【2024年】IT導入補助金の概要と2023年からの変更点を解説

IT導入補助金とは、ITツールの導入により、中小企業や小規模事業者の業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する、最大450万円の補助金です。

2024年は、デジタル化基盤導入枠が廃止され、インボイス枠が新設されるなど、2023年からいくつかの変更点がありますが、継続して行われます。

この記事では、IT導入補助金の概要と2023年からの変更点、申請の流れをわかりやすく解説します。今までのIT導入補助金におけるITツールの活用事例も紹介しますので、IT導入補助金の申請をお考えの経営者様、活用イメージを膨らませたい方は、ぜひ参考にしてください。

なお、この記事は、IT導入補助金の申請をサポートしている経営コンサルタント・中小企業経営支援事務所が解説します。当社はIT導入補助金の申請のみならず、実績報告もトータルでサポートいたします。初回相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。

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IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者の業務効率化やDX、サイバーセキュリティ対策を推進するための「ITツール」の導入を支援する補助金です。中小企業や小規模事業者がデジタル技術を活用し、労働生産性や競争力を強化することを目的としています。

補助金の対象となるITツールは、事務局の審査を受けた以下のようなツールです。

  • 受発注ソフト
  • 決済ソフト
  • 会計ソフト
  • セキュリティ
  • POSレジ
  • 券売機
  • PC・タブレット

補助対象経費には、パッケージソフトの本体費用やクラウドサービスの導入・初期費用、ITコンサルティング費用、システム改修費用などが含まれます

IT導入補助金の申請者は、事務局に登録した「IT導入支援者」とパートナーシップを組み、ITツールの説明や導入、補助金申請のサポートを受けます。

IT導入補助金の対象者は、「中小企業・小規模事業者(個人事業主、フリーランス)」です。インボイス枠の電子取引類型では、中小企業や小規模事業者と受発注の取引を行っている事業者であれば、大企業も対象となります。

中小企業とは、資本金または従業員規模のどちらか一方が、以下の条件を満たしている企業を指します。

業種・組織形態資本金の額または出資の総額常勤の従業員
製造業、建設業、運輸業3億円300人
卸売業1億円100人
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)5,000万円100人
小売業5,000万円50人
ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業ならびに工業用ベルト製造業を除く)3億円900人
ソフトウェア業または情報処理サービス業3億円300人
旅館業5,000万円200人
その他の業種(上記以外)3億円300人

また、小規模事業者の定義は以下のとおりです。

業種・組織形態常勤の従業員
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)5人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業20人以下
製造業その他20人以下

IT導入補助金に申請するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

  • gBizIDプライムアカウントの取得
  • SECURITY ACTIONの実施
  • みらデジ経営チェックの実施

gBizIDとは、さまざまな行政サービスにログインできる法人・個人事業主向けの共通認証システムです。IT導入補助金以外の補助金の電子申請の際にも必要となります。

SECURITY ACTIONは、中小企業が情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。

みらデジ経営チェックは、経営課題解決に向けた「気づき」を見つけるための、チェック&サポートツールです。同業種・同地域の事業者と比較しながら、各種支援施策の紹介を受けられます。

みらデジ経営チェックは、通常枠においては必須要件、インボイス枠とセキュリティ対策推進枠では加点要件です。

2024年のIT導入補助金は、2023年までと比べて、以下のポイントで変更が行われました。

  • デジタル化基盤導入枠からインボイス枠に
  • ECサイト制作が対象外に
  • インボイス対応類型において小規模事業者の補助率が拡大
  • 電子取引類型において大企業も申請可能に

それぞれ詳しく解説します。

2024年のIT導入補助金では申請枠が再編されました従来のデジタル化基盤導入枠が廃止され、インボイス枠と複数社連携IT導入枠が新設されます

このことにより、2024年のIT導入補助金は、以下の4枠(5類型)で行われます。

  • 通常枠
  • インボイス枠(インボイス対応類型)
  • インボイス枠(電子取引類型)
  • セキュリティ対策推進枠
  • 複数社連携IT導入枠

廃止されたデジタル化基盤導入枠は受発注ソフトや会計ソフトと並んで、ECサイト制作も対象でした。

しかし、新設のインボイス枠はECサイト制作が対象に含まれていないため、2024年のIT導入補助金では、ECサイト制作が対象外となりました。

インボイス枠のインボイス対応類型では、インボイス制度に対応した会計・受発注・決済ソフトの導入補助額が50万円以下の場合、小規模事業者の補助率が4/5に拡大されます。

中小企業の場合の補助率は3/4であるため、小規模事業者への補助が手厚くなっています。

インボイス枠の電子取引類型のみですが、大企業も申請できるようになりました。

中小企業や小規模事業者と受発注の取引を行っており、中小企業・小規模事業者にITツールを無償で利用させる事業者が対象です。

2024年のIT導入補助金は、以下の4枠(5類型)で申請を受け付けます。

  • 通常枠
  • インボイス枠(インボイス対応類型)
  • インボイス枠(電子取引類型)
  • セキュリティ対策推進枠
  • 複数社連携IT導入枠

一つずつ詳しく紹介します。

通常枠は、自社の課題にあったITツールの導入を通して、業務効率化と売上アップをサポートするものです。

たとえば、以下のようなケースで活用できます。

  • 供給・在庫・物流
  • 総務・人事・給与・労務
  • 顧客対応・販売支援

通常枠の補助率、補助額、補助対象、スケジュールは以下のとおりです。

補助率1/2以内
補助額1プロセス*以上5万円以上150万円未満
4プロセス*以上150万円以上450万円以下
補助対象ソフトウェア・ソフトウェア購入費
・クラウド利用料(最大2年分)
導入関連費(オプション)・機能拡張やデータ連携ツールの導入
・セキュリティ対策実施に係る費用
導入関連費(役務の提供)・導入コンサルティング
・導入設定、マニュアル作成、導入研修
・保守サポートに係る費用
スケジュール受付開始2024年2月16日(金)予定
1次締切分締切日:2024年3月15日(金)17:00
2次締切分締切日:2024年4月15日(月)17:00
3次締切分締切日:2024年5月20日(月)17:00

*プロセスとは?
「顧客対応・販売支援」「決済・債権債務・資金回収管理」「供給・在庫・物流」など業務ごとにプロセスが分けられており、1種類以上のプロセスを保有するソフトウェアの申請が求められます。

インボイス枠は、2023年10月に始まったインボイス制度を受けて、中小企業・小規模事業者のインボイス対応システムの導入を支援するものです。

インボイス枠では、「インボイス制度に対応した会計・受発注・決済ソフト」に加え、PC・レジ・券売機などのハードウェアも補助対象となります。

補助率と補助額、スケジュールは以下のとおりです。

インボイス制度に対応した会計・受発注・決済ソフト
補助対象補助率補助額
1機能以上を有するソフトの場合中小企業3/4以内
小規模事業者4/5以内
50万円以下
2機能以上を有するソフトの場合2/3以内50万円超~350万円以下※

※補助額50万円超の際の補助率は、補助額のうち50万円以下については3/4(小規模事業者は4/5)、50万円超については2/3

PC・ハードウェア等
補助対象補助率補助額
PC・タブレット等1/2以内10万円以下
レジ・券売機等20万円以下
補助対象ソフトウェア(必須)インボイス制度に対応し、会計・受発注・決済の機能を有するソフトウェア
オプション・機能拡張
・データ連携ツール
・セキュリティ
役務・導入コンサルティング
・導入設定、マニュアル作成、導入研修
・保守サポート
ハードウェア・PC
・タブレット
・プリンター
・スキャナ
・複合機
・POSレジ
・モバイルPOSレジ
・券売機
スケジュール受付開始2024年2月16日(金)予定
1次締切分締切日:2024年3月15日(金)17:00
2次締切分締切日:2024年3月29日(金)17:00
3次締切分締切日:2024年4月15日(月)17:00
4次締切分締切日:2024年4月30日(火)17:00
5次締切分締切日:2024年5月20日(月)17:00

インボイス対応類型は、以下のページで補助申請可能額をシミュレーションできるため、ぜひご活用ください。
補助金シミュレーター | IT導入補助金2024

インボイス枠の電子取引類型は、インボイス対応のITツール(受発注ソフト)を導入し、取引関係における受注者である中小企業・小規模事業者に無償で利用させる場合に、導入費用の一部を支援するものです。

電子取引類型の補助率、補助額、補助対象、スケジュールは以下のとおりです。

補助率中小企業小規模事業者等2/3以内
その他事業者等1/2以内
補助額(下限なし)~350万円以下
補助対象受発注ソフト
スケジュール受付開始2024年2月16日(金)予定
1次締切分締切日:2024年3月15日(金)
2次締切分締切日:2024年4月15日(月)
3次締切分締切日:2024年5月20日(月)

セキュリティ対策推進枠では、サイバー攻撃によるリスクを低減する取り組みを支援します。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表している「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に載っているサービスが対象です。

セキュリティ対策推進枠の補助率、補助額、補助対象、スケジュールは以下のとおりです。

補助率1/2以内
補助額5万円以上100万円以下
補助対象ITツールの導入費用及び、サービス利用料(最大2年分)
スケジュール受付開始2024年2月16日(金)予定
1次締切分締切日:2024年3月15日(金)17:00
2次締切分締切日:2024年4月15日(月)17:00
3次締切分締切日:2024年5月20日(月)17:00

複数社連携IT導入枠では、複数の中小企業・小規模事業者が連携してITツールを導入し、生産性向上を図る取り組みが支援されます

業務上つながりのあるサプライチェーンや、特定の商圏で事業を営む商業集積地などに属する複数の中小企業・小規模事業者が対象です。ソフトウェアやハードウェアに加え、効果的に連携するためのコーディネート費や、取り組みへの助言を行う外部専門家への謝金なども補助対象に含まれます

複数社連携IT導入枠の補助対象経費、補助率、補助額、スケジュールは以下のとおりです。

補助対象経費補助率補助額
基板導入経費ソフトウェア3/4以内、4/5以内50万円以下×グループ構成員数3,000万円以下
2/3以内50万円超~350万円以下×グループ構成員数
ハードウェアPC・タブレット等1/2以内10万円×グループ構成員数
レジ・券売機等1/2以内20万円×グループ構成員数
消費動向等分析経費2/3以内50万円以下×グループ構成員数
その他経費2/3以内200万円以下
スケジュール受付開始2024年2月16日(金)予定
1次締切分締切日:2024年4月15日(月)17:00

2024年のIT導入補助金に申請する際は、以下の流れで行います。

  1. 公募要領の確認
  2. gBizIDプライムアカウントの取得、SECURITY ACTIONの実施
  3. みらデジ経営チェックの実施
  4. IT導入支援事業者とのマッチング・ITツールの選定
  5. 交付申請
  6. 交付決定
  7. ITツールの発注・契約・支払い
  8. 事業実績報告
  9. 補助金交付
  10. 事業実施効果報告

IT導入補助金の対象となるITツールの数は、数千個に及びます。自社に最適のITツールを見つけるためには、申請のパートナーであるIT導入支援事業者選びがポイントです。

IT導入補助金公式サイトの「ITツール・IT導入支援事業者検索」で、ITツールやIT導入支援事業者を検索できるため、ぜひ活用して自社に合ったITツールとIT導入支援事業者を見つけましょう。

過去のIT導入補助金でITツールを導入した中小企業・小規模事業者が、どのような課題を解決し、成果を上げたのか、IT導入補助金公式サイトの活用事例から紹介します。

岩手県花巻市の株式会社ポケットマルシェは、クラウド会計ソフト「freee」を導入し、経理業務の効率化と高精度化を実現しました

同社の経理業務では、オフラインの会計ソフトを使用しており、複数人での同時作業が不可能で、さらに仕訳を手入力で行う必要がありました。

クラウド会計ソフトの導入で、オンラインバンキングとの連携により入出金履歴を自動で読み込めるようになり、売上分析など戦略的な業務に工数を割けるようになっています
(参照:株式会社ポケットマルシェ/IT導入補助金2020活用事例

