【最新版】設備投資緊急支援事業とは?概要や申請方法、採択率を上げるコツを徹底解説
働き方改革関連法により、時間外労働の上限規制が強化され、2024年(令和6年)4月からは運輸・物流業や建設業などにも適用されることになりました。この規制強化は、長時間労働の是正を目的としていますが、企業にとっては人手不足の深刻化や売上の減少など、いわゆる「2024年問題」と呼ばれる課題への対応が迫られることになります。
このような背景から、東京都および東京都中小企業振興公社では、「2024年問題」への対策として、中小企業の生産性向上や競争力強化を目的とした「設備投資緊急支援事業」を実施しています。
この記事では、公社が公開している設備投資緊急支援事業の専用ページや第2回募集要項をもとに、「設備投資緊急支援事業」の概要や申請方法、採択率を上げるためのコツなどを詳しく解説します。「2024年問題」への対策として設備投資を検討されている事業者の方は、ぜひ参考にいただけると幸いです。
当社・中小企業経営支援事務所は、補助金・助成金申請のエキスパートです。設備投資緊急支援事業の申請に不安や疑問があればぜひ以下のメールフォームからぜひお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。採択のコツについて懇切丁寧に解説いたします。
もくじ
設備投資緊急支援事業とは
設備投資緊急支援事業とは、東京都内で運送や物流、建設業などを営む中小企業者等を対象に、「2024年問題」対策として導入する機械設備費用の一部を助成する制度です。
「2024年問題」とは、働き方改革関連法の時間外労働の上限規制が、2024年(令和6年)4月から運送・物流、建設業などにも適用されることで、人手不足の深刻化や売上の減少などが懸念される問題を指します。
本事業では、機械設備の導入費用の一部を東京都が負担することで、都内中小企業の「2024年問題」対策を後押しし、生産性の向上や競争力の強化を支援します。
具体的には、以下の事業・業務を営む中小企業が対象です。
- 工作物の建設の事業
- 自動車運転の業務
- 医業に従事する医師
これらの事業者は、時間外労働の上限規制によって、業務効率化や従業員の負担軽減が急務となっています。設備投資緊急支援事業は、最新の機械設備導入を促進してこれらの課題解決を支援し、ひいては都内経済の活性化に貢献することを目指しています。
項目 | 内容 |
---|---|
助成対象者 | 東京都内で運送や物流、建設業などを営む中小企業者等 |
助成対象事業 | 2024年問題対応に必要な機械設備を新たに導入する事業 |
助成対象期間 | 交付決定日の翌月1日から1年6ヶ月間 |
助成対象経費 | 機械装置、器具備品、ソフトウェアの導入費用 |
助成率 | 4/5以内 |
助成限度額 | 下限100万円 上限1億円 |
設備投資緊急支援事業の申請要件
設備投資緊急支援事業の申請には、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
対象事業・業務に従事していること
本事業の申請資格を得るには、2024年4月からの時間外労働の上限規制の対象となる事業・業務に従事していることが必須条件です。
具体的には、以下の表に示す3つの事業・業務のうち、いずれか一つ以上に該当している必要があります。
事業・業務 | 具体的な内容例 |
---|---|
工作物の建設の事業 | 建築、土木、設備工事など |
自動車運転の業務 | トラック、バス、タクシーなどの四輪以上の自動車運転業務 |
医業に従事する医師 | 病院、診療所などで診療に従事する医師(個人開業医かつ本人以外に医師を雇用している場合のみ) |
加えて、働き方改革関連法の時間外労働の上限規制適用猶予期間(令和2年4月~令和6年3月)中に該当業務に従事する従業員を雇用し、その期間の36協定届を提出できることが条件となります。
中小企業者または中小企業団体等であること
設備投資緊急支援事業の申請には、中小企業者または中小企業団体等のいずれかに該当することが条件です。
