事業再構築補助金の産業構造転換枠とは?申請の流れやポイントを解説
事業再構築補助金の産業構造転換枠は、第10回公募から新設された申請枠です。自社事業に関係する業種・業態の市場規模が今後、減少すると見込まれる場合に申請できます。廃業を伴う場合は、最大9,000万円の補助金が交付されることが特徴です。
この記事では、事業再構築補助金の産業構造転換枠の概要やスケジュール、申請の流れを解説します。
中小企業経営支援事務所は、ものづくり補助金や事業再構築補助金といった補助金申請支援のエキスパートです。補助金についてお困りの人は、ぜひお問い合わせください。相談無料で受け付けています。
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もくじ
事業再構築補助金の産業構造転換枠とは
事業再構築補助金の産業構造転換枠とは、自社事業に関連する国内市場規模が変化したことで、事業再構築が必要な事業者に対して支援する制度を指します。2023年3月30日より開始された第10回公募から新設されている申請枠です。
事業再構築補助金の産業構造転換枠における要件は、以下のとおりです。
事業再構築補助金の産業構造転換枠の要件 |
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・事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業である(事業再構築要件) ・認定経営革新等支援機関に事業計画を確認してもらうこと(補助金額が3,000万円を超える場合は認定経営革新等支援機関および金融機関の確認を受けている) ・対象となる補助事業の終了後、3〜5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、または従業員1人あたり付加価値額の年平均3.0%以上増加が見込まれる事業計画を策定する ・現在の事業が過去〜今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属しており、別の業態・業種に転換する。または基幹大企業が撤退することで、市町村内総生産の10%以上が減少すると見込まれる地域に自社が属しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占めている |
「市場規模が10%以上縮小する業種・業態」は、事業再構築補助金の事務局が以下のように指定しています。
- 出版業および書籍、雑誌小売業
- 粘土かわら製造業
なお、上記以外でも今後対象となる業種・業態が公開される可能性があります。詳しくは事務局のホームページを確認してください。
事業再構築補助金の産業構造転換枠におけるスケジュール
事業再構築補助金の産業構造転換枠に申請できる第10回公募のスケジュールは、以下のとおりです。
- 第10回公募期間:2023年3月30日(木)〜6月30日(金)18時まで
- 採択発表時期:2023年8月下旬〜9月上旬頃予定
ただし、申請開始時期はまだ公表されていません。事務局のホームページで公開されるスケジュールを確認してください。また、第10回公募のあとも、2023年度末までに3回の公募が予定されています。
産業構造転換枠の「事業再構築要件」とは
事業再構築補助金の産業構造転換枠では要件の1つに、「事業再構築の定義に該当する事業であること(事業再構築要件)」が明記されています。事業再構築要件とは、中小企業庁の事業再構築指針において示された要件を指します。
第10回公募では、以下の類型が該当します。
類型 | 要件 |
新市場進出(新分野展開、業態転換) | 以下の①〜③を満たすこと ①新たな製品・商品・サービスを提供する、または提供方法を大幅に変更する ②新たな市場に進出する ③新規事業の売上が総売上高の10%以上を占める(付加価値額の場合は15%以上) |
事業転換 | 以下の①〜③を満たすこと ①新たな製品・商品・サービスを提供する、または提供方法を大幅に変更する ②新たな市場に進出する ③主要な業種が細分類から大分類レベルで変更となる |
業種転換 | 以下の①〜③を満たすこと ①新たな製品・商品・サービスを提供する、または提供方法を大幅に変更する ②新たな市場に進出する ③主要な業種が中分類から大分類レベルで変更となる |
事業再編 | 補助事業の開始後に会社法上の組織再編を実施し、新たな事業形態で新市場進出(新分野展開、業態転換)、事業転換、業種転換のいずれかに取り組む |
国内回帰 | 海外で製造する製品を国内の拠点で先進性を伴って生産できるように取り組む |
産業構造転換枠を申請するためには、上記(国内回帰はサプライチェーン強靭化枠に申請する事業者のみが該当するため対象外)のいずれかの類型を満たす事業計画を作成する必要があります。
詳しくは公募要領を確認する、または専門家からのアドバイスを受けることがおすすめです。
事業再構築補助金の産業構造転換枠における補助額・補助率
事業再構築補助金の産業構造転換枠における補助額・補助率は、下表のとおりです。
従業員数 | 補助額 | 補助率 |
