中小企業成長加速化補助金 100億宣言とは?実施のメリットや記載内容を最新情報をもとに徹底解説

近年、中小企業の成長促進が経済活性化の鍵として重要視されています。売上高100億円規模の企業は、経済への影響力も大きく、雇用創出や地域経済の活性化にも大きく貢献します。
そこで、中小企業庁と独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)は、中小企業の飛躍的成長を支援するため、「100億宣言」プロジェクトを開始しました。
項目 | 内容 |
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100億宣言の概要 | 中小企業自らが「売上高100億円」の実現に向けた取り組みを行っていくことを宣言 宣言内容は令和7年5月頃開設予定のポータルサイトで公表 |
100億宣言の目的 | 「売上高100億円」という野心的な目標を掲げる中小企業を政府も支援することで、日本経済の成長を促す |
100億宣言することで中小企業が得られる主なメリット | ・補助金活用 ・経営者ネットワークへの参加 ・公式ロゴマークの使用 |
この記事では、「100億宣言」の概要、メリット、記載内容、提出の流れ、ルール、関連資料、問い合わせ先などを、中小企業庁の「100億宣言」ページに掲載されている最新情報をもとに、詳しく解説します。
当社・中小企業経営支援事務所は、中小企業経営のトータルサポートを行っています。100億宣言の策定に不安や疑問があれば、ぜひ以下のメールフォームからぜひお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。策定のポイントから制度活用のコツまで、懇切丁寧に解説いたします。
もくじ
100億宣言とは
100億宣言とは、売上高10億円から100億円未満の中小企業が、「売上高100億円」という野心的な目標達成に向けた取り組みを宣言するものです。中小企業の挑戦を支援するプロジェクトのひとつとして、中小企業庁と中小機構によって開始されています。
日本経済の長きにわたる低迷から脱却するには、中小企業の挑戦と創意工夫が欠かせません。具体的には売上高100億円を実現し、多くの付加価値を生み出せる企業の存在が重要と考えられています。
そうした、いわゆる100億円企業を創出する支援策として始まったのが本プロジェクトです。
100億宣言は、以下の5つの要素を含むものとしています。
- 企業概要(売上高、従業員数など)
- 売上高100億円実現の目標と課題
- 実現に向けた具体的措置(生産体制強化、海外展開、M&Aなど)
- 実施体制
- 経営者のコミットメント
これらの要素を含めるようにすると、中小企業の実際に100億を実現する強い気持ちと実現可能性を明確になります。それを通して売上高100億円への成長の機運を高めることが、本プロジェクトの目的です。
なお、宣言した企業の取り組みは専用ポータルサイトで公開され、「見える化」されます。
100億宣言をするメリット
中小企業が100億宣言をすると、主に以下の3つのメリットを得られます。
補助金などが活用できる
100億宣言を行った企業は、さまざまな補助金や税制優遇措置を活用することができます。
例えば中小企業成長加速化補助金は、最大5億円の大規模な設備投資支援をするもので、100億宣言を事前にしておくことが基本要件になっています。100億円の売上を目指す上では大胆な投資が必要となるため、本補助金と100億宣言は二つで一つと言ってもいいでしょう。
また、令和7年夏頃から始まる経営強化税制の拡充措置を受けられるようにもなります。
このように、100億宣言は単なる目標設定だけでなく、具体的な支援メニューと連動した実効性のある制度として設計されています。宣言企業は、これらの支援を戦略的に活用することで、より確実な成長に結びつけられるでしょう。
経営者ネットワークに参加できる
100億宣言を行った企業の経営者は、地域や業種の垣根を超えた経営者ネットワークに参加できるようになります。
このネットワークは、高い成長意欲を持つ経営者同士が交流し、相互に刺激し合える場として機能します。これにより、以下のようなメリットがあります。
- 異業種の経営者との交流による新たな気づきの獲得
- 成長に向けた課題や解決策の共有
- ビジネスパートナーの発掘や協業機会の創出
- 地域を超えた事業展開のヒントの入手
経営者ネットワークは単なる交流の場ではなく、100億円企業への成長を実現するための重要な環境として位置づけられています。上記のメリットを通して、より多くの企業が売上100億円を目指しやすくなるような好循環を生み出すのが、経営者ネットワークの狙いです。