なお、下記基準に該当するかの判断が難しい場合は、募集要項のP.42「業種(大分類)と日本標準産業分類について」およびP.43「日本標準産業分類及び中小企業者の範囲」を参照するとよいでしょう。
中小企業者
中小企業者とは、中小企業基本法第2条第1項に規定されている資本金または従業員数の基準を満たし、大企業(中小企業投資育成株式会社や投資事業有限責任組合は除く)が実質的に経営に参画していない会社や個人事業者を指します。
業種 | 資本金 | 常用従業員数 |
---|---|---|
製造業・建設業・運輸業・その他の業種 (ソフトウェア業・情報処理サービス業含む) | 3億円以下 | 300人以下 |
ゴム製品製造業の一部 | 3億円以下 | 900人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
小売業(飲食業を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
大企業が実質的に経営に参画していないとは、主に以下のようなことを指します。
- 大企業が単独で発行済株式総数または出資総額の1/2以上を所有、または出資していないとき
- 大企業が複数で発行済株式総数または出資総額の2/3以上を所有、または出資していないとき
- 役員総数の1/2以上を大企業の役員または社員が兼務する形になっていないとき
- そのほか、大企業が実質的に経営を支配・参画していると考えられないとき
中小企業団体等
中小企業団体等とは、中小企業等協同組合法に基づく組合や、中小企業団体の組織に関する法律に基づく中小企業団体で、構成員の半数以上が都内に主たる事業所を有する中小企業である場合が該当します。
そのほか募集要項の内容に該当していること
本事業に申請するには、ほかにも以下のような条件があります。
要件 | 内容 |
---|---|
都内での事業活動の実態 | 基準日(※)現在で東京都内に本店または支店があり、2年以上事業を継続していること。都外に機械設備を設置する場合は、都内に本店があること |
納税状況 | 法人事業税、法人都民税、都および公社に対する賃料などの滞納がないこと |
過去の採択状況 | 過去に本助成事業の採択を受けていないこと(申請の取り下げや中止は除く) |
申請回数 | 同一回において初めての申請であること(申請は同一回につき1企業1申請に限る) |
重複助成の禁止 | 同一設備で他の助成事業を受けていないこと |
過去の助成事業における実績 | 過去5年間に、都道府県や区市町村などが実施する助成事業で不正がなく、報告書を期日までに提出していること |
事業の継続性 | 会社更生法や民事再生法の申立・手続中ではなく、事業の継続に問題がないこと |
法令遵守 | 助成事業の実施に必要な許認可を取得しており、関係法令も遵守していること |
反社会的勢力との関係 | 申請者、設備購入先などが暴力団関係者ではなく、風俗営業など社会通念上不適切な業態も営んでいないこと |
申請書類 | 必要な書類をすべて提出できること |
設備投資緊急支援事業の助成対象事業
設備投資緊急支援事業では、運送・物流、建設業およびその他業種において、働き方改革関連法の時間外労働の上限規制による人材不足などに対策するために、新たに機械設備を導入する事業が助成対象となります。
機械設備であれば、人材不足を解消するための自動化設備や省力化設備、工期短縮を実現する業務効率化設備の導入などが挙げられます。
重要なポイントは、導入する設備が2024年問題への対策として直接的に貢献するものでなければならない点です。
以下のような事業は助成の対象外となるため注意しましょう。
- 事業計画を伴わず、老朽化した設備を新しい設備に買い替えるだけの事業
- 研究開発を目的とし、量産・販売の目途が立っていない事業
- 自社工場などに自家発電設備を設置するだけの事業
- 助成事業完了後、導入した設備を一定期間継続して使用することが見込めない事業
- 運転資金など、設備投資以外の経費への助成を目的としている事業
