IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠とは?通常枠との違いを解説

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠とは、ECや決済機能などを持つITツールの購入費用の一部を補助する制度の申請枠を指します。企業間のやり取りを効率化し、インボイス制度の導入をスムーズに進めることが目的です。申請するためには対象となるITツールを理解し、スケジュールや流れを確認しなければなりません。

 そこでこの記事では、IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠の概要や通常枠との違い、スケジュールと申請の流れ、よくある質問と答えを解説しています。

 中小企業経営支援事務所は、ものづくり補助金や事業再構築補助金といった補助金申請支援のエキスパートです。補助金についてお困りの人は、ぜひお問い合わせください。相談無料で受け付けています。

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IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠とは?

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠とは、中小企業や小規模事業者が導入する会計ソフトや受発注ソフトなどの費用の一部を補助する制度の申請枠のことです。企業同士のやり取りをデジタル化し、インボイス制度への対応を促すことを目的に制度化されました。令和3年度補正予算で実施されたIT導入補助金2022より、通常枠とは別に新設されています。

 デジタル化基盤導入枠には、デジタル化基盤導入類型複数社連携IT導入類型という2つの類型が用意されています。

 デジタル化基盤導入類型と複数社連携IT導入類型の主な違いは、下表のとおりです。

デジタル化基盤導入類型複数社連携IT導入類型
IT導入支援事業者の事前登録
複数社による申請
補助対象・ソフトウェア、オプション、役務・ハードウェア・ソフトウェア、オプション、役務・ハードウェア・事務費
補助上限額350万3,000万

 複数社連携IT導入類型は、サプライチェーンや商業集積地などの複数の中小企業や小規模事業者が連携してITツールを導入するための費用やコーディネート費用、外部専門家に依頼する費用を支援する制度です。ただし、同一の補助事業を実施するグループを10者以上で構成しなければならないなどの要件を満たさなければなりません。

 この記事では、1社でも申請できるデジタル化基盤導入枠の「デジタル化基盤導入類型」について、引き続き解説していきます。

IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の補助対象と補助額

①補助対象

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の補助対象は、以下のとおりです。

ソフトウェア費(会計ソフト、受発注ソフト、ECソフトなど)

ハードウェア購入費(PC、タブレット、プリンター・スキャナーおよび複合機器、POSレジ、モバイルPOSレジ、券売機など)

最大2年分のクラウド利用料

導入関連費

 ただし、ードウェア購入費はソフトウェアと同時に導入する場合が対象となります。また、ソフトウェアの販売元が提供しているハードウェアでなければなりません

 他にも、以下の経費は補助対象外となります。

・入力したデータを帳票やグラフ・表などに印刷するなどの単一の処理機能しかないもの(例:請求書を作成する機能のみのソフトウェアなど)

・購入済みのソフトウェアを増台する、リビジョンアップに対する費用

・業務プロセスに影響を与える可能性がある大幅なカスタマイズ

・業務の効率化を目指すのではなく、事業者が販売する商品やサービスに付加価値を与えることを目的とするもの

 また、本事業の目的や趣旨に沿っていないと判断されたものなどが補助対象外となるので、自社事業が適しているかどうかなどの疑問は専門家に聞くのがおすすめです。

②補助額

 補助額や補助率、機能の要件は下表のとおりです。

IT導入補助金2022(令和3年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業)公募要領 p.5丨サービスデザイン推進協議会 より一部抜粋

 ITツールの場合、「導入したツールは会計・受発注・決済・ECのうち何種類の機能を有しているのか」「導入経費がいくらなのか」によって、実際に申請できる補助額が異なります。

Ⅰ:導入したツールの機能が1つの場合

「導入経費×3/4」か「50万円」のどちらか低い額

Ⅱ:導入したツールの機能が2つ以上の場合

・導入経費が66万6,669円以下の場合、「導入経費×3/4」か「50万円」のどちらか低い額

・導入経費が66万6,670円以上の場合、「50万円+(導入経費-66万6,667円)×2/3」か「350万円」のどちらか低い額

 例えば、100万円のツールの場合は以下のとおりです。

Ⅰ:導入したツールの機能が1つの場合100万円×3/4=75万で、50万円より高いので、申請可能額は50万円
Ⅱ:導入したツールの機能が2つ以上の場合50万円+(100万円-66万6,667円)×2/3=72万2,222円で、350万円より低いので、申請可能額は72万2,222円

 申請可能額に関しては、サービスデザイン推進協議会のIT導入補助金サイトにある「補助金シミュレーター」で簡単に確認できるので、よければ活用してみてください。

そもそもIT導入補助金とは

 IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者がITツールを導入するために利用できる補助金制度のことで、正式名称は「サービス等生産性向上IT導入支援事業」です。中小企業や小規模事業者に必要なITツールを導入を促し、業務効率化や売上げアップを支援することを目的としています。

 IT導入補助金を活用した例として、「勤怠・労務管理ツール」を導入し、出先から出退勤の打刻を可能にしたことで、残業時間の削減や人事担当の業務効率改善がみられたことが挙げられます。

デジタル化基盤導入枠と通常枠の違い

  IT導入補助金には、通常枠とデジタル化基盤導入枠を含む4つの申請枠が設けられています。

・通常枠(A・B類型)

・セキュリティ推進対策枠

・デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)

・デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)

 このうちIT導入補助金の通常枠とは、自社に適したITツールを導入する費用に対する補助金の申請枠を指します。通常枠はA類型B類型に分けられ、ソフトウェアに必要な業務プロセス数や賃上げ目標の要件などによって、補助額が異なります。

