事業再構築補助金の成長枠とは?要件やスケジュール、申請の流れを解説

 事業再構築補助金の成長枠とは、成長分野に向けて積極的な事業再構築を目指す事業者を支援する申請枠を指します。第9回公募の通常枠が変更となり、第10回公募から新設されました。それに伴い、補助金や補助率などの要件が変更されています。

 そこでこの記事では、事業再構築補助金の成長枠の概要や対象となる業種、スケジュール、第9回通常枠からの変更点、申請の流れについて解説します。

 中小企業経営支援事務所は、ものづくり補助金や事業再構築補助金といった補助金申請支援のエキスパートです。補助金についてお困りの人は、ぜひお問い合わせください。相談無料で受け付けています。

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事業再構築補助金の成長枠とは?

事業再構築補助金 成長枠の概要

 事業再構築補助金の成長枠とは、将来的に成長が見込まれる分野に取り組む中小企業を支援する制度の枠組みを指します。第10回公募から通常枠の名称が変更して成長枠となり、新設されました。

 以下の経費が補助対象となります。

  • 建設費
  • 機械装置費、システム構築費(リース料含む)
  • 技術導入費
  • 専門家経費など

 事業再構築補助金の成長枠における要件は、以下のとおりです。

事業再構築補助金の成長枠の要件
・過去から今後10年間において、市場規模が10%以上拡大する業種
・業態に取り組む事業が属していること
・事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業である・認定経営革新等支援機関に事業計画の確認を受けている
・補助事業の終了後3〜5年で付加価値額の年率平均4%以上の増加、または従業員1人あたり付加価値額の年率平均4%以上の増加が見込める事業計画を策定している
・事業終了後、3〜5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させる

 上記の要件をすべて満たさなければなりません。

 事業再構築補助金の成長枠の対象となる業種・業態は、以下が該当します。

  • 畜産食料品製造業
  • 調味料製造業
  • パン、菓子製造業
  • 動植物油脂製造業
  • 製氷業など

 ほかにも対象となる業種・業態が存在します。詳しくは事務局が公開している成長枠対象リストを確認してください。

 なお、上記以外の業種・業態でも、要件を満たすことを示すデータを事務局に提出して、認可されれば対象になり得ます。その場合、事業者からの申請は受け付けておらず、業界団体からの申請のみとなります。詳しくは事務局に問い合わせる、または専門家に相談したほうがよいでしょう。

事業再構築補助金の成長枠における補助金額・補助率

 事業再構築補助金の成長枠における補助金額・補助率は下表のとおりです。

補助金額 補助率
従業員数20人以下:100〜2,000万円
従業員数21〜50人:100~4,000万円
従業員数51~100人:100~5,000万円
従業員数101人以上:100~7,000万円
中小企業者など:1/2
中堅企業など:1/3

 なお、以下の追加要件を満たせば上記の補助率を引き上げることも見込めます。

追加要件 補助率
・補助事業の期間内に給与支給総額を年平均6%以上増加させる
・補助事業の期間内に事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げる
中小企業者など:1/2→2/3
中堅企業など:1/3→1/2

 上記の追加要件を満たせる場合は、「大規模賃金引上促進枠」を同時に申請しましょう。また、中小企業・中堅企業から中堅・大企業に事業規模を拡大できる見込みがあれば、「卒業促進枠」の申請も検討できます。採択されれば補助上限額をアップさせられます。

 ただし、「大規模賃金引上促進枠」と「卒業促進枠」の2つを同時に申請できないことに注意してください。事業再構築補助金の成長枠といずれか1つの申請枠のみです。

 なお、給与支給総額や最低賃金には、対象月の基準などの要件が定められています。詳しくは、専門家に確認することが大切です。

事業再構築補助金の成長枠におけるスケジュール

 事業再構築補助金の成長枠におけるスケジュールは、以下のとおりです。

  • 第10回公募期間:2023年3月30日〜6月30日18時
  • 申請受付開始時期:調整中
  • 採択結果発表:2023年8月下旬〜9月上旬頃

 申請可能な受付開始時期は、まだ公表されていません。スケジュールは必要に応じて変更される可能性があります。詳しくは最新のスケジュールを事務局のホームページで確認してください。