- 申請者以外が事業計画の遂行や設備投資に関与している事業
- 助成事業者以外が助成対象設備を使用する事業
- 公序良俗に反する事業や公社が適切でないと判断する事業
設備投資緊急支援事業の助成対象経費
設備投資緊急支援事業の対象となる経費は、「2024年問題」対策として導入する機械装置・器具備品・ソフトウェアの新たな導入、搬入・据付などに要する費用です。
ただし、以下の条件を満たす必要があります。
助成対象経費の条件 | 内容 |
---|---|
事業への必要性 | 生産やサービス提供に直接使用する設備やソフトウェアなど、事業目的達成に不可欠な経費であること |
見積書の取得 | 同一機種は、同一メーカー・同一型番で2社以上の見積書を取得し、安価な方を選定すること。入手できない場合は、「見積限定理由書」の提出が必要 |
助成対象期間内の支払い完了 | 交付決定日の翌月1日から4年6ヶ月までに契約・納品・支払いを完了すること。分割払いも、期間内の完了が必須 |
使途の明確性 | カタログや仕様書、図面等で設備内容が確認できるもの、見積書にメーカー・型番・内訳が記載されているもの、契約書や振込控などの帳票類がそろっているものなど、経費の使途が明確に確認できるものであること |
所有権の帰属 | リースやレンタルではなく、購入し、所有権が事業者に移転するものであること |
また、1基あたりの下限額が50万円(税抜)以上である必要があります。1基とは、原則として法人税法上の減価償却単位を指し、機械装置であれば1台、器具備品であれば1個、1組、1揃いなどが該当します。ソフトウェアの場合は、1基あたりの下限額の条件に加えて、助成金交付申請額の範囲が300万円以上1,000万円以下と決められています。
なお、搬入・据付などに要する経費は、機械設備本体の購入先が行っていて、かつ機械設備の設置と一体で捉えられる軽微なものに限り対象です。
一方で、以下のような経費は、本事業の主旨から外れることから助成対象外となります。
- 申請内容と異なる機械設備や、デモンストレーション用の設備
- 既存設備の改良・修繕・撤去など、および中古品
- 不動産・構築物・車両・船舶・航空機など
- 事業計画に不必要な工具・消耗品など
- 資本関係のある会社などとの取引
- 消費税・関税・手数料・旅費などの間接経費
- 資料収集・調査・会議など事務経費や、内容が不明瞭な経費
- 設置場所の整備工事や、ソフトウェア設置後の保守費用など
- 目的外使用が可能な汎用的なパソコン・サーバーなど
- 市場価格や事業内容に対して高額な経費
- 所有権が移転しないリース・レンタルなど
- 通常業務と混合した経費や、他の取引と相殺した経費
- 現金・手形・クレジットカードなどによる支払い
- 実質的な支払金額が見積書と異なる取引
- 公的資金の用途として不適切な経費
上記以外にも助成対象外となる場合があります。
なお、助成事業にかかる経費の支払いは、金融機関・郵便局からの振込払い、送金口座は普通預金または当座預金のみと限定されています。
設備投資緊急支援事業の助成限度額
設備投資緊急支援事業の助成限度額は1億円です。助成下限額は100万円と定められています。
設備投資緊急支援事業の助成率
設備投資緊急支援事業の助成率は、助成対象と認められる経費の4/5以内です。1,000円未満は切り捨てとなります。
設備投資緊急支援事業の助成対象期間
設備投資緊急支援事業の助成対象期間は、交付決定日(採択者から交付決定通知書が交付された日)の翌月1日から1年6ヶ月間です。この期間内に、契約・納品・支払いを完了させなければいけません。
第2回募集の助成対象期間は、令和7年4月1日から最長令和8年9月30日です。
設備投資緊急支援事業の流れ
設備投資緊急支援事業の大まかな流れ
設備投資緊急支援事業の申請から交付後までの大まかな流れについて紹介します。
- 公募情報の確認
公社が公開している設備投資緊急支援事業の専用ページで、最新の募集要項、申請書類を入手し、内容を確認。申請要件や事業内容に関する疑問点は、公社や補助金・助成金の申請支援を行う専門家に事前相談をする - ネットクラブ会員サービスへの登録