公式ロゴマークを活用したPRができる
100億宣言を行った企業は、専用の公式ロゴマークを使用できます。企業はこのロゴマークを名刺やウェブサイト、会社案内、プレスリリースなどの各種広報媒体に掲載することで、以下のようなPR効果が期待できます。
- 高い成長意欲を持つ企業としてのアピール
- 取引先や金融機関に対する信頼性の向上
- 優秀な人材採用における企業価値の訴求
- 政府認定の成長企業としてのブランディング
公式ロゴマークの活用は企業の対外的なコミュニケーションツールとして有効に機能し、100億円企業への成長をステークホルダーに印象づける効果的な手段となります。
100億宣言の記載内容
100億宣言を行うときは、規定の雛形に「企業概要」「企業理念・100億宣言に向けた経営者メッセージ」「売上高100億円実現の目標と課題」「売上高100億円実現に向けた具体的な措置」の4つを記載し、100億企業実行事務局に提出します。
※雛形は中小企業庁の「100億宣言」ページからダウンロードできます。
各項目の記載方法の仕方や注意点を紹介します。なお、これら4つの項目については、特設サイトで公表されるため公開可能な情報のみとする必要があります。
①企業概要
企業概要では本社所在地、事業内容、従業員数などの情報を記載します。枠内に収まるよう、簡潔かつ正確な記載を心がけましょう。
【記載するときの注意点】
- 従業員数と現在の売上高は、末尾に括弧書きで時点を明記する(例:「54名(2024年3月期)」)
- 従業員数は、正社員とパート・アルバイトを分けて記載する
- グループ会社や子会社がある場合は、100億円を目指す対象となる企業の情報のみを記載する
- 法人番号とWebサイトのアドレスの記載が必須
【記載イメージ】
②企業理念・100億宣言に向けた経営者メッセージ
企業理念・100億宣言に向けた経営者メッセージは、その企業が目指す方向性と経営者の強い意志を表明する重要なセクションです。具体的には企業理念・ミッションと、100億円への成長を通じて実現したい内容を記載します。
【記載するときの注意点】
- 他社への批判は避ける
- 自社製品やサービスの直接的な宣伝は控える
- 法令違反となる内容は記載しない
【記載イメージ】
③売上高100億円実現の目標と課題
売上高100億円実現の目標と課題のセクションでは、いつ売上高100億円を実現するのか、その目標を達成する上でクリアしなければならない課題は何かを記載します。
なお、事務局側では、売上高100億円の達成までの期間についてはおおよそ10年以内と想定されています。
【記載するときの注意点】
- 実現目標では定性的なものだけでなく、可能な限り定量的なものを示すこと。またグラフなどを用いて視覚的にわかりやすく説明すること。さらに「売上高100億円の実現に向けた具体的措置」の内容と整合していること
- 課題については、100億円達成に向けて克服すべき課題を具体的に記載すること
【記載イメージ】
④売上高100億円実現に向けた具体的措置
売上高100億円実現に向けた具体的措置のセクションでは、「目指す成長手段」と「実施体制」の2つの要素を具体的に記載することが求められます。
【記載するときの注意点】
- 目指す成長手段については、100億円達成に向けて実施する具体的なアクションプランを明確に示すこと
- 実施体制については、成長施策を実行するための組織体制や外部リソースの活用方針を説明すること。現状の体制に加え、今後整備予定の体制について記載するのも可
【記載イメージ】
100億宣言の提出の流れ
100億宣言の申請受付は、令和7年5月に開始される予定です。申請は専用ポータルサイト(URL調整中)を通じて行われます。申請書類のファイル形式はPDFです。
提出された宣言は、100億企業実行事務局で内容を確認したあと、そのまま専用ポータルサイトに掲載されます。ただし、以下のような場合は掲載が取り止めとなる可能性があります。
- 公表要領に記載されている「掲載の取りやめ」事項に抵触する場合
- 宣言内容が制度趣旨に沿わない場合
- 必要書類の不備がある場合
申請に際しては、記載内容の正確性と公表を前提とした情報開示に留意が必要です。
100億宣言の公募要領に記載されたルール
「100億宣言の公募要領」で記載されているルールについて、紹介します。
公表の方法
100億宣言のプロジェクトに賛同する企業は、中小企業庁が用意した所定の雛形に沿って宣言を作成する必要があります。作成された宣言は、中小企業庁の監督のもと、中小機構(または委託先)が運営するポータルサイトに掲載されます。