宮崎県都農町の株式会社河北は、工事原価作成システム「Neo原価」を導入し、利益率0.17%が増大、年間120万円のコスト削減にも成功しました

同社では、作業ごとに会計システムとExcelシートが混在しており、二度手間や誤作業の原因となっていましたが、ITツールの導入でシステムの一元化が実現しました

また、クラウド型システムのため、他の現場の情報がリアルタイムに把握できるようになり、テレワークが可能になったというメリットもあります。
(参照:IT導入補助金 ITツール活用事例

大阪府八尾市の理化工業株式会社は、電子帳票ツールやRPAツール「WinActor」を導入し、業務の自動化・無人化を実現し、人件費の削減に成功しました

同社は、製造現場での帳票類が手書きのままで労力がかかっていたと同時に、新しいシステム内のデータを既存システムへ毎日移行する必要があり、再入力の手間がかかっていました。

RPAとは、Robotic Process Automationの略で、パソコンで行っている事務作業を自動化できるソフトウェアロボット技術のことです。電子帳票化やRPAの活用により、現場作業者の負担が軽減、また生まれた時間をデータ分析や事業アイデアの検討に充てられるようになりました
(参照:IT導入補助金 ITツール活用事例

IT導入補助金は申請枠の再編が行われ、デジタル化基盤導入枠が廃止され、インボイス制度への対応を支援するインボイス枠が新設されました

2024年のIT導入補助金は、2024年2月16日(金)に受付開始予定です。公募要領が発表され次第よく確認し、パートナーとなるIT導入支援事業者とともに、自社の課題解決につながるITツールを導入しましょう。

当社・中小企業経営支援事務所は、中小企業様・小規模事業者様のIT導入補助金への申請をサポートしています。申請から実績報告までトータルサポートいたしますので、安心してお任せください。初回相談は無料です。以下からお気軽にご相談ください。

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業務改善助成金とは?活用事例や申請の流れ、注意点を解説

業務改善助成金は、生産性向上のための設備投資と従業員の賃金引き上げをあわせて行う中小企業に、設備投資費用の一部を助成する制度です。令和5(2023)年8月31日に制度が拡充され、より利用しやすくなりました。

この記事では、業務改善助成金の概要や活用事例、申請の流れ、利用にあたっての注意点などを解説します。業務改善助成金の利用を検討されている中小企業の経営者様は、ぜひ参考にしてください。

なお、この記事はものづくり補助金をはじめとして、さまざまな補助金の申請サポートを行っている中小企業経営支援事務所がわかりやすく解説します。業務改善助成金の申請についてご不明点がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。初回相談は無料です

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業務改善助成金は、生産性向上のための設備投資を行い、事業場内最低賃金を一定額引き上げた中小企業や小規模事業者に対し、設備投資にかかった費用の一部を助成するものです。中小企業の生産性向上と、従業員の賃金引き上げを支援するために創設されました。

業務改善助成金における設備投資等とは、以下のようなものを指します。

  • 機械設備
  • コンサルティングの導入
  • 人材育成
  • 教育訓練

このような生産性向上のための取り組みと、従業員の賃金引き上げをあわせて行った場合に助成金が支給されます

なお、業務改善助成金は過去に受給したことがある事業者も助成対象です。

業務改善助成金の対象要件は、以下の3点です。

  • 中小企業事業者であること
  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
  • 解雇、賃金引き下げ、労働関係法令違反などの不交付事由がないこと

中小企業とは、以下の条件に当てはまる事業者を指します。

業種資本金の額または出資の総額常時使用する企業全体の労働者数
一般産業(下記以外)3億円以下の法人300人以下
卸売業1億円以下の法人100人以下
サービス業5,000万円以下の法人100人以下
小売業5,000万円以下の法人50人以下

「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する企業全体の労働者数」は、どちらの要件も満たしている必要はなく、いずれかの要件を満たしていれば十分です。

事業場内最低賃金とは、事業場で最も低い時間給のことで、「最低賃金法」などの規定に基づき計算されます。不明な点があれば、あなたの賃金を比較チェック|最低賃金制度のページで計算方法を確認したり、管轄の労働局雇用環境・均等部室や賃金課室に相談したりしてみましょう。

業務改善助成金は、「設備投資にかかった費用に一定の助成率をかけた金額」と、「助成上限額」を比較して安いほうの金額が助成額になります。

助成率は、以下のように事業場内最低賃金の額で決まります。

事業場内最低賃金900円未満900円以上950円未満950円以上
助成率9/104/5(9/10)3/4(4/5)
※()内は生産性要件を満たした場合

生産性要件とは、以下のとおりです。

「生産性」とは、企業の決算書類から算出した、労働者1人当たりの付加価値を指し、「生産性要件を満たした場合」とは、助成金の交付申請時の直近の決算書類に基づく生産性と、その3年度前の決算書類に基づく生産性を比較し、6%以上伸びている場合又は1%以上(6%未満)伸びている場合をいいます。1%以上(6%未満)の場合は、金融機関から一定の事業性評価」を得ている必要があります。

引用:中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)申請マニュアル

助成上限額は、事業場内最低賃金の引き上げ額や引き上げる労働者数、事業場の規模に応じて、以下のように設定されています。

事業場内最低賃金の引き上げ額引き上げる労働者数助成上限額
右記以外の事業者事業場規模30人未満の事業者
30円以上1人30万円60万円
2~3人50万円90万円
4~6人70万円100万円
7人以上100万円120万円
10人以上※120万円130万円
45円以上1人45万円80万円
2~3人70万円110万円
4~6人100万円140万円
7人以上150万円160万円
10人以上※180万円180万円
60円以上1人60万円110万円
2~3人90万円160万円
4~6人150万円190万円
7人以上230万円230万円
10人以上※300万円300万円
90円以上1人90万円170万円
2~3人150万円240万円
4~6人270万円290万円
7人以上450万円450万円
10人以上※600万円600万円
※10人以上の上限額区分は、特例事業者が10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合のみ

例えば、以下の場合の業務改善助成金の助成額をシミュレーションしてみましょう。

  • 事業場内最低賃金:890円
  • 設備投資にかかった費用:200万円
  • 引き上げ後の事業場内最低賃金:935円
  • 引き上げた労働者数:5人
  • 事業場規模30人未満の事業者とする

この場合、助成上限額は140万円、助成率は9/10です。200万円×9/10=180万円であり、

140万円(上限額)<180万円(設備投資にかかった費用に一定の助成率をかけた金額)

となるため、この場合は140万円が支給されます

業務改善助成金の対象となるのは、「生産性向上に資する設備投資等」にかかる経費です。対象経費は、以下のように2つに分けられています。

経費区分具体例
生産性向上に資する設備投資等・POS レジシステム導入による在庫管理の短縮
・リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
・顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化
・国家資格者による経営コンサルティング(顧客回転率の向上を目的とした業務フロー見直し)
・店舗改装による配膳時間の短縮 など
関連する経費・広告宣伝費
・汎用事務機器
・事務室の拡大
・机・椅子の増設 など
引用:中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)申請マニュアル

ただし、「関連する経費」はすべての事業者が対象経費として計上できるわけではなく、特例事業者として認められた場合のみが助成の対象です。

続いて、特例事業者についてみていきましょう。

特例事業者とは、以下の条件に当てはまる事業者を指します。

①賃金要件:事業場内最低賃金が950円未満の事業場

②生産量要件:新型コロナウイルス感染症の影響により、生産量(額)又は売上高等事業活動を示す指標(生産指標)の最近3か月間の平均値が前年、前々年又は3年前同期に比べ、15%以上減少している事業者

③物価高騰等要件:原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により、利益率(申請前3か月間のうちの任意の1月における売上高総利益率又は売上高営業利益率)が、前年同月に比べ3%ポイント以上低下している事業者

引用:令和5年度業務改善助成金のご案内

特例事業者として認められると、賃金引き上げ労働者数10人以上の助成上限区分を適用可能です。(上記の上限額表の※部分)

また、②生産量要件または③物価高騰等要件に該当する場合は、助成上限額の拡大に加え、対象となる経費についても拡大されます。通常は認められないパソコンやスマートフォンの新規導入や、一部の自動車も助成対象となり、「関連する経費」についても設備投資額を上回らない範囲で対象となります。

特例事業者と対象経費についてまとめると、以下のとおりです。

助成対象経費一般事業者特例事業者(②または③に当てはまる場合のみ)
生産性向上に資する設備投資等
生産性向上に資する設備投資等のうち、
・定員7人以上または車両本体価格200万円以下の乗用自動車や貨物自動車
・PC、スマホ、タブレット等の端末と周辺機器の新規導入
×
関連する経費×

業務改善助成金を利用した事業者は、実際にどのような設備を導入し、生産性を向上させているのでしょうか。

ここでは、業種ごとに、導入事例と設備導入の効果を紹介します。

(参考:業務改善助成金の活用例

宿泊業や飲食サービス業では、調理器具類やPOSレジシステム、食器洗浄機などを導入する事例が多くみられます。

調理器具類では、スチームコンベクションオーブンや食材スライサー、業務用製氷機を導入した結果、仕込みや調理に時間がかかり、製造量も少なかったものが、仕込み・調理時間が短縮され、一度に製造できる量も増え、効率が上がりました

また、POSレジシステムや自動釣銭機を導入した場合は、入金や売上の集計や釣銭の支払いなどに時間を取られていましたが、生産業務が自動化され時間短縮になるとともに、顧客の回転率も上昇しました

卸売業・小売業では、POSレジシステムやフォークリフト・特種用途自動車類、調理器具類などが多く導入されています。

フォークリフトを導入した結果、荷物の運搬や積み下ろしに時間がかかっていたものが、一度に大量の重い荷物を運ぶことができ、作業時間の短縮につながりました

生活関連サービス業・娯楽業では、美容器具・施術器具や、シャンプーユニット、洗濯機・乾燥機などを導入するケースが多いです。

脱毛器やデジタルパーマ・スチーマー類を導入した結果、既存の機械では仕上がりにムラがある上、施術時間が長かったものが、施術時間の短縮に加え高品質なサービスを提供できるようになりました

医療・福祉の分野では、福祉車両や歯科用チェアユニット、施術ベッドなどを導入するケースが多いです。

福祉車両を導入した結果、利用者の送迎に時間がかかり、従業員も複数必要だったものが、車椅子に乗ったまま乗降できる福祉車両のおかげで送迎にかかる時間や人員を削減できました

業務改善助成金を利用する際の注意点は、以下の2点です。

  • 交付決定前に設備投資を行わない
  • 申請期限前に募集が締め切られる可能性がある

補助金や助成金の多くは、交付決定を受ける前に設備投資をしてしまうと、助成の対象外となります。業務改善助成金は「交付申請書」を提出し、交付決定通知を受け取ってから設備投資するようにしてください。

また、業務改善助成金は予算の範囲内で行われているため、多数の応募があった場合は申請期限より早く募集が打ち切られる可能性があります

なお、令和5(2023)年度の業務改善助成金のスケジュールは以下のとおりです。

申請期限令和6(2024)年1月31日
事業完了期限令和6(2024)年2月28日

事業完了期限とは、「導入機器等の納品日」「導入機器等の支払完了日」「賃金引き上げ日」のいずれかの最も遅い日です。すなわち、令和5(2023)年度の業務改善助成金では令和6(2024)年2月28日までに納品・支払完了・賃金引き上げのすべてが完了していなければなりません。