本事業への申請予約に必要な「ネットクラブ会員サービス」会員登録を専用フォームから行う - 申請予約
公社が公開している設備投資緊急支援事業の専用ページにアクセスし、期限内に申請予約する - 申請書類の提出
デジタル庁の電子システム「jGrants(Jグランツ)」を使って申請書類を公社に提出(電子申請マニュアル)。jGrantsを利用するには「GビズIDプライムアカウント」が必要なので前もって作成する。 - 申請書類の準備
申請に必要な書類を収集して正確に記入 - 公社が審査を実施
公社が提出した申請書類に基づき、事業内容の実現可能性や妥当性などがあるか一次審査を行い、その後、面接審査や価格審査などの二次審査を実施する。審査では場合によって現地調査も行う - 交付決定
公社が、一次審査・二次審査の結果にもとづき、総合審査会で助成対象事業者を決定する。助成金事業者として採択された場合、企業名や所在地、テーマ名、成果などについて公社のホームページで公表される - 事業の実施
交付決定の内容に基づき事業を実施 - 完了報告書の提出
助成対象期間内に事業が完了したら、事業実績や経費の執行状況などを記載した完了報告書を公社に提出 - 公社が完了検査を実施
公社が完了検査を行い、事業内容や経費の執行状況などを確認する - 助成金の交付
完了検査後、助成金の額が確定し、事業者に交付される(完了検査から助成金交付までは約2ヶ月) - 事業化状況報告書の提出
事業完了後、翌年度以降5年間にわたり、事業の進捗状況などを記載した事業化状況報告書を公社に提出
設備投資緊急支援事業は、申請から助成金の交付まで、概ね上記のような流れで進みます。それぞれの段階で必要な手続きや提出書類が異なるため、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
企画管理部 設備支援課 〒101-0025 東京都千代田区神田佐久間町1-9 東京都産業労働局 秋葉原庁舎 TEL:03-3251-7884 |
設備投資緊急支援事業の募集スケジュール(最新)
設備投資緊急支援事業の第2回募集は、以下のスケジュールで実施されます。
項目 | 時期 |
---|---|
申請予約 | 令和6年10月23日(水)9時~11月6日(水)17時 |
申請書類提出 | 令和6年11月1日(金)9時~11月15日(金)17時 |
一次審査 | 11月中旬~1月中旬 |
一次審査結果通知 | 1月下旬 |
二次審査 | 2月中旬~3月上旬 |
助成対象事業者決定 | 3月中旬 |
事務手続き説明会 | 3月下旬 |
助成事業開始 | 令和7年4月1日~(最長令和8年9月30日まで) |
上記は2024年10月7日現時点でのスケジュールであり、今後変更となる可能性があります。申請前に今一度公社のホームページなどで最新情報を確認することをおすすめします。
設備投資緊急支援事業の必要書類
設備投資緊急支援事業においては、さまざまな書類の提出が求められます。申請時・助成事業完了時・交付後の3つのタイミングに分けて紹介します。
申請書一式、完了報告書、事業化状況報告書については、設備投資緊急支援事業の専用ページからダウンロードすることが可能です。完了報告書、事業化状況報告書は、時期によってまだ公開されていない場合があります。
なお、提出書類は返却されないため、すべて原本の控えを取っておきましょう。日本語以外の場合は日本語訳の資料も添付する必要があります。
申請時の必要書類
申請時の必要書類 | 詳細 | 備考 |
---|---|---|
申請書一式(1部) | ー | ・Excel形式とWord形式の両方の提出が必要 ・Word形式はWord形式のまま、Excel形式はExcel形式のまま編集し、同じ形式提出する ・Excel形式の書類には外部参照リンクを含まないようにする |
