ものづくり補助金の事例からみる「採択される事業計画書」の書き方
革新的な新製品・新サービス開発のために設備投資を行う中小企業を支援する「ものづくり補助金」。採択されるためには、設備投資の必要性や補助事業がもたらす効果を事業計画書に分かりやすく記載しなければなりません。
この記事では、ものづくり補助金の申請事例からみた「採択される事業計画書」の書き方を、ものづくり補助金の採択実績100%(*1)を誇る中小企業経営支援事務所が解説します。
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*1:2021~2023年において
ものづくり補助金の基本情報
ものづくり補助金とは、中小企業・小規模事業者が「新製品・新サービスの開発や生産プロセスの改善」のために行う設備投資を支援する制度です。
16次締切においては、以下のように申請枠が5つ用意されています。
申請枠 | 補助金額 | 補助率 |
通常枠 | 従業員数5人以下:100万円~750万円 6人~20人:100万円~1,000万円 21人以上 :100万円~1,250万円 | 1/2 小規模企業者・小規模事業者、再生事業者は2/3 |
回復型賃上げ・雇用拡大枠 | 2/3 | |
デジタル枠 | 2/3 | |
グリーン枠 | 【エントリー類型】 従業員数5人以下:100万円~750万円 6人~20人:100万円~1,000万円 21人以上:100万円~1,250万円 【スタンダード類型】 従業員数5人以下:750万円~1,000万円 6人~20人:1,000万円~1,500万円 21人以上:1,250万円~2,000万円 【アドバンス類型】 従業員数5人以下:1,000万円~2,000万円 6人~20人:1,500万円~3,000万円 21人以上:2,000万円~4,000万円 | 2/3 |
グローバル市場開拓枠 | 100万円~3,000万円 | 1/2 小規模企業者・小規模事業者は2/3 |
(参照元:全国中小企業団体中央会「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(16次締切分)2.0版」)
2023年(令和5年)4月19日から7月28日までに公募が行われた15次締切では、5,694の申請者から2,861者が採択されました。
ものづくり補助金の過去3回の公募の採択率は以下のとおり50%台で推移しています。
締切回 | 15次締切 | 14次締切 | 13次締切 |
採択率 | 50.2% | 50.8% | 一般型:58.4% グローバル展開型:39.3% |
(参照元:採択結果|ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト)
およそ半数の事業者が不採択となる比較的難易度の高い補助金といえるでしょう。
ものづくり補助金の申請書類
ものづくり補助金の申請は、「ものづくり補助金総合サイト」の電子申請システムで行います。
ものづくり補助金総合サイトでは、電子申請システムに入力する項目や内容がまとめられた「参考様式 事業計画書 記載項目(16次締切分)」というWordファイルが配布されています。まずこちらに目を通し、どのような項目や書類が求められるのか把握しておきましょう。
ものづくり補助金の申請に必要な添付書類は、以下のとおりです。
- 事業計画書
- 補助経費に関する誓約書【様式1】
- 賃金引上げ計画の誓約書【様式2】
- 決算書等
- 従業員数の確認資料
- 労働者名簿
その他、申請枠や各事業者の状況によっては以下の書類が必要です。
- 応募申請時において再生事業者であることを証明する書類(再生事業者のみ)
- 課税所得の状況を示す確定申告書類(回復型賃上げ・雇用拡大枠のみ)
- 炭素生産性向上計画及び温室効果ガス排出削減の取組状況【様式3】(グリーン枠のみ)
- 大幅な賃上げ計画書【様式4】(大幅な賃上げを行う事業者のみ)
- 海外事業の準備状況を示す書類(グローバル市場開拓枠のみ)
事業計画書はWordなどで作成し、PDF形式に変換したファイルを電子申請システムの所定の場所に添付して申請します。
事業計画書に様式はなく、以下の内容を計10ページ以内で作成するように求められています。
- その1:補助事業の具体的取組内容
- その2:将来の展望
- その3:事業計画における付加価値額等の算出根拠
- 海外事業の準備状況を示す内容:グローバル市場開拓の専門性について(グローバル市場開拓枠のみ)
