【2025年最新】事業承継・M&A補助金とは?基本要件や補助額、対象経費などをわかりやすく紹介

事業承継・M&A補助金の概要

事業承継とM&Aは、中小企業・小規模事業者にとって事業を円滑に継続・発展させるための重要な経営戦略です。特に、後継者不足が深刻化する中で、M&Aは外部から経営人材を確保する有効な手段として注目されています。

しかし、M&Aや事業承継には、手続きの複雑さや費用負担など、さまざまな課題が存在します。そこで、国の令和6年度補正予算で設けられたのが「事業承継・M&A補助金」です。本補助金は、令和5年度まで実施されていた「事業承継・引継ぎ補助金」の後身となるもので、中小企業・小規模事業者の事業承継やM&Aをより後押しする内容となっています。

この記事では、「事業承継・M&A補助金」について、その目的や支援枠、補助額、対象経費などを、中小企業庁が公表しているパンフレットをもとにわかりやすく解説します。

なお、2025年1月7日時点での情報となりますので、実際に活用される際は最新の情報を確認することをおすすめします。

当社・中小企業経営支援事務所は、認定経営革新等支援機関として、各補助金のトータルサポートを行っています。本補助金の内容や事業所計画の策定に不安や疑問があれば、ぜひ以下のメールフォームからぜひお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。策定のポイントから制度活用のコツまで、懇切丁寧に解説いたします。

事業承継・M&A補助金とは

事業承継・M&A補助金は、中小企業・小規模事業者等の事業承継時の設備投資やM&A実施時の専門家活用費用、M&A後のPMI(経営統合プロセス:Post Merger Integration)に関する費用の一部を補助し、円滑な事業承継とM&Aの促進を図ることを目的とした補助金制度です。

本補助金は、令和5年度まで実施されていた「事業承継・引継ぎ補助⾦」を見直し、事業承継やM&Aをさらに促す内容に変更されたものとなります。また、中小企業令和6年度補正予算案に盛り込まれた「中小企業生産性革命推進事業」(予算規模3,400億円)の一環として実施されるもので、中小企業の事業継続性を高め、日本経済の基盤強化に寄与することを目指しています。

令和6年度補正予算案で盛り込まれた事業承継・M&A補助金と、令和5年度の事業承継・引継ぎ補助金の主な違いは、以下のとおりです。

項目事業承継・M&A補助金(令和6年度)事業承継・引継ぎ補助⾦(令和5年度)
支援枠構成・事業承継促進枠
・専門家活用枠
・PMI推進枠
・廃業・再チャレンジ枠
・経営革新枠
・専門家活用枠
・廃業・再チャレンジ枠
補助上限額最大2,000万円(専門家活用枠)最大600万円(専門家活用枠)

最も大きな変更点は、M&A後の経営統合(PMI)を支援する「PMI推進枠」が新設されたことです。これにより、M&A後の経営統合に関する専門家活用や設備投資がしやすくなっています。

また、補助上限額も拡大され、特に専門家活用枠では、100億企業要件を満たす場合、最大2,000万円まで補助を受けられるようになりました。これは前年度の最大補助額800万円と比べて大幅な増額となっています。

このように、令和6年度の改正では、M&Aの活用促進とその後の統合プロセスの支援強化に重点が置かれていることが特徴です。

事業承継・M&A補助金の4つの支援枠

事業承継・M&A補助金では、4つの支援枠が設けられます。それぞれの支援枠の要件、補助上限額・補助率、対象経費を紹介します。

事業承継促進枠は、近い将来の事業承継に向けて、経営基盤を強化するために設備投資を行う中小企業・小規模事業者を支援する制度です。

枠名事業承継促進枠
概要5年以内の事業承継を予定している事業者の設備投資等を支援
要件5年以内に親族内承継または従業員承継を予定している者
補助上限額・補助率800~1,000万円(一定の賃上げ実施で1,000万円に引き上げ)
補助率1/2(小規模事業者は2/3)
対象経費設備費、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費など
事業承継促進枠の概要

事業承継促進枠の要件

本枠を利用するためには、5年以内に親族内承継または従業員承継を予定していることが必要です。

事業承継促進枠の補助上限額・補助率

補助上限額は800万円ですが、一定の賃上げを実施する場合は1,000万円まで引き上げられます。補助率については、中小企業者の場合は1/2となりますが、小規模事業者に該当する場合は2/3に引き上げられます。

事業承継促進枠の対象経費

補助対象となる経費は多岐にわたり、主に以下が含まれます。

  • 設備費:事業承継に必要な機械装置などの購入費用
  • 産業財産権等関連経費:特許権などの取得に関する費用
  • 謝金:専門家への相談費用など
  • 旅費:事業承継に関連する出張費用
  • 外注費:外部業者への委託費用
  • 委託費:専門家などへの業務委託費用