 デジタル化基盤導入枠と通常枠の違いは、補助率が優先的に引き上げられていることや、導入するツールに要件が設けられているなどの点があげられます。補助対象のITツールの機能が「会計」「受発注」「決済」「EC」を1種類以上含まない場合は、通常枠(A・B・類型)の申請枠が申請対象です。

 なお、要件を満たせば、通常枠とデジタル化基盤導入枠を併願することも可能です。ただし、2022年のIT導入補助金の要件なので、最新のものを確認する、または専門家に相談するとよいでしょう。

IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠を交付申請する流れ

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠に申請するときの大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 自社が補助対象事業者であるか申請要件を確認する
  2. IT導入支援事業者・ITツールを選定する
  3. gBizIDプライムのアカウントを取得する
  4. SECURITY ACTIONを宣言する
  5. 交付申請する

順に詳しく解説します。

自社が補助対象事業者であるか申請要件を確認する

 まず、自社が補助対象の事業者であるか申請要件を確認してください。

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠の対象となる中小企業や小規模事業者は、下表のとおりです。

【中小企業】

業種分類定義
製造業、建設業、運輸業・資本金または出資の総額が3億円以下・従業員数300人以下の会社、および個人事業主
卸売業・資本金または出資の総額が1億円以下・従業員数100人以下の会社、および個人事業主
サービス業・資本金または出資の総額が5,000万円以下・従業員数100人以下の会社、および個人事業主
小売業・資本金または出資の総額が5,000万円以下・従業員数50人以下の会社、および個人事業主
ゴム製品製造業・資本金または出資の総額が3億円以下・従業員数900人以下の会社、および個人事業主
ソフトウェア業または情報処理サービス業・資本金または出資の総額が3億円以下・従業員数300人以下の会社、および個人事業主
旅館業・資本金または出資の総額が5,000万円以下・従業員数200人以下の会社、および個人事業主
上記以外の業種・資本金または出資の総額が3億円以下・従業員数300人以下の会社、および個人事業主
医療法人、社会福祉法人従業員数300人以下
学校法人従業員数300人以下
商工会・都道府県商工会連合会および商工会議所従業員数100人以下

【小規模事業者】

業種分類定義
商品・サービス業従業員数5人以下の会社、および個人事業主
サービス業のうち宿泊業・娯楽業従業員数20人以下の会社、および個人事業主
製造業その他従業員数20人以下の会社、および個人事業主

 また、財団法人や社団法人など上記以外にも対象となる事業者があります。詳しくは専門家に相談したほうがよいでしょう。

 そして、以下の申請要件を満たしているかを確認してください。

・日本国内で法人登記されており、日本国内で事業を営む法人または個人である

・交付申請の直近月で、事業場内の最低賃金が法令上の地域最低賃金以上である

gBizIDプライムアカウントを取得している

SECURITY ACITONの「★一つ星」、または「★★二つ星」を宣言している

・訴訟や法令遵守上において、補助事業の遂行に支障をきたすような問題を抱えていない

 ただし、以下の事業者は、申請要件を満たしていても対象外となります。

・発行済株式の総数、または出資価格総額の1/2以上を同一の大企業が所有している中小企業、小規模事業者など

・発行済株式の総数、または出資価格総額の2/3以上を大企業が所有している中小企業、小規模事業者など

・大企業の役員、または職員を兼任している者が、役員総数の1/2以上を占めている中小企業、小規模事業者など

・申告済みの直近過去3年分の各年、または各事業年度における課税所得の年平均額が15億円以上である中小企業、小規模事業者など

 ほかにも満たさなければならない申請要件や、対象外の条件があります。公募要領をよく確認したうえで、専門家に相談することがおすすめです。

IT導入支援事業者・ITツールを選定する

 次に、IT導入支援事業者とITツールを選定します。IT導入支援事業者とは、IT導入補助金を申請する事業者のサポートを目的として、事務局や外部審査委員会が選んだ事業者のことです。ITツールの説明や導入、運用方法などの相談、また事務局に提出する各種申請もサポートしてくれます。

 IT導入支援事業者とITツールは、自社の経営課題を解決するため、または業務効率化を図るために必要なものを選ばなければなりません。検索する際には、IT導入補助金・ITツール検索のサイトを利用してください。

 なお、IT導入支援事業者が認定を受けたITツールのみが補助対象となるので、申請を検討する際には気を付けましょう。

 対象となるITツールは、下表のように分類されています。

大分類Ⅰ:ソフトウェアソフトウェア
大分類Ⅱ:オプション・機能拡張・データ連携ツール・セキュリティ
大分類Ⅲ:役務・導入コンサルティング・導入設定、マニュアル作成、導入研修・保守サポート
大分類Ⅳ:ハードウェア・PC、タブレット、プリンター、スキャナー、および複合機器・POSレジ・モバイルPOSレジ・券売機

 さらにITツールを選ぶ際には、以下の要件を満たす必要があります。

・選択したITツールは、大分類Ⅰ:ソフトウェアに該当し、「会計」「受発注」「決済」「EC」の機能を必ず1種類以上含んでいる

・大分類Ⅱ:オプション、大分類Ⅲ:役務、大分類Ⅳ:ハードウェアの導入に関連する経費もあわせて、補助対象として申請する場合は、上記の要件を満たさなければならない

・ハードウェアを補助対象経費として申請する場合、そのハードウェアがソフトウェアの利用に関係しているものである

gBizIDプライムのアカウントを取得する

 申請要件の1つである、gBizIDプライムのアカウントを取得してください。gBizIDとは、補助金の申請や事業報告書の提出など、さまざまな行政サービスを1つのアカウントで利用できる認証システムのことです。gBizIDプライムとは、その認証システムで利用するアカウントの1つを指します。

 gBizIDプライムのアカウントを登録していない場合は、gBizIDのホームページから取得する必要があります。なお、gBizIDプライムのアカウントの登録完了までは、2週間程度かかります。申請スケジュールに間に合うように早めに済ませておきましょう。すでに取得していれば、新しく登録する必要はありません。