補助経費に関する誓約書【様式1】や賃金引上げ計画の誓約書【様式2】は、ものづくり補助金総合サイトで配布されているため、ダウンロードして作成してください。
ものづくり補助金の事業計画書の審査項目
ものづくり補助金の事業計画書は、公募要領で公表されている以下の4つの審査項目をすべて満たす必要があります。
- 補助対象事業としての適格性
- 技術面
- 事業化面
- 政策面
また、グリーン枠やグローバル市場開拓枠、大幅な賃上げに係る補助上限額引上げの特例に申請する場合は、上記以外の審査項目が存在するため、公募要領で確認しましょう。
それぞれの審査項目の具体的な内容は以下のとおりです。
審査項目 | 内容 |
補助対象事業としての適格性 | 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加 事業計画期間において、事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を、毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準とする 事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加 |
技術面 | 新商品・新サービスの革新的な開発であるか 補助事業実施のための技術的能力が備わっているか など |
事業化面 | 補助事業実施のための社内外の体制から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか 補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か など |
政策面 | 地域の経済成長を牽引する事業となることが期待できるか ニッチ分野において差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか など |
審査員が重視するポイントを把握し、審査員目線を意識した事業計画書の作成が採択への第一歩といえます。
ものづくり補助金の加点項目
ものづくり補助金には、必須ではありませんが申請しておくと有利になる「加点項目」があります。
16次締切で公表されている加点項目は、以下の5つです。
加点項目 | 内容 |
成長性加点 | 有効な期間の経営革新計画の承認を取得した事業者 |
政策加点 | 創業・第二創業後間もない事業者(5年以内) パートナーシップ構築宣言を行っている事業者 再生事業者 など |
災害等加点 | 有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者 |
賃上げ加点 | 事業計画期間における給与支給総額と事業場内最低賃金を増加させる計画を有し、事務局に誓約書を提出している事業者 など |
女性活躍等の推進の取り組み加点 | 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく「えるぼし認定」を受けている事業者 など |
それぞれの加点項目で求められている追加書類を提出したり、各種宣言や計画を公表していたりする事業者は加点が受けられるため、ぜひともチェックしておきましょう。
災害等加点が受けられる「事業継続力強化計画」については、「事業継続力強化計画とは?策定のメリットや申請方法を分かりやすく解説」で紹介しています。
なお、加点項目は年度や公募回により内容が異なります。応募する際は必ず最新の公募要領を確認してください。
【事例からみる】ものづくり補助金の事業計画書の書き方
ものづくり補助金は、申請書の表面的な形式を整えただけで採択されるものではありません。自社の強みを整理し、設備投資によって独自性や革新性を高めていく方法や、他社と差別化する方法を事業計画書で伝える必要があります。
ここでは、実際にものづくり補助金に採択された事業者が、どのように工夫して事業計画書を作成したのか、中小企業向け補助金・総合支援サイト「ミラサポplus」で紹介されている事例から読み解きます。
全体のポイント①自社のこだわりとビジョンを明確にする
静岡県のミニトマト農家である松下農園は、「環境制御システム導入による高糖度ミニトマトの生産効率向上への挑戦」事業でものづくり補助金の採択を受けました。
よろず支援拠点のコーディネーターと話をしていくうちに、勘や経験を可能な限り排除し、客観的なデータに基づきミニトマトを栽培する「植物工場」という同社のビジョンが明確になっていきます。
この革新的なビジョンを基にストーリーを構築し、以下のような事業計画書を作成しました。
▼実際の事業計画書

