【2025年1月更新】中小企業新事業進出補助金とは?基本要件や対象経費の最新情報を紹介

中小企業新事業進出補助金の概要

近年の経済状況は、中小企業にとって厳しいものとなっています。物価高騰やエネルギー価格の高騰、円安などの外部環境の変化に加え、人手不足や賃上げ圧力といった内部環境の課題も山積しています。このような状況下で、中小企業が生き残り、成長していくためには、新たな事業展開や生産性向上、既存事業の抜本的な見直しや構造転換といった取り組みが不可欠です。

政府は、こうした中小企業の挑戦を後押しするために、2024年12月に「令和6年度の中小企業・小規模事業者向け補正予算案」(総額5,600億円、既存基金の活用などを含めると1兆円超の規模)を公表し、今後さまざまな支援策を打ち出すこととしました。

そのうちのひとつが、「中小企業新事業進出補助金(中小企業新事業進出促進事業)」の2025年度新設です。本補助金は、中小企業の成長を促進する新規事業進出や事業転換への投資を重点的に支援する制度であり、事業再構築補助金(思い切った事業再構築を目指す事業者を支援する補助金)の後身となる制度として注目を集めています(※)。

この記事では、本補助金について、概要から基本要件、対象事業、補助額、実施期間を解説します。なお、2024年(令和6年)12月25日更新の最新情報を反映した内容となりますが、実際に利用する場合は中小企業庁のサイトもあわせてチェックすることをおすすめします。

当社・中小企業経営支援事務所は、認定経営革新等支援機関として、各補助金のトータルサポートを行っています。計画策定に不安や疑問があれば、ぜひ以下のメールフォームからぜひお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。策定のポイントから制度活用のコツまで、懇切丁寧に解説いたします。

2025年1月10日に、事業再構築補助金の最後の新規受け付けとなる第13回公募が始まりました。この記事では違いについても解説していますので、あわせてご参考ください。

中小企業新事業進出補助金とは?

中小企業新事業進出補助金(中小企業新事業進出促進事業)とは、2025年度に新設される補助金制度のひとつで、既存事業とは異なる新市場や高付加価値事業へ進出するのに必要な設備投資などを行う事業者を支援する補助金制度です。予算は1,500億円規模で、既存基金を活用して実施されます。

出典:中小企業新事業進出促進事業の概要丨中小企業庁

本補助金の主な目的は、中小企業の持続的な成長と賃上げの実現です。

具体的には、人手不足や賃上げ要請といった経済社会の変化に対応するため、中小企業が既存事業の拡大だけでなく、新たな事業の柱となる新事業に挑戦し、企業規模の拡大・付加価値を向上させることを支援します。また、これらの取り組みを通じて得られた収益を、従業員の賃上げにつなげていくことが本補助金の重要な目的です。

政府では本補助金を含め、8つの補助金を実施しています。各補助金ともに補助対象が異なり、本補助金については新しい事業を立ち上げ、新しい市場に打って出る取り組みを補助するという新規事業を対象としています。

以下は、各補助金の補助対象と概要をまとめた表です。

補助金補助対象概要
ものづくり補助金新製品・新サービス開発中小企業・小規模事業者等の生産性向上や持続的な賃上げに向けた新製品・新サービスの開発に必要な設備投資などを支援
省力化補助金省力化投資人手不足に悩む中小企業等に対して、省力化につながる設備投資などを支援
中小企業新事業進出補助金新規事業既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出に必要な設備投資などを支援
中小企業成長加速化補助金大規模投資売上高100億円を目指す中小企業等への設備投資などを支援
事業承継・M&A補助金親族内承継、M&A事業承継に際しての設備投資や、M&A・PMIの専門家活用費用などを支援
大規模成長投資補助金超大規模投資労働生産性の抜本的な向上と事業規模の拡大を目的に行う、工場の新設などの大規模な投資を支援
持続化補助金小規模事業者持続的な経営を目指す小規模事業者の経営計画にもとづく販路開拓などの取り組みを支援
IT導入補助金ITツールの導入業務の効率化やDXの推進、セキュリティ対策に向けたITツールなどの導入費用を支援
政府が行う8つの補助金の補助対象と概要