令和6年度に業務改善助成金を利用しようとお考えの方も、申請と事業の実施は、期間に余裕を持って進めましょう。

業務改善助成金を受け取るためには、以下の流れに沿って手続きを進めましょう。

  1. 交付申請書の提出
  2. 審査・交付決定
  3. 事業の実施
  4. 事業実績報告書の提出
  5. 助成金の受け取り

業務改善助成金の申請は、郵送と電子申請システム(jGrants)のどちらかで行います。電子申請システムにはGビズIDが必要となるため、申請の前に早めに入手しておきましょう。

申請する際は、「交付申請書」と「事業実施計画書」を作成し、管轄の労働局に提出します。申請から約1か月後に、交付(不交付)決定通知が届くため、交付が決定された場合は計画に基づき設備投資と賃金引き上げを行います。

事業が完了したら、事業完了日から起算して1月を経過する日、または翌年度4月10日のいずれか早い日までに「事業実績報告書」を提出しましょう。原則20日以内に審査が行われ、助成金が振り込まれます。

申請マニュアルや各種様式は、業務改善助成金|厚生労働省のページをご確認ください。

業務改善助成金は、令和5年8月31日に対象事業者が拡大されるなどの拡充がありました

厚生労働省は全国加重平均で1,004円となる最低賃金の引き上げに向けた環境整備を図っているため、令和6年度も拡充後の内容が継続される見込みです。

業務改善助成金は、生産性向上のための設備投資と、従業員の賃金引き上げを行った中小企業を支援する制度です。令和6年度も継続される見込みであるため、活用をお考えの経営者様は、早めに準備しておきましょう。

当社・中小企業経営支援事務所は、ものづくり補助金や事業再構築補助金などのさまざまな補助金の申請サポートを行っています。当社の補助金申請サポートは、精度の高い事業計画書と入金までのさまざまな事務手続きをトータルでサポートする点が特徴です。

「忙しくて計画書や申請書を書く時間が取れない」「助成金の申請が初めてで何をしたらよいのか分からない」という方は、ぜひお気軽に当社までご相談ください。初回相談は無料です
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パートナーシップ構築宣言のメリット・デメリットをわかりやすく解説

パートナーシップ構築宣言という言葉を最近よく目にするけれど、具体的にどのようなメリットがあるのか分からず実践していないという企業も多いのではないでしょうか。

パートナーシップ構築宣言は、企業が発注者の立場で、発注先の企業と良好な関係を築くことを目的とした取り組みです。パートナーシップ構築宣言を行うと、一部の補助金で加点措置が受けられる点も大きなメリットといえます。

この記事では、パートナーシップ構築宣言の概要や事例、メリット・デメリットを経営コンサルタントの中小企業経営支援事務所が解説します。

パートナーシップ構築宣言が加点措置の対象である「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」への申請をお考えの中小企業の経営者様は、ぜひお気軽に当社までご相談ください。初回相談は無料です。

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パートナーシップ構築宣言とは

パートナーシップ構築宣言とは、取引先との共存共栄関係を築くために、企業が「発注者」の立場で自社の取引方針を宣言する取り組みです。パートナーシップ構築宣言は、企業規模にかかわらず発注者側である企業を対象とします

これまで、大企業と中小企業の関係は、立場の弱い下請けと呼ばれる中小企業が不利益を被る場合が多いものでした。パートナーシップ構築宣言はこのような状況を打開し、下請け企業が不利益を被ることなく、発注元である取引先と良好な関係を築くことを目的とします。

発注元の企業がパートナーシップ構築宣言を行うことで、発注先の企業と宣言の内容に沿った取引を行います。

パートナーシップ構築宣言企業の事例

パートナーシップ構築宣言の登録企業数は、2023年12月6日時点で37,673社です。
(参照:「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイト「登録企業リスト」)

その中でも、優秀な取り組みが中小企業庁の「パートナーシップ構築宣言取り組み事例集」で紹介されています。ここでは、事例集から2社の取り組みを抜粋して紹介します。

花王は、サプライヤー(仕入れ先、納入業者)に対して、CDPサプライチェーンプログラムやSedexという国際的な環境や安全衛生の評価枠組みの調査回答を促し、結果に独自の工夫を加えて分かりやすくフィードバックを行っています

この取り組みで、パートナーシップ構築対象2022経済産業大臣賞を受賞しました。

CDPサプライチェーンプログラムやSedexは国際的な評価枠組みではありますが、結果が理解しにくいものであるという問題点があります。そこで、花王は問題点の見える化や独自の評価ステップの設定などで、サプライヤーの中小企業が改善を行いやすいようにフィードバックしています。

結果として、サプライヤーの環境活動レベルやESGマネジメントレベルの向上が続いているとのことです。
(参照:中小企業庁「パートナーシップ構築宣言の 実施状況と今後の取組」)

日立システムズはパートナー企業と事業方針を共有し、パートナー企業の人財育成と事業強化を行い、デジタル分野事業の拡大に努める取り組みでパートナーシップ構築大賞2022中小企業庁長官賞を受賞しました。

パートナー企業からの情報提供で人財のスキルマップを作成し、自社のプロジェクト情報と組み合わせて事業と人財をマッチングする「人財マッチング」を推進しています。

この人材マッチングは、受注機会や従業員の学びの機会を求めるパートナー企業と、多くの幅広い案件への対応やパートナー企業の専門性・多様性を求める同社をマッチさせられる相互補完の取り組みです。
(参照:中小企業庁「パートナーシップ構築宣言の 実施状況と今後の取組」)

パートナーシップ構築宣言のメリット

パートナーシップ構築宣言を行うことで、サプライチェーン全体で適正な取引が促され、それぞれの企業の成長や業績向上が期待できます。その他にも、パートナーシップ構築宣言の主なメリットは以下の5つです。

パートナーシップ構築宣言を行った企業は、発注先の企業に対して、宣言に沿った(具体的には下請中小企業振興法に基づく「振興基準」に沿った)取引を行います

振興基準とは、下請けの中小企業の振興を図るため、下請事業者と親事業者の望ましい取引関係を定めたものです。振興基準は、具体的に以下のような内容を定めています。

  • 親事業者と下請事業者はイコールパートナーであり、適正な取引を進め、サプライチェーン全体の共存共栄を目指すことが求められる
  • 下請事業者の経営を安定させるため、親事業者にはできる限り長期的な見通しのきく発注分野の提示が求められる
  • 下請事業者に無理なしわ寄せをしないため、親事業者には納期や納入頻度の適正化が求める など

(参照:経済産業省・中小企業庁「下請中小企業振興法 振興基準ガイドブック」)

パートナーシップ構築宣言は企業のトップが署名するため、会社全体で宣言を遵守しようという意識が働くと期待できるでしょう。結果として、下請け企業は安心して取引できるようになり、信頼関係を築くことができます

パートナーシップ構築宣言を行うと、公式ポータルサイトに企業名と宣言の内容が掲載され、取り組みを周知できます

「下請け企業に不利益のない取引を行う」という姿勢は、取引先や消費者によいイメージを与え、ホワイト企業であることのアピールにつながるでしょう。

パートナーシップ構築宣言を行った企業は、ロゴマークの使用が許可されます。

名刺やパンフレットなどにロゴマークを使用することで、取引先との共存共栄関係を目指すホワイト企業であるとPR可能です。

国が実施する補助金で、パートナーシップ構築宣言を行っていることが加点要素になる場合があります。代表的なものは、「ものづくり補助金」と「事業再構築補助金」です。

ものづくり補助金では加点項目の②政策加点に、②-2:「パートナーシップ構築宣言を行っている事業者」が加点の対象であると記載されています。
(参照:ものづくり・商業・サービス補助金事務局(全国中小企業団体中央会)「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(16次締切分)

また、事業再構築補助金は、成長枠とグリーン成長枠において、パートナーシップ構築宣言を行っている事業者が加点対象です。
(参照:事業再構築補助金事務局「事業再構築補助金 公募要領(第11回)」)

その他にも、以下の補助金でパートナーシップ構築宣言を行っていることが加点措置とされたことがあります。

  • 伝統的工芸品産業支援補助金
  • アジア等ゼロエミッション化人材育成等事業
  • 技術協力活用型・新興国市場開拓事業(研修・専門家派遣・寄附講座開設事業)
  • 令和5年度需要家主導太陽光発電導入支援事業
  • 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金 など

補助金の加点措置については、募集回により内容が変更される可能性があるため、最新の公募要領をご確認ください。

パートナーシップ構築宣言を行うと、SDGsの以下の6つの目標に取り組んでいるとみなされます。

  • 目標3:すべての人に健康と福祉を
  • 目標8:働きがいも経済成長も
  • 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 目標10:人や国の不平等をなくそう
  • 目標13:気候変動に具体的な対策を
  • 目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

SDGsに取り組むことは、古い企業体質を改善するきっかけになると同時に、企業のイメージアップにもつながります。

パートナーシップ構築宣言のデメリット

ここまでパートナーシップ構築宣言のメリットを紹介しましたが、宣言にデメリットはないのか気になる方もいることでしょう。

パートナーシップ構築宣言のデメリットは基本ありませんが、強いて言えば下請中小企業振興法の「振興基準」を守らなければならなくなるという点が挙げられます。

パートナーシップ構築宣言は自主的な取り組みであるため、公的機関による強制的な調査や違反時の罰則などはありません。しかし、主務大臣から振興基準に基づき指導や助言が行われた場合など、パートナーシップ構築宣言が履行されていないと認められる場合は、ポータルサイトでの宣言の掲載が取り止めになります。

パートナーシップ構築宣言を行う手順

パートナーシップ構築宣言を行うための手続きは、難しいものではないため、自社で完結できます。以下のステップで登録してみてください。

  1. ポータルサイトからひな形をダウンロードする
  2. 自社の取り組み内容にあわせて宣言文を加筆・修正する
  3. ポータルサイトにPDF形式に変換した宣言文をアップロードする
  4. 問題がなければ宣言が公開される

ポータルサイトでは、Word形式でパートナーシップ構築宣言のひな形が配布されています。まずひな形をダウンロードし、記載見本や記載要領を参考にしながら、自社の取り組みにあわせて宣言文を編集しましょう。どのように書けばよいか分からない場合は、ポータルサイトの登録企業リストに載っている他社の宣言を参考にしてもよいかもしれません。

完成した宣言文はPDF形式に変換し、自社の情報とともにポータルサイトの登録ページからアップロードします。事務局が内容を確認し、ポータルサイトに会社名と宣言文が公開されたら、パートナーシップ構築宣言のロゴマークが使えるようになります。

パートナーシップ構築宣言は、企業規模にかかわらず、企業が発注者の立場で自社の取引方針を宣言する取り組みです。下請け企業が不利益を被ることをなくし、取引先との共存共栄関係を築くことを目的としています。

パートナーシップ構築宣言を行うと、企業名がポータルサイトに公開されたり、ロゴマークが使用できたりすることで、取引先との対等な関係を重んじるホワイト企業であるとアピールできます。

また、パートナーシップ構築宣言を行っていることは、ものづくり補助金や事業再構築補助金などの補助金の加点措置の対象です。採択に有利に働き、手続きも難しくないため、ものづくり補助金や事業再構築補助金の申請をお考えの企業様は、パートナーシップ構築宣言を行っておくことをおすすめします

当社・中小企業経営支援事務所はものづくり補助金や事業再構築補助金の申請サポートを行う経営コンサルタントです。精度の高い事業計画で、ものづくり補助金で100%(*1)、事業再構築補助金で97%(*2)の採択率を誇ります