(引用:補助金の申請事例・ものづくり補助金① | 経済産業省 中小企業庁)
全体のポイント②地域貢献面をアピールする
静岡県のパン製造販売会社である福田製パン合資会社は、「焼きたてパンの納入及びアレルギー対応パンや地元産品を使ったパンの開発」事業でものづくり補助金の採択を受けました。
同社は事業計画書の中で、地域企業が学校給食から撤退しつつある状況や、アレルギー対応パンを製造する事業者が少ないことを説明しています。その上で、児童や生徒に寄り添った給食の提供を企業の社会的な責任と捉えていると記載しました。
同社の学校給食への取り組みは、ものづくり補助金の審査項目である「政策面」にも合致しています。
▼実際の事業計画書

(引用:補助金の申請事例・ものづくり補助金③ ~ アレルギーに対応した給食用パンの製造 ~ | 経済産業省 中小企業庁)
全体のポイント③専門性・新規性の高い技術を分かりやすく説明する
静岡県のベンチャー企業である西光エンジニアリング株式会社は、「量産用CNF(セルロースナノファイバー)濃縮装置の開発」事業でものづくり補助金の採択を受けました。
同社は事業の核となるCNFについて理解してもらうために、専門用語を避け、専門性の高い部分は注釈をつけるなどして事業計画書に説明を記載します。
また、「解決すべき課題」を説明する部分では、「顧客からの要望、課題」という項目をつくり、顧客の具体的な要望・ニーズを記載し、分かりやすくなるように努めました。
▼実際の事業計画書

(引用:補助金の申請事例・ものづくり補助金② ~独自技術を活用した試作機の開発事例~ | 経済産業省 中小企業庁)
その1:補助事業の具体的取組内容のポイント①補助事業が課題解決につながることを説明する
大阪府の福地金属株式会社は、「金型の内製化により、冷間鍛造部品の短納期、低コストでの開発力を強化する」という事業でものづくり補助金の採択を受けました。
同社は、大企業が苦手とする小ロット・短納期の実現を課題とし、そのためには金型を内製化できるマシニングセンターの導入が必要であることを、グラフや表で丁寧に説明しました。
▼実際の事業計画書

(引用:「補助金の申請事例・ものづくり補助金⑤」 ~ マシニングセンター導入により、小ロット・短納期を実現~ | 経済産業省 中小企業庁)
その1:補助事業の具体的取組内容のポイント②客観的な数値で課題の解説策を示す
前述の松下農園は、日照や温度、湿度、CO2などの栽培データを用いて、設備導入後のデータと比較したグラフで事業効果を説明しました。
説得力のある客観的な数値で、設備導入によりどのような効果が見込めるかを丁寧に記載しています。
▼実際の事業計画書

(引用:補助金の申請事例・ものづくり補助金① | 経済産業省 中小企業庁)
その2:将来の展望のポイント①具体的なターゲット顧客や商談状況を記載する
事業計画書の「その2:将来の展望」では、事業のユーザーやマーケットについて記載する必要があります。
西光エンジニアリングは販売先を事前に想定し、「具体的なターゲット顧客」の項目を設けて、「想定顧客との現時点の商談状況」を記載し、誰に売るのかという顧客像を明確にしました。
▼実際の事業計画書

(引用:補助金の申請事例・ものづくり補助金② ~独自技術を活用した試作機の開発事例~ | 経済産業省 中小企業庁)
その2:将来の展望のポイント②相乗効果による売上増を強調する
高知県の養鶏農場であるヤマサキ農場は、「「ゆずたま」を使用した焼き菓子の種類を増やし製造能力、安全向上能力の向上」事業でものづくり補助金の採択を受けました。
ゆずたまはゆずの香りがする卵です。同社は関連商品であるゆずたまを使った焼き菓子をゆずたまと一緒に販売し、効率的に売上増が期待できることをアピールします。
また、今まで取引のなかった菓子問屋などへ販路を拡大できる点も記載し、売上増につながる具体的なイメージが伝わるようにしました。
▼実際の事業計画書

(引用:「補助金の申請事例・ものづくり補助金④」 ~ オリジナル卵「ゆずたま」の焼き菓子で、販路を拡大 ~ | 経済産業省 中小企業庁)
ものづくり補助金の事業計画書の作成には専門家の視点を取り入れよう
ものづくり補助金は、採択率約50%と比較的難易度の高い補助金です。狭い門をくぐり採択を勝ち取るためには、自社の強みを審査員に分かりやすく説明する、完成度の高い事業計画書が必要不可欠です。
自社の強みや差別化ポイントは、支援機関など外部の専門家から見たほうが見つかりやすい場合があります。
当社・中小企業経営支援事務所は、不採択になってしまった事業者様を採択に導いた実績も多数ございます。ものづくり補助金の申請をお考えの経営者様は、実績豊富な当社までぜひお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。
お問い合わせ先:https://www.sme-support.co.jp/contact/