SECURITY ACTIONを宣言する

 続いて、SECURITY ACTIONの宣言を実施してください。SECURITY ACTIONとは、情報セキュリティ対策に取り組むことを中小企業が自己宣言する制度を指します。IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠では、「★一つ星」、または「★★二つ星」の宣言が要件として定められています。

 交付申請を進める際には、宣言済みアカウントのIDを入力することが必須です。SECURITY ACITONの申し込みページから済ませておきましょう。

交付申請する

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠を交付申請するために、IT導入支援事業者事業計画を策定する必要があります。

 そして、以下の流れで交付申請を進めていきます。

・IT導入支援事業者から「申請マイページ」の招待を受けて、申請者の基本情報を入力する

・交付申請に必要な情報を入力し、書類を添付する

・IT導入支援事業者にて、導入するITツールの情報と事業計画値を入力する

・「申請マイページ」で入力内容を確認し、申請に対して宣誓した後に事務局へ提出する

 なお、以下の添付書類も必要です。

【法人の場合】・履歴事項全部証明書(発行から3カ月以内)・法人税の納税証明書その1、またはその2(税務署の窓口で発行された直近分)
【個人事業主の場合】・運転免許証、運転経歴証明書、住民票(発行から3ヶ月以内)のいづれか1つ・所得税の納税証明書その1、またはその2(税務署の窓口で発行された直近分)・確定申告書Bの控え(税務署が受領した直近分)

 交付申請が完了した後、審査に通過すれば事務局から「申請マイページ」に交付決定の連絡が来ます。この際に、交付決定の連絡が来る前に、ITツールを発注・契約・支払いなどを済ませた場合、補助金が受けられないので注意が必要です。

 IT導入支援事業者に交付決定を報告したら、ITツールを発注し、補助金の対象となる事業を開始します。そして、事業実績報告期限までに、事業実績をまとめた書類を提出してください。

IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠を申請する際のよくある質問と回答

 最後に、IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠を申請する際によくある質問と回答をまとめるので参考にしてください。

Q.ホームページの制作費は補助対象となるのか?

 A.情報の入力や保存、検索、表示などの簡易的な機能しかないホームページなどの制作費は、IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠の補助対象外す。ホームページ制作ツールやブログ作成システムなどで制作した簡易的なものも補助対象外となります。ただし、分析機能や演算処理などのプログラムは補助対象です。

Q.現在、運用しているECサイトのリニューアル費用は補助対象となるのか?

 A.ECサイトは新規制作のみが補助対象です。既存のホームページに新たにEC機能を実装する場合、その導入費用が対象になります。

Q.IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠の交付申請において、同一事業者は何回まで申請できるのか?

 A.IT導入補助金の公募期間中に、1つの事業者(個人事業主)が通常枠(A・B類型)とデジタル化基盤導入枠にそれぞれ申請し、補助金を受けることは可能です。ただし、これまでの公募で不採択となっている場合や、辞退などの理由で交付申請を取り下げている場合は、申請できません。また、法人の支社や支店などによる個別の申請は不可です。

 なお、2022年のIT導入補助金における要件です。申請する際には最新の要件を確認してください。

Q.過去のIT導入補助金で補助金を交付されたが、デジタル化基盤導入枠に申請できるのか?

 A.公募要領に記載されている要件を満たせば申請できますが、過去3年間にIT導入補助金2019・2020・2021の交付を受けている場合は、審査の際に減点措置が講じられます

Q.他の助成金や補助金と併用できるのか?

 A.国が実施している他の助成金や補助金とは併用できませんただし、申請する補助対象の事業内容が重複していない場合は申請できます。

Q.審査内容はどのようなものか?

 A.審査内容は下表のとおりです。

審査項目審査事項
事業面・自社がインボイス制度に向けて、生産性の向上につながるツールが導入されているか・自社の経営課題を理解しており、経営改善に向けた具体的な問題意識があるか
政策面・生産性向上や働き改革に向けて、国が推進する関連事業に取り組んでいるか・国が推進するセキュリティサービスを選定しているか・給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させるなどの賃上げに取り組んでいるか

 申請する際には審査内容を満たすための提出書類を作成しなければなりません。専門家からアドバイスをもらうことがおすすめです。

IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠をお考えなら中小企業支援事務所にご相談を

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠は、会計・受発注機能などを持つITツールを導入したいのであれば、ぜひ検討したい制度です。しかし、対象となるITツールには機能要件があり、補助対象事業者は細かい要件を満たさなければならないなど、重要なポイントが多くあります。また、審査内容を踏まえた事業計画を策定するには、専門家によるサポートが欠かせないでしょう。

 中小企業経営支援事務所(当社)では、交付申請の事業計画を策定するサポートや、認定支援機関として経営改善計画の策定支援を行っています。

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠の申請が通るための丁寧なアドバイスや、経営者様の想いを汲み取り、金融機関がより納得しやすい計画の策定を心がけているので、IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠に関してお困りでしたら、ぜひ当社にお問い合わせくださいませ。

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経営改善計画とは?経営改善計画策定支援事業を申請する流れを解説

