省エネ設備等導入支援事業は令和5年度補正予算でどうなる?
省エネ設備等導入支援事業は、宿泊施設や観光施設に、空調やボイラー、節水トイレなどの省エネ設備を導入する際に活用できる観光庁の補助金です。令和5年度は、4月と6月に公募が行われました。令和6年度も制度の一部を変更し、引き続き実施される見込みです。
この記事では、令和5年度の省エネ設備等導入支援事業の内容と、令和6年度の見通しを経営コンサルタントの中小企業経営支援事務所が解説します。令和6年度に、省エネ設備等導入支援事業への申請をお考えの宿泊事業者様は、ぜひ最後までご覧ください。
当社は各種補助金の申請サポートを行っております。初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
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もくじ
省エネ設備等導入支援事業とは
観光庁の「省エネ設備等導入支援事業」は、宿泊施設や観光施設が、省エネ型の空調やボイラー、節水トイレなどの省エネ設備の導入を支援する補助金です。
国内旅行に続いて、インバウンド旅行客も回復しつつある状況の中、インバウンドの本格化に備え、宿泊施設や観光施設のサステナビリティ向上への取り組みを促進することを目的としています。
省エネ設備等導入支援事業は、令和5年度は4月に公募があったほか、6月に追加公募があり、あわせて2回の申請のチャンスがありました。令和6年度については、いつごろ公募が始まるかなどの詳細はまだ明らかになっていません。(2024年1月15日現在)
令和5年度の省エネ設備等導入支援事業の内容
令和6年度に省エネ設備等導入支援事業への申請をお考えの方の参考のために、令和5年度の省エネ設備等導入支援事業の概要を紹介します。
省エネ設備等導入支援事業の補助対象事業者
省エネ設備等導入支援事業の対象事業者は、以下の条件を満たす宿泊事業者と観光施設です。
引用:令和5年度(令和4年度第2次補正予算)観光庁 省エネ設備等導入支援事業
宿泊事業者 宿泊事業者(※)※旅館業法(昭和23年法律第138号)第3条第1項に規定する許可を受けた者とします。
ただし、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条第6項に規定する店舗型性風俗特殊営業を営む者を除きます。
以下のいずれかに該当する事業者が、本事業に申請可能です。
●「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドラインに基づく登録制度」の登録又は登録申請済の事業者
●有価証券報告書の提出会社又はその子会社及び関連会社であり、かつ観光施設における心のバリアフリー認定制度の認定を取得済み又は1年以内に取得予定である事業者観光施設等 観光施設等(※)の設置・管理者等
※旅行者が毎年一定数訪れている又は訪れると推定される以下のものとします。
・由緒があり建築的に優れている、文化財を所蔵・附帯している、又は境内(庭園を含む。)が優れている神社、寺院、又は教会
・古代から近世に至る軍事や行政府等としての目的で建造された城跡、城郭、又は宮殿
・動植物を飼育し展示している動植物園又は水族館
・歴史的資料、科学的資料、又は美術作品を展示している博物館又は美術館
・特徴的な概念(テーマ)を表現し、体験するために作られたテーマ施設
・「外国人観光案内所の設置・運営のあり方指針」(令和5年3月改訂)に基づき、当該年度における補助事業実施対象期間において、日本政府観光局により、認定されている又は認定の見込みがある案内所・国土交通省により登録されている「道の駅」、「みなとオアシス」等
上記以外で旅行者の利用が見込まれる施設等
事業の対象となるのは、旅館業法の許可を受けており、「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドラインに基づく登録制度」に登録している、あるいは「観光施設における心のバリアフリー認定制度」の認定を取得済みの宿泊事業者です。ただし、特定の性風俗関連事業を行う者は除外されています。
観光施設では、旅行者が毎年一定数訪れている、または訪れると推定される施設が対象です。
省エネ設備等導入支援事業の補助上限額・補助率
省エネ設備等導入支援事業の補助上限額と補助率は、以下のとおりです。
補助上限額 | 1,000万円 |
補助率 | 1/2 |
省エネ設備等導入支援事業の補助対象経費
省エネ設備等導入支援事業において補助対象となる経費は、省エネ対策に資する以下のような設備・備品です。
引用:令和5年度(令和4年度第2次補正予算)観光庁 省エネ設備等導入支援事業
- 省エネ型空調
- 省エネ型ボイラー・配管等
- 二重サッシ等
- 太陽光発電、蓄電設備
- 節水トイレ等
- 照明機器
- その他省エネ対策に必要な設備・備品
なお、上記の設備・備品を購入する、あるいは設置する際にかかる経費も対象経費に含まれます。
省エネ設備等導入支援事業の補助対象外経費