パートナーシップ構築宣言を行い、ものづくり補助金や事業再構築補助金の加点につなげようとお考えの中小企業の経営者様は、補助金の採択を勝ち取るためにぜひ当社にご相談ください。初回相談は無料で承ります。

お問い合わせ先:https://www.sme-support.co.jp/contact/

*1:2020年度~2023年度において
*2:2021年~2023年において

経営力向上計画のメリットを解説!目玉は即時償却による節税効果

経営力向上計画を策定するとメリットがある」と耳にしたことがあるけれど、実際に作成や申請をしないままになっている中小企業も多いかもしれません。
経営力向上計画はA4用紙約5枚分のフォーマットに入力する形式で策定でき、認定を受ければ税制、金融、法律の3つの面でさまざまな支援策を受けられるため、ぜひ活用したい制度です。

この記事では、経営力向上計画のメリットや認定を受ける流れ、申請の注意点を詳しく解説します。経営力向上計画に興味はあるけれど、まだ策定していない中小企業の経営者様はぜひご一読ください。

なお、この記事は認定支援機関である経営コンサルタント・中小企業経営支援事務所が解説します。事業再構築補助金やものづくり補助金などの申請を視野に入れている中小企業の経営者様は、お気軽にご相談ください。初回相談は無料です。

お問い合わせ先:https://www.sme-support.co.jp/contact/

経営力向上計画とは

経営力向上計画とは、人材育成や生産性向上などについて、特定の書式に基づいて策定する事業計画書です。条件に該当する中小企業が策定し、所管の省庁から認定を受けることで、税制の優遇措置や金融支援、法的支援などの特典を受けられます

経営力向上計画の認定を受けられるのは、中小企業等経営強化法に定められた「特定事業者等」であり、その規模は以下のとおりです。

・会社または個人事業主
・医業、歯科医業を主たる事業とする法人(医療法人等)
・社会福祉法人
・特定非営利活動法人
従業員数2,000人以下

経営力向上計画の具体的な内容としては、自社の現在の課題や経営力を向上させるための具体的な実施事項、導入する設備などを、A4用紙5枚分の申請書式内で説明します。

経営力向上計画の制度は2016年に始まり、2023年10月31日現在で163,757件の事業者が認定を受けています。日本全体の中小企業数が約357万社であることから、経営力向上計画の認定を受けている中小企業は、約4.5%に留まっているのが現状です。
(参照:中小企業庁「経営力向上計画の認定について」、中小機構「日本を支える中小企業」)

まだ活用している中小企業が少ない経営力向上計画ですが、策定することで多くのメリットがあります。続いて、経営力向上計画のメリットを①税制措置、②金融支援、③法的支援の3つに分けて紹介します。

経営力向上計画のメリット①税制措置

税制面での経営力向上計画のメリットは、以下の3つです。

  • 中小企業経営強化税制
  • 事業承継等に係る登録免許税・不動産取得税の特例
  • 中小企業事業再編投資損失準備金

これらの税制措置は、経営力向上計画の認定を受けただけでは利用できません。利用するためには、それぞれ個別に手続きする必要があります。手続きの詳細は「中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き」の最新版をご確認ください。

中小企業経営強化税制とは、経営力向上計画の認定を受けた中小企業が、法人税において、新たに取得した設備を即時償却、または10%(*)の税額控除のどちらかを選択適用できる制度です。
*資本金が3,000万円超1億円以下の法人は7%

中小企業経営強化税制を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 青色申告を行っている中小企業者等であること
  • 指定事業のための設備投資であること
  • 経営力向上計画の認定を受けること
  • 計画に沿って設備を新規導入すること

中小企業経営強化税制で選択できる「即時償却」とは、一定の設備投資を行った際に、費用の全額を一度に経費として計上できる仕組みです。通常は、設備投資を行った場合、法令で定められた耐用年数に応じて、毎年少しずつ経費に計上する「減価償却」が原則です。

一方、即時償却は事業初年度に設備投資の費用全額を経費として計上できるため、以下のメリットがあります。

  • 単年度の税負担を抑えられ、手元資金を多く残せる
  • キャッシュフローがよくなり、余裕資金を設備投資に回せる

ただし、即時償却でなく税額控除を選んだ場合は、通常の減価償却に加え、初年度に税額控除を受けられ、トータルの納税額は即時償却を選ぶ場合より低く抑えられます

即時償却と税額控除のどちらを選んだほうがメリットが大きいかはそれぞれの状況で異なります。判断に悩むときは税理士に相談しましょう。また、設備投資について税制措置を受ける場合は、経営力向上計画の申請の際に追加書類が必要であるため、ご注意ください。

経営力向上計画の認定を受けると、事業承継を行う際、不動産の所有権移転の登記における登録免許税と不動産取得税が軽減されます。具体的には、以下の税率が適用されます。

【登録免許税】

通常税率計画認定時の税率
事業に必要な資産の譲受けによる移転の登記2.0%1.6%
合併による移転の登記0.4%0.2%
分割による移転の登記2.0%0.4%

【不動産取得税】

取得する不動産の種類税額計画認定時の特例
土地・住宅不動産の価格×3%不動産の価格の1/6相当額を課税標準から控除
住宅以外の家屋不動産の価格×4%不動産の価格の1/6相当額を課税標準から控除

中小企業事業再編投資損失準備金とは、経営力向上計画の認定を受けた事業者が事業承継に伴い株式等を取得し、一定割合の金額を準備金として積み立てた場合、その金額を損金算入できる制度です。損金算入を行うと、月次の会計処理では経費として認められない費用を決算時に経費として扱うことができます

この制度を活用するためには、経営力向上計画に「事業承継等事前調査に関する事項」を記載する必要があります。中小企業庁:申請書様式類のページにある「事業承継等事前調査チェックシート」の作成・提出を忘れないようにしましょう。

経営力向上計画のメリット②金融支援

経営力向上計画の認定を受けると、さまざまな金融支援を活用できます。

こちらも経営力向上計画の認定だけで利用できるものではなく、個別の申請が必要であるため、「中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き」の最新版をご確認ください。

経営力向上計画の認定を受けた事業者は、日本政策金融公庫から設備投資に必要な資金について融資を受けられます。条件すべてに当てはまる場合は、基準利率より低い特別利率が適用されます。

詳細は、中小企業経営力強化資金|日本政策金融公庫にてご確認ください。

経営力向上計画の認定を受けた特定事業者は、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保証とは別枠で追加保証や保証枠の拡大を受けられます

この特例は、新商品や新サービスなど、自社にとっての新しい取り組み(新事業活動)や、M&A等による事業承継(デューデリジェンスを含む)を行う場合に限られます。

中小企業投資育成株式会社法の特例とは、経営力向上計画の認定を受けると、資本金3億円を超える株式会社でも、中小企業投資育成株式会社から融資を受けられる制度です。

中小企業投資育成株式会社の通常の投資対象は、資本金3億円以下の株式会社ですが、特例で投資対象が拡大される形です。

経営力向上計画の認定を受けた特定事業者は、海外支店や海外子会社が海外の金融機関から融資を受ける際に、日本政策金融公庫から信用状を発行され支援が受けられます

経営力向上計画の認定を受けた特定事業者の海外子会社は、日本政策金融公庫から直接融資を受けられます。融資を受けられるのは、経営力向上計画等の実施に必要な設備資金および運転資金です。

従業員数2,000人以下の特定事業者等(特定事業者を除く)が、経営力向上計画を実施するために必要な資金について、保証額最大25億円の債務の保証を受けられます。保証割合は50%で、最大50億円の借入に対応しています。

特定事業者の定義は、以下のとおりです。

製造業その他卸売業小売業・サービス業政令指定業種
(ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業)
従業員数500人以下400人以下300人以下500人以下

食品製造業者は、経営力向上計画の実行にあたって民間金融機関から融資を受ける際に、食品等流通合理化促進機構による債務の保証を受けられます。信用保証を使えない場合や、巨額の資金調達が必要となる場合を想定した支援策です。

経営力向上計画の認定を受けると、以下のような法的な支援も活用できます。

許認可承継の特例とは、事業承継等の際に経営力向上計画の認定も引き継げるという特例です。経営力向上計画の内容に事業承継等を行うと記載する必要があります。

経営力向上計画の認定を受けると、組合を組成するとき、通常は4人必要な発起人の人数が3人でも認められます。この特例を受けるためには、経営力向上計画の策定段階で、組合の組成を記載しておきましょう。

事業譲渡の際の免責的債務引受けの特例とは、事業譲渡に伴い債務の移転が必要な場合に、債権者へ催告をしてから1か月待っても返事がなければ、債務移転の同意があったとみなすものです。より簡略な手続きにより、債務を移転できます。

経営力向上計画の認定を受ける流れ

経営力向上計画の認定を受けるには、以下のステップを踏んで計画を策定、提出しましょう。

  1. 日本標準産業分類で、該当する事業分野を確認する
  2. 対応する事業分野別指針を確認する
  3. 事業分野別指針(該当しない場合は基本方針)を踏まえて経営力向上計画を策定する
  4. 事業分野に応じた担当省庁の大臣に提出する
  5. 認定が下りる
  6. 認定書が郵送される、またはダウンロードできる

日本標準産業分類は日本標準産業分類(平成25年[2013年]10月改定)、事業分野別指針と基本方針は中小企業庁:事業分野別指針及び基本方針から確認できます。

経営力向上計画の提出先は、農業であれば農政局、製造業であれば経済産業局と分野ごとに分かれています。事業分野ごとの提出先は、中小企業庁:経営サポート「経営強化法による支援」に掲載されているエクセルファイル(事業分野と提出先)でご確認ください。

経営力向上計画の認定を受ける際の注意点

経営力向上計画の認定を受けるときに注意すべきポイントは、主に以下の2点です。

  • 認定まで時間がかかる
  • 各種支援を受けるために事前準備が必要な場合がある

経営力向上計画の申請から認定までは、通常で30日ほどかかりますが、電子申請の場合は14日ほどに短縮できます(経済産業部局に提出する場合)。

経営力向上計画自体に「いつまでに申請する」という締切はありませんが、税制措置を利用する場合は事業年度末までに認定を受けなければなりません。書類不備などのトラブルが起こる可能性を考えると、1か月よりも時間に余裕を持った提出がおすすめです。

経営力向上計画申請プラットフォーム」を利用し電子申請すれば、認定までの期間が短くなることに加え、記入項目のエラーチェックや自動計算などのサポート機能が使えます

また、各種支援を受けるためには、追加の書類が必要になる場合があります。たとえば、中小企業経営強化税制を受ける場合、A類型では「工業会等による証明書」、B~D類型では「投資計画の確認申請書」や「経済産業局の確認書」が必要です。

経営力向上計画とは、特定の書式に基づいて事業計画を策定し、担当省庁の認定を受けることで、税制措置や金融支援などを受けられる制度です。A4用紙5枚分のフォーマットに入力する形式で、電子申請も可能なので、比較的手軽に策定できます。

中でも、設備投資の費用を即時償却でき、節税効果の高い「中小企業経営強化税制」は見逃せません。経営力向上計画を策定し、さまざまな支援策を経営に活用しましょう。

当社・中小企業経営支援事務所は中小企業診断士が代表を務める経営コンサルタントです。認定支援機関であり、中小企業に対して専門性の高いサポートを行っています。

経営力向上計画の策定方法について、各種支援策の活用方法などについて、ご不明の点があれば、お気軽にご相談ください。ものづくり補助金や事業再構築補助金の申請サポートも承ります。初回相談は無料です。