確定申告書(直近3期分の確定申告書の写し) | 【法人】 ①税務署の受付印または電子申告の受信通知(メール詳細) ②別表1~16 ③貸借対照表 ④損益計算書 ⑤販売費及び一般管理費明細表 ⑥製造原価報告書(未作成の場合、省略可) ⑦株主資本等変動計算書 ⑧勘定科目内訳明細書 ⑨法人事業概況説明書(両面) 【個人】 ①税務署の受付印または電子申告の受信通知(メール詳細) ②第一表~第五表(申告時に提出したもののみ) ③青色申告決算書(貸借対照表を作成している場合、それを含む) | 各期ごとに書類を1つのPDFにまとめる |
履歴事項全部証明書(1部) | 【法人】 発行後3ヶ月以内の履歴事項全部証明書 【個人】 開業届 | ・PDF形式での提出を推奨 ・個人事業主は、開業届にマイナンバーが記載されている場合、該当箇所を削除の上、提出する |
納税証明書(直近2期分) | 【法人】 法人事業税・法人都民税の納税証明書 【個人】 納税証明書(個人事業税の納税証明書および代表者の住民税納税証明書、もしくは代表者の直近の所得税納税証明書および代表者の住民税納税証明書) | PDF形式での提出を推奨 |
積算根拠書類(機種ごとに各1部) | ①導入機械設備1機種につき2社の見積書 ②見積限定理由書 ③機械設備の最新カタログ ④見積書採用予定の会社の会社案内 | ・①③④はPDF形式での提出を推奨、②はWord形式での提出を推奨 ・見積限定理由書は相見積もりを入手できない場合のみ ・機械設備のカタログがない場合は、具体的な設計図面や仕様書など機械設備の詳細がわかるもの |
機械設備設置場所関連書類(設置場所ごとに各1部) | ①機械設備を設置する建物の外観写真、および設置場所の写真 ②機械設備設置場所の平面図や、それを明示した配置図 | PDF形式での提出を推奨 |
会社関連書類(各1部) | ①会社案内 ②法令上必要な事業許可書、工場設置認可書またはその写し | PDF形式での提出を推奨 |
休日労働・時間外労働に関する協定届(36協定届)(各1部) | 休日労働・時間外労働に関する協定届の控え 旧様式の様式第9号の4(労働基準監督署の受理印があるもの) | ・PDF形式での提出を推奨 ・様式は厚生労働省の「時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)」ページよりダウンロード可 |
助成事業完了時の必要書類
助成事業が完了したら、速やかに完了報告書を提出する必要があります。完了報告書とは、事業の実施状況や経費の執行状況を報告する書類です。
あわせて、経理関係の書類も必要となります。例えば、見積書、契約書、仕様書、導入機械設備の写真、機械設備メーカー発行の保証書などが挙げられます。
交付後の必要書類
事業者は助成金を受け取ったあと、事業化状況報告書を事業完了年度の翌年度から5年間、毎年提出しなければいけません。事業化状況報告書とは、事業の成果や設備の活用状況に関して公社に報告する書類です。
設備投資緊急支援事業の交付決定の取り消しについて
設備投資緊急支援事業の交付決定は、虚偽の申請や要件違反など、不正が認められた場合、取り消されることがあります。
交付決定の取消事由としては、申請内容と異なる設備を導入した場合や、不正な手段で助成金を受け取った場合、助成金を他の用途に使用した場合、申請後に申請資格を満たさなくなった場合などが挙げられます。また、暴力団関係者との関与や、風俗営業等の公序良俗に反する事業への関与が判明した場合も、交付決定が取り消されます。
助成金の交付決定が取り消された際に、すでに助成金が交付されている場合は返還を求められ、違約金が加算される場合もあります。また、不正の程度によっては、刑事罰が適用される可能性もあります。
設備投資緊急支援事業の交付後の注意点
設備投資緊急支援事業の交付決定を受けた後も、以下の点に注意する必要があります。
公社職員による調査
本事業の交付決定後、事業の実施状況や助成金の収支、帳簿書類、取得した機械設備などに関して、公社の職員による調査や報告を求められることがあります。
事業化状況報告書の提出と収益納付