省エネ設備等導入支援事業の補助対象外となる経費は、以下のとおりです。
引用:令和5年度(令和4年度第2次補正予算)観光庁 省エネ設備等導入支援事業
- 本事業に直接関係のない経費
- 交付決定前に発生した経費
- 事業者における経常的な経費(光熱水費、通信料、仲介手数料、保証金、リース料等)
- 躯体の新設工事
- 本事業における資金調達に必要となった利子
- 法令又は条例等において義務化されている設備等の新規導入に係る工事費
- 同一事業の経費において、国(独立行政法人含む)より別途補助金が支給されている場合
- 恒久的な施設の設置、用地取得等、本事業の範囲に含まれ得ない経費
- 振込手数料
補助対象の設備や備品であっても、交付決定前に導入してしまうと補助対象外となるため、注意が必要です。
省エネ設備等導入支援事業のスケジュール
省エネ設備等導入支援事業の令和5年度の申請スケジュールは、以下のとおりでした。
令和5年度初回公募 | マイページの新規登録:令和5年4月21日(金)9:30 申請手続き(マイページのログイン):令和5年4月24日(月)9:30 受付締切:令和5年5月24日(水)17:00 |
令和5年度追加公募 | マイページの新規登録:令和5年6月26日(月)9:30 申請手続き(マイページのログイン):令和5年7月3日(月)9:30 受付締切:令和5年8月2日(水)17:00 |
令和6年度も追加公募があるかはわからないため、初回の応募に間に合うよう準備を進めておきましょう。
省エネ設備等導入支援事業の流れ
省エネ設備等導入支援事業は、基本的に特設Webサイト内のシステムで電子申請します。
申請から補助金受け取りまでの流れは、以下のとおりです。
- 特設Webサイトにマイページを登録
- マイページ内で事業者情報を登録
- 申請ページからシステムに入力して申請
- 採択内示通知
- 交付申請書の提出
- 交付決定
- 事業の実施
- 完了実績報告・精算書類の提出
- 精算
必要書類は、以下の7点です。
事業計画書 | 様式1 |
費用積算書 | 様式2 |
整備箇所写真 | 任意様式 |
図面 | 任意様式 |
見積書(2者以上) | 任意様式 |
カタログ | 導入を予定している設備・備品等のカタログで、省エネ効果が明示されているもの |
有価証券報告書等(※宿泊事業者のみ) | 任意様式 |
これらの書類は、WordやExcelで作成して添付する形式ではなく、システムに情報を直接入力したり、写真をPDFにまとめたものを添付したりして提出します。
令和5年度は、特設サイトに入力内容をまとめた参考資料となるExcelファイルが掲載されました。令和6年度も同様のものがあれば、ぜひ活用しましょう。
令和6年度(令和5年度補正予算)の省エネ設備等導入支援事業
令和6年度の省エネ設備等導入支援事業の全貌は明らかになっていませんが、令和5年度補正予算から読み取れる見通しを紹介します。
(画像引用:観光庁「令和5年度観光庁関係補正予算 令和5年11月」)
令和5年11月の補正予算で、「宿泊施設サステナビリティ強化支援事業」が発表されました。従来の省エネ設備等導入支援事業と名称は異なりますが、宿泊業界向けの省エネ設備導入を支援する補助金という役割は同様です。
ただし、上記資料では観光施設等についての記載がないため、令和5年度補正予算からは宿泊施設に対象が限定されるようです。
【令和6年度】宿泊業におすすめの補助金
ここまで省エネ設備等導入支援事業を紹介してきましたが、宿泊業が活用できる補助金は他にもあります。宿泊事業者が活用できる代表的な補助金は、以下の3つです。
- 地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業
- 地域における受入環境整備促進事業
- 事業再構築補助金
一つずつ詳しく解説します。
地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業
観光地は近年、入込客数の減少や収益の低下、投資の停滞による施設の陳腐化など、観光地全体の活力低下という課題に直面しています。
そこで観光庁は、地域経済に資する宿泊施設を核とした観光地再生・高付加価値化に向けた取組を強力に後押しし、地域全体の魅力と収益力の向上を図り、持続可能な観光地域づくりを推進します。
本事業では、観光地経営のマスタープランとなる地域計画の構築・磨き上げを、多様な専門性を持つ伴走支援チームが支援する点が特徴です。宿泊施設・観光施設の改修、廃屋の撤去、面的DXなどで、地域の「稼ぐ力」を回復・強化するための取組を支援します。
「宿泊施設の高付加価値化改修」については、改修前後で宿泊施設の収益力が向上する改修が支援の対象で、補助率と補助上限額は以下のとおりです。
補助率 | 1/2 |
補助上限額 | 1億円 |
令和5年度事業の公式サイトは、こちらです。
観光庁 令和5年度事業「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業」
地域における受入環境整備促進事業