お問い合わせ先:https://www.sme-support.co.jp/contact/

先端設備等導入計画とは わかりやすく解説

先端設備等導入計画の税制措置の概要

概要

「先端設備等導入計画」は、中小企業が、設備投資を通じて労働生産性の向上を実現するための計画。この計画は、設備の導入先となる市区町村が「導入促進基本計画」を策定している場合に、当該市区町村から中小企業が認定を受けることが可能。認定を受けた場合、固定資産税が1/2 または 1/3に軽減することができます。

 先端設備等導入計画は、税制支援の他に金融支援の支援措置を活用することができますが、この記事では、税制支援について解説をいたします。

期間と補助率

「先端設備等導入計画」を作成し、市区町村の認定を受けた場合、固定資産税の課税標準を3年間に限り1/2に軽減されます。

  特例として賃上げ方針表明した場合、課税標準を1/3に軽減されます。期間についても、

・令和6年3月31日までに取得した設備:5年間

・令和7年3月31日までに取得した設備:4年間

 と優遇措置を受けることができます。

先端設備等導入計画 税制措置を受けられる要件

資本金・従業員要件

 資本金1億円以下の法人、従業員数1,000人以下の個人事業主等のうち、先端設備等導入計画の認定を受けた者が対象になります。

設備要件

減価償却資産の種類ごとの要件(最低取得価格)

① 機械装置(160万円以上)

② 測定工具及び検査工具(30万円以上)

③ 器具備品(30万円以上)

④ 建物附属設備(※2)(60万円以上)

労働生産性

労働生産性を年率平均3%以上向上させること

労働生産性 = (営業利益+人件費+減価償却費) ÷ 労働投入量

労働投入量は

従業員の数 または 労働者数 ✖️ 一人当たり年間就業時間

で計算します。

投資利益率

年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれるか

投資利益率 =(営業利益+減価償却費)の増加額 ➗ 設備投資額

で算出します。

雇用者給与等支給総額の増加率

固定資産税の減免が1/2 → 1/3にするための追加要件です。

 雇用者給与等支給額の増加率が1.5%以上となる賃上げ方針の表明することで特例措置を受けられます。

 給与支給総額を1.5%以上増加させる旨を、従業員又はその代表者にコミットする必要があります。

 従業員数が多い事業者は、人件費の増加額と減税効果を比較して、この特例を使うか否かをご検討ください。

申請までの流れ

 

参考:【中小企業等経営強化法】先端設備等導入計画について 令和5年4月経済産業省 中小企業庁

 右上、中小事業者等は、申請する事業者様です。まずは、事業者様が、先端設備等導入計画を作成します。作成にあたっては、中小企業診断士、税理士、経営コンサルタントなどの専門家に相談するのも一つの手です。これらの専門家が、認定経営革新等支援機関であれば、申請に必要となる確認書の発行もまとめて依頼することができます。

 先端設備等導入計画を作成したら、認定経営革新等支援機関に ①先端設備等導入計画の事前確認②投資計画に関する確認を依頼します。

 認定経営革新等支援機関に③先端設備等導入計画の事前確認書④投資計画に関する確認書を発行してもらいます。

 事業者様は、2つの確認書を入手したら、先端設備導入計画書等必要書類と併せて、市区町村に提出します。提出から認定までおおよそ1ヶ月程度はかかりますので、前広に準備いただくことをおすすめいたします。

注意点

申請のタイミング

 

参考:【中小企業等経営強化法】先端設備等導入計画について 令和5年4月経済産業省 中小企業庁

 先端設備導入計画については、必ず、設備を導入する前に認定を受ける必要があります。誤って、認定前に設備を導入してしまいますと、対象外となりますので、十分気をつける必要があります。

先端設備導入に係る固定資産税の軽減措置を講じている市区町村に該当するか否かを確認すること

 先端設備等導入計画は、設備を導入する市区町村で申請します。申請にあたり、「先端設備導入に係る固定資産税の軽減措置を講じている市区町村」に該当するか否かをご確認ください。 

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/seisansei/01_gaiyou/kotei_shisan_zero_20221231.pdf

ここにリストアップされていない市区町村は、固定資産税の軽減措置を受けることはできません。

先端設備等導入計画の申請をご検討されている事業者様は中小企業経営支援事務所にご相談を

 先端設備等導入計画は、法律に則って節税をすることができます。大きな設備投資をご検討されている事業者様は申請をお勧めいたします。

 先端設備等導入計画は、事業再構築補助金やものづくり補助金と相性がとてもよい制度です。採択をされた後でも間に合う可能性がありますので、専門家にご相談をいただくことをお勧めいたします。

 中小企業経営支援事務所(当社)では、先端設備等導入計画の支援を行っています。また、当社は、認定経営革新等支援機関でもありますので、確認書の発行までワンストップでお受けしています。

 先端設備等導入計画の申請をご検討されている事業者様は、ぜひ当社にお問い合わせくださいませ。

お問い合わせ先:https://www.sme-support.co.jp/contact/

IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠とは?通常枠との違いを解説

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠とは、ECや決済機能などを持つITツールの購入費用の一部を補助する制度の申請枠を指します。企業間のやり取りを効率化し、インボイス制度の導入をスムーズに進めることが目的です。申請するためには対象となるITツールを理解し、スケジュールや流れを確認しなければなりません。

 そこでこの記事では、IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠の概要や通常枠との違い、スケジュールと申請の流れ、よくある質問と答えを解説しています。

 中小企業経営支援事務所は、ものづくり補助金や事業再構築補助金といった補助金申請支援のエキスパートです。補助金についてお困りの人は、ぜひお問い合わせください。相談無料で受け付けています。

お問合せフォーム:https://www.sme-support.co.jp/contact/

IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠とは?

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠とは、中小企業や小規模事業者が導入する会計ソフトや受発注ソフトなどの費用の一部を補助する制度の申請枠のことです。企業同士のやり取りをデジタル化し、インボイス制度への対応を促すことを目的に制度化されました。令和3年度補正予算で実施されたIT導入補助金2022より、通常枠とは別に新設されています。

 デジタル化基盤導入枠には、デジタル化基盤導入類型複数社連携IT導入類型という2つの類型が用意されています。

 デジタル化基盤導入類型と複数社連携IT導入類型の主な違いは、下表のとおりです。

デジタル化基盤導入類型複数社連携IT導入類型
IT導入支援事業者の事前登録
複数社による申請
補助対象・ソフトウェア、オプション、役務・ハードウェア・ソフトウェア、オプション、役務・ハードウェア・事務費
補助上限額350万3,000万

 複数社連携IT導入類型は、サプライチェーンや商業集積地などの複数の中小企業や小規模事業者が連携してITツールを導入するための費用やコーディネート費用、外部専門家に依頼する費用を支援する制度です。ただし、同一の補助事業を実施するグループを10者以上で構成しなければならないなどの要件を満たさなければなりません。

 この記事では、1社でも申請できるデジタル化基盤導入枠の「デジタル化基盤導入類型」について、引き続き解説していきます。

IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の補助対象と補助額

①補助対象

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の補助対象は、以下のとおりです。

ソフトウェア費(会計ソフト、受発注ソフト、ECソフトなど)

ハードウェア購入費(PC、タブレット、プリンター・スキャナーおよび複合機器、POSレジ、モバイルPOSレジ、券売機など)

最大2年分のクラウド利用料

導入関連費

 ただし、ードウェア購入費はソフトウェアと同時に導入する場合が対象となります。また、ソフトウェアの販売元が提供しているハードウェアでなければなりません

 他にも、以下の経費は補助対象外となります。

・入力したデータを帳票やグラフ・表などに印刷するなどの単一の処理機能しかないもの(例:請求書を作成する機能のみのソフトウェアなど)

・購入済みのソフトウェアを増台する、リビジョンアップに対する費用

・業務プロセスに影響を与える可能性がある大幅なカスタマイズ

・業務の効率化を目指すのではなく、事業者が販売する商品やサービスに付加価値を与えることを目的とするもの

 また、本事業の目的や趣旨に沿っていないと判断されたものなどが補助対象外となるので、自社事業が適しているかどうかなどの疑問は専門家に聞くのがおすすめです。

②補助額

 補助額や補助率、機能の要件は下表のとおりです。

IT導入補助金2022(令和3年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業)公募要領 p.5丨サービスデザイン推進協議会 より一部抜粋

 ITツールの場合、「導入したツールは会計・受発注・決済・ECのうち何種類の機能を有しているのか」「導入経費がいくらなのか」によって、実際に申請できる補助額が異なります。

Ⅰ:導入したツールの機能が1つの場合

「導入経費×3/4」か「50万円」のどちらか低い額

Ⅱ:導入したツールの機能が2つ以上の場合

・導入経費が66万6,669円以下の場合、「導入経費×3/4」か「50万円」のどちらか低い額

・導入経費が66万6,670円以上の場合、「50万円+(導入経費-66万6,667円)×2/3」か「350万円」のどちらか低い額

 例えば、100万円のツールの場合は以下のとおりです。

Ⅰ:導入したツールの機能が1つの場合100万円×3/4=75万で、50万円より高いので、申請可能額は50万円
Ⅱ:導入したツールの機能が2つ以上の場合50万円+(100万円-66万6,667円)×2/3=72万2,222円で、350万円より低いので、申請可能額は72万2,222円

 申請可能額に関しては、サービスデザイン推進協議会のIT導入補助金サイトにある「補助金シミュレーター」で簡単に確認できるので、よければ活用してみてください。

そもそもIT導入補助金とは

 IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者がITツールを導入するために利用できる補助金制度のことで、正式名称は「サービス等生産性向上IT導入支援事業」です。中小企業や小規模事業者に必要なITツールを導入を促し、業務効率化や売上げアップを支援することを目的としています。

 IT導入補助金を活用した例として、「勤怠・労務管理ツール」を導入し、出先から出退勤の打刻を可能にしたことで、残業時間の削減や人事担当の業務効率改善がみられたことが挙げられます。

デジタル化基盤導入枠と通常枠の違い

  IT導入補助金には、通常枠とデジタル化基盤導入枠を含む4つの申請枠が設けられています。

・通常枠(A・B類型)

・セキュリティ推進対策枠

・デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)

・デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)

 このうちIT導入補助金の通常枠とは、自社に適したITツールを導入する費用に対する補助金の申請枠を指します。通常枠はA類型B類型に分けられ、ソフトウェアに必要な業務プロセス数や賃上げ目標の要件などによって、補助額が異なります。

 デジタル化基盤導入枠と通常枠の違いは、補助率が優先的に引き上げられていることや、導入するツールに要件が設けられているなどの点があげられます。補助対象のITツールの機能が「会計」「受発注」「決済」「EC」を1種類以上含まない場合は、通常枠(A・B・類型)の申請枠が申請対象です。

 なお、要件を満たせば、通常枠とデジタル化基盤導入枠を併願することも可能です。ただし、2022年のIT導入補助金の要件なので、最新のものを確認する、または専門家に相談するとよいでしょう。

IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠を交付申請する流れ

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠に申請するときの大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 自社が補助対象事業者であるか申請要件を確認する
  2. IT導入支援事業者・ITツールを選定する
  3. gBizIDプライムのアカウントを取得する
  4. SECURITY ACTIONを宣言する
  5. 交付申請する

順に詳しく解説します。

自社が補助対象事業者であるか申請要件を確認する

 まず、自社が補助対象の事業者であるか申請要件を確認してください。

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠の対象となる中小企業や小規模事業者は、下表のとおりです。