本事業の交付が決定して助成金を受けた場合、前述したように事業完了年度の翌年度から5年間、事業化状況報告書を毎年提出する義務があります。それとあわせて、助成事業によって相当の収益を得た場合は、収益の一部を納付する義務が生じます。納付額は助成金額を上限とし、所定の計算式に基づいて算出されます。
関係書類の保存
本事業の交付が決定した事業者は、助成事業に関する関係書類や帳簿類を、事業完了年度の翌年度から起算して10年を経過する日、または法定耐用年数を経過する日のいずれか早い日まで保存しなければいけません。
財産の管理と処分
助成事業で購入した機械設備は、処分制限期間中は適切に管理し、保存する必要があります。処分制限期間内に目的外使用、譲渡、交換、貸付、担保提供、廃棄、移設などを行う場合は、事前に公社の承認を得る必要があります。また、財産を処分した場合は、残存簿価相当額をもとに算定した金額を公社に納付することが求められます。
助成完了事業の公表
本事業の交付が決定した場合、助成を受けた事業者の企業名、所在地、テーマ名、事業内容などが、公社のホームページなどで公表される場合があります。
設備投資緊急支援事業の採択率を上げるコツ
設備投資緊急支援事業に申請するのであれば、審査員の心を掴み、採択につなげたいものです。採択率を上げるには以下のポイントをおさえておきましょう。
審査の視点を意識する
設備投資緊急支援事業の採択率を上げるためには、審査の視点を意識した事業計画を策定することが重要です。公社が掲げる審査は4つあり、それぞれ以下のような視点で実施されます。
資格審査(一次審査)
資格審査は、設備投資緊急支援事業の申請資格を満たしているかを確認する一次審査です。「中小企業の定義に合致しているか」「時間外労働の上限規制の対象となる事業・業務を営んでいるか」「東京都内に事業所があり、2年以上事業を継続しているか」などがチェックされます。
これらの要件を満たしていない場合は、申請資格がないと判断され、その後の審査に進めません。募集要項をよく確認し、必要書類を漏れなく提出することが重要です。
経理審査(一次審査)
経理審査では、企業の財務状況を分析し、健全な経営状態であるか、助成事業を適切に遂行できる財務基盤があるかを審査します。具体的には、提出された確定申告などの財務諸表に基づき、安全性、収益性、成長性といった観点から評価が行われます。
例えば、倒産リスクはないか、適切な利益が出ているか、売上高や利益は継続的に伸びているかなどがチェックされます。財務状況に問題があると判断された場合、助成対象事業の実施が困難とみなされ、採択されない可能性があります。
事業計画審査(一次審査・二次審査)
設備投資緊急支援事業の事業計画審査は、一次審査と二次審査の両方で行われ、事業計画の内容を多角的に評価します。主な審査の視点は以下の表の通りです。
審査の視点 | 内容 |
---|---|
目的との適合性 | 2024年問題対策として妥当か |
優秀性 | 技術や市場での優位性があるか |
実現性 | 計画の遂行能力や資金調達の見込みがあるか |
成長・発展性 | 将来的な事業拡大が期待できるか |
計画の妥当性 | 導入設備の必要性や規模が適切か |
そのため、以下のポイントをおさえながら事業計画書を作成することが重要となります。
- 2024年問題との関連性を明確に説明する
- 自社の強みや独自性を具体的に示す
- 数値目標を含めた実現可能な計画を立てる
- 導入設備の詳細とその効果を具体的に記述する
- 事業の将来性や社会的意義についても言及する
これらの点に留意し、論理的かつ具体的な事業計画を作成することが、採択率を高める近道です。また、審査員が理解しやすいよう、図表やデータを効果的に活用することも大切です。
価格審査(二次審査)
価格審査は、設備投資緊急支援事業の二次審査で行われる項目の一つです。この審査では、申請する機械設備などの価格が、一般的な市場価格と比較して著しく高額になっていないかを確認します。
審査では、提出された見積書やカタログ、市場調査データなどを参考に、妥当な価格設定が行われているかを判断します。高額な設備や、市場価格との乖離が大きい場合は、採択率が下がる可能性があります。