 経営改善計画とは、資金繰りが厳しい場合など自社の経営状態に問題がある場合、返済条件の変更や新規融資を申請するために必要な計画のことです。ただし、自社で策定することが難しい場合、経営改善計画策定支援事業に申請して審査に通れば、認定支援機関に支援してもらうことが可能になります。さらに、経営改善計画の策定支援にかかる費用を国に負担してもらえます

 この記事では、経営改善計画の内容や経営改善計画策定支援事業と早期経営改善計画策定支援事業との違い、申請の流れと注意点について解説しています。

 中小企業経営支援事務所は、経営改善計画策定支援事業に関する支援のエキスパートです。経営改善計画策定支援事業の支援や認定支援機関探しについてお困りの人は、ぜひお問い合わせください。相談無料で受け付けています。

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経営改善計画とは

 経営改善計画とは、事業者が資金繰りや経営の課題を解決することを目的とし、経営改善のための具体的な施策や実施時期などを記載した計画のことです。事業者が現状を理解し、将来的な取り組みを計画することで、金融機関から金融支援を取り付けること、そして自社の事業が改善する可能性を社外に示すことが目的です。

 経営改善計画の内容は、主に以下を含む必要があります。

債務者概況表(財務内容および問題点、業績推移など)

事業所の概要(課題・問題点、計画の基本方針、計画期間・改善目標など)

・企業集団の状況(事業者の資本関係や取引関係の説明資料)

ビジネスモデル俯瞰図(事業者のビジネスモデルを説明できる資料)

資金繰越実績表

計数計画(損益計算書・課税所得、製造原価報告書、販管費の内訳、貸借対照表、キャッシュフロー計算書、金融機関別返済計画、金融支援計画、金融機関別保全状況)

実施計画(経営改善計画に関する具体的施策や予測できる効果、モニタリング効果)

・その他必要書類

 借入金の返済などで資金繰りの問題を抱えている場合、金融機関に返済条件の変更を申請したり、新規融資を依頼したりする際には、この経営改善計画を提出しなければなりません。

 ただし、自社の財務状況を正確に把握し、経営改善に向けた施策を考える必要があるため、事業者自らが経営改善計画を策定することが困難な場合もあるでしょう。そのような際に、経営改善計画策定支援事業を活用することで、経営改善計画を策定するための支援を受けることが可能になります。

経営改善計画策定支援事業とは

 経営改善計画策定支援事業とは、新型コロナウイルス感染症などの影響により財務上の問題を抱えた中小企業・小規模事業者の経営を支援することを目的とした事業のことです。事業が開始となった2012年度補正予算額が405億円であるため、「405事業」とも呼ばれます。

 事業者は、中小企業等経営強化法に基づく認定経営改革等支援機関(以下、認定支援機関)の支援を受けて経営改善計画の策定やその後のモニタリング(策定した経営改善計画の進捗を定期確認する取り組み)を受けながら、財政上の問題を解決して経営の改善を目指します。

 認定支援機関とは、中小企業支援に関する専門知識を持ち、かつ一定の実務経験がある法人、または個人のことです。国の審査・認定を受けている税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会会議所、金融機関などの支援機関などがあげられます。

 認定支援機関に依頼する経営改善計画の策定とモニタリングにかかる費用のうち、3分の2(上限額合計300万円:経営改善計画策定支援の上限額200万円+伴走支援の上限額100万円)を国が負担してくれることが経営改善計画策定支援事業の特徴です。

 経営改善策定支援事業を活用することで、以下のメリットを得られる可能性があります。

・経営が改善し、売上増加やコスト削減につながる

・従業員のモチベーションや生産性が向上する

・経営改善計画により業績アップが見込めて、金融機関や取引先との関係性がよくなる

・借入金の返済条件が緩和される

 なお、経営改善計画策定支援事業の他に、これまで経営改善計画を策定したことがない事業者を対象に早期経営改善計画策定支援事業も用意されています。

早期経営改善計画策定支援事業との違い

 早期経営改善計画支援事業とは、財政上の問題が悪化して経営に影響が出ることを防ぐために、資金繰りなどの課題を解決し、基本的な経営改善を目指す事業所を支援する事業のことです。

 早期経営改善策定支援事業を活用することで、早期改善計画の策定からその後1年間のモニタリングまでを認定支援機関に依頼する費用のうち、3分の2(上限額合計25万円:経営改善計画策定支援の上限額15万円+伴走支援の上限額10万円)を国が補助してくれます。ポストコロナ持続的発展計画事業とも呼ばれます。

 経営改善策定支援事業と早期経営改善計画策定支援事業との違いをまとめると、下表のとおりです。

経営改善計画策定支援事業早期経営改善計画策定支援事業
対象者借入金の返済などの影響による財政上の問題がある事業者金融支援は必要とせず、資金繰りや採算の管理など、基本的な経営改善を目指している事業者
目的返済の条件変更や、新規融資などの金融支援金融機関との連携を強化する
主な計画書の内容・債務者概況表・事業所の概要・企業集団の状況・ビジネスモデル俯瞰図・資金繰越実績表・計数計画・実施計画(5年程度)・ビジネスモデル俯瞰図・資金繰越実績表、または資金予定表・計数計画(損益計算書のみでも可)・実施計画(1〜5年で任意)
補助費用総費用の3分の2(上限300万円)総費用の3分の2(上限25万円)
モニタリング期間3年間(1〜12ヶ月ごとに実施)1年後に1回