【中小企業】

業種分類定義
製造業、建設業、運輸業・資本金または出資の総額が3億円以下・従業員数300人以下の会社、および個人事業主
卸売業・資本金または出資の総額が1億円以下・従業員数100人以下の会社、および個人事業主
サービス業・資本金または出資の総額が5,000万円以下・従業員数100人以下の会社、および個人事業主
小売業・資本金または出資の総額が5,000万円以下・従業員数50人以下の会社、および個人事業主
ゴム製品製造業・資本金または出資の総額が3億円以下・従業員数900人以下の会社、および個人事業主
ソフトウェア業または情報処理サービス業・資本金または出資の総額が3億円以下・従業員数300人以下の会社、および個人事業主
旅館業・資本金または出資の総額が5,000万円以下・従業員数200人以下の会社、および個人事業主
上記以外の業種・資本金または出資の総額が3億円以下・従業員数300人以下の会社、および個人事業主
医療法人、社会福祉法人従業員数300人以下
学校法人従業員数300人以下
商工会・都道府県商工会連合会および商工会議所従業員数100人以下

【小規模事業者】

業種分類定義
商品・サービス業従業員数5人以下の会社、および個人事業主
サービス業のうち宿泊業・娯楽業従業員数20人以下の会社、および個人事業主
製造業その他従業員数20人以下の会社、および個人事業主

 また、財団法人や社団法人など上記以外にも対象となる事業者があります。詳しくは専門家に相談したほうがよいでしょう。

 そして、以下の申請要件を満たしているかを確認してください。

・日本国内で法人登記されており、日本国内で事業を営む法人または個人である

・交付申請の直近月で、事業場内の最低賃金が法令上の地域最低賃金以上である

gBizIDプライムアカウントを取得している

SECURITY ACITONの「★一つ星」、または「★★二つ星」を宣言している

・訴訟や法令遵守上において、補助事業の遂行に支障をきたすような問題を抱えていない

 ただし、以下の事業者は、申請要件を満たしていても対象外となります。

・発行済株式の総数、または出資価格総額の1/2以上を同一の大企業が所有している中小企業、小規模事業者など

・発行済株式の総数、または出資価格総額の2/3以上を大企業が所有している中小企業、小規模事業者など

・大企業の役員、または職員を兼任している者が、役員総数の1/2以上を占めている中小企業、小規模事業者など

・申告済みの直近過去3年分の各年、または各事業年度における課税所得の年平均額が15億円以上である中小企業、小規模事業者など

 ほかにも満たさなければならない申請要件や、対象外の条件があります。公募要領をよく確認したうえで、専門家に相談することがおすすめです。

IT導入支援事業者・ITツールを選定する

 次に、IT導入支援事業者とITツールを選定します。IT導入支援事業者とは、IT導入補助金を申請する事業者のサポートを目的として、事務局や外部審査委員会が選んだ事業者のことです。ITツールの説明や導入、運用方法などの相談、また事務局に提出する各種申請もサポートしてくれます。

 IT導入支援事業者とITツールは、自社の経営課題を解決するため、または業務効率化を図るために必要なものを選ばなければなりません。検索する際には、IT導入補助金・ITツール検索のサイトを利用してください。

 なお、IT導入支援事業者が認定を受けたITツールのみが補助対象となるので、申請を検討する際には気を付けましょう。

 対象となるITツールは、下表のように分類されています。

大分類Ⅰ:ソフトウェアソフトウェア
大分類Ⅱ:オプション・機能拡張・データ連携ツール・セキュリティ
大分類Ⅲ:役務・導入コンサルティング・導入設定、マニュアル作成、導入研修・保守サポート
大分類Ⅳ:ハードウェア・PC、タブレット、プリンター、スキャナー、および複合機器・POSレジ・モバイルPOSレジ・券売機

 さらにITツールを選ぶ際には、以下の要件を満たす必要があります。

・選択したITツールは、大分類Ⅰ:ソフトウェアに該当し、「会計」「受発注」「決済」「EC」の機能を必ず1種類以上含んでいる

・大分類Ⅱ:オプション、大分類Ⅲ:役務、大分類Ⅳ:ハードウェアの導入に関連する経費もあわせて、補助対象として申請する場合は、上記の要件を満たさなければならない

・ハードウェアを補助対象経費として申請する場合、そのハードウェアがソフトウェアの利用に関係しているものである

gBizIDプライムのアカウントを取得する

 申請要件の1つである、gBizIDプライムのアカウントを取得してください。gBizIDとは、補助金の申請や事業報告書の提出など、さまざまな行政サービスを1つのアカウントで利用できる認証システムのことです。gBizIDプライムとは、その認証システムで利用するアカウントの1つを指します。

 gBizIDプライムのアカウントを登録していない場合は、gBizIDのホームページから取得する必要があります。なお、gBizIDプライムのアカウントの登録完了までは、2週間程度かかります。申請スケジュールに間に合うように早めに済ませておきましょう。すでに取得していれば、新しく登録する必要はありません。

SECURITY ACTIONを宣言する

 続いて、SECURITY ACTIONの宣言を実施してください。SECURITY ACTIONとは、情報セキュリティ対策に取り組むことを中小企業が自己宣言する制度を指します。IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠では、「★一つ星」、または「★★二つ星」の宣言が要件として定められています。

 交付申請を進める際には、宣言済みアカウントのIDを入力することが必須です。SECURITY ACITONの申し込みページから済ませておきましょう。

交付申請する

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠を交付申請するために、IT導入支援事業者事業計画を策定する必要があります。

 そして、以下の流れで交付申請を進めていきます。

・IT導入支援事業者から「申請マイページ」の招待を受けて、申請者の基本情報を入力する

・交付申請に必要な情報を入力し、書類を添付する

・IT導入支援事業者にて、導入するITツールの情報と事業計画値を入力する

・「申請マイページ」で入力内容を確認し、申請に対して宣誓した後に事務局へ提出する

 なお、以下の添付書類も必要です。

【法人の場合】・履歴事項全部証明書(発行から3カ月以内)・法人税の納税証明書その1、またはその2(税務署の窓口で発行された直近分)
【個人事業主の場合】・運転免許証、運転経歴証明書、住民票(発行から3ヶ月以内)のいづれか1つ・所得税の納税証明書その1、またはその2(税務署の窓口で発行された直近分)・確定申告書Bの控え(税務署が受領した直近分)

 交付申請が完了した後、審査に通過すれば事務局から「申請マイページ」に交付決定の連絡が来ます。この際に、交付決定の連絡が来る前に、ITツールを発注・契約・支払いなどを済ませた場合、補助金が受けられないので注意が必要です。

 IT導入支援事業者に交付決定を報告したら、ITツールを発注し、補助金の対象となる事業を開始します。そして、事業実績報告期限までに、事業実績をまとめた書類を提出してください。

IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠を申請する際のよくある質問と回答

 最後に、IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠を申請する際によくある質問と回答をまとめるので参考にしてください。

Q.ホームページの制作費は補助対象となるのか?

 A.情報の入力や保存、検索、表示などの簡易的な機能しかないホームページなどの制作費は、IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠の補助対象外す。ホームページ制作ツールやブログ作成システムなどで制作した簡易的なものも補助対象外となります。ただし、分析機能や演算処理などのプログラムは補助対象です。

Q.現在、運用しているECサイトのリニューアル費用は補助対象となるのか?

 A.ECサイトは新規制作のみが補助対象です。既存のホームページに新たにEC機能を実装する場合、その導入費用が対象になります。

Q.IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠の交付申請において、同一事業者は何回まで申請できるのか?

 A.IT導入補助金の公募期間中に、1つの事業者(個人事業主)が通常枠(A・B類型)とデジタル化基盤導入枠にそれぞれ申請し、補助金を受けることは可能です。ただし、これまでの公募で不採択となっている場合や、辞退などの理由で交付申請を取り下げている場合は、申請できません。また、法人の支社や支店などによる個別の申請は不可です。

 なお、2022年のIT導入補助金における要件です。申請する際には最新の要件を確認してください。

Q.過去のIT導入補助金で補助金を交付されたが、デジタル化基盤導入枠に申請できるのか?

 A.公募要領に記載されている要件を満たせば申請できますが、過去3年間にIT導入補助金2019・2020・2021の交付を受けている場合は、審査の際に減点措置が講じられます

Q.他の助成金や補助金と併用できるのか?

 A.国が実施している他の助成金や補助金とは併用できませんただし、申請する補助対象の事業内容が重複していない場合は申請できます。

Q.審査内容はどのようなものか?

 A.審査内容は下表のとおりです。

審査項目審査事項
事業面・自社がインボイス制度に向けて、生産性の向上につながるツールが導入されているか・自社の経営課題を理解しており、経営改善に向けた具体的な問題意識があるか
政策面・生産性向上や働き改革に向けて、国が推進する関連事業に取り組んでいるか・国が推進するセキュリティサービスを選定しているか・給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させるなどの賃上げに取り組んでいるか

 申請する際には審査内容を満たすための提出書類を作成しなければなりません。専門家からアドバイスをもらうことがおすすめです。

IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠をお考えなら中小企業支援事務所にご相談を

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠は、会計・受発注機能などを持つITツールを導入したいのであれば、ぜひ検討したい制度です。しかし、対象となるITツールには機能要件があり、補助対象事業者は細かい要件を満たさなければならないなど、重要なポイントが多くあります。また、審査内容を踏まえた事業計画を策定するには、専門家によるサポートが欠かせないでしょう。

 中小企業経営支援事務所(当社)では、交付申請の事業計画を策定するサポートや、認定支援機関として経営改善計画の策定支援を行っています。

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠の申請が通るための丁寧なアドバイスや、経営者様の想いを汲み取り、金融機関がより納得しやすい計画の策定を心がけているので、IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠に関してお困りでしたら、ぜひ当社にお問い合わせくださいませ。

お問い合わせ先:https://www.sme-support.co.jp/contact/

経営改善計画とは?経営改善計画策定支援事業を申請する流れを解説

 経営改善計画とは、資金繰りが厳しい場合など自社の経営状態に問題がある場合、返済条件の変更や新規融資を申請するために必要な計画のことです。ただし、自社で策定することが難しい場合、経営改善計画策定支援事業に申請して審査に通れば、認定支援機関に支援してもらうことが可能になります。さらに、経営改善計画の策定支援にかかる費用を国に負担してもらえます

 この記事では、経営改善計画の内容や経営改善計画策定支援事業と早期経営改善計画策定支援事業との違い、申請の流れと注意点について解説しています。

 中小企業経営支援事務所は、経営改善計画策定支援事業に関する支援のエキスパートです。経営改善計画策定支援事業の支援や認定支援機関探しについてお困りの人は、ぜひお問い合わせください。相談無料で受け付けています。

お問合せフォーム:https://www.sme-support.co.jp/contact/

経営改善計画とは

 経営改善計画とは、事業者が資金繰りや経営の課題を解決することを目的とし、経営改善のための具体的な施策や実施時期などを記載した計画のことです。事業者が現状を理解し、将来的な取り組みを計画することで、金融機関から金融支援を取り付けること、そして自社の事業が改善する可能性を社外に示すことが目的です。

 経営改善計画の内容は、主に以下を含む必要があります。

債務者概況表(財務内容および問題点、業績推移など)

事業所の概要(課題・問題点、計画の基本方針、計画期間・改善目標など)

・企業集団の状況(事業者の資本関係や取引関係の説明資料)

ビジネスモデル俯瞰図(事業者のビジネスモデルを説明できる資料)

資金繰越実績表

計数計画(損益計算書・課税所得、製造原価報告書、販管費の内訳、貸借対照表、キャッシュフロー計算書、金融機関別返済計画、金融支援計画、金融機関別保全状況)

実施計画(経営改善計画に関する具体的施策や予測できる効果、モニタリング効果)

・その他必要書類

 借入金の返済などで資金繰りの問題を抱えている場合、金融機関に返済条件の変更を申請したり、新規融資を依頼したりする際には、この経営改善計画を提出しなければなりません。