各補助金によって対象が異なるため、検討しているビジネスプランによっては、そもそも補助対象外で補助金申請ができない可能性があります。

当該の補助金が何を対象としているのかを把握した上で、手続きを始めることをおすすめします。

中小企業新事業進出補助金の基本要件

中小企業新事業進出補助金を受け取るためには、以下の基本要件をすべて満たす3~5年の事業計画に取り組む必要があります。

基本要件詳細
1.新規事業への挑戦成長・拡大を目指した新規事業(新しい製品または新しいサービスを、これまでとは異なる顧客に提供する事業)への挑戦であること
2. 付加価値額の増加付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年平均成長率を+4.0%以上増加させること
3. 一定以上の賃上げ以下のいずれかをクリアすること
・1人あたり給与支給総額の年平均成長率が、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上
・給与支給総額の年平均成長率が+2.5%以上増加
4. 最低賃金の水準向上事業所内最低賃金を事業実施都道府県における地域別最低賃金+30円以上の水準にすること
5. 一般事業主行動計画公表次世代育成支援対策推進法にもとづく一般事業主行動計画を公表すること
中小企業新事業進出補助金の基本要件

なお、本補助金には大幅賃上げ特例があり、適用されると補助上限額が上乗せされます。適用されるには、上記条件に加えて、事業終了時点で「事業場内最低賃金が+50円」「給与支給総額+6.0%」達成する事業計画に取り組む必要があります。

中小企業新事業進出補助金の補助上限・補助率

中小企業新事業進出補助金の補助率は一律で1/2です。補助上限額は従業員数によって4段階に分かれています。

従業員数通常の補助上限額大幅賃上げ特例時の補助上限額
20人以下2,500万円3,000万円
21~50人4,000万円5,000万円
51~100人5,500万円7,000万円
101人以上7,000万円9,000万円
中小企業新事業進出補助金の補助上限・補助率

なお、補助下限額は750万円に設定されています。

中小企業新事業進出補助金の補助対象経費

中小企業新事業進出補助金の補助対象経費には、以下の10項目が含まれます。

  1. 建物費:工場・店舗などの建設に要する経費
  2. 構築物費:補助事業の実施に必要な構築物の建設などに要する経費
  3. 機械装置・システム構築費:生産設備やソフトウェアの購入などに係る経費
  4. 技術導入費:知的財産権などの導入に要する経費
  5. 専門家経費:コンサルタントなどの専門家への謝金
  6. 運搬費:設備・機械などの運搬に要する経費
  7. クラウドサービス利用費:クラウドサービスの利用に係る経費
  8. 外注費:製品開発などの一部を外部に委託する経費
  9. 知的財産権等関連経費:特許権などの取得に要する経費
  10. 広告宣伝・販売促進費:新製品・サービスのPRや販売促進に係る経費

本補助金の対象経費は、新市場・高付加価値事業への進出に直接関係する支出であり、事業計画に沿った適切なものであることが求められます。

また、後述する補助事業の実施期間内に発生し、支払いが完了しているもののみが対象となります。

中小企業新事業進出補助金の事業実施期間

中小企業新事業進出補助金の事業実施期間は、交付決定日から14ヶ月以内と定められています(ただし、採択発表日から16ヶ月以内)

この期間内に、設備投資や新事業立ち上げなどの計画した事業を実施し、支払いまで完了させることが求められます。

中小企業新事業進出補助金の留意点

中小企業新事業進出補助金では、上記以外にいくつかの留意点が公表されています。

本補助金では、これまでの補助金制度では収益納付が設定されるのが一般的であった収益納付は求めないとしています。収益納付とは、補助事業を行った際に発生した収益の一部または全部(補助金交付額を限度に)を国に納付することを指します。本補助金は、事業者にとって、より利用しやすい補助金制度になっているといえるでしょう。

基本要件のうち、「一定以上の賃上げ」と「最低賃金の水準向上」が未達の場合は、未達成率に応じて補助金の返還が求められます。ただし、付加価値が増加せず企業全体の営業利益が赤字の場合や、天災などやむを得ない場合は返還が免除されます。

中小企業新事業進出補助金の公募スケジュール(予想)

中小企業新事業進出補助金の公募開始時期は、2025年1月6日現在は未公表です。ただし本補助金の事務局の公募要領案によれば、本事業の補助事業者向けの公募要領が2025年4月までに公開され、そこから速やかに補助事業者の応募申請を受け付けるとしています(参照:「中小企業新事業進出促進事業」に係る事務局の公募要領〈案〉p.3丨中小機構)。