宣言の掲載を申請する企業は、申し込み時に以下の項目について当てはまらないことを宣誓する書類を提出する必要があります。
- 役員に暴力団員等がいないこと
- 暴力団員等が事業活動を支配していないこと
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に定められた事業を行っていないこと
- 公序良俗違反や法令違反等の不適切な行為を行っていないこと
また申請時には、企業の売上高を確認するため、直近3年分の決算書類(該当部分の写し)の添付が必要です。
宣言内容が制度趣旨に適合しているとともに、上記の必要書類がそろっていることが確認されたら、ポータルサイトへの掲載と進みます。
宣言の変更
宣言を行ったあとに宣言内容を変更したい場合は、変更理由書と変更後の宣言内容を事務局へ提出します。
ただし、「変更理由書の内容が適当である」「変更後の宣言内容が制度趣旨に適合する」場合でないかぎり、認められません。
掲載の取りやめ
100億宣言の掲載取りやめについては、主に2つのケースが想定されます。
1つ目は、宣言企業が宣誓書で誓約した内容と異なる状況にある場合です。また、宣誓内容が維持されているか確認できない場合も、掲載が取りやめとなります。
2つ目は、宣言企業自身が取りやめを希望する場合です。この場合、企業は取りやめ理由書を事務局に提出し、その内容が適当と認められれば掲載が取りやめとなります。
なお、一度掲載が取りやめられると、取りやめ日から1年間は再度掲載の申請ができません。
そのほか
100億宣言に関するその他の重要な規定として、以下のポイントが挙げられます。
まず、事務局には宣言企業に対する調査権限が付与されており、申請企業および宣言企業には調査への協力義務があります。これは制度の健全性を維持するための重要な仕組みです。
また、ポータルサイトへの掲載後、一定期間が経過した時点で事務局から宣言の更新などを求められる場合があります。これは、宣言内容の実現に向けた進捗状況を確認し、制度の実効性を担保するためのものです。
さらに、中小企業庁および中小機構には、宣言の公表や掲載取りやめに関して、必要に応じて追加的な規定を定める権限が与えられています。
100億宣言に関する資料
100億宣言に関する資料には、以下のようなものがあります。
タイトル | 資料内容 |
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100億宣言 紹介PV YouTube | 100億宣言の概要を紹介する40秒程度の動画 |
100億宣言とは(882KB)PDF | 100億宣言の概要 |
100億宣言の申請要領(1,609KB)PDF | 雛形の記載ポイント |
100億宣言のひな形(444KB)PowerPoint | ー |
100億宣言の記載例(891KB)PDF | 100億宣言の記載例 |
100億宣言の公募要領(104KB)PDF | 100億宣言のルール |
100億宣言に関するQ&A集(23KB)Excel | 「中小企業の定義は何か」などの質問とその回答を集めた資料 |
100億宣言に関する問い合わせ先
100億宣言に関する問い合わせ先は、以下のとおりです。申請について困ったときは連絡してみるとよいでしょう。
- 100億宣言全般について
中小企業庁 事業環境部 企画課 03-3501-1511(内線 5231) - 成長加速化補助金について
中小企業庁 経営支援部 経営支援課 03-3501-1511(内線 5331)
100億宣言や補助金の申請についてお悩みでしたら中小企業経営支援事務所にご相談ください
100億宣言においては、実現可能性の高い事業計画や適切な数値目標を記載する必要があります。加えて、他社との差別化を図るために、経営者の思いや考えも盛り込まなければいけません。
しかし限られたスペースの中で、説得力があり、かつ魅力のある内容にするにはある程度の専門知識が必要です。
当社・中小企業経営支援事務所は、中小企業診断士として、また中小企業の支援事業者として優れていると国に認められた認定経営革新等支援機関として、多くの中小企業のさまざまな悩みに寄り添っています。
特に中小企業の思いを汲み取り、それを盛り込んだ魅力ある事業計画の策定のお手伝いを得意としているため、100億宣言の内容について少しでも不安がある場合は、ぜひ当社にご相談ください。経験豊富な専門家が、魅力あふれる宣言の策定支援と、ひいては貴社の飛躍的な成長に必要なアドバイスもいたします。