事業計画書に事業者の思いやオリジナリティを盛り込む
設備投資緊急支援事業に限らず、補助金・助成金の審査では、事業者の熱意や事業内容の新規性・独創性も重要な要素となります。単に募集要項を満たすだけでなく、これらの要素を加えることで審査員の目にとまりやすくなるからです。
例えば、「なぜこの事業に取り組むのか」「なぜこの設備が必要なのか」「この設備導入によって地域社会にどう貢献できるのか」などについて、事業者の想いやビジョン、事業の独自性を具体的に示すことで、審査員に強い印象を与えることができます。
以下は、事業計画書に事業者の思いやオリジナリティを盛り込む具体的な方法の例です。
項目 | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
事業の背景や動機 | なぜその事業に取り組むことになったのか、きっかけや背景、これまでの経験などを具体的に記述する | ・長年、地域物流を支えてきたが、2024年問題による人手不足の深刻化を課題に感じ、省人化・自動化を実現する事業に取り組むことを決意した ・従業員の高齢化が進み、技術継承が課題となる中、2024年問題も重なり、若手人材の確保と育成、労働環境改善のためにも、最新鋭の設備投資が必要不可欠だと感じている |
事業の独自性や差別化 | 他の事業と比べて、どのような独自性や差別化ポイントがあるのか、具体的な事例を交えて説明する | ・長年培ってきたノウハウとAI技術を融合させ、地域特性に最適化された独自の配送ルートを開発し、他社にはない効率的な物流サービスを提供する ・単なる運送業ではなく、顧客のニーズに合わせた保管・梱包・ラベル貼りなどの付帯サービスを充実させることで、顧客満足度を高め、差別化を図る |
地域貢献 | 事業を通じて、地域社会にどのように貢献できるのか、具体的な目標値などを設定して説明する | ・新規雇用を創出し、若者や女性の雇用機会の拡大に貢献する(目標値:3年間で10名の新規雇用) ・地域の運送事業者と連携し、共同輸送体制を構築することで、物流の効率化と地域経済の活性化に貢献する |
将来展望 | 事業を通じて、将来的にどのような企業を目指していくのか、具体的なビジョンを明確に示す | ・10年後には、地域物流のリーディングカンパニーとして、地域社会の発展に貢献する企業を目指す ・事業を通じて得られたノウハウを活かし、他の事業者へのコンサルティング事業も展開し、業界全体の底上げを図りたい |
熱意や意気込み | 事業に対する熱い想いや意気込みを、具体的なエピソードなどを交えて訴求する | ・従業員一丸となって、新技術の習得や業務プロセス改善に取り組んでおり、働き方改革にも積極的に取り組んでいる ・地域住民や行政とも積極的に連携し、2024年問題の解決に貢献できるよう、誠心誠意努力していく所存だ |
これらの要素を盛り込むことで、事業計画書はより魅力のあるものとなり、審査員の評価にもつながりやすくなるでしょう。
補助金・助成金の申請支援を行う専門家に相談する
採択率を高めたいときは、補助金・助成金の申請支援を行う専門家に相談するのもポイントです。専門家へ相談すると、事業計画の策定や申請書類の準備などをする時間も削減できるため、特に初めて助成金事業を利用する事業者におすすめです。
専門家を探すときは、その専門家が信頼できるかどうかが重要です。以下のポイントを参考にしながら良きパートナーを探してみてください。
- 補助金・助成金の申請支援実績は豊富か
- 業種や事業内容に精通しているか
- 相談しやすい雰囲気を持っているか
- 費用体系は明確か
なお、専門家には税理士や行政書士などがいますが、できれば中小企業診断士に依頼することをおすすめします。中小企業診断士は経営全般の豊富な知識から、事業の特徴や魅力を的確に見抜き、それを事業計画という具体的な形にできる専門家です。
上記のポイントをクリアした相性の良い中小企業診断士を見つけられると、採択率もぐっと上がるでしょう。
設備投資緊急支援事業と他の事業の違いと併願に関する注意点