専門家活用枠は、M&A実施時の専門家活用に係る費用を支援する制度です。フィナンシャル・アドバイザー(FA)や仲介業者の費用、デューデリジェンス(DD)費用、表明保証保険料などを補助対象としています。

枠名専門家活用枠
概要M&A時の専門家活用に係る費用(FA・仲介費用、表明保証保険料など)を補助
要件補助事業期間に経営資源を譲り渡す、または譲り受ける者
補助上限額①買い手支援類型
600~800万円(800万円を上限にDD費用を申請する場合、200万円を加算)
2,000万円(100億円企業要件を満たす場合)
②売り手支援類型
600~800万円(800万円を上限にDD費用を申請する場合、200万円を加算)
補助率①買い手支援類型
1/3・1/2、2/3(100億円企業要件を満たす場合、1,000万円以下の部分は1/2、1,000万円超の部分は1/3)
②売り手支援類型
1/2(赤字、もしくは営業利益率が一定程度低下している場合は2/3)
対象経費謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料
専門家活用枠の概要

専門家活用枠の要件

本枠は、補助事業期間中に経営資源を譲り渡す、または譲り受ける予定の事業者が対象となります。

専門家活用枠の補助上限額・補助率

本枠は買い手支援類型売り手支援類型の2つに分かれ、それぞれ補助上限額・補助率が異なります。

買い手支援類型の補助上限は600万円ですが、DD費用を申請する場合は800万円まで引き上げられます。さらに、100億企業要件を満たす場合は2,000万円まで拡大されます。補助率は原則1/2ですが、100億企業要件を満たす場合、1,000万円超の部分は1/3となります。

売り手支援類型の補助上限は600万円で、DD費用申請時は800万円まで引き上げ可能です。補助率は原則1/2ですが、赤字企業や営業利益率が低下している場合は2/3に引き上げられます。

専門家活用枠の対象経費

主な対象経費は以下の通りです。

  • 謝金:専門家への相談費用
  • 旅費:M&A関連の出張費用
  • 外注費:外部業者への委託費用
  • 委託費:専門家への業務委託費用
  • システム利用料:M&A関連システムの利用料
  • 保険料:表明保証保険等の費用

なお、FA・仲介費用については、「M&A支援機関登録制度」に登録された事業者による支援に係る費用のみが補助対象となります。

PMI推進枠は、M&A後のPMI(経営統合プロセス)に関する費用を支援する制度です。

項目内容
枠名PMI推進枠
概要M&A後のPMIに係る費用(専門家費用、設備投資など)を補助
要件M&Aに伴い経営資源を譲り受ける予定の中小企業等に係るPMIの取り組みを行う者
補助上限額①PMI専門家活用類型
150万円
②事業統合投資類型
800~1,000万円(一定の賃上げ実施で1,000万円に引き上げ)
補助率①PMI専門家活用類型
1/2
②事業統合投資類型
1/2(小規模事業者は2/3)
対象経費設備費、外注費、委託費など
PMI推進枠の概要

PMI推進枠の要件

本枠を利用するためには、M&Aに伴い、経営資源を譲り受ける予定の中小企業等に係るPMIの取り組みを行う者であることが必要です。

PMI推進枠の補助上限額・補助率

本枠は、専門家活用類型事業統合投資類型の2類型が用意されており、異なる補助上限額と補助率が設定されています。

PMI専門家活用類型の補助上限額は150万円で、補助率は1/2となっています。一方、事業統合投資類型の補助上限額は800万円ですが、一定の賃上げを実施する場合は1,000万円まで引き上げられます。補助率については、中小企業者の場合は1/2となりますが、小規模事業者に該当する場合は2/3に引き上げられます。

PMI推進枠の対象経費

補助対象となる経費は、主に以下が含まれます。

  • 設備費:PMIに必要な機械装置などの購入費用
  • 外注費:外部業者への委託費用
  • 委託費:PMI関連の業務委託費用

廃業・再チャレンジ枠は、事業承継やM&Aに伴って発生する廃業などの費用を支援する制度です。この支援枠は、他の支援枠(事業承継促進枠、専門家活用枠、事業統合投資類型)と併用して申請できます。

項目内容
枠名廃業・再チャレンジ枠
概要事業承継やM&Aに伴う廃業などに係る費用(例:原状回復費・在庫処分費)を補助
要件事業承継やM&Aの検討・実施に伴って廃業などを行う者
補助上限額150万円(他の支援枠と併用申請する場合は、各支援枠の補助上限に加算)
補助率1/2・2/3(併用申請の場合は各事業の補助率に従う)
対象経費廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転・移設費用(併用申請の場合のみ)
廃業・再チャレンジ枠の概要