そもそも事業再構築補助金とは

 事業再構築補助金とは、新型コロナウイルスや物価高騰などの影響を受けた中小企業が事業を再構築するための取り組みに対する支援制度のことです。令和4年度第二次補正予算では、事業再構築補助金に5,800億円が使われると公表されています。

 第10回の公募では、成長枠のほかにも以下の申請枠が用意されています。

  • グリーン成長枠
  • サプライチェーン強靭化枠
  • 物価高騰対策、回復再生応援枠
  • 産業構造転換枠
  • 最低賃金枠

 自社の事業内容によっては、成長枠以外のほうが適している場合もあるでしょう。ただし、それぞれの申請枠によって満たさなければならない要件が異なります。公募要領を確認することが大切です。

事業再構築補助金の成長枠の概要 第9回通常枠からの変更点

 ここでは、事業再構築補助金の成長枠が第9回の通常枠からどのように変更されたかを解説します。

指定された業種・業態のみに申請可能

 第9回公募の事業再構築補助金の通常枠から名称が成長枠に変更されました。それに伴い、以下の要件が追加されています。

過去から今後のいずれか10年間において、市場規模が10%以上拡大する業種や業態に、補助事業として取り組む自社事業が属さなければならない

 「市場規模が10%以上拡大する業種や業態」については、事務局が指定しています。つまり、指定された業種・業態のみにしか申請できないということです。成長枠の対象となる業種や業態は一覧から確認できます。

 なお、「過去の公募回にて認められた業種や業態については、その後の公募回で追加される」と事務局が公表しています。そのため、今後も追加される可能性が高いでしょう。

売上高に関する要件の撤廃

 事業再構築補助金の第9回の通常枠では、以下の要件が記載されていました。

2020年4月以降で連続する6ヶ月のうち、任意の3ヶ月における合計売上高が、新型コロナウイルス感染症の拡大以前(2019年または2020年1〜3月)の3ヶ月における合計売上高と比較して10%以上減少していること

 しかし、第10回の成長枠では撤廃されています。売上高に関する要件がなくなったため、より多くの事業者が対象となりました。

補助上限額・補助率の変更

 下表のとおり、補助上限額と補助率が変更されています。

第9回通常枠 第10回成長枠
補助金額従業員数20人以下:100〜2,000万円
従業員数21〜50人:100〜4,000万円
従業員数51〜100人:100〜6,000万円
従業員数101人以上:100〜8,000万円
従業員数20人以下:100〜2,000万円
従業員数21〜50人:100〜4,000万円
従業員数51〜100人:100〜5,000万円
従業員数101人以上:100〜7,000万円
補助率中小企業者:2/3
中堅企業:1/2
中小企業者:1/2
中堅企業:1/3

 第10回の成長枠のほうが、補助上限額・補助率が減少しています。ただし、第10回からは成長枠のほかにも、グリーン成長枠の「エントリー」や、産業構造転換枠などの申請枠が新設されています。自社事業に適した申請枠を専門家と相談しながら決めるとよいでしょう。

事業再構築補助金の成長枠を申請する流れ

 事業再構築補助金の成長枠を申請する流れについて、解説します。なお、申請前には事務局が開催する説明会への参加が必須です。事務局のホームページで開催日時を確認しておきましょう。

自社の企業規模を確認する

 事業再構築補助金の成長枠の補助対象となる事業者は、中小企業または中堅企業です。

 中小企業は下表の数字以下となる会社、または個人事業主が該当します。

製造業その他資本金3億円・従業員数300人
卸売業資本金1億円・従業員数100人以下
小売業資本金5,000万円以下・従業員数50人以下
サービス業資本金5,000万円以下・従業員数100人以下

 中堅企業の条件は以下のとおりです。

上記の中小企業に該当しない、資本金10億円未満・従業員数2,000人以下の事業者が該当する

 自社がこれらの条件を満たしているか確認してください。なお、農業組合法人や労働者協同組合も所定の条件を満たせば申請対象となります。詳しくは、公募要領を確認しておきましょう。

必要書類の準備

 事業再構築補助金を申請する際に必要な以下の書類を準備してください。参考資料は、事務局ホームページの「電子申請に当たっての添付書類および参考資料」に用意されています。

  • 事業計画書
  • 認定経営革新等支援機関、金融機関の確認書
  • 決算書
  • ミラサポplus「電子サポート」の事業財務情報
  • 従業員数を示す書類
  • 収益事業を示す書類