公社には、設備投資緊急支援事業と似た助成金制度があります。それが「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」と「デジタルツール導入促進緊急支援事業」の2つです。
それぞれ以下のような違いがあります。
事業名 | 概要 | 対象業種 | 助成対象経費 |
---|---|---|---|
設備投資緊急支援事業 | 「2024年問題」に対応するための機械設備の導入経費を一部助成 | 運輸・物流、建設業など | 機械装置、器具備品、ソフトウェアの導入費用 |
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業 | 業種を問わず、経営課題解決や成長戦略の実現に資する機械設備の導入経費を一部助成 | 業種不問 | 機械装置、器具備品、ソフトウェアの導入費用 |
デジタルツール導入促進緊急支援事業 | 「2024年問題」に対応するためのデジタルツールの導入経費を一部助成 | 建設業、運輸業 | デジタルツールの購入費用や初期設定・カスタマイズなどにかかる費用 |
公社が実施している助成金制度は、基本的に併願申請ができません。そのため、どの助成金制度が自社に一番適しているか、よく見極めることが重要です。
例外的に、設備投資緊急支援事業と躍進的な事業推進のための設備投資支援事業については併願申請できますが、その際も各助成金制度の要件を満たしている必要があることに加え、助成対象期間や助成対象経費が重複しないように注意する必要があります。
設備投資緊急支援事業の申請チェックリスト
内容 | チェック |
---|---|
申請資格 | |
令和6年4月から規制対象になる事業・業務を営んでいるか | ☐ |
時間外労働の上限規制の適用猶予期間に対象事業・業務を主として従事する従業員を雇用しているか | ☐ |
中小企業者または中小企業団体等であるか | ☐ |
時間外労働の上限規制の適用猶予期間に36協定届を提出できるか | ☐ |
基準日現在で、東京都内に登記簿上の本店または支店があるか | ☐ |
基準日現在で、都内事業所における常用の事業活動拠点としての事業継続が2年以上であるか | ☐ |
東京都に納税し、かつ税金などの滞納がないか | ☐ |
そのほか募集要項に記載されている要件を満たしているか | ☐ |
事業内容 | |
働き方改革関連法の時間外労働の上限規制による人材不足などの対策に必要となる設備投資であるか | ☐ |
導入する設備が2024年問題への対策として直接的に貢献するものであるか | ☐ |
単なる機械設備の更新や、生産性向上に寄与しないものではないか | ☐ |
そのほか募集要項に記載されている事業要件を満たしているか | ☐ |
助成対象経費 | |
助成対象期間内に契約、納品、支払いが完了する経費であるか | ☐ |
助成事業者が生産や役務の提供のために直接使用するものであるか | ☐ |
助成事業を遂行するために必要かつ必要最小限の経費であるか | ☐ |
消費税などの間接経費を除いているか | ☐ |
そのほか募集要項に記載されている対象経費の要件を満たしているか | ☐ |
必要書類 | |
申請書一式(Excel形式とWord形式)は作成したか | ☐ |
直近3期分の確定申告書は用意したか | ☐ |
履歴事項全部証明書は用意したか | ☐ |
納税証明書は用意したか | ☐ |
積算根拠書類(見積書、カタログ、会社案内など)は用意したか | ☐ |
機械設備設置場所関連書類は用意したか | ☐ |
会社関連書類は用意したか | ☐ |
休日労働・時間外労働に関する協定届(36協定届)は用意したか | ☐ |
そのほか募集要項に記載されている必要書類は用意したか | ☐ |
その他 | |
募集要項の内容をすべて確認したか | ☐ |
申請予約はしたか | ☐ |
電子申請システム「JGrants」のアカウントを取得したか | ☐ |
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