経営改善計画策定支援事業を申請する流れ

 経営改善計画策定支援事業を申請する流れを解説していきます。

経営改善計画策定支援事業の対象か確認する

 まずは、自社が経営改善計画策定支援事業の対象かどうかを確認しなければなりません。対象となる事業者は以下の要件を満たしている必要があります。

・中小企業・小規模事業者である

・借入金の返済が負担である、または金融支援が必要な状況である

・事業者自らでは経営改善計画の策定が難しいが、外部の専門家(認定支援機関)の支援を受けることで、金融機関の返済条件変更や新規融資などが見込める

 なお、個人事業主や医療法人(従業員が常時300人以下に限る)、農業や漁業など一次産業の事業者も対象です。

 ただし、以下は経営改善計画策定支援事業の対象外となります。

・社会福祉法人

・特定非営利活動法人

・一般社団法人

・一般財団法人

・公益社団法人

・公益財団法人

・農事組合法人

・農業協同組合

・生活協同組合

・LLP(有限責任事業組合)および学校法人

認定支援機関を探す

 認定支援機関を探す方法は以下のとおりです。

・主要金融機関に紹介してもらう

・顧問税理士が認定支援機関であれば、そのまま依頼する

・中小企業庁の認定経営革新等支援機関検索システムを利用する

 認定支援機関を決定した後は、経営改善計画策定支援事業の活用や経営の方向性について話し合います。

利用申請書の作成・提出

 次に、経営改善計画作成支援事業利用申請書を作成し、認定支援機関と連名で中小企業活性化協議会に提出します。

 その他の記入書類や添付書類は以下のとおりです。

記入書類添付書類
・申請者の概要・自己記入チェックリスト・業務別見積明細・履歴事項全部証明書(登記簿謄本)の原本(個人事業主の場合は開業届または確定申告書の写し)・認定経営革新等支援機関であることを証する認定通知書等(写し)・認定経営革新等支援機関ごとの見積書および単価表・申請者の直近3年分の確定申告書(写し)・計画策定支援に係る工程表(ガントチャート)・主要金融機関の確認書面

 なお、認定支援機関とは別に主要金融機関(メイン行・準メイン行)の連名も必要です。認定支援機関に主要金融機関が含まれない場合は、経営改善計画策定支援事業を利用する事業者に対して、金融支援を検討することを確認した書面を用意してください。

 中小企業活性化協議会が審査し、経営改善計画策定支援事業の利用が適切であると判断された場合は、依頼した認定支援機関に通知が行きます。

 また、認定支援機関への自己負担額(3分の1)については、認定支援機関が業務の委嘱を承諾した日以降に支払わなければなりません

経営改善計画の策定・金融機関との合意形成

 利用申請が通った後、事業者は認定支援機関の支援を受けながら、「1.経営改善計画とは」で解説した経営改善計画の策定に取り組みます。

 そして、経営改善計画を策定した後に、各金融機関から経営改善計画策定支援事業に関する金融支援を行うことへの合意を得る必要があります

 金融支援の合意を得る手段は、以下のとおりです。

・取引がある各金融機関にそれぞれ訪問して合意を得る

・事業者がバンクミーティング(取引のある各金融機関などが特定の日時に同じ場所に集まる話し合い)を開催し、計画について説明する

・経営サポート会議(各県に設置)を活用する

・中小企業再生支援協議会(各県に設置)を活用する

支払申請書の作成・支払い決定

 経営改善計画に関して金融機関から合意を得られた後、経営改善計画策定支援事業費用支払申請書を作成し、認定支援機関と連名で中小企業活性化協議会に提出します。

 その他に必要な記入書類と添付書類は以下のとおりです。

記入書類添付書類
・経営改善計画・自己記入チェックリスト・業務別請求明細書・従事時間管理票(業務日誌)・認定支援機関ごとの請求資料・外部委託先からの請求書類・申請者と認定支援機関が集結する経営改善計画策定支援事業に係る契約書など・金融機関などの同意書・経営改善計画策定支援における着眼点実施確認表

 中小企業活性化協議会が支払申請書を審査して適切と判断されると、認定支援機関に通知が行き、経営改善計画策定費用(3分の2)の支払いが決定されます。

認定支援機関によるモニタリングの実施

 事業者は経営改善計画に沿って、財務上の問題を解決しながら経営を改善することに取り組みます。その実施状況については、認定支援機関に共有しなければなりませんさらに、認定支援機関は計画策定後の3年間、計画どおりに進んでいるかどうかを定期的にチェックし、必要な支援業務を実施していきます。

 なお、モニタリングの実施中に計画よりも高い実績を継続して示している場合は、認定支援機関がモニタリングを必要ないと判断し、さらに中小企業活性化協議会も同様に判断した際には、事業者と同意すればモニタリングを終了させることも可能です

モニタリングに対する申請書の作成・支払い決定

 事業者は認定支援機関からのモニタリングを受けるごとに、経営改善計画策定支援事業伴走支援費用支払申請書を作成し、認定支援機関と連名で中小企業活性化協議会に提出します。

 その他に必要な記入書類と添付書類は以下のとおりです。

記入書類添付書類
・伴走支援報告書・自己記入チェックリスト・業務別請求明細・従事時間管理票(業務日誌)・申請者と認定経営革新等支援機関が締結する伴走支援に係る契約書・認定経営革新等支援機関ごとの請求書類・申請者による伴走支援費用負担額(3分の1)の支払いを示す証憑類・伴走支援レポート・伴走支援における着眼点実施確認表

 中小企業活性化協議会が申請書を確認して申請が通ると、認定支援機関に通知が行き、モニタリングに対する費用(3分の2)が支払われます。

経営改善計画策定支援事業の注意点

 最後に、経営改善計画策定支援事業に関する注意点をまとめるので参考にしてください。

経営改善計画策定支援事業は複数回利用できないが例外もある

 基本的には経営改善計画策定支援事業を一度利用すると、複数回利用できません。ただし、新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢、原油価格の高騰などの影響を受けて業況が悪化している場合は、過去に経営改善計画策定支援事業が適用となった事業所でも対象となりますなお、費用負担の実績が引き継がれるため、一事業者の上限額は合計300万円となることに注意が必要です。