 ただし、自社の財務状況を正確に把握し、経営改善に向けた施策を考える必要があるため、事業者自らが経営改善計画を策定することが困難な場合もあるでしょう。そのような際に、経営改善計画策定支援事業を活用することで、経営改善計画を策定するための支援を受けることが可能になります。

経営改善計画策定支援事業とは

 経営改善計画策定支援事業とは、新型コロナウイルス感染症などの影響により財務上の問題を抱えた中小企業・小規模事業者の経営を支援することを目的とした事業のことです。事業が開始となった2012年度補正予算額が405億円であるため、「405事業」とも呼ばれます。

 事業者は、中小企業等経営強化法に基づく認定経営改革等支援機関(以下、認定支援機関)の支援を受けて経営改善計画の策定やその後のモニタリング(策定した経営改善計画の進捗を定期確認する取り組み)を受けながら、財政上の問題を解決して経営の改善を目指します。

 認定支援機関とは、中小企業支援に関する専門知識を持ち、かつ一定の実務経験がある法人、または個人のことです。国の審査・認定を受けている税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会会議所、金融機関などの支援機関などがあげられます。

 認定支援機関に依頼する経営改善計画の策定とモニタリングにかかる費用のうち、3分の2(上限額合計300万円:経営改善計画策定支援の上限額200万円+伴走支援の上限額100万円)を国が負担してくれることが経営改善計画策定支援事業の特徴です。

 経営改善策定支援事業を活用することで、以下のメリットを得られる可能性があります。

・経営が改善し、売上増加やコスト削減につながる

・従業員のモチベーションや生産性が向上する

・経営改善計画により業績アップが見込めて、金融機関や取引先との関係性がよくなる

・借入金の返済条件が緩和される

 なお、経営改善計画策定支援事業の他に、これまで経営改善計画を策定したことがない事業者を対象に早期経営改善計画策定支援事業も用意されています。

早期経営改善計画策定支援事業との違い

 早期経営改善計画支援事業とは、財政上の問題が悪化して経営に影響が出ることを防ぐために、資金繰りなどの課題を解決し、基本的な経営改善を目指す事業所を支援する事業のことです。

 早期経営改善策定支援事業を活用することで、早期改善計画の策定からその後1年間のモニタリングまでを認定支援機関に依頼する費用のうち、3分の2(上限額合計25万円:経営改善計画策定支援の上限額15万円+伴走支援の上限額10万円)を国が補助してくれます。ポストコロナ持続的発展計画事業とも呼ばれます。

 経営改善策定支援事業と早期経営改善計画策定支援事業との違いをまとめると、下表のとおりです。

経営改善計画策定支援事業早期経営改善計画策定支援事業
対象者借入金の返済などの影響による財政上の問題がある事業者金融支援は必要とせず、資金繰りや採算の管理など、基本的な経営改善を目指している事業者
目的返済の条件変更や、新規融資などの金融支援金融機関との連携を強化する
主な計画書の内容・債務者概況表・事業所の概要・企業集団の状況・ビジネスモデル俯瞰図・資金繰越実績表・計数計画・実施計画(5年程度)・ビジネスモデル俯瞰図・資金繰越実績表、または資金予定表・計数計画(損益計算書のみでも可)・実施計画(1〜5年で任意)
補助費用総費用の3分の2(上限300万円)総費用の3分の2(上限25万円)
モニタリング期間3年間(1〜12ヶ月ごとに実施)1年後に1回

経営改善計画策定支援事業を申請する流れ

 経営改善計画策定支援事業を申請する流れを解説していきます。

経営改善計画策定支援事業の対象か確認する

 まずは、自社が経営改善計画策定支援事業の対象かどうかを確認しなければなりません。対象となる事業者は以下の要件を満たしている必要があります。

・中小企業・小規模事業者である

・借入金の返済が負担である、または金融支援が必要な状況である

・事業者自らでは経営改善計画の策定が難しいが、外部の専門家(認定支援機関)の支援を受けることで、金融機関の返済条件変更や新規融資などが見込める

 なお、個人事業主や医療法人(従業員が常時300人以下に限る)、農業や漁業など一次産業の事業者も対象です。

 ただし、以下は経営改善計画策定支援事業の対象外となります。

・社会福祉法人

・特定非営利活動法人

・一般社団法人

・一般財団法人

・公益社団法人

・公益財団法人

・農事組合法人

・農業協同組合

・生活協同組合

・LLP(有限責任事業組合)および学校法人

認定支援機関を探す

 認定支援機関を探す方法は以下のとおりです。

・主要金融機関に紹介してもらう

・顧問税理士が認定支援機関であれば、そのまま依頼する

・中小企業庁の認定経営革新等支援機関検索システムを利用する

 認定支援機関を決定した後は、経営改善計画策定支援事業の活用や経営の方向性について話し合います。

利用申請書の作成・提出

 次に、経営改善計画作成支援事業利用申請書を作成し、認定支援機関と連名で中小企業活性化協議会に提出します。

 その他の記入書類や添付書類は以下のとおりです。

記入書類添付書類
・申請者の概要・自己記入チェックリスト・業務別見積明細・履歴事項全部証明書(登記簿謄本)の原本(個人事業主の場合は開業届または確定申告書の写し)・認定経営革新等支援機関であることを証する認定通知書等(写し)・認定経営革新等支援機関ごとの見積書および単価表・申請者の直近3年分の確定申告書(写し)・計画策定支援に係る工程表(ガントチャート)・主要金融機関の確認書面

 なお、認定支援機関とは別に主要金融機関(メイン行・準メイン行)の連名も必要です。認定支援機関に主要金融機関が含まれない場合は、経営改善計画策定支援事業を利用する事業者に対して、金融支援を検討することを確認した書面を用意してください。

 中小企業活性化協議会が審査し、経営改善計画策定支援事業の利用が適切であると判断された場合は、依頼した認定支援機関に通知が行きます。

 また、認定支援機関への自己負担額(3分の1)については、認定支援機関が業務の委嘱を承諾した日以降に支払わなければなりません

経営改善計画の策定・金融機関との合意形成

 利用申請が通った後、事業者は認定支援機関の支援を受けながら、「1.経営改善計画とは」で解説した経営改善計画の策定に取り組みます。

 そして、経営改善計画を策定した後に、各金融機関から経営改善計画策定支援事業に関する金融支援を行うことへの合意を得る必要があります

 金融支援の合意を得る手段は、以下のとおりです。

・取引がある各金融機関にそれぞれ訪問して合意を得る

・事業者がバンクミーティング(取引のある各金融機関などが特定の日時に同じ場所に集まる話し合い)を開催し、計画について説明する

・経営サポート会議(各県に設置)を活用する

・中小企業再生支援協議会(各県に設置)を活用する

支払申請書の作成・支払い決定

 経営改善計画に関して金融機関から合意を得られた後、経営改善計画策定支援事業費用支払申請書を作成し、認定支援機関と連名で中小企業活性化協議会に提出します。

 その他に必要な記入書類と添付書類は以下のとおりです。

記入書類添付書類
・経営改善計画・自己記入チェックリスト・業務別請求明細書・従事時間管理票(業務日誌)・認定支援機関ごとの請求資料・外部委託先からの請求書類・申請者と認定支援機関が集結する経営改善計画策定支援事業に係る契約書など・金融機関などの同意書・経営改善計画策定支援における着眼点実施確認表

 中小企業活性化協議会が支払申請書を審査して適切と判断されると、認定支援機関に通知が行き、経営改善計画策定費用(3分の2)の支払いが決定されます。

認定支援機関によるモニタリングの実施

 事業者は経営改善計画に沿って、財務上の問題を解決しながら経営を改善することに取り組みます。その実施状況については、認定支援機関に共有しなければなりませんさらに、認定支援機関は計画策定後の3年間、計画どおりに進んでいるかどうかを定期的にチェックし、必要な支援業務を実施していきます。

 なお、モニタリングの実施中に計画よりも高い実績を継続して示している場合は、認定支援機関がモニタリングを必要ないと判断し、さらに中小企業活性化協議会も同様に判断した際には、事業者と同意すればモニタリングを終了させることも可能です

モニタリングに対する申請書の作成・支払い決定

 事業者は認定支援機関からのモニタリングを受けるごとに、経営改善計画策定支援事業伴走支援費用支払申請書を作成し、認定支援機関と連名で中小企業活性化協議会に提出します。

 その他に必要な記入書類と添付書類は以下のとおりです。

記入書類添付書類
・伴走支援報告書・自己記入チェックリスト・業務別請求明細・従事時間管理票(業務日誌)・申請者と認定経営革新等支援機関が締結する伴走支援に係る契約書・認定経営革新等支援機関ごとの請求書類・申請者による伴走支援費用負担額(3分の1)の支払いを示す証憑類・伴走支援レポート・伴走支援における着眼点実施確認表

 中小企業活性化協議会が申請書を確認して申請が通ると、認定支援機関に通知が行き、モニタリングに対する費用(3分の2)が支払われます。

経営改善計画策定支援事業の注意点

 最後に、経営改善計画策定支援事業に関する注意点をまとめるので参考にしてください。

経営改善計画策定支援事業は複数回利用できないが例外もある

 基本的には経営改善計画策定支援事業を一度利用すると、複数回利用できません。ただし、新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢、原油価格の高騰などの影響を受けて業況が悪化している場合は、過去に経営改善計画策定支援事業が適用となった事業所でも対象となりますなお、費用負担の実績が引き継がれるため、一事業者の上限額は合計300万円となることに注意が必要です。

認定支援機関が出資している事業者は出資率で対象・対象外が決定する

 認定支援機関の出資比率が20%未満であれば、経営改善計画策定支援事業の対象となります。20%以上の場合、認定支援機関が出資している事業者に対して財務や営業に影響を与える可能性が高いとみなされるため対象外となります。

営業実績が12ヶ月未満の事業所は支援を受けられない可能性もある

 営業実績が12ヶ月以上あることを証明できる確定申告を提出できない場合は、対象外です一方で、一事業年度で12ヶ月の決算を実施していれば、経営改善計画策定支援事業の対象となります。なお、法人を設立する前に個人事業主として、同様の事業を12ヶ月以上継続しており、それらの実績を確定申告などで証明できる場合は対象となります。

経営改善計画策定支援事業の申請をお考えなら中小企業支援事務所にご相談を

 経営改善計画は、自社の財務状況を正確に把握したうえで、実施計画を作成しなければなりません。時間的に余裕がなく、事業所自ら策定することが難しい場合もあるでしょう。その際には、経営改善計画支援事業を利用することで、認定支援機関による経営改善計画の策定支援や、その後の費用をおさえて受けることが可能です。

 まずは、自社が経営改善計画策定支援事業の対象となるか確認してください。ただし、この記事で紹介した事業所でも対象外となる可能性もあります。詳しくは、中小企業活性化協議会に問い合わせてみましょう。

 なお、中小企業経営支援事務所(当社)では、経営改善計画策定支援事業の申請サポートや、認定支援機関として経営改善計画の策定支援を行っています。

 経営改善計画策定支援事業の申請が通るための丁寧なアドバイスや、経営者様の想いを汲み取り金融機関がより納得しやすい計画の策定を心がけているので、経営改善計画策定支援事業に関してお困りでしたら、ぜひ当社にお問い合わせくださいませ。

お問い合わせ先:https://www.sme-support.co.jp/contact/

ものづくり補助金のデジタル枠とは?申請する流れや注意点を解説

 ものづくり補助金のデジタル枠とは、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関連する新製品やサービスの開発、生産性の向上を目指すための設備やシステム投資などを支援する制度の申請枠です。支援を受けるためには、申請対象となる事業者や経費や必要書類を確認して、書類を作成する必要があります。

