必要がありますが、こちらの資料は約160ページあり、理解するだけでも非常に多くの労力がかかります。
当社では、グリーン成長枠を熟知したコンサルタントが複数名在籍しており、経済産業書が進めるグリーン成長戦略の趣旨を理解したうえで、事業計画を策定します。
また、当社は、採択率については、全国トップレベルの水準を維持しています。「丸投げ」による事業計画書作成は一切受け付けておりません(そもそも応募要件に満たしませんし、雛形を使った計画書は、審査員に見抜かれます)。応募申請まで、最低でも3回の面談(Zoom含む)を行います。初回のヒアリングでは、業種にもよりますが、半日のお時間をいただくこともあります。
また、当社の事業計画書は、補助金申請にとどまらず、投資家、銀行、ファンド、株主向けの説明資料としても、十分耐えうる品質を担保しています。
経営者様の新たなビジネスの成功の一助となるよう、誠心誠意、尽力してまいりますので、意欲あふれる経営者様は、ぜひお問い合わせいただけたら幸いです。
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