事業再構築補助金「サプライチェーン強靱化枠」とは?分かりやすく解説
事業再構築補助金の中でも、最大5億円と大きな補助金額が設定されている「サプライチェーン強靱化枠」。部品の海外生産を国内に切り替える「国内回帰」の要件を満たす、製造業の中小企業等が対象です。
サプライチェーン強靱化枠は要件が他の枠よりも厳しく設定されていることもあり、採択の難易度は高くなると予想されます。
この記事では、事業再構築補助金のサプライチェーン強靱化枠について、経営コンサルタントの中小企業経営支援事務所が分かりやすく解説します。採択率を上げる方法も紹介しますので、サプライチェーン強靱化枠の申請をお考えの経営者様はご一読ください。
なお、当社は相談無料で受け付けております。サプライチェーン強靱化枠についての疑問や、採択にあたってのご相談など、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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もくじ
事業再構築補助金「サプライチェーン強靱化枠」とは
事業再構築補助金とは、新型コロナの影響を乗り越え、社会の変化に対応するために、新分野展開や事業転換に挑戦する中小企業等を支援する補助金です。長期化したコロナ禍により、当面の需要や売上回復が期待しづらい中、中小企業にとってポストコロナ・ウィズコロナ時代に対応できるような事業再構築が重要とされます。
そこで国は、日本経済の構造転換を促すため、新分野展開や事業転換、業種転換などに意欲のある中小企業等の挑戦を支援する「事業再構築補助金」を創出しました。事業再構築補助金には、「成長枠」や「グリーン成長枠」などいくつか種類がありますが、「サプライチェーン強靱化枠」は2023年3月の第10回公募で新設されました。
サプライチェーン強靱化枠は、海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靱化、および地域産業の活性化に取り組む中小企業等を対象とします。
サプライチェーン強靱化枠の概要は、以下の通りです。
補助金額 | 1,000万円~5億円以内 ※建物費を含まない場合は3億円以内 |
補助率 | 中小企業者等:1/2以内 中堅企業等:1/3以内 |
補助事業実施期間 | 交付決定日~28か月以内 ※採択発表日から30か月後の日まで |
スケジュール | 【第10回公募】 公募開始:令和5年3月30日 申請受付:令和5年6月9日 応募締切:令和5年6月30日 補助金交付候補者の採択発表:令和5年8月下旬~9月上旬頃 【第11回公募】 サプライチェーン強靱化枠の公募はありません |
対象業種 | 製造業 |
対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費 |
対象業種が製造業に限られ、補助金額が最大で5億円と高額である点が特徴です。補助対象となる経費は建物費と機械装置・システム構築費の2つであり、「生産のための機械装置の導入」が必須となります。
事業再構築指針(国内回帰)の要件を満たす例
事業再構築補助金を受けるためには、事業再構築補助金の支援の対象を明確化した「事業再構築指針」に適合しなければなりません。サプライチェーン強靱化枠は、中でも「国内回帰」の類型に該当する事業計画を策定する必要があります。
国内回帰の要件は、以下の3点です。
- 海外製造等要件
- 導入設備の先進性要件
- 新事業売上高10%等要件
「海外製造等要件」を満たすものとして、経済産業省が例示しているのは以下のようなケースです。
ケース1:国内生産に切り替え
空調機器関連の大企業(取引先)が、部品の国内調達を強化するため、国内事業者(申請者)に増産を要請
↓
依頼を受けた中堅企業(申請者)が、これまで海外生産していた関連部品について国内回帰(国内生産拠点を強化)する場合
ケース2:国内生産拠点を新設
半導体製造装置関連の大企業(取引先)が、海外サプライチェーンを見直し、従来海外の取引先に依頼していた部品を国内調達に切り替えるため、国内事業者(申請者)に生産を要請
↓
依頼を受けた中小企業(申請者)が、新たに日本国内に生産拠点を新設する場合
どちらのケースも海外生産から国内生産への切り替えが行われるため、国内サプライチェーンの強靱化に寄与します。なお、これらの「海外製造等要件」を満たした上で、以下の2つの要件も満たす必要があります。
- 導入設備の先進性要件…導入する全ての設備が特注品、またはメーカーの最新カタログに掲載されているものであることを示す
- 新事業売上高10%等要件…3年間の事業計画期間終了後、国内回帰した関連部品が総売上高の10%(または総付加価値額の15%)以上を占める計画を策定する
(参考:事業再構築補助金 令和4年度第二次補正予算【サプライチェーン強靱化枠】の概要)
サプライチェーン強靱化枠の申請要件
サプライチェーン強靱化枠の補助対象事業の要件は、以下の9つです。
①事業再構築要件
事業再構築要件 | 事業再構築指針に示す「事業再構築(国内回帰)」の定義に該当する事業であること |
サプライチェーン強靱化枠に応募できる事業再構築の類型は、国内回帰のみです。事業計画において、「海外製造等要件」「導入設備の先進性要件」「新事業売上高10%等要件」の3つの要件が必須となります。
②認定支援機関要件
認定支援機関要件 | 事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けていること |
事業計画は認定経営革新等支援機関と相談し、確認を受けたものでなければなりません。
補助金額が3,000万円を超える事業計画は、金融機関および認定経営革新等支援機関による確認が必要です。ただし、金融機関が認定経営革新等支援機関である場合は、当該金融機関のみでも可とされます。
③付加価値額要件
付加価値額要件 | 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均5.0%以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均5.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること |
付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものです。
