【初心者向け】経営革新計画・経営力向上計画・先端設備等導入計画の3つの違いをわかりやすく解説
今、多くの中小企業が直面しているのが、「経営をもっと良くしたいけれど、どうすればいいのかわからない」という課題です。その解決の糸口となるのが、経営革新計画・経営力向上計画・先端設備等導入計画の活用です。
これらの計画については、特定の機関に認定されると、以下のようなメリットを得ることができます。
- 低利融資や補助金などの資金面での支援
- 税制面での優遇措置
- 専門家によるアドバイスやサポート
- 販路開拓支援
- 設備投資に関する支援
しかし、「どの計画を選べばいいのか分からない」「申請手続きが複雑そう」という声も多く聞かれます。そこでこの記事では、3つの計画の違いや特徴、活用方法について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
なお、各計画の解説においては、以下を参照しています。実際に申請するときは、本記事とあわせてご覧いただくことをおすすめします。
参照:経営革新支援丨中小企業庁
参照:経営力向上支援丨中小企業庁
参照:先端設備等導入制度による支援丨中小企業庁
当社・中小企業経営支援事務所は、認定経営革新等支援機関として、各計画のトータルサポートを行っています。計画策定に不安や疑問があれば、ぜひ以下のメールフォームからぜひお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。策定のポイントから認定後の制度活用のコツまで、懇切丁寧に解説いたします。
もくじ
【比較表】経営革新計画・経営力向上計画・先端設備等導入計画の違い
項目 | 経営革新計画 | 経営力向上計画 | 先端設備等導入計画 |
---|---|---|---|
目的 | 新事業活動による経営の相当程度の向上 | 人材育成、コスト管理などのマネジメント向上、設備投資による経営力向上 | 設備投資を通じた労働生産性の向上 |
認定機関 | 都道府県知事等 | 国(事業分野別の主務大臣) | 市区町村長 |
計画期間 | 3~5年 | 3~5年 | 3~5年 |
目標数値 | ・付加価値額または一人当たりの付加価値額:年率3%以上 ・給与支給総額:年率1.5%以上 | 指標の種類は事業分野別指針による。労働生産性は計画終了時に正の値が必要 | 労働生産性を年平均3%以上向上 |
主な支援措置 | ・政府系金融機関の低利融資 ・信用保証の特例 ・高度化融資 ・販路開拓支援 ・海外展開支援 | ・税制措置(即時償却等) ・金融支援(融資・信用保証) ・法的支援(許認可承継等) | ・固定資産税の軽減措置(3年間1/2) ・賃上げ方針表明時は最長5年間1/3 ・信用保証の特例 |
申請に必要な主な書類 | ・申請書と別表 ・定款 ・直近2期の決算書類 | ・申請書 ・チェックシート | ・申請書 ・認定経営革新等支援機関の確認書 ・市区町村が求める書類 |
主な相談窓口 | ・都道府県担当部局 ・認定経営革新等支援機関 ・よろず支援拠点 | ・中小企業庁相談窓口 ・認定経営革新等支援機関 | ・申請先の市区町村 ・認定経営革新等支援機関 |
特徴 | 新事業活動(新商品開発など)による経営革新に焦点 | 幅広い経営力向上の取り組みが対象 | 生産性向上のための設備投資に特化 |
経営革新計画とは
経営革新計画とは、中小企業が新事業活動に取り組み、経営の相当程度の向上を図る「経営革新」を実現するために立てられる計画です。経営革新は、中小企業のさまざまな支援を規定する「中小企業等経営強化法」(2016年施行)の一つの柱として位置づけられています。
経営革新計画の認定で受けられる優遇措置や支援
経営革新計画が都道府県知事等から承認されると、一定の要件を満たした場合に限り、政府系金融機関の低利融資、信用保証の特例、販路開拓の支援など、各機関から経営革新を実現するためのさまざまなサポートを受けられる(あるいは受けやすくなる)ようになります。具体的な優遇措置や支援は以下のとおりです。
保証・融資の優遇措置
支援措置 | 主な内容 |
---|---|