 そこでこの記事では、ものづくり補助金のデジタル枠の内容や申請する流れと注意点、よくある質問と答えについて解説しています。

 中小企業経営支援事務所は、ものづくり補助金や事業再構築補助金といった補助金申請支援のエキスパートです。補助金についてお困りの人は、ぜひお問い合わせください。相談無料で受け付けています。

お問合せフォーム:https://www.sme-support.co.jp/contact/

ものづくり補助金のデジタル枠とは

 ものづくり補助金のデジタル枠とは、DXに関連する革新的な製品やサービスを開発するため、またはデジタル技術を利用して生産性向上を目指すために必要な設備やシステムなどに対する補助金の申請枠を指します。2022年の10次公募から新しく創設されました。対象の事業にこれからチャレンジしたい、または既存事業を躍進させたい事業者が活用できる制度と言えます。

 さらに、ものづくり補助金のデジタル枠は補助率が2/3であり、通所枠の補助率1/2と比較すると優遇されていることが特徴です。

 補助金額は従業員数によって異なり、下表のように決められています。

従業員数補助金額
5人以下100〜750万円
6〜20人100〜1,000万円
21人以上100〜1,250万円

そして、ものづくり補助金のデジタル枠の補助対象となる経費として、以下が該当します。

種類内容補足
機械装置
システム構築費
・機械、装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費
・専用ソフトウェア、情報システムの購入・構築、借用に要する経費
・改良、修繕、または据付に要する経費・機械、装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費
・専用ソフトウェア、情報システムの購入・構築、借用に要する経費
・改良、修繕、または据付に要する経費
単価50万円(税抜)以上の設備投資が必須
運搬費 運搬料、宅配・配送料などに要する経費
技術導入費知的財産権などの導入に要する費用補助対象経費の総額1/3(税抜)までが上限額
知的財産権などに関連する経費特許権などの知的財産権を取得するための弁護士の手続き代行費用など補助対象経費の総額1/3(税抜)までが上限額
外注費新製品やサービス開発に必要な加工や設計(デザイン)、検査などの一部を外注する場合の経費補助対象経費の総額1/2(税抜)までが上限額
専門家に関する経費事業を遂行するために依頼した専門家に支払われる費用補助対象経費の総額1/2(税抜)までが上限額
クラウドサービスの利用費クラウドサービスを利用するための費用
原材料費試作品を開発するために必要な原材料、および副資材の購入費用

また、ものづくり補助金のデジタル枠を活用した事例は、下表のような目的と補助金の対象が紹介されています。

業種飲食・小売業
目的店舗に需要予測システムを導入し、販売機会の損失と廃棄量の削減。さらに、新製品の開発とあわせて、工場の製造ラインにAIを活用した不良品検知システムを導入し、生産性と付加価値の向上を目指す。
補助金の対象・AIを活用したシステム構築に必要な費用
・新製品を開発するための機械装置に必要な費用
・需要予測システムに関連するクラウドサービスの利用費用

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 令和3年度補正予算の概要 p.10丨中小企業庁

そもそも、ものづくり補助金とは?


 ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者などが経営革新を目指すために用いる設備投資の費用を補助する制度を指します。補助率が1/2(または条件により2/3まで)、補助上限額は750〜5,000万円です。中小企業の生産性向上を支援するために、中小企業庁と独立行政法人 中小企業基盤整備機構が制度化しました。

 ものづくり補助金には、以下5つの申請枠が用意されています。
・通常枠
・デジタル枠
・グリーン枠
・グローバル市場開拓枠
・回復型賃上げ、雇用拡大枠

 なおこの記事では引き続き、ものづくり補助金のデジタル枠について解説していきます。

ものづくり補助金のデジタル枠に申請する流れ


 ここでは、ものづくり補助金のデジタル枠に申請する流れを解説します。

要件を満たしているか公募内容を確認する


 まず、ものづくり補助金のデジタル枠に申請できるかどうか、公募内容の申請対象者や要件を確認しなければなりません。 下表に該当する中小企業者(組合関連以外)が、ものづくり補助金のデジタル枠の対象です。

業種資本金常勤従業員数
製造業、建設業、運輸業、旅行業3億円以下300人以下
ゴム製品製造業3億円以下900人以下
ソフトウェア業、または情報処理サービス業3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下
旅館業5,000万円以下200人以下
そのほかの業種(上記以外)3億円以下300人以下

 上記に該当し、日本国内に本社、または補助金の対象となる事業を実施する場所を有している必要があります。

 なお、個人事業主と企業組合や協業組合などの中小企業者や、下表の特定事業者(資本金10億円未満)も対象となります。

業種常勤従業員数
製造業、建設業、運輸業500人以下
卸売業400人以下
サービス業、または小売業300人以下
そのほかの業種(上記以外)500人

次に、ものづくり補助金のデジタル枠における要件は下表のとおりです。

基本要件デジタル枠
・3〜5年の事業計画を策定する

・申請する時点で、申請要件を満たす賃金引き上げ計画を策定していなければならない

・財産処分や収益納付などを含めて、補助金の返還額の合計は補助金交付額を上限とする(再生事業者である場合は、各目標が達成できていない場合でも返還は免除となる)
・①または②に該当する事業である
①DXに関連する革新的な製品、サービスの開発
②デジタル技術を活用した生産プロセス、サービス提供方法の改善
・経済産業省が公開するDX推進指標を活用して、DX推進に向けた現状や課題に対する認識を共有するなどの自己診断を実施し、さらに自己診断結果を応募締切日までに独立行政法人 情報処理推進機構に提出している
・独立行政法人 情報処理推進機構が実施する「SECURITY ACTION」の「★一つ星」または「★★二つ星」いずれかを宣言している

 ものづくり補助金のデジタル枠に申請するためには、基本要件に加えて、デジタル枠の要件も満たさなければなりません。特に、「DX推進指標の自己診断の提出」「SECURITY ACTIONの宣言」は別途、対応が必須です。応募締切日までに提出・宣言できていない場合は要件不備となり、申請が通らないので注意してください。

 DX推進指標の自己診断の作成方法については、動画でわかりやすく解説をしていますので、合わせてご確認をいただければ幸いです。

 なお、提出する事業計画は以下の要件をすべて満たす必要があります。

・事業者全体の付加価値額(営業利益、人件費、減価償却費の合計)を年率3%以上増加させている
・給与支給額を年率平均1.5%以上増加させている
・事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円高い水準にする

 ただし、上記は14次締切の内容です。変更されている場合があるため、自社が申請する際の要件を必ず確認してください。

 また、申請要件を満たしていない場合には以下の返還規定があります。

未達の状態 返還金額
申請した時点で、賃上げ計画が策定されていない 全額
事業計画が終了した時点で、給与支給総額要件を達成できていない 残存簿価など×補助金額/実際の購入金額を返還
毎年度末(毎年3月)時点で、最低賃金に関する要件を達成できていない 補助金額/計画年数を返還

未達の状態返還金額
申請した時点で、賃上げ計画が策定されていない全額
事業計画が終了した時点で、給与支給総額要件を達成できていない残存簿価など×補助金額/実際の購入金額を返還
毎年度末(毎年3月)時点で、最低賃金に関する要件を達成できていない補助金額/計画年数を返還

 なお、ものづくり補助金における、補助金の返還要件については、以下の動画で解説をしていますのであわせてご確認ください。

電子申請を準備する(GビズIDプライムアカウントを取得する)


 ものづくり補助金のデジタル枠は電子申請のみが利用できます。そのため、まずGビズIDプライムアカウントを取得する必要があります。

 取得までの流れは以下のとおりです。
・スマートフォン、または携帯電話、印鑑証明書、登録印、パソコンを用意
・パソコンで「GビズID」と検索し、トップページから「ID作成」を選択
・必要事項を記入し、規約確認後、申請書作成を選択
・申請書をダウンロードして印刷
・申請書に記入捺印し、印鑑証明書と一緒に郵送

 種類に不備がなければ2週間以内にメールが来て、アカウント作成の手続きを済ませればGビズIDプライムアカウントの取得が完了します(参考:GビズID紹介動画)。

 

申請書類を提出する

 ものづくり補助金のデジタル枠に必要な以下の書類を用意します。

・事業計画書
・補助経費に関する誓約書
・賃金引き上げの誓約書
・決算書など(直近2年間の貸借対照表や損益計算書など)
・従業員数が確認できる資料(法人の場合:法人事業概況説明書の写し、個人事業主の場合:所得税青色申告書の写し)
・労働者名簿
 ※再生事業者の場合は、再生事業にかかわる確認書が必要

 そのほか、以下の書類は加点対象となるため、提出することで審査に通る可能性が高くなると言えます。

・成長性加点:経営革新計画承認書
・政策加点:個人の場合は開業届、法人の場合は履歴事項全部証明書、サイバーセキュリティお助け隊の契約書の写し
・災害など加点:事業継続力計画認定書
・賃上げ加点:特定適用事業所該当通知書

審査結果を確認する


 ものづくり補助金のデジタル枠の申請が採択された場合、ものづくり補助金総合サイトの採択結果のページで申請した書類のとおりに「受付番号」「商号または名称」「事業計画名」などが公表されます。つまり、そのページに自社の記載がない場合、審査を通過できなかったことになります。なお、デジタル枠やグリーン枠など、どの申請枠で採択されたかは明らかにされません。

採択後の手続き 交付申請・交付決定


 交付申請書を作成して提出してください。なお、交付申請の際には従業員数を確認するために、法人事業概況説明書などの提出を求められる場合もあります。従業員数によって補助上限額が異なるため、申請金額が上回っていると減額措置となる可能性もあるので注意してください。

 事務局が申請書類を審査して問題なければ、ものづくり補助金のデジタル枠で補助金の交付が決定されます。そして、「様式第2 補助金交付決定通知書」の右上に記載された交付決定日から、対象となる事業を開始できます。

ものづくり補助金のデジタル枠を申請する際の注意点


 ものづくり補助金のデジタル枠を申請する際の注意点を紹介します。

人件費や土地・建屋の費用は対象とはならない

 ものづくり補助金のデジタル枠の補助対象として、たとえデジタル技術を活用したサービスに関連しているとしても人件費や土地・建屋の費用は該当しません。事業を実施する場所に関連する費用ではなく、あくまで設備投資の費用を補助するための制度です。

大幅賃上げへの上乗せ支援が適用される


 14次公募から、大幅な賃上げに取り組む事業者については補助額が上乗せされる支援が追加となりました。

 以下の賃金に関連する事業計画を策定して取り組むことで、従業員数に応じて補助上限が引き上げられます。

要件内容
給与支給総額年率で4.5%引き上げる
通常の年率1.5%+4.5%=6%以上引き上げ
最低賃金事業場内最低賃金を毎年45円以上引き上げる

補助上限の引き上げ額

従業員数上乗せとなる補助額
5人以下100万円
6〜20人250万円
21人以上1,000万円

賃金を大幅に引き上げられる事業計画を策定できる場合は、ぜひ検討したほうがよいでしょう。

採択されなかった場合に通常枠で再審査されるか確認する

 ものづくり補助金のデジタル枠で不採択となった場合、13次締切までは通常枠で再審査される記載がありました。ただし、14次締切からは再審査されるなどの救済措置に関する記載がありません。そのため、自社が申請するタイミングの公募要領をよく確認することが大切です。

ものづくり補助金のデジタル枠でよくある質問と答え

 最後に、ものづくり補助金のデジタル枠でよくある質問と答えをまとめるので参考にしてください。

Q.どのような項目で審査されるのか?

 A.審査項目は以下のとおりです。

・補助対象事業者としての適格性
・技術面
・事業化面
・政策面
・加点項目(成長性、政策、災害、賃上げ)

 それぞれの項目に対して、どのような内