パートナーシップ構築宣言のメリット・デメリットをわかりやすく解説
パートナーシップ構築宣言という言葉を最近よく目にするけれど、具体的にどのようなメリットがあるのか分からず実践していないという企業も多いのではないでしょうか。
パートナーシップ構築宣言は、企業が発注者の立場で、発注先の企業と良好な関係を築くことを目的とした取り組みです。パートナーシップ構築宣言を行うと、一部の補助金で加点措置が受けられる点も大きなメリットといえます。
この記事では、パートナーシップ構築宣言の概要や事例、メリット・デメリットを経営コンサルタントの中小企業経営支援事務所が解説します。
パートナーシップ構築宣言が加点措置の対象である「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」への申請をお考えの中小企業の経営者様は、ぜひお気軽に当社までご相談ください。初回相談は無料です。
お問い合わせ先:https://www.sme-support.co.jp/contact/
もくじ
パートナーシップ構築宣言とは

パートナーシップ構築宣言とは、取引先との共存共栄関係を築くために、企業が「発注者」の立場で自社の取引方針を宣言する取り組みです。パートナーシップ構築宣言は、企業規模にかかわらず発注者側である企業を対象とします。
これまで、大企業と中小企業の関係は、立場の弱い下請けと呼ばれる中小企業が不利益を被る場合が多いものでした。パートナーシップ構築宣言はこのような状況を打開し、下請け企業が不利益を被ることなく、発注元である取引先と良好な関係を築くことを目的とします。
発注元の企業がパートナーシップ構築宣言を行うことで、発注先の企業と宣言の内容に沿った取引を行います。
パートナーシップ構築宣言企業の事例

パートナーシップ構築宣言の登録企業数は、2023年12月6日時点で37,673社です。
(参照:「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイト「登録企業リスト」)
その中でも、優秀な取り組みが中小企業庁の「パートナーシップ構築宣言取り組み事例集」で紹介されています。ここでは、事例集から2社の取り組みを抜粋して紹介します。
花王株式会社
花王は、サプライヤー(仕入れ先、納入業者)に対して、CDPサプライチェーンプログラムやSedexという国際的な環境や安全衛生の評価枠組みの調査回答を促し、結果に独自の工夫を加えて分かりやすくフィードバックを行っています。
この取り組みで、パートナーシップ構築対象2022経済産業大臣賞を受賞しました。
CDPサプライチェーンプログラムやSedexは国際的な評価枠組みではありますが、結果が理解しにくいものであるという問題点があります。そこで、花王は問題点の見える化や独自の評価ステップの設定などで、サプライヤーの中小企業が改善を行いやすいようにフィードバックしています。
結果として、サプライヤーの環境活動レベルやESGマネジメントレベルの向上が続いているとのことです。
(参照:中小企業庁「パートナーシップ構築宣言の 実施状況と今後の取組」)
株式会社日立システムズ
日立システムズはパートナー企業と事業方針を共有し、パートナー企業の人財育成と事業強化を行い、デジタル分野事業の拡大に努める取り組みでパートナーシップ構築大賞2022中小企業庁長官賞を受賞しました。
パートナー企業からの情報提供で人財のスキルマップを作成し、自社のプロジェクト情報と組み合わせて事業と人財をマッチングする「人財マッチング」を推進しています。
この人材マッチングは、受注機会や従業員の学びの機会を求めるパートナー企業と、多くの幅広い案件への対応やパートナー企業の専門性・多様性を求める同社をマッチさせられる相互補完の取り組みです。
(参照:中小企業庁「パートナーシップ構築宣言の 実施状況と今後の取組」)
パートナーシップ構築宣言のメリット