旅行需要の本格的な回復を図るためには、ストレスフリー・バリアフリーで快適な旅行を満喫できる環境が必要です。
「地域における受入環境整備促進事業」では、全国の観光施設や宿泊施設、公共交通機関における受入環境整備の取組を支援します。宿泊施設については、ストレスフリー・バリアフリーな宿泊環境の整備が支援され、客室や浴室のバリアフリー化などが支援の対象となります。
令和5年(2023年)度は「宿泊施設インバウンド対応支援事業」の中の「宿泊施設バリアフリー化促進事業」として行われました。補助率と補助上限額は以下のとおりです。
補助率 | 1/2 |
補助上限額 | 500万円 (※自治体と防災協定を結んでいる宿泊事業者に限り、上限1,000万円) |
令和5年度事業の公式サイトは、こちらです。
宿泊施設インバウンド対応支援事業
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、中小企業の新分野展開や事業転換、業種転換、業態転換、事業再編などの思い切った事業再構築を支援する補助金です。
事業再構築補助金は、他の補助金ではなかなか補助対象とならない「建物費」が補助対象であるため、既存施設のリノベーションや客室の改修など、大規模な設備投資に活用できます。
事業再構築補助金には、取り組み内容に応じて、以下の9つの申請枠があります。
- 成長枠
- グリーン成長枠(エントリー)
- グリーン成長枠(スタンダード)
- 卒業促進枠
- 大規模賃金引上促進枠
- 産業構造転換枠
- サプライチェーン強靱化枠
- 最低賃金枠
- 物価高騰対策・回復再生応援枠
宿泊業は、インバウンド顧客をターゲットとする場合は補助額の大きい「成長枠」に申請できます。また、インバウンド顧客ではなく、国内旅行客をターゲットとする宿泊事業者で、コロナで受けたダメージを回復できていないような場合には、「物価高騰対策・回復再生応援枠」がおすすめです。
成長枠と物価高騰対策・回復再生応援枠の概要は、以下のとおりです。
成長枠 | 物価高騰対策・回復再生応援枠 | |
補助上限額 | 従業員数20人以下:2,000万円 21~50人:4,000万円 51~100人:5,000万円 101人以上:7,000万円 | 従業員数5人以下:1,000万円 6~20人:1,500万円 21~50人:2,000万円 51人以上:3,000万円 |
補助率 | 中小企業:1/2 (大規模な賃上げを行う場合 2/3) 中堅企業:1/3 (大規模な賃上げを行う場合 1/2) | 中小企業:2/3 (従業員数5人以下の場合400万円、 従業員数6~20人の場合600万円、 従業員数21~50人の場合は800万円、 従業員数51人以上の場合は1,200万円までは3/4) 中堅企業:1/2 (従業員数5人以下の場合400万円、 従業員数6~20人の場合600万円、 従業員数21~50人の場合は800万円、 従業員数51人以上の場合は1,200万円までは2/3) |
補助上限額が大きいのは成長枠のほうですが、物価高騰対策・回復再生応援枠は補助率の面で優遇されています。
物価高騰対策・回復再生応援枠の対象となる事業者は、事業再構築補助金の必須要件に加え、以下の要件が設定されています。
2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019~2021年と比較しての同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること
引用:必須申請要件 | 応募される方 | 事業再構築補助金
インバウンド客をターゲットとしている宿泊事業者は成長枠、コロナや物価高騰により業況が厳しい宿泊事業者は物価高騰対策・回復再生応援枠への申請をぜひ検討してみてください。
省エネ設備等導入支援事業をはじめとする宿泊業への補助金は、中小企業経営支援事務所までご相談ください
省エネ設備等導入支援事業は、宿泊施設や観光施設が、省エネ型空調やボイラー、節水トイレなどの省エネ設備を導入する際に活用できる観光庁の補助金です。対象が宿泊施設のみになるなど一部内容を変更し、令和5年度補正予算に基づき令和6年度も同様の補助制度が実施される見込みです。
また、宿泊業では、施設を高付加価値化させたり、バリアフリー化したりする際に使える補助金があります。中でも、事業再構築補助金は補助上限額が大きく、建物費が補助対象となるためリノベーションや改修に活用できます。
当社・中小企業経営支援事務所は、事業再構築補助金の採択率97%*を誇る経営コンサルタントです。省エネ設備等導入支援事業や事業再構築補助金など、各種補助金の申請をサポートしております。
事業再構築補助金においては、観光業の採択実績も複数ございますので、宿泊事業者様はぜひ安心してお任せください。初回相談は無料です。以下のお問い合わせフォームから、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ先:https://www.sme-support.co.jp/contact/
*2021~2023年において