認定支援機関が出資している事業者は出資率で対象・対象外が決定する

 認定支援機関の出資比率が20%未満であれば、経営改善計画策定支援事業の対象となります。20%以上の場合、認定支援機関が出資している事業者に対して財務や営業に影響を与える可能性が高いとみなされるため対象外となります。

営業実績が12ヶ月未満の事業所は支援を受けられない可能性もある

 営業実績が12ヶ月以上あることを証明できる確定申告を提出できない場合は、対象外です一方で、一事業年度で12ヶ月の決算を実施していれば、経営改善計画策定支援事業の対象となります。なお、法人を設立する前に個人事業主として、同様の事業を12ヶ月以上継続しており、それらの実績を確定申告などで証明できる場合は対象となります。

経営改善計画策定支援事業の申請をお考えなら中小企業支援事務所にご相談を

 経営改善計画は、自社の財務状況を正確に把握したうえで、実施計画を作成しなければなりません。時間的に余裕がなく、事業所自ら策定することが難しい場合もあるでしょう。その際には、経営改善計画支援事業を利用することで、認定支援機関による経営改善計画の策定支援や、その後の費用をおさえて受けることが可能です。

 まずは、自社が経営改善計画策定支援事業の対象となるか確認してください。ただし、この記事で紹介した事業所でも対象外となる可能性もあります。詳しくは、中小企業活性化協議会に問い合わせてみましょう。

 なお、中小企業経営支援事務所(当社)では、経営改善計画策定支援事業の申請サポートや、認定支援機関として経営改善計画の策定支援を行っています。

 経営改善計画策定支援事業の申請が通るための丁寧なアドバイスや、経営者様の想いを汲み取り金融機関がより納得しやすい計画の策定を心がけているので、経営改善計画策定支援事業に関してお困りでしたら、ぜひ当社にお問い合わせくださいませ。

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ものづくり補助金のデジタル枠とは?申請する流れや注意点を解説

 ものづくり補助金のデジタル枠とは、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関連する新製品やサービスの開発、生産性の向上を目指すための設備やシステム投資などを支援する制度の申請枠です。支援を受けるためには、申請対象となる事業者や経費や必要書類を確認して、書類を作成する必要があります。

 そこでこの記事では、ものづくり補助金のデジタル枠の内容や申請する流れと注意点、よくある質問と答えについて解説しています。

 中小企業経営支援事務所は、ものづくり補助金や事業再構築補助金といった補助金申請支援のエキスパートです。補助金についてお困りの人は、ぜひお問い合わせください。相談無料で受け付けています。

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ものづくり補助金のデジタル枠とは

 ものづくり補助金のデジタル枠とは、DXに関連する革新的な製品やサービスを開発するため、またはデジタル技術を利用して生産性向上を目指すために必要な設備やシステムなどに対する補助金の申請枠を指します。2022年の10次公募から新しく創設されました。対象の事業にこれからチャレンジしたい、または既存事業を躍進させたい事業者が活用できる制度と言えます。

 さらに、ものづくり補助金のデジタル枠は補助率が2/3であり、通所枠の補助率1/2と比較すると優遇されていることが特徴です。

 補助金額は従業員数によって異なり、下表のように決められています。

従業員数補助金額
5人以下100〜750万円
6〜20人100〜1,000万円
21人以上100〜1,250万円

そして、ものづくり補助金のデジタル枠の補助対象となる経費として、以下が該当します。

種類内容補足
機械装置
システム構築費
・機械、装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費
・専用ソフトウェア、情報システムの購入・構築、借用に要する経費
・改良、修繕、または据付に要する経費・機械、装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費
・専用ソフトウェア、情報システムの購入・構築、借用に要する経費
・改良、修繕、または据付に要する経費
単価50万円(税抜)以上の設備投資が必須
運搬費 運搬料、宅配・配送料などに要する経費
技術導入費知的財産権などの導入に要する費用補助対象経費の総額1/3(税抜)までが上限額
知的財産権などに関連する経費特許権などの知的財産権を取得するための弁護士の手続き代行費用など補助対象経費の総額1/3(税抜)までが上限額
外注費新製品やサービス開発に必要な加工や設計(デザイン)、検査などの一部を外注する場合の経費補助対象経費の総額1/2(税抜)までが上限額
専門家に関する経費事業を遂行するために依頼した専門家に支払われる費用補助対象経費の総額1/2(税抜)までが上限額
クラウドサービスの利用費クラウドサービスを利用するための費用
原材料費試作品を開発するために必要な原材料、および副資材の購入費用

また、ものづくり補助金のデジタル枠を活用した事例は、下表のような目的と補助金の対象が紹介されています。

業種飲食・小売業
目的店舗に需要予測システムを導入し、販売機会の損失と廃棄量の削減。さらに、新製品の開発とあわせて、工場の製造ラインにAIを活用した不良品検知システムを導入し、生産性と付加価値の向上を目指す。
補助金の対象・AIを活用したシステム構築に必要な費用
・新製品を開発するための機械装置に必要な費用
・需要予測システムに関連するクラウドサービスの利用費用

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 令和3年度補正予算の概要 p.10丨中小企業庁

そもそも、ものづくり補助金とは?


 ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者などが経営革新を目指すために用いる設備投資の費用を補助する制度を指します。補助率が1/2(または条件により2/3まで)、補助上限額は750〜5,000万円です。中小企業の生産性向上を支援するために、中小企業庁と独立行政法人 中小企業基盤整備機構が制度化しました。

 ものづくり補助金には、以下5つの申請枠が用意されています。
・通常枠
・デジタル枠
・グリーン枠
・グローバル市場開拓枠
・回復型賃上げ、雇用拡大枠

 なおこの記事では引き続き、ものづくり補助金のデジタル枠について解説していきます。

ものづくり補助金のデジタル枠に申請する流れ


 ここでは、ものづくり補助金のデジタル枠に申請する流れを解説します。

要件を満たしているか公募内容を確認する


 まず、ものづくり補助金のデジタル枠に申請できるかどうか、公募内容の申請対象者や要件を確認しなければなりません。 下表に該当する中小企業者(組合関連以外)が、ものづくり補助金のデジタル枠の対象です。

業種資本金常勤従業員数
製造業、建設業、運輸業、旅行業3億円以下300人以下
ゴム製品製造業3億円以下900人以下
ソフトウェア業、または情報処理サービス業3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下
旅館業5,000万円以下200人以下
そのほかの業種(上記以外)3億円以下300人以下

 上記に該当し、日本国内に本社、または補助金の対象となる事業を実施する場所を有している必要があります。

 なお、個人事業主と企業組合や協業組合などの中小企業者や、下表の特定事業者(資本金10億円未満)も対象となります。

業種常勤従業員数
製造業、建設業、運輸業500人以下
卸売業400人以下
サービス業、または小売業300人以下
そのほかの業種(上記以外)500人

次に、ものづくり補助金のデジタル枠における要件は下表のとおりです。

基本要件デジタル枠
・3〜5年の事業計画を策定する

・申請する時点で、申請要件を満たす賃金引き上げ計画を策定していなければならない

・財産処分や収益納付などを含めて、補助金の返還額の合計は補助金交付額を上限とする(再生事業者である場合は、各目標が達成できていない場合でも返還は免除となる)
・①または②に該当する事業である
①DXに関連する革新的な製品、サービスの開発
②デジタル技術を活用した生産プロセス、サービス提供方法の改善
・経済産業省が公開するDX推進指標を活用して、DX推進に向けた現状や課題に対する認識を共有するなどの自己診断を実施し、さらに自己診断結果を応募締切日までに独立行政法人 情報処理推進機構に提出している
・独立行政法人 情報処理推進機構が実施する「SECURITY ACTION」の「★一つ星」または「★★二つ星」いずれかを宣言している

 ものづくり補助金のデジタル枠に申請するためには、基本要件に加えて、デジタル枠の要件も満たさなければなりません。特に、「DX推進指標の自己診断の提出」「SECURITY ACTIONの宣言」は別途、対応が必須です。応募締切日までに提出・宣言できていない場合は要件不備となり、申請が通らないので注意してください。

 DX推進指標の自己診断の作成方法については、動画でわかりやすく解説をしていますので、合わせてご確認をいただければ幸いです。

 なお、提出する事業計画は以下の要件をすべて満たす必要があります。

・事業者全体の付加価値額(営業利益、人件費、減価償却費の合計)を年率3%以上増加させている
・給与支給額を年率平均1.5%以上増加させている
・事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円高い水準にする

 ただし、上記は14次締切の内容です。変更されている場合があるため、自社が申請する際の要件を必ず確認してください。

 また、申請要件を満たしていない場合には以下の返還規定があります。

未達の状態 返還金額
申請した時点で、賃上げ計画が策定されていない 全額
事業計画が終了した時点で、給与支給総額要件を達成できていない 残存簿価など×補助金額/実際の購入金額を返還
毎年度末(毎年3月)時点で、最低賃金に関する要件を達成できていない 補助金額/計画年数を返還

未達の状態返還金額
申請した時点で、賃上げ計画が策定されていない全額
事業計画が終了した時点で、給与支給総額要件を達成できていない残存簿価など×補助金額/実際の購入金額を返還
毎年度末(毎年3月)時点で、最低賃金に関する要件を達成できていない補助金額/計画年数を返還

 なお、ものづくり補助金における、補助金の返還要件については、以下の動画で解説をしていますのであわせてご確認ください。

電子申請を準備する(GビズIDプライムアカウントを取得する)


 ものづくり補助金のデジタル枠は電子申請のみが利用できます。そのため、まずGビズIDプライムアカウントを取得する必要があります。

 取得までの流れは以下のとおりです。
・スマートフォン、または携帯電話、印鑑証明書、登録印、パソコンを用意
・パソコンで「GビズID」と検索し、トップページから「ID作成」を選択
・必要事項を記入し、規約確認後、申請書作成を選択
・申請書をダウンロードして印刷
・申請書に記入捺印し、印鑑証明書と一緒に郵送

 種類に不備がなければ2週間以内にメールが来て、アカウント作成の手続きを済ませればGビズIDプライムアカウントの取得が完了します(参考:GビズID紹介動画)。

 

申請書類を提出する

 ものづくり補助金のデジタル枠に必要な以下の書類を用意します。

・事業計画書
・補助経費に関する誓約書
・賃金引き上げの誓約書
・決算書など(直近2年間の貸借対照表や損益計算書など)
・従業員数が確認できる資料(法人の場合:法人事業概況説明書の写し、個人事業主の場合:所得税青色申告書の写し)
・労働者名簿
 ※再生事業者の場合は、再生事業にかかわる確認書が必要

 そのほか、以下の書類は加点対象となるため、提出することで審査に通る可能性が高くなると言えます。

・成長性加点:経営革新計画承認書
・政策加点:個人の場合は開業届、法人の場合は履歴事項全部証明書、サイバーセキュリティお助け隊の契約書の写し
・災害など加点:事業継続力計画認定書
・賃上げ加点:特定適用事業所該当通知書