---|---|---|
20人以下 | 100〜2,000万円 | 中小企業1/2 中堅企業1/3 |
21〜50人 | 100〜4,000万円 | |
51〜100人 | 100〜5,000万円 | |
101人以上 | 100〜7,000万円 |
自社の廃業を伴う場合には、上記の補助額に加えて最大2,000万円が上乗せされます。異なる業種・業態にチャレンジする事業者は、ぜひ活用したい制度と言えます。
事業再構築補助金の産業構造転換枠における補助対象経費
事業再構築補助金の産業構造転換枠において補助対象の経費となるものは、自社事業の拡大につながる事業資産への投資である必要があります。そのため、必要性や金額の妥当性を書類によって証明しなければなりません。また、対象経費は交付決定を受けた日以降に契約、または発注し、補助対象となる事業の実施期間内に支払いを済ませたものが該当します。
対象経費は以下の区分で定められています。
対象経費 | 内容 |
---|---|
建築費 | 補助事業のために使用される事務所や生産設備、加工施設など事業計画の実施に必要と認められる建物の建築・改修に関連する経費 |
機械装置・システム構築費 | 補助事業のために使用される機械装置や専用ソフトウェアなどの購入、改良、据え付け・運搬に関連する経費 |
技術導入費 | 補助事業に取り組むために必要な知的財産権などの導入費 |
専門家経費 | 補助事業に取り組むために依頼した専門家に支払われる経費 |
運搬費 | 運搬料や宅配・郵送料など |
外注費 | 補助事業に必要な加工や設計、検査などの一部を外注する費用 |
知的財産権など関連経費 | 新製品やサービスを開発して事業化する際に必要となる特許権などの知的財産権の取得を弁理士に依頼する費用など |
クラウドサービス利用料 | サーバーの領域を借りる費用や、該当するサービスを利用する費用など |
広告宣伝・販売促進費 | 補助事業で開発する、または提供する商品やサービスの広告宣伝・販売促進に関連する費用など |
研修費 | 補助事業を進めるうえで必要な教育訓練・講座受講などの経費など |
廃業費 | 廃止手続き費や解体費、原状回復費など廃業に関連する費用 |
特に、廃業費は産業構造転換枠のみ申請できる経費です。ただし、複数事業を運営している場合は、そのなかで1つ以上の事業を今後一切、運営しないことが廃業に該当します。
そのため、5店舗運営している事業で1店舗のみを営業停止するなど、事業の一部を運営しないなどは補助対象とならないので注意してください。詳しくは公募要領を確認する、または専門家に相談するとよいでしょう。
そもそも事業再構築補助金とは
事業再構築補助金とは、新型コロナウイルスなどの影響により事業の売上が低迷し、ウィズコロナ・ポストコロナ時代への対応が求められたことで、新しい分野・業態に事業再構築を目指す中小企業などを支援する制度のことです。
令和4年度第2次補正予算で5,800億円が計上されており、新しい事業に取り組むことで売上を回復させたい中小企業者は、ぜひ活用したい制度と言えます。
事業再構築補助金の要件は以下のとおりです。
事業再構築補助金の要件 |
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・事業者自らが作成した事業計画を認定経営革新等支援機関が確認済みである ・対象となる補助事業の終了後、3〜5年で付加価値額の年率平均3〜5%以上を増加させる、または従業員1人あたり付加価値額の年率平均3〜5%以上を増加させる |
なお、第10回公募の事業再構築補助金では、以下の申請枠が用意されています。
- 成長枠
- グリーン成長枠(エントリー、スタンダード)
- サプライチェーン強靭化枠
- 産業構造転換枠
- 物価高騰対策、回復再生応援枠
- 最低賃金枠
すべての申請枠は、上記の要件を満たす必要があります。また、それぞれの申請枠には他にも満たさなければならない要件や、対象となる事業者が決められています。詳しくは公募要領を確認してください。
事業再構築補助金の産業構造転換枠を申請する流れ
事業再構築補助金の産業構造転換枠を申請する流れを紹介します。
なお、申請する前には説明会への参加が必須です。また、採択されたあとにも事務局が実施する説明会へ参加しなければ、交付申請が受け付けられないので注意してください。
説明会のスケジュールは事務局のホームページで確認しておきましょう。
申請要件の確認
まずは、自社の企業規模が申請要件を満たすかを確認しなければなりません。
対象となる中小企業者の業種や資本金、従業員は下表のとおりです。
業種 | 申請要件 |
---|---|
ゴム製品製造業 | 資本金3億円・従業員数900人 |
製造業、建設業、運輸業 | 資本金3億円・従業員数300人 |
ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 資本金3億円・従業員数300人 |
卸売業 | 資本金1億円・従業員数100人 |
旅館業 | 資本金5,000万円・従業員数200人 |
サービス業 | 資本金5,000万円・従業員数100人 |