廃業・再チャレンジ枠の要件

本枠を利用するためには、事業承継やM&Aの検討・実施に伴って廃業などを行う者であることが条件となります。

廃業・再チャレンジ枠の補助上限額・補助率

補助上限額は150万円に設定されています。ただし、他の支援枠と併用申請する場合は、それぞれの補助上限額に150万円が加算されます。補助率については、単独で申請する場合は1/2または2/3です。併用申請の場合は、各事業における事業費の補助率が適用されます。

廃業・再チャレンジ枠の対象経費

補助対象となる経費には以下が含まれます。

  • 廃業支援費:廃業に関連する支援サービスの利用費用
  • 在庫廃棄費:在庫の処分に係る費用
  • 解体費:建物や設備の解体に要する費用
  • 原状回復費:賃借物件等の原状回復に必要な費用
  • リースの解約費:リース契約の解約に伴う費用
  • 移転・移設費用:併用申請の場合のみ対象となる、設備等の移転や移設に係る費用

事業承継・M&A補助金の大まかな流れ

事業承継・M&A補助金の申請から補助金交付までの流れは、大きく4つのステップに分かれます。

  1. 事前準備
    まず、自社の課題を把握し、具体的な事業計画を検討します。その後、公募要領が公開されるのを待ちます。
  2. 公募開始~交付決定
    公募要領が公開され、まもなくして申請受付が始まります。申請締切後、補助金事務局による審査を経て採択された事業者は、補助金事務局から交付決定を受けます。
  3. 補助事業実施~補助金交付
    交付決定後、補助事業を開始します。事業完了後は実績報告書を事務局に提出し、確定検査を受けます。検査後、補助額が確定したら事務局に補助金請求を行い、補助金を受け取ります。確定検査時に実施内容や経費に問題があるとみなされた場合、交付決定されていても補助金が支払われない可能性がある点には注意が必要です。
  4. 補助期間終了後
    補助事業終了後は、3~5年間にわたって事業化状況の報告が必要となります。この期間が事業計画の実施期間となります。

なお、補助事業期間内に発生し支払いを完了した経費のみが補助対象となるため、適切な事業計画の策定と実施が重要です。

事業承継・M&A補助金以外の中小企業生産性革命推進事業

事業承継・M&A補助金は、令和6年度補正予算案で盛り込まれた中小企業生産性革命推進事業のひとつです。本事業では、中小企業等の稼ぐ力を強化し、持続的な賃上げを促進するために、事業承継・M&A補助金新設のほかに、以下の3つの取り組みが行われる予定となっています(参照:令和6年度補正予算〈中小企業・小規模事業者等関連予算〉丨中小企業庁)。

ものづくり補助金とは、中小企業・小規模事業者等の新製品・新サービスの開発に必要な設備投資を支援する制度です。令和6年度の補正予算案では、製品・サービス高付加価値化枠について、従業員21人以上の中小企業を対象に補助上限が引き上げられます。また、最低賃金近傍の事業者への支援として、補助率が1/2から2/3となります。さらに、賃上げ動向を踏まえた賃上げ要件や運用の見直しも実施される予定です。

IT導入補助金は、中小企業のIT化を促進するための支援制度です。主な変更点として、セキュリティ枠の補助上限引き上げや要件見直しが行われます。また、汎用ツールの導入や導入後の支援も補助対象となります。最低賃金近傍の事業者については、補助率が1/2から2/3に引き上げられる予定です。

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓などを支援する制度です。令和6年度補正予算案で、経営計画の策定に重点を置き、制度の簡素化が図られることになりました。具体的には、通常枠や創業枠等への再編が行われ、より使いやすい制度となります。

事業承継・M&A補助金の申請でお困りでしたら中小企業経営支援事務所にご相談ください

補助金の申請には、事業計画の策定から実施後の報告まで、多くのステップと専門的な知識が必要です。特に事業承継・M&A補助金は複数の支援枠があり、それぞれ要件や補助率が異なるため、自社に最適な支援枠を選択することも重要となります。

当社・中小企業経営支援事務所は、認定経営革新等支援機関として、事業承継・M&A補助金をはじめとする各種補助金のトータルサポートを行っています。

当社では、補助金申請の実績が豊富な専門家が、計画策定のポイントから制度活用のコツまで、懇切丁寧にアドバイスしています。初回相談は無料ですので、補助金活用を検討している場合は、お気軽にご相談ください。

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