2025年 第19回公募 令和6年度補正予算案「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」まとめ|基本要件・補助金額・対象経費
近年の日本経済は、生産性向上による経済成長が喫緊の課題となっています。特に、ものづくり、商業、サービス業といった分野においては、生産性向上を実現するための施策が重要です。そこで、中小企業庁は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」を設け、中小企業等の生産性向上を支援しています。
この記事では、中小企業庁が令和6年12月に公表した令和6年度補正予算案「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」について、概要と令和6年12月23日時点での最新情報をわかりやすくまとめました。本補助金の申請を検討されている企業のみなさまのお役に少しでも立ちましたら幸いです。
当社・中小企業経営支援事務所は、認定経営革新等支援機関として、各補助金のトータルサポートを行っています。本補助金の内容や事業所計画の策定に不安や疑問があれば、ぜひ以下のメールフォームからぜひお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。策定のポイントから制度活用のコツまで、懇切丁寧に解説いたします。
もくじ
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金とは
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の概要
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金とは、中小企業・小規模事業者の生産性向上と持続的な賃上げを支援することを目的とした補助金です。具体的には、革新的な製品・サービスの開発や、生産プロセスの改善に必要な設備投資等にかかる費用の一部を補助します。
本補助金は、支援を通して中小企業の競争力強化と従業員の処遇改善の両立を図り、日本経済の持続的な成長に貢献することを目指しています。
令和5年度補正予算から令和6年度補正予算で変更された点
中小企業庁は、令和6年12月に令和6年度補正予算案「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」を公表しました。
令和5年度補正予算案から変更された点は、主に以下の4つです。
- 基本要件の見直し
給与支給総額の対象が「1人あたり」に。必要な成長率も「年平均成長率1.5%」から、「事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、または+2.0%以上増加」へと変更 - 補助枠・類型や補助金額に関する変更
枠・類型が「省力化(オーダーメイド枠)」「製品・サービス高付加価値化枠(通常類型・成長分野進出類型〈DX・GX〉」「グローバル枠」から、「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」の2つに変更
あわせて製品・サービス高付加価値化枠の補助上限額を一部拡充。令和5年度の同枠(通常類型)では「従業員数21人以上:1,250万円」だったの対し、令和6年度では「21~50人:1,500万円」「51人以上:2,500万円」となる - 特例の創設
最低賃金に近い水準の従業員を一定期間以上、かつある程度雇用している中小企業の賃上げを支援する「最低賃金引上げ特例」を創設 - 収益納付制度の廃止
従来の補助金では求められていた収益納付(補助金事業で生じた利益の一部あるいは全部を、補助金交付額を限度として国に納付すること)が不要となり、事業者の負担が軽減
これらの変更により、より効果的な生産性向上と賃上げの実現を目指す制度となりました。
なお、令和6年度補正予算案「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の予算額は、同補正予算「中小企業生産性革命推進事業」3,400億円の内数となっています(令和5年度は同事業2,000億円の内数)。
ものづくり補助金と省力化投資補助金の違いについて
2023年度公募 第16次以前のものづくり補助金の通常枠の事業概要には、「革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に 必要な設備・システム投資等を支援」と書かれていました。つまり、事業の目的が、「革新的な製品・サービス開発」「生産プロセス・サービス提供方法の改善」どちらであっても、応募することができました。
2024年度公募 第17次公募、第18次公募では、「革新的な製品・サービス開発」「生産プロセス・サービス提供方法の改善」によって、応募する枠が異なりました。
省力化(オーダーメイド)枠の趣旨は「人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備 (オーダーメイド設備)の導入等 により、革新的な生産プロセス・ サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・ システム投資等を支援」でした。
製品・サービス高付加価値化枠の趣旨は「革新的な製品・サービス開発の取組みに必要な設備・システム投資等を支援します。」でした。
2025年度においては、設備を導入する目的が、「革新的な製品・サービス開発を行う」ためのものなのか?「革新的な生産プロセス・ サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組み」なのか?によって、応募すべき補助金自体が異なることになりました。
前者であれば、ものづくり補助金。後者であれば、省力化投資補助金の一般枠です。
こうした動きからも、制度設計の担当者も、意識して、目的を明確に区分して制度設計をされていることがわかります。
補助金のお申し込みをご検討されている事業者様は、まずは、設備を導入することで、革新的な製品・サービス開発が実現するのか?もしくは、革新的な生産プロセス・ サービス提供方法の効率化・高度化が実現するのかを明確にされることをお勧めいたします。
↓省力化投資補助金一般枠の記事はこちらから↓
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の要件
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金を受け取るためには、いくつかの要件をクリアしている必要があります。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の基本要件