したがって、同時期には初回の公募が始まると予想されます。

なお、同公募要領案によれば、本補助金の公募回数は2026年度末までに4回程度、採択予定件数は計6,000件程度となっています。

中小企業新事業進出補助金の大まかな流れ

中小企業新事業進出補助金の大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 事前準備
    新規事業を検討し、基本要件を満たす事業計画を策定する。申請時は「GビズIDプライム」アカウントが必要になるため、事前に取得しておく
  2. 公募開始~交付候補者決定
    事務局が申請を受け付け、締切日以降に審査を実施して交付候補者を決定する
  3. 交付決定~補助事業実施
    交付候補者となった事業者が交付申請を行う。申請によって交付が決定したら、補助事業を実施。事務局が補助額の確定検査を行い、補助額を確定させる。事業者が補助金の請求を事務局に行い、補助金を受け取る
  4. 補助事業終了後
    事業化状況報告と知的財産等報告を事務局に行う

2025年度に中小企業新事業進出補助金以外に行われる予定の支援事業

政府は、厳しい経営環境に直面する中小企業・小規模事業者を支援するために、中小企業新事業進出補助金創設以外にも、さまざまな対策を「令和6年度の中小企業・小規模事業者向け補正予算案」に盛り込んでいます。

予算案では、生産性向上支援(生産性革命推進事業のうち、ものづくり補助金、IT導入補助金、持続化補助金、事業承継・M&A補助金)の拡充・見直し案が盛り込まれています(3,400億円の内数)。この拡充・見直しは、中小企業・小規模事業者がより使いやすくなること、高い効果をより実感できるようにすることを目指しています。

具体的には以下のとおりです。

補助金主な拡充・見直し内容
ものづくり補助金・最低賃金近傍の事業者への補助率を1/2→2/3に引き上げ
・従業員21人以上の中小企業を対象に、製品・サービス高付加価値化枠の補助上限を引き上げ
IT導入補助金・最低賃金近傍の事業者への補助率を1/2→2/3に引き上げ
・セキュリティ枠の補助上限引き上げと要件見直し
・汎用ツール・導入後支援を補助対象化
持続化補助金・経営計画の策定に重点化
・通常枠、創業枠などに再編して制度を簡素化
事業承継・M&A補助金・PMI推進枠の新設
・事業承継促進枠への改変
・DD費用の支援拡充
・100億企業創出加速化のための補助上限引き上げ
生産性向上支援の拡充・見直しの主な内容

売上高100億円を目指す意欲の高い中小企業・小規模事業者や、地方においても持続的な賃上げを実現することを目指す中堅・中小企業の成長を目的とした支援策も、予算案には盛り込まれました。

具体的には以下のとおりです。

支援策規模主な支援内容
中小企業成長加速化補助金(仮称)の創設3,400億円の内数売上高100億円を目指す中小企業等への設備投資支援や中小機構による経営課題への支援
中堅・中小成長投資補助金の拡充1,400億円(新規3年3,000億円)人手不足の課題解消のために拠点新設をするなど大規模投資を行う中堅・中小企業を支援するのとあわせて、大企業からの経営人材を受け入れる中堅・中小企業への給付金を拡充
100億企業育成ファンド出資事業30億円中小機構出資ファンドを通じて、売上高100億円超を目指す中小企業などへのリスクマネー供給
成長投資支援の主な内容

省力化投資支援としては、既存基金を活用(3,000億円規模)して省力化補助金の運用改善が実施されます。オーダーメイド形式も幅広く対象となる省力化投資支援が新設され、カタログ形式の同支援の運用改善と合わせて、全方位型の支援へと再編されます。