パートナーシップ構築宣言を行うことで、サプライチェーン全体で適正な取引が促され、それぞれの企業の成長や業績向上が期待できます。その他にも、パートナーシップ構築宣言の主なメリットは以下の5つです。
下請け企業と信頼関係を築ける
パートナーシップ構築宣言を行った企業は、発注先の企業に対して、宣言に沿った(具体的には下請中小企業振興法に基づく「振興基準」に沿った)取引を行います。
振興基準とは、下請けの中小企業の振興を図るため、下請事業者と親事業者の望ましい取引関係を定めたものです。振興基準は、具体的に以下のような内容を定めています。
- 親事業者と下請事業者はイコールパートナーであり、適正な取引を進め、サプライチェーン全体の共存共栄を目指すことが求められる
- 下請事業者の経営を安定させるため、親事業者にはできる限り長期的な見通しのきく発注分野の提示が求められる
- 下請事業者に無理なしわ寄せをしないため、親事業者には納期や納入頻度の適正化が求める など
(参照:経済産業省・中小企業庁「下請中小企業振興法 振興基準ガイドブック」)
パートナーシップ構築宣言は企業のトップが署名するため、会社全体で宣言を遵守しようという意識が働くと期待できるでしょう。結果として、下請け企業は安心して取引できるようになり、信頼関係を築くことができます。
宣言がポータルサイトに掲載される
パートナーシップ構築宣言を行うと、公式ポータルサイトに企業名と宣言の内容が掲載され、取り組みを周知できます。
「下請け企業に不利益のない取引を行う」という姿勢は、取引先や消費者によいイメージを与え、ホワイト企業であることのアピールにつながるでしょう。
ロゴマークを使ってアピールできる
パートナーシップ構築宣言を行った企業は、ロゴマークの使用が許可されます。
名刺やパンフレットなどにロゴマークを使用することで、取引先との共存共栄関係を目指すホワイト企業であるとPR可能です。
補助金で加点措置が受けられる
国が実施する補助金で、パートナーシップ構築宣言を行っていることが加点要素になる場合があります。代表的なものは、「ものづくり補助金」と「事業再構築補助金」です。
ものづくり補助金では加点項目の②政策加点に、②-2:「パートナーシップ構築宣言を行っている事業者」が加点の対象であると記載されています。
(参照:ものづくり・商業・サービス補助金事務局(全国中小企業団体中央会)「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(16次締切分)」
また、事業再構築補助金は、成長枠とグリーン成長枠において、パートナーシップ構築宣言を行っている事業者が加点対象です。
(参照:事業再構築補助金事務局「事業再構築補助金 公募要領(第11回)」)
その他にも、以下の補助金でパートナーシップ構築宣言を行っていることが加点措置とされたことがあります。
- 伝統的工芸品産業支援補助金
- アジア等ゼロエミッション化人材育成等事業
- 技術協力活用型・新興国市場開拓事業(研修・専門家派遣・寄附講座開設事業)
- 令和5年度需要家主導太陽光発電導入支援事業
- 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金 など
補助金の加点措置については、募集回により内容が変更される可能性があるため、最新の公募要領をご確認ください。
SDGsの達成につながる
パートナーシップ構築宣言を行うと、SDGsの以下の6つの目標に取り組んでいるとみなされます。
- 目標3:すべての人に健康と福祉を
- 目標8:働きがいも経済成長も
- 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
- 目標10:人や国の不平等をなくそう
- 目標13:気候変動に具体的な対策を
- 目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
SDGsに取り組むことは、古い企業体質を改善するきっかけになると同時に、企業のイメージアップにもつながります。
パートナーシップ構築宣言のデメリット

ここまでパートナーシップ構築宣言のメリットを紹介しましたが、宣言にデメリットはないのか気になる方もいることでしょう。
パートナーシップ構築宣言のデメリットは基本ありませんが、強いて言えば下請中小企業振興法の「振興基準」を守らなければならなくなるという点が挙げられます。
パートナーシップ構築宣言は自主的な取り組みであるため、公的機関による強制的な調査や違反時の罰則などはありません。しかし、主務大臣から振興基準に基づき指導や助言が行われた場合など、パートナーシップ構築宣言が履行されていないと認められる場合は、ポータルサイトでの宣言の掲載が取り止めになります。
パートナーシップ構築宣言を行う手順

パートナーシップ構築宣言を行うための手続きは、難しいものではないため、自社で完結できます。以下のステップで登録してみてください。
- ポータルサイトからひな形をダウンロードする
- 自社の取り組み内容にあわせて宣言文を加筆・修正する
- ポータルサイトにPDF形式に変換した宣言文をアップロードする
- 問題がなければ宣言が公開される
ポータルサイトでは、Word形式でパートナーシップ構築宣言のひな形が配布されています。まずひな形をダウンロードし、記載見本や記載要領を参考にしながら、自社の取り組みにあわせて宣言文を編集しましょう。どのように書けばよいか分からない場合は、ポータルサイトの登録企業リストに載っている他社の宣言を参考にしてもよいかもしれません。
完成した宣言文はPDF形式に変換し、自社の情報とともにポータルサイトの登録ページからアップロードします。事務局が内容を確認し、ポータルサイトに会社名と宣言文が公開されたら、パートナーシップ構築宣言のロゴマークが使えるようになります。
パートナーシップ構築宣言を補助金の加点につなげよう!
パートナーシップ構築宣言は、企業規模にかかわらず、企業が発注者の立場で自社の取引方針を宣言する取り組みです。下請け企業が不利益を被ることをなくし、取引先との共存共栄関係を築くことを目的としています。
パートナーシップ構築宣言を行うと、企業名がポータルサイトに公開されたり、ロゴマークが使用できたりすることで、取引先との対等な関係を重んじるホワイト企業であるとアピールできます。
また、パートナーシップ構築宣言を行っていることは、ものづくり補助金や事業再構築補助金などの補助金の加点措置の対象です。採択に有利に働き、手続きも難しくないため、ものづくり補助金や事業再構築補助金の申請をお考えの企業様は、パートナーシップ構築宣言を行っておくことをおすすめします。
当社・中小企業経営支援事務所はものづくり補助金や事業再構築補助金の申請サポートを行う経営コンサルタントです。精度の高い事業計画で、ものづくり補助金で100%(*1)、事業再構築補助金で97%(*2)の採択率を誇ります。
パートナーシップ構築宣言を行い、ものづくり補助金や事業再構築補助金の加点につなげようとお考えの中小企業の経営者様は、補助金の採択を勝ち取るためにぜひ当社にご相談ください。初回相談は無料で承ります。
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*1:2020年度~2023年度において
*2:2021年~2023年において