本補助金では、革新的な製品・サービス開発を行い、以下の4つの要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定して実行することが求められます。
- 付加価値額の年平均成長率を+3.0%以上増加させる
- 1人あたりの給与支給総額の年平均成長率を、以下のいずれかにする
・事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上
・給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加 - 事業所内最低賃金を、事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準にさせる
- 従業員21人以上の場合は、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表などを行う
本補助金を受ける事業者は、これらの要件を実際に満たしていることを事業化状況報告を毎年提出して証明しなければいけません。もし未達の場合は、補助金の返還義務が発生します。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の特例要件
本補助金では、基本要件に加え、さらに一定の要件を満たすと特例が適用されます。本補助金で用意されている特例は、「大幅賃上げ特例」と「最低賃金引上げ特例」の2つです。
大幅賃上げ特例は、給与支給総額の年平均成長率を+6.0%以上増加させる、および事業所内最低賃金を事業実施都道府県における最低賃金+50円以上の水準にする場合に、補助上限額が100~1,000万円適用される特例です。
最低賃金引上げ特例は、中小企業庁が指定する一定期間において、3ヶ月以上地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員数の30%いる中小企業にのみ適用される特例です。この特例の対象となると、クリアしなければならない基本要件が1・2・4のみとなります。また、補助率が1/2から2/3に引き上げられます。
なお、基本要件同様、これらが適用された事業者は事業化状況報告で毎年要件を満たしていることを証明する必要があります。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の補助上限額・補助率
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の補助上限額・補助率は、申請枠によって異なります。
製品・サービス高付加価値化枠
製品・サービス高付加価値化枠の補助上限額は、以下のとおりです。
従業員規模 | 補助上限額 | 大幅賃上げ特例適用 |
---|---|---|
5人以下 | 750万円 | 850万円 |
6~20人 | 1,000万円 | 1,250万円 |
21~50人 | 1,500万円 | 2,500万円 |
51人以上 | 2,500万円 | 3,500万円 |
補助率は中小企業の場合1/2(最低賃金引上げ特例の対象となる中小企業は2/3)、小規模・再生事業者の場合2/3です。
グローバル枠
グローバル枠の補助上限額は、以下のとおりです。
補助上限額 | 大幅賃上げ特例適用 |
---|---|
3,000万円 | 3,100~4,000万円 |
補助率は、中小企業の場合1/2(最低賃金引上げ特例の対象となる中小企業は2/3)、小規模事業者の場合2/3です。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の補助対象経費
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金における補助対象経費は、以下のように大きく2つに分類されます。
全ての枠で共通の補助対象経費 | グローバル枠のみで追加される補助対象経費 |
---|---|
・機械装置費やシステム構築費(必須経費) ・技術導入費 ・専門家経費 ・運搬費 ・クラウドサービス利用費 ・原材料費 ・外注費 ・知的財産権等関連経費 | ・海外旅費 ・通訳費や翻訳費 ・広告宣伝費や販売促進費 |
特徴として、すべての枠において機械装置・システム構築費が必須経費として設定されています。これは本補助金が、設備投資を通じた生産性向上を重視していることを示しています。
また、グローバル枠では海外展開に必要な経費が追加で認められており、海外需要開拓などの取り組みを支援する制度設計となっています。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の大まかな流れ
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の大まかな流れは、以下の通りです。
- 公募要領で申請要件や対象経費などを確認する
- 定められた期限までに申請を済ませる
- 補助金事務局が申請書類をもとに審査をする
- 採択事業者に交付決定通知が送られる
- 提出した事業計画に沿って設備投資等の事業を実施する
- 事業完了後に実績を報告する
- 補助金事務局が検査を実施し、最終的な補助金額を決定する
- 補助事業終了後、毎年事業化状況を報告する
なお、補助金申請には「GビズIDプライム」アカウントの取得が必要となります。本補助金でも必要となる可能性が高いため、事前に取得しておくことをおすすめします。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金を検討中でしたら中小企業経営支援事務所にご相談ください
令和6年12月に公表された令和6年度補正予算案「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」は、前年度よりも要件が緩和され、利用しやすいものになっています。特に通常の補助金ではよく見られた「収益納付」が求められない点は大きいでしょう。
補助金は、企業の成長につながる大きなサポーターです。ぜひこの機会に検討してみてはいかがでしょうか。
ただ、利用しやすくなっているということは、多くの事業者が申請する可能性が高いことを意味します。他の企業よりも審査員の印象に残るような事業計画を立てる必要があるでしょう。
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の最新の公募要領が公表されたらよく目を通すことも重要ですが、今のうちからできる準備を進めておくことをおすすめします。
もし事業計画の策定について不安やお悩みがありましたら、当社・中小企業経営支援事務所にご相談ください。補助金申請サポートのエキスパートである当社スタッフが、採択につながる事業計画の立て方についてアドバイスいたします。採択決定後の事業実施における注意点や事業化状況報告のコツもお伝えしておりますので、ぜひご連絡いただけますと幸いです。