 なお、以下の書類は成長枠を申請する際に追加で必要なものです。

  • 市場拡大要件を満たすことを示す書類
  • 給与総額増加の要件を満たすことを示す書類
  • 補助率引上要件を満たすことを示す書類(補助率引き上げを求める場合のみ)

 ほかにも、複数の事業者が連携して事業に取り組む場合には、その必要性を示す書類などを用意しなければなりません。

電子申請

 事業再構築補助金の成長枠に申請する方法は電子申請のみです。事務局の「電子申請システム操作マニュアル」に沿って申請してください。

 なお、電子申請する際には、GビズIDプライムアカウントを取得しなければなりません。取得するまでには1週間程度かかります。申請を検討している場合は、早めに準備しておきましょう。

事務局による審査・結果の通知

 事務局が申請した書類を審査し、採択・不採択の結果が通知されます。採択された場合は事務局のホームページで公表されます。なお、採択された場合でもすぐに補助金が振り込まれるわけではありません。

 また、申請書類の不備などにより申請要件を満たしていない場合は、採択結果が公表される前に事務局から連絡があります。

補助金の交付申請

 採択された場合、補助金の交付を申請します。なお、事務局の審査によっては申請した経費が補助対象外となり、当初よりも補助額が少なくなる場合もあります。

 また、補助金の交付が決定する前に事業譲渡や会社分割などを実施して、補助金を交付申請できる権利を他者に継承できないことに注意してください。

事業再構築補助金の成長枠におけるポイント

 事業再構築補助金の成長枠を申請する際のポイントをまとめます。

「卒業促進枠」「大規模賃金引上促進枠」を追加申請できないか検討する

 事業再構築補助金の成長枠では、補助事業の終了後、3〜5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させることが要件に含まれています。そのため、給与水準の改善に取り組むことが必須と言えます。同様に、賃上げに取り組む「卒業促進枠」や「大規模賃金引上促進枠」を追加申請できないか検討することがおすすめです。

 採択されれば、自社事業を補助できる金額を増やせます。どの申請枠を追加で申請すればよいかについては専門家のアドバイスを参考にするとよいでしょう。

補助対象外となる事業を確認する

 事業再構築補助金の成長枠では、以下の事業は対象外となります。

  • 事業所の家賃、保証金、水道光熱費
  • 電話代、インターネット利用料金などの通信費
  • 不動産の購入費・事務用のパソコン、プリンタ、タブレット端末など
  • 自社の人件費

 申請する際の計上されている経費に補助対象外が多く含まれている場合、不採択になったり、採択された場合でも取り消されたりする場合があるため注意しましょう。

 対象外の事業は、ほかにも定められています。詳しくは公募要領を確認する、または専門家に相談することがおすすめです。

事業計画は事業者自身が策定しなければならない

 事業再構築補助金の成長枠を申請する際に必要な事業計画は、事業者自身で策定する必要があります。

 さらに、事業計画には以下のポイントを含めなければなりません。

  • 現在の事業に関して、強みや弱み、事業再構築の必要性
  • 事業再構築の具体的内容
  • 事業再構築を検討している市場の状況、自社の優位性、費用対効果
  • 実施体制、事業スケジュール、資金調達計画

 これらの内容をもとに、事業実施体制や財務の妥当性、費用対効果などが審査されます。なお、認定経営革新等支援機関のアドバイスを受けることは認められているので活用するとよいでしょう。

事業再構築補助金の成長枠を申請したいとお考えなら中小企業支援事務所にご相談を

 事業再構築補助金の成長枠は、申請できる業種や業態が限られていますが、売上高に関する要件が撤廃されており、検討できる事業者も多くなるでしょう。

 ただし、事業再構築補助金の成長枠は第10回公募から新設された申請枠であるため、採択されるためには実績豊富な専門家からのアドバイスが有効です。

 中小企業経営支援事務所(当社)では、事業再構築補助金の成長枠の申請サポートや、認定支援機関として経営改善計画の策定支援を行っています。

 経営改善計画策定支援事業の申請が通るための丁寧なアドバイスや、経営者様の想いを汲み取り、金融機関がより納得しやすい計画の策定を心がけているので、経営改善計画策定支援事業に関してお困りでしたら、ぜひ当社にお問い合わせくださいませ。

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