④国内増産要請要件
国内増産要請要件 | 取引先から国内での生産(増産)要請があること(事業完了後、具体的な商談が進む予定があるもの) |
サプライチェーン強靱化枠では、増産した部品等のニーズがあるかどうかを書面で示す必要があります。
⑤市場拡大要件
市場拡大要件 | 取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること |
サプライチェーン強靱化枠を受け取るには、事業が事務局の指定した「市場規模が10%以上拡大する業種・業態」に属していることが必要です。対象となる業種・業態は、こちらをご覧ください。
⑥デジタル要件
デジタル要件 | 下記の要件をいずれも満たしていること (1)経済産業省が公開するDX推進指標を活用し、自己診断を実施し、結果を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対して提出していること (2)IPAが実施する「SECURITY ACTION」の「★★二つ星」の宣言を行っていること |
自社のデジタルセキュリティの自己診断や、情報セキュリティ対策への取り組みの自己宣言が不可欠です。経済産業省のDX推進指標についてはこちらを、IPAのSECURITY ACTIONについてはこちらをご覧ください。
⑦事業場内最低賃金要件
事業場内最低賃金要件 | 交付決定時点で、設備投資する事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高いこと。ただし、新規立地の場合は、当該新事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高くなる雇用計画を示すこと |
最低賃金については、厚生労働省の地域別最低賃金額を参考にしてください。
⑧給与総額増加要件
給与総額増加要件 | 事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること |
応募時に賃金引き上げ計画の誓約書が必須です。正当な理由なく、上記の水準に達していなかった場合は事業者名が公表されるため注意しましょう。
⑨パートナーシップ構築宣言要件
パートナーシップ構築宣言要件 | 「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにて、宣言を公表していること |
パートナーシップ構築宣言とは、サプライチェーンの取引先や価値創造を図る事業者の連携や共存共栄を進めるものです。サプライチェーン強靱化枠では、パートナーシップ構築宣言ポータルサイトでの宣言の公表が必要とされます。
なお、第1回~第9回公募で補助金交付候補者として採択されている、または交付決定を受けている場合は、以下の2つの要件も必要です。
⑩別事業要件
別事業要件 | 既に事業再構築補助金で取り組んでいる又は取り組む予定の補助事業とは異なる事業内容であること |
⑪能力評価要件
能力評価要件 | 既存の事業再構築を行いながら新たに取り組む事業再構築を行うだけの体制や資金力があること |
(参考:事業再構築補助金 【サプライチェーン強靱化枠】 公募要領 (第10回))
サプライチェーン強靱化枠は、他の枠と比べ厳しい要件が設定されています。
例えば、③の【付加価値額要件】は「付加価値額の年率平均5.0%以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均5.0%以上増加」と設定されています。一方、「成長枠」において付加価値額要件は4.0%であるため、サプライチェーン強靱化枠の要件は厳しいといえるでしょう。
サプライチェーン強靱化枠を受け取るまでの流れ
サプライチェーン強靱化枠の申請から受け取りまでの大まかな流れは、以下のとおりです。
- 事業再構築補助金の公募が開始される
- 事業計画書を作成する
- 必要書類を準備する(事業計画書のほか、研究開発・技術開発計画書または人材育成計画書、別事業案件および能力評価要件の説明書など)
- GビズIDを取得する
- 電子申請項目を入力する
- 電子申請をする
- 採択が発表される
- 交付申請をする
- 交付が決定される(補助金額の確定)
- 補助事業実績を報告する
- 確定検査が行われる(補助金交付額の決定)
- 補助金を請求する
- 補助金を受け取る
なお、事業終了後(補助事業実績報告後)、5年間にわたって事業化状況報告・知的財産権等報告を行う必要があります。
サプライチェーン強靱化枠の採択率を上げるには
サプライチェーン強靱化枠の要件をチェックして、採択されるのは難しいのではとお考えの方もいるかもしれません。
サプライチェーン強靱化枠の採択率を上げるためには、何よりも説得力のある事業計画書の作成が重要です。そのためには、優良な認定経営革新等支援機関を選びましょう。
認定経営革新等支援機関とは、中小企業支援に関する専門知識や実務経験が一定レベル以上にあると国から認定された機関です。
そもそも事業再構築補助金は、「事業計画書を認定経営革新等支援機関等と共同で作成すること」が要件として付されています。パートナーである認定経営革新等支援機関選びで、採択されるかどうかが左右されるといってもよいでしょう。
事業再構築補助金の採択率を上げる方法については、「事業再構築補助金の採択率を上げる方法5つ!事業計画書の作成手順も解説」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
サプライチェーン強靱化枠の採択をお考えなら、中小企業支援事務所にご相談を
サプライチェーン強靱化枠は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代に対応すべく事業を再構築する中小企業を支援する補助金です。サプライチェーン強靱化枠は他の枠と比べ、補助金額が大きいこともあり厳しい要件が課されています。採択される難易度も高いと予想されるため、優良な認定経営革新等支援機関を選ぶことが重要です。
当社は、事業再構築補助金を熟知した中小企業診断士やコンサルタントが複数名在籍し、貴社の事業計画書を徹底的にブラッシュアップします。国家資格の中小企業診断士が対応し、2020年度~2022年度の補助金の採択率は100%と全国トップレベルです。
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