小売業 | 資本金5,000万円・従業員数50人 |
その他の業種 | 資本金3億円・従業員数300人 |
上記の数字以下となる事業者、または個人事業主が対象となります。ほかにも一般財団法人および一般社団法人などの中小企業者以外の法人や、対象条件を満たす中堅企業が該当します。詳しくは公募要領を確認してください。
GビズIDプライムアカウントの作成
事業再構築補助金の申請は書類を郵送するのではなく、オンライン上で進める電子申請が採用されています。そのため、申請するシステムにログインするためのGビズIDプライムアカウントを取得しなければなりません。
GビズIDプライムアカウントを取得する流れは、以下のとおりです。
- アカウントの申請に必要なもの(SMS受信用のスマートフォン・印鑑証明書・登録印)を用意
- パソコンからgBizIDの公式サイトにアクセスし、gBizIDプライム申請書を作成
- 申請書を印刷、押印
- 作成した申請書と印鑑証明書をGビズID運用センターに郵送
郵送した書類はGビズID運用センターで審査され、承認されればメールで連絡が来ます。なお、GビズIDプライムアカウントを取得するまでには1週間程度かかります。申請を検討している方は早めに手続きを進めるとよいでしょう。
必要書類の準備・申請
事業再構築補助金の産業構造転換枠を申請するためには、以下の書類を準備してください。
- 事業計画書
- 認定経営革新等支援機関および金融機関による確認書
- 決算書
- ミラサポplus「電子申請サポート」の事業財務情報
- 従業員数を示す書類(労働基準法に基づく労働者名簿の写し)
- 市場縮小要件を満たすことを説明する書類
特に、「市場縮小要件を満たすことを説明する書類」は産業構造転換枠のみ必要な書類となります。さらに、廃業を伴う場合は「廃業費を計上することの妥当性を説明する書類」を用意しなければなりません。
必要書類をそろえたら、事業再構築補助金の事務局ホームページから申請してください。
採択後の流れ
自社事業が事業再構築補助金の産業構造転換枠に採択された場合の流れは、以下のとおりに進めていきます。
- 事業再構築補助金の交付申請
- 補助事業の実施
- 実績の報告
- 精算払請求
- 補助金の振り込み
- 事業化状況の報告
注意点として、採択された場合、事業再構築補助金の交付が決定する前に、補助対象となるものを購入した場合は申請金が交付されないことが挙げられます。
なお、上記のスケジュールは第9回公募の内容です。第10回では変更となる可能性もあります。事務局のホームページで確認する、または専門家に相談することをおすすめします。
事業再構築補助金の産業構造転換枠を申請する際のポイント
最後に、事業再構築補助金の産業構造転換枠を申請する際のポイントをまとめるので参考にしてください。
複数回の採択が認められている
事業再構築補助金の産業構造転換枠では、過去に採択された事業者でも再申請が認められています。
条件は以下のとおりです。
- 第1〜9回公募のグリーン成長枠以外で採択を受けた事業者は、第10回公募以降でも申請可能
- 1回目の採択額との差額分が第10回公募以降の補助上限となる
- 採択される上限は2回まで
なお、通常の申請書類に加えて、以下の資料を加えなければなりません。
- 1回目に採択された事業再構築とは、異なる事業再構築であることを示す資料
- 既存の事業再構築に取り組みながら、新たに申請する事業再構築を進められる体制や資金力を示す資料
複数の事業者が連携して申請できる
事業再構築補助金の産業構造転換枠は1つの事業者で申請できますが、最大20者まで連携して申請できます。この場合は、事業再構築要件をそれぞれの事業者が満たさなければならず、それらを示す「連携体各者の事業再構築要件についての説明書類」も用意しなければなりません。
他にもさまざまな要件が定められているので、詳しくは公募要領をチェックする、または認定経営革新等支援機関に相談してください。
申請したすべての経費が補助対象となるわけではない
事業再構築補助金の産業構造転換枠で申請した経費は、事務局などによってその妥当性が審査されます。審査時に対象経費が認められない場合は、申請した経費の一部のみに対して補助金が交付される可能性があることも把握しておきましょう。
事業再構築補助金の産業構造転換枠をお考えなら中小企業支援事務所にご相談を
事業再構築補助金の産業構造転換枠は、廃業に関する費用に対しても補助金が交付されるため、自社事業を再構築したい際にはぜひ活用したい制度と言えます。
ただし、事業計画書は事業者自ら作成したり、産業構造転換枠に必要な書類をそろえたりするなど、専門家のアドバイスなしで準備することは困難な場合が想定されます。
中小企業経営支援事務所(当社)では、事業再構築補助金の産業構造転換枠の申請サポートや、認定支援機関として経営改善計画の策定支援を行っています。
事業再構築補助金の産業構造転換枠の申請が通るための丁寧なアドバイスや、経営者様の想いを汲み取り、金融機関がより納得しやすい事業計画の策定を心がけているので、事業再構築補助金の産業構造転換枠に関してお困りでしたら、ぜひ当社にお問い合わせくださいませ。