中小企業・小規模事業者の活性化に向けた支援も、404億円+既存予算を活用して実施されます。具体的な支援内容は以下の通りです。

支援策規模主な支援内容
日本政策金融公庫による資金繰り支援既存予算の活用通常資本性劣後ローンの要件見直し(省力化投資に取り組む事業者を対象追加、金利水準引下げ、貸付限度額拡充)
信用保証協会による資金繰り支援既存予算の活用プロパー融資促進のための新たな保証制度の創設
経営改善・事業再生・再チャレンジ支援の拡充既存予算の活用+61億円の内数早期経営改善計画策定支援事業を通じた金融機関による経営改善支援の拡充
事業環境変化対応型支援事業112億円商工会や商工会議所などへの専門家派遣などの強化や、よろず支援拠点へのコーディネーター増員
中小企業活性化・事業承継総合支援事業61億円事業再生等計画策定支援、事業承継・事業引継ぎ支援のための体制強化
中小企業取引対策事業8.3億円中小企業・小規模事業者の取引適正化の推進
令和6年能登半島地震等の切れ目ない復旧支援の継続213億円なりわい再建支援補助金による支援、グループ補助金による支援
地方公共団体による小規模事業者支援推進事業の拡充10億円自治体連携型補助金の補助対象拡大、補助上限を5億円まで引き上げ
中小企業・小規模事業者の活性化に向けた支援の主な内容

中小企業新事業進出補助金と事業再構築補助金第13回公募の違い

中小企業庁は、中小企業新事業進出補助金の前身となる事業再構築補助金の第13回公募を2025年1月10日にスタートしました。場合によっては、事業再構築補助金第13回に応募したほうがよい場合もありますので、比較検討することをおすすめします。

以下は、特に大きな違いをまとめた表です。

項目新事業進出補助金事業再構築補助金第13回
事業類型(A):成長分野進出枠(通常類型)事業類型(B):成長分野進出枠(GX類型)事業類型(D):コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)
補助上限額5人以下2,500(3,000)万円1,500(2,000)万円3,000(4,000)万円500万円
6~20人2,500(3,000)万円1,500(2,000)万円3,000(4,000)万円1,000万円
21~50人4,000(5,000)万円3,000(4,000)万円5,000(6,000)万円1,500万円
51~100人5,500(7,000)万円4,000(5,000)万円7,000(8,000)万円1,500万円
101人以上7,000(9,000)万円6,000(7,000)万円8,000万(1億)円1,500万円
中堅企業中小企業者等と同じ1(1.5)億円中小企業者等と同じ
下限額750万円100万円
補助率1/2中小企業者等:1/2(2/3)
中堅企業等:1/3(1/2)
中小企業者等:1/2(2/3)
中堅企業等:1/3(1/2)
中小企業者等:3/4
中堅企業等:2/3
※コロナで抱えた債務の借り換えを行っていない場合
中小企業者等:2/3
中堅企業等:1/2
上乗せ措置なしあり(卒業促進上乗せ措置・中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置)
申請経費構築物費:対象
廃業費(未発表)
構築費:対象外
廃業費:対象
収益納付なしあり
新事業進出補助金と事業再構築補助金第13回の主な違い ※カッコ内の数字は短期に大規模な賃上げを行う場合

例えば、新事業進出補助金と事業再構築補助金第13回の下限額を比較すると、新事業進出補助金のほうが高く設定されています。そのため、比較的小規模な設備投資であれば事業再構築補助金のほうがよいでしょう。

一方、新事業進出補助金は、事業再構築補助金第13回とは違って収益納付がないため、収益が突然跳ね上がる可能性がある事業を行う場合は、新事業進出補助金のほうが向いているでしょう。開発したアプリが爆発的にヒットして利益が突き抜けるなどがある情報通信業、インバウンド需要で利益が一気に生まれる宿泊業などは、特に比較検討することをおすすめします。

事業再構築補助金第13回の詳細については、下記記事で紹介していますので、よろしければご覧ください。

中小企業新事業進出補助金を検討中でしたら中小企業経営支援事務所にご相談ください

本補助金の詳細が記載された公募要領は、2025年4月までに公表される予定です。本補助金を検討している事業者は、中小企業庁の最新情報を定期的にチェックすることをおすすめします。

また、いずれの補助金と同様、本補助金も、事業計画の内容が採択を左右します。補助金採択のための事業計画を立てるには、ある程度まとまった時間が必要ですので、早めの行動が鍵となるでしょう。

当社・中小企業経営支援事務所は、多くの事業者の補助金申請をサポートしてきた補助金採択支援のエキスパートです。補助金採択につながる事業計画書の書き方はもちろん、交付後の事業運営も含め、トータルで支援しています。

本補助金の申請を検討している人は、ぜひご相談いただけますと幸いです。初回相談は無料となっています。

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