信用保証の特例 | 通常の付保限度額とは別枠で、普通保証2億円(組合4億円)、無担保保証8,000万円の設定ができる |
日本政策金融公庫の特別利率による融資制度 | 設備資金・運転資金について、基準利率から最大0.9%の金利優遇を受けられる |
高度化融資制度 | 事業協同組合等が高度化事業を実施する際、0.35%または無利子での融資を受けられる |
食品等流通合理化促進機構による債務保証 | 食品製造業者等が経営革新計画を実行する際の設備資金などについて、食品等流通合理化促進機構による1件当たり4億円を上限とする債務保証を利用できる |
海外展開に伴う資金調達の支援措置
支援措置 | 主な内容 |
---|---|
スタンドバイ・クレジット | 外国関係法人等が現地金融機関から長期借入をする際に、日本政策金融公庫の債務保証を受けられるようになる。限度額4億5,000万円 |
クロスボーダーローン | 外国関係法人等が日本政策金融公庫から直接借入できるようになる。限度額14億4,000万円(うち運転資金9億6,000万円) |
中小企業信用保険法の特例 | 海外投資関係保証の限度額が2億円から3億円(組合は4億円から6億円)に拡大される |
日本貿易保険による支援措置 | 外国関係法人等が現地金融機関から借入を行う際の貸付金債権などに対する保険制度。限度額の定めなし |
投資に関する支援
支援措置 | 主な内容 |
---|---|
起業支援ファンドからの投資 | 中小企業基盤整備機構が出資する民間ベンチャーファンドから投資を受けられる。主に創業期や成長初期のベンチャー企業などが対象 |
中小企業投資育成株式会社からの投資 | 資本金3億円超の特定事業者も、中小企業投資育成株式会社からの投資を受けられるようになる |
販路開拓支援
支援措置 | 主な内容 |
---|---|
販路開拓コーディネート事業 | 商社・メーカー等出身の専門家から、マーケティング企画から首都圏・近畿圏でのテストマーケティング活動までの支援を受けられる |
新価値創造展 | 新価値創造点とは、中小企業・ベンチャー企業が自社開発の製品・技術・サービスを展示・紹介するビジネスマッチングイベント。計画の認定を受けていると審査において評価の対象になる |
経営革新計画の制度活用の流れ
経営革新計画の制度活用の流れは、主に以下のステップで進めます。
- 都道府県担当部局などに問い合わせる
- 「経営革新計画に係る承認申請書」(様式13)を始めとする必要書類を作成する
- 都道府県担当部局や国の地方機関など、規定の提出先に書類を提出する
- 書類提出後、都道府県などが審査を実施
- 経営革新計画承認後、各支援策の実施機関に必要書類を提出して審査を受ける
その後、実施機関の審査に通れば支援措置が行われます。経営革新計画が認定されたからといって、必ずしも支援を受けられるわけではありません。
経営革新計画の認定要件
経営革新計画が認定されるためには、規定の特定事業者とみなされる必要があります。会社および個人が特定事業者としてみなされる基準は、以下のとおりです。
主たる事業を営んでいる業種 | 従業員基準 |
---|---|
製造業等 | 500人以下 |
卸売業 | 400人以下 |
サービス業 | 300人以下 |
小売業 | 300人以下 |
なお、一部の組合および連合会も特定事業者と認められます。
この事業者要件に加えて、経営革新の要件である「新事業活動であること」「経営の相当程度の向上を図ること」をみたさなければいけません。
新事業活動は、「新商品の開発または生産」「新役務の開発または提供」「商品の新たな生産または販売の方式の導入」「役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動」の5類型に当てはまるものを指します。
経営の相当程度の向上は、3~5年の事業期間の中で、「付加価値額」または「一人当たりの付加価値額」が年率3%以上、「給与支給総額」が年率1.5%以上伸びているときのことを指します。
計画終了時 | 「付加価値額」または「一人当たりの付加価値額」の伸び率 | 「給与支給総額」の伸び率 |
---|---|---|
事業期間が3年の場合 | 9%以上 | 4.5%以上 |
事業期間が4年の場合 | 12%以上 | 6%以上 |
事業期間が5年の場合 | 15%以上 | 7.5%以上 |
経営革新計画の認定に必要な書類
経営革新計画の申請には、基本的に以下の書類が必要です。
- 「経営革新計画に係る承認申請書」(様式13)および別表1~7の原本
- 上記の写し
- 中小企業者(または組合等)の定款
- 直近2期間の事業報告書、貸借対照表、損益計算書
経営革新計画を立てるときの策定ポイント
経営革新計画を策定する際の重要なポイントは以下の3点です。
第一に、経営者自身の「思い」を明確にすることです。会社への経営理念や経営基本方針をどれだけ事業者の言葉で形作れるかが審査結果を左右します。
第二に、自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ)の現状を正確に把握することです。人材の能力・資格、資金の調達状況、設備の状況などをチェックし、経営革新に向けた課題を整理します。
第三に、具体的な数値目標を設定することです。審査では、売上高や営業利益などの経営指標について、現状から計画期間終了時点までの具体的かつ実現可能な目標値を定めることが求められます。
経営革新計画の申請先
経営革新計画の申請先は、以下の基準で提出先が決まります。
申請パターン | 提出先 |
---|---|
1社単独 | 本社所在地の都道府県 |
複数社共同(代表1社) | 代表企業の本社所在地の都道府県 |
複数社共同(代表複数) | ・代表企業の本社所在地がすべて同じ都道府県の場合 →その都道府県 ・代表企業の本社所在地の都道府県が異なり、かつ当該の都道府県が同一の地方局管内の場合 →事業所管省庁の地方局または経済産業省の地方局 ・代表企業の本社所在地の都道府県が異なり、かつ当該の都道府県が同一の地方局の区域を越える場合 →事業所管省庁または中小企業庁 |
組合単独 | ・主たる事務所所在地の都道府県 |
複数組合等共同 | ・代表組合等が一つの都道府県内で活動 →当該の都道府県 ・代表組合等が複数の都道府県で活動、かつ当該の都道府県が同一の地方局管内の場合 →事業所管省庁の地方局または経済産業省の地方局 ・代表組合等が複数の都道府県で活動、かつ当該の都道府県が同一の地方局の区域を越える場合 →事業所管省庁または中小企業庁 |
経営革新計画で困ったときの相談先
経営革新計画策定の相談先としては、以下のようなところがあります。
相談先 | 連絡先 |
---|---|
都道府県担当部局 | 「経営革新計画ガイドブック」p.57参照 |
都道府県等中小企業支援センター | 同p.58参照 |
認定経営革新等支援機関 | 「認定経営革新等支援機関検索システム」で検索 |
よろず支援拠点 | 「よろず支援拠点一覧」で検索 |
中小企業基盤整備機構 | 050-3171-8814 |
特におすすめなのが、認定経営革新等支援機関です。認定経営革新等支援機関とは、中小企業経営を支援する専門家(中小企業診断士や公認会計士、弁護士など)のうち、特に経営革新の支援に精通していると国によって認められた機関を指します。
当該機関にサポートを依頼すれば、説得力のある計画を策定するための的確なアドバイスをもらえるだけでなく、認定後の制度活用のサポートを受けることもできます。持続的な経営を実現する伴走者をお探しでしたら、ぜひ積極的に検討してみてください。
当社、中小企業経営支援事務所も、認定経営革新等支援機関として多くの事業者の計画策定の支援を行っています。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
経営力向上計画とは
経営力向上計画とは
経営力向上計画とは、人材育成やコスト管理などのマネジメントの向上、設備投資など、自社の経営力を向上するために策定する計画のことです。経営革新計画と同様、中小企業等経営強化法によって規定されています。
経営力向上計画の認定で受けられる優遇措置や支援
経営力向上計画については、国(事業分野別の主務大臣)に認定されると、一定の要件を満たした場合に限り、以下の税制措置・金融支援・法的支援を受けられるようになります(参照:中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き〈 令和6年度税制改正対応版〉丨中小企業庁)。
税制措置
税制優遇措置 | 主な内容 |
---|---|
中小企業経営強化税制(A類型:生産性向上設備) | 生産性が年平均1%以上向上する設備を取得した際に、即時償却または取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除が選択できる |
中小企業経営強化税制(B類型:収益力強化設備) | 投資利益率5%以上のパッケージ投資をした際に、即時償却または取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除が選択できる |
中小企業経営強化税制(C類型:デジタル化設備) | 遠隔操作、可視化、自動制御化を可能にする設備を取得した際に、即時償却または取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除が選択できる |
中小企業経営強化税制(D類型:経営資源集約化設備) | 修正ROAまたは有形固定資産回転率の改善が見込まれるパッケージ投資をした際に、即時償却または取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除が選択できる |
事業承継等に係る不動産取得税の特例 | 事業譲渡を通じて不動産を取得した際にかかる不動産取得税が軽減される(課税標準から不動産の価格の1/6を控除) |
中小企業事業再編投資損失準備金 | 事業承継等のために株式等を取得する際に、その準備金として積み立てた金額を損金参入できる(株式等の取得価額の最大70%) |
金融支援
金融支援名 | 主な内容 |
---|---|
日本政策金融公庫による融資 | 設備投資に必要な資金について、最大7億2,000万円(うち運転資金2億5,000万円)の融資を受けられるようになる |
中小企業信用保険法の特例 | 民間金融機関からの融資に対して、通常の保証枠とは別枠で、普通保険2億円、無担保保険8,000万円などの追加保証を受けられる |
中小企業投資育成株式会社法の特例 | 中小企業投資育成株式会社からの投資を、資本金3億円超の特定事業者も受けられるようになる |
スタンドバイ・クレジット | 海外支店・子会社が、現地通貨建て融資において、日本政策金融公庫から信用状を発行してもらえる。限度額4億5,000万円 |
クロスボーダーローン | 海外子会社が、日本政策金融公庫から直接融資を受けられるようになる。限度額14億4,000万円(うち運転資金9億6,000万円) |
中小企業基盤整備機構による債務保証 | 2,000人以下の特定事業者等が、経営力向上計画実施に必要な資金について、最大25億円(保証割合50%)の債務保証を受けられる |
食品等流通合理化促進機構による債務保証 | 食品製造業者等が、食品等流通合理化促進機構による債務保証を受けられる |
経営力向上計画の認定で受けられる法的支援
法的支援名 | 主な内容 |
---|---|
許認可承継の特例 | 旅館業や建設業などの許認可事業を承継する場合、承継される側の事業者から許認可に係る地位をそのまま引き継ぐことが可能 |
組合発起人数の特例 | 事業協同組合、企業組合または協業組合を設立する場合、通常4人必要な発起人の人数が3人でも可能となる |
事業譲渡の際の免責的債務引受の特例 | 事業譲渡による債務移転について、債権者に通知し1ヶ月以内に返事がない場合は同意があったとみなすことができ、簡略な手続きで債務移転が可能となる |
経営力向上計画の制度活用の流れ
経営力向上計画の認定で受けられる制度を活用するには、以下の4つのステップが必要です。
- 利用したい制度を検討し、「支援措置活用の手引き」で要件を確認する
- 「日本標準産業分類」で該当する事業分野を確認し、事業分野に対応する「事業分野別指針もしくは基本方針」を踏まえて、経営力向上計画を作成する
- 経営力向上計画を各事業分野の主務大臣に提出する。各事業分野の主務大臣へ計画申請書と必要書類を提出します。認定までの標準処理期間は約30日(複数省庁にまたがる場合は約45日)。経済産業省のみの電子申請の場合は約14日
経営力向上計画が認定されると、主務大臣から計画認定書と計画申請書の写しが交付され、優遇措置や支援を受けられるようになります。その後、経営力向上のための取り組みを実行します。
経営力向上計画の認定要件
経営力向上計画の認定を受けるためには、特定事業者等の規模を満たす必要があります。具体的には「会社または個人事業主」「医業、歯科医業を主たる事業とする法人(医療法人等)」「社会福祉法人」「特定非営利活動法人」のいずれかで、かつ従業員数が2,000人以下の事業者です。企業組合や協業組合など、一部の組合や連合会も認定を受けることができます。
なお、税制措置や金融支援によっては、対象となる規模要件が異なるため注意が必要です。
このほか、計画期間が経営革新計画と同様、3年・4年・5年のいずれかであることに加え、事業分野に対応する「事業分野別指針もしくは基本方針」に沿って策定されていることが要件となります。
経営力向上計画の認定に必要な書類
経営力向上計画の認定に必要な基本書類は、以下のとおりです。
- 「経営力向上計画に係る認定申請書」(様式1)※Word(37KB)の原本
- 上記申請書の写し
- 経営力向上計画チェックシート(経産局あてのみの申請以外)※Excel(40KB)
経営力向上計画チェックシート(経産局あてのみの申請)※Excel(45KB)
※電子申請の場合は不要 - A4サイズが折らずに入る返信用封筒(切手貼付)
※電子申請の場合は不要
設備投資について税制措置を受ける場合は、上記の基本書類とあわせて次の書類が必要です。
- 工業会証明書の写し ※A類型の場合
- 投資計画確認申請書の写しと経済産業局確認書の写し ※B~D類型の場合
また、事業承継等の支援を受ける場合は、以下の書類も必要となります。
- 事業承継等の相手方の合意を示す基本合意書等
- 事業承継等に係る誓約書
- 特定許認可等の証明書類
- 貸借対照表や損益計算書
- 事業承継等事前庁舎チェックシート
なお、発電設備等を導入する場合は「発電設備等の概要等に関する報告書」の添付が必要です。また、認定後に事業承継等として合併や会社分割、事業譲渡などを実行した場合は「経営力向上計画に係る事業の承継報告書」の提出が求められます(参照:申請書様式類丨中小企業庁)。
経営力向上計画を立てるときのポイント
経営力向上計画を立てる際の主なポイントは3つあります。
第一に、現状認識を明確にする必要があります。自社の事業概要や経営状況について、ローカルベンチマークなどの分析ツールを活用しながら客観的に把握し、顧客数や市場規模、自社の強み弱みなどを整理します。
第二に、具体的な目標設定が重要です。事業分野別指針をもとに、指標の種類を選び、経営力向上計画の実施期間に応じた伸び率を設定します。特に労働生産性については、計画終了時の目標を正の値とすることが求められます。
第三に、経営力向上の実施事項を具体化することです。現に有する経営資源を利用する取組や、他の事業者から取得した経営資源を利用する取り組みについて、実施時期や内容を明確に記載します。設備投資を伴う場合は、その詳細や資金調達方法も記載が必要です。
経営力向上計画の申請先
経営力向上計画の申請先は、事業分野ごとに異なります。中小企業庁が公開している「事業分野と提出先」※Excelファイル(54KB)を確認しましょう。
なお、経営力向上計画は「経営力向上計画申請プラットフォーム」から電子申請することもできます(一部の省庁宛て・都道府県経由が必要な申請などは除く)。利用には事前にGビズIDプライムアカウントの取得が必要です。
経営力向上計画で困ったときの相談先
経営力向上計画の相談先としては、中小企業庁の経営力向上計画相談窓口(電話番号:03-3501-1957〈平日9:30~12:00、13:00~17:00〉)。ただし、個別の認定可否や審査状況についての問い合わせには対応していません。
経営力向上計画の策定に関してお困りでしたら、認定経営革新等支援機関へのご相談をおすすめします。経営革新計画同様、認定につながるアドバイスはもちろん、その後の制度活用、さらには事業継続のためのサポートも受けられるでしょう。認定経営革新等支援機関は「認定経営革新等支援機関検索システム」から探すことが可能です。
当社、中小企業経営支援事務所も、認定経営革新等支援機関として支援を行っておりますので、相談先を探す時間がない、どこがよいのかわからないとお悩みでしたら、一度ご相談いただけますと幸いです。
先端設備等導入計画とは
先端設備等導入計画とは
先端設備等導入計画とは、中小企業等経営強化法に基づき、中小企業者が設備投資を通じて労働生産性の向上を図るために策定する計画です。市区町村が国から「導入促進基本計画」の同意を受けている場合に限り申請が可能で、認定を受けると税制支援や金融支援を受けることができます。
先端設備等導入計画の認定で受けられる優遇措置や支援
先端設備等導入計画の認定を受けると、一定の要件を満たした場合に限り、以下の支援措置を活用できるようになります。
税制措置
税制措置 | 主な内容 |
---|---|
固定資産税の軽減措置(基本) | 認定を受けた計画に基づく設備投資について、新規取得設備に係る固定資産税の課税標準が3年間、1/2に軽減される |
固定資産税の軽減措置(賃上げ方針表明時) | 従業員に対する賃上げ方針を計画内に記載した場合、以下の支援が受けられる ・2024年3月末までの取得→5年間、1/3に軽減 ・2025年3月末までの取得→4年間、1/3に軽減 |
なお、この制度の適用期間は2023年4月1日から2025年3月31日までの2年間となっています。
金融支援
金融支援 | 主な内容 |
---|---|
中小企業信用保険法の特例 | 民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、通常枠とは別に以下の追加保証が受けられるようになる ・普通保険:2億円(組合4億円) ・無担保保険:8,000万円 ・特別小口保険:2,000万円 |
先端設備等導入計画の制度活用の流れ
先端設備等導入計画の制度活用の流れは、大きく4つのステップで進みます。
- 新たに導入する設備が所在する市区町村が「導入促進基本計画」を策定しているか確認し、認定のためのスケジュールを把握する
- 活用したい制度の要件や必要書類を確認する
- 市区町村が策定した「導入促進基本計画」の内容に沿って計画書を作成する
- 作成した認定経営革新等支援機関に確認を依頼する。税制措置を受ける場合は、新規取得設備に係る投資計画について認定経営革新等支援機関の確認を受ける。また、賃上げ方針を計画に位置付ける場合は、従業員に対して賃上げ方針を説明する
- 先端設備等導入計画を市区町村長に提出する
先端設備等導入計画が認定されると、市区町村長から認定書が交付され、各優遇措置や支援を受けられるようになります。その後、生産性向上や賃上げに資する取り組みを実行します。
先端設備等導入計画の認定要件
先端設備等導入計画が認定されるためには、まず以下の規模に該当する中小企業者である必要があります。中小企業者には会社、個人のほか、一部の組合および連合会も含まれます。
主たる事業を営んでいる業種 | 詳細 |
---|---|
製造業等 | 資本金の額または出資の総額が3億円以下もしくは従業員数300人以下 |
卸売業 | 資本金の額または出資の総額が1億円以下もしくは従業員数100人以下 |
小売業 | 資本金の額または出資の総額が5,000万円以下もしくは従業員数50人以下 |
サービス業 | 資本金の額または出資の総額が5,000万円以下もしくは従業員数100人以下 |
ゴム製品製造業 | 資本金の額または出資の総額が3億円以下もしくは従業員数900人以下 |
ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 資本金の額または出資の総額が3億円以下もしくは従業員数300人以下 |
旅館業 | 資本金の額または出資の総額が5,000万円以下もしくは従業員数200人以下 |
上記に加えて、以下の事業内容であることも要件です。
項目 | 内容 |
---|---|
計画期間 | 3年間、4年間、5年間のいずれかである |
生産性向上目標 | 労働生産性を年平均3%以上向上 |
対象設備 | 労働生産性向上に必要な生産、販売活動などの用に直接供される設備(機械装置、測定工具および検査工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウェア) |
上記を満たした計画を策定し、その内容が新たに導入する設備が所在する市区町村の導入促進基本計画に沿っている場合に認定されます。そのため、市区町村が策定する導入促進基本計画によって変わる場合があるため注意が必要です。
また、税制措置を受ける場合は、別途定められた規模要件や対象設備の要件を満たす必要があります。
先端設備等導入計画の認定に必要な書類
先端設備等導入計画の認定申請には、主に以下の書類が必要です。
- 「先端設備等導入計画に係る認定申請書」(様式22)※Wordファイル(28KB)
- 認定経営革新等支援機関による事前確認書
- 市区町村長が必要と認める書類
- A4サイズが折らずに入る返信用封筒(切手貼付)
税制措置対象設備がある場合は、上記に加えて以下が必要です。
- 認定経営革新等支援機関が発行する投資計画に関する確認書
- リース契約見積書の写しと固定資産税軽減計算書の写し(リース取引の場合のみ)
また、固定資産税の1/3軽減(賃上げ方針)を希望する場合は、以下も必要です。
- 従業員へ賃上げ方針を表明したことを証する書面 ※Wordファイル(21KB)
先端設備等導入計画を立てるときのポイント
先端設備等導入計画を立てる際の重要なポイントは、以下の3つです。
第一に、現状認識の明確な記載です。自社の事業概要、財務状況、市場環境、直面している経営課題などを具体的な数値や事実とともに記載します。特に、設備投資が必要な背景や理由を、生産性向上との関連で説明することが重要です。
第二に、導入する設備と期待される効果の具体的な説明です。設備導入により、どのように業務プロセスが改善され、それがどのように生産性向上につながるのかを、定量的な見込みとともに記載します。単なる設備の更新ではなく、生産性向上のための戦略的投資であることを示す必要があります。
第三に、資金計画の実現可能性の提示です。設備投資に必要な資金をどのように調達するのか、返済計画は妥当か、投資回収の見通しはどうかなど、具体的な数値を示しながら説明します。特に、投資利益率5%以上の要件を満たすための根拠を明確に示すことが重要です。
先端設備等導入計画の申請先
先端設備等導入計画については、新たに導入する設備を設置する予定の市区町村に提出します。ただし導入促進基本計画の同意を受けた市区町村に限るため、中小企業庁のWebサイトで確認しましょう。※2024年6月10日現在のリスト→「先端設備導入に係る固定資産税の軽減措置を講じている市区町村」
先端設備等導入計画で困ったときの相談先
先端設備等導入計画に関する相談先としては、申請先の市区町村が挙げられます。
もっとも先端設備等導入計画の認定を受けるには、認定経営革新等支援機関の協力が必要です。申請支援に優れた専門家の助言が得られれば、それほど困ることはないでしょう。認定経営革新等支援機関は「認定経営革新等支援機関検索システム」から探すことができます。
当社、中小企業経営支援事務所も、認定経営革新等支援機関ですので、よろしければご検討ください。
各計画策定でお困りでしたら中小企業経営支援事務所にご相談ください
経営革新計画・経営力向上計画・先端設備等導入計画の認定されると、多くの優遇措置・支援を受ける資格を得ることができます。いずれも中小企業の事業継続・発展に直結する重要な施策ですので、ぜひ積極的な検討をおすすめします。
本記事でもご説明しましたが、経営革新計画・経営力向上計画については認定経営革新等支援機関の力を借りるとスムーズに手続きを進められます。先端設備等導入計画については、認定経営革新等支援機関の協力が不可欠です。
当社、中小企業経営支援事務所では、認定経営革新等支援機関として、経営革新計画・経営力向上計画・先端設備等導入計画、すべての計画の申請サポートからその後の支援まで、トータルで対応しています。
計画申請が初めての事業者様やどの計画を申請すべきかお悩みの事業者様、認定されるか不安な事業者様は、ぜひお気軽にご相談くださいませ。初回相談は無料です。