審査結果を確認する


 ものづくり補助金のデジタル枠の申請が採択された場合、ものづくり補助金総合サイトの採択結果のページで申請した書類のとおりに「受付番号」「商号または名称」「事業計画名」などが公表されます。つまり、そのページに自社の記載がない場合、審査を通過できなかったことになります。なお、デジタル枠やグリーン枠など、どの申請枠で採択されたかは明らかにされません。

採択後の手続き 交付申請・交付決定


 交付申請書を作成して提出してください。なお、交付申請の際には従業員数を確認するために、法人事業概況説明書などの提出を求められる場合もあります。従業員数によって補助上限額が異なるため、申請金額が上回っていると減額措置となる可能性もあるので注意してください。

 事務局が申請書類を審査して問題なければ、ものづくり補助金のデジタル枠で補助金の交付が決定されます。そして、「様式第2 補助金交付決定通知書」の右上に記載された交付決定日から、対象となる事業を開始できます。

ものづくり補助金のデジタル枠を申請する際の注意点


 ものづくり補助金のデジタル枠を申請する際の注意点を紹介します。

人件費や土地・建屋の費用は対象とはならない

 ものづくり補助金のデジタル枠の補助対象として、たとえデジタル技術を活用したサービスに関連しているとしても人件費や土地・建屋の費用は該当しません。事業を実施する場所に関連する費用ではなく、あくまで設備投資の費用を補助するための制度です。

大幅賃上げへの上乗せ支援が適用される


 14次公募から、大幅な賃上げに取り組む事業者については補助額が上乗せされる支援が追加となりました。

 以下の賃金に関連する事業計画を策定して取り組むことで、従業員数に応じて補助上限が引き上げられます。

要件内容
給与支給総額年率で4.5%引き上げる
通常の年率1.5%+4.5%=6%以上引き上げ
最低賃金事業場内最低賃金を毎年45円以上引き上げる

補助上限の引き上げ額

従業員数上乗せとなる補助額
5人以下100万円
6〜20人250万円
21人以上1,000万円

賃金を大幅に引き上げられる事業計画を策定できる場合は、ぜひ検討したほうがよいでしょう。

採択されなかった場合に通常枠で再審査されるか確認する

 ものづくり補助金のデジタル枠で不採択となった場合、13次締切までは通常枠で再審査される記載がありました。ただし、14次締切からは再審査されるなどの救済措置に関する記載がありません。そのため、自社が申請するタイミングの公募要領をよく確認することが大切です。

ものづくり補助金のデジタル枠でよくある質問と答え

 最後に、ものづくり補助金のデジタル枠でよくある質問と答えをまとめるので参考にしてください。

Q.どのような項目で審査されるのか?

 A.審査項目は以下のとおりです。

・補助対象事業者としての適格性
・技術面
・事業化面
・政策面
・加点項目(成長性、政策、災害、賃上げ)

 それぞれの項目に対して、どのような内容を重視するのかが定められています。加点項目も理解したうえで、書類を作成することが重要と言えます。審査を有利に進めるためにも、専門家に相談することがおすすめです。

Q.過去にものづくり補助金の審査に通った事業所も申請できるのか?

 A.申請できます。ただし、応募締切日から過去3年以内に交付決定を1回のみ受けた事業者は、減点の対象となります。なお、過去3年以内に2回以上の交付を受けた事業者は対象外です。

Q.他に提出された事業と極めて似ていると指摘を受けた。再度、申請できるのか?

 A.14次締切より、指摘を受けると次回の公募に申請できないと決められています。また、指摘を2回以上受けた場合は、次回と次々回への申請が不可能になります。

Q.従業員の人数を算出する方法は?

 A.申請時点での常勤従業員数を算出してください。なお、常勤従業員には、日雇い労働者、2ヶ月以内の労働期間が定められた者、4ヶ月以内(季節的業務)の労働期間が定められた者、試用期間中の者は含まれません。

Q.補助金の対象となる事業の実施場所は、審査に通ってから決めてもよいのか? 

A.実施場所は事前に確定させて応募してください。審査に通り、交付を申請する際に実施場所を変更することは原則として認められていません。


ものづくり補助金のデジタル枠への申請を検討中なら中小企業支援事務所にご相談を

 ものづくり補助金のデジタル枠は、通常枠よりも補助率が優遇されているため、ぜひ検討したい制度と言えます。ただし、新設された申請枠なので今後、要件などが変更となる可能性もあるでしょう。なおこの記事では、14次締切の要件をもとに作成していますので、実際にものづくり補助金のデジタル枠に申請する場合は、最新のものを確認してください。

 さらに、ものづくり補助金のデジタル枠に申請できない事業者や補助対象とならない事業内容、補助対象外の経費に注意する必要があります。また、14次締切のものづくり補助金では、デジタル枠で審査が通らなかった場合の通常枠による再審査が廃止されています。そうなると、次回の公募まで待つ必要があります。

 一度の申請で通りたいのであれば、専門家にサポートしてもらうことも選択肢の1つです。

 中小企業経営支援事務所(当社)では、ものづくり補助金のデジタル枠の申請サポートや、認定支援機関として経営改善計画の策定支援を行っています。

 ものづくり補助金のデジタル枠の申請が通るための丁寧なアドバイスや、経営者様の想いを汲み取り、中小企業基盤整備機構がより納得しやすい事業計画の策定を心がけているので、ものづくり補助金のデジタル枠に関してお困りでしたら、ぜひ当社にお問い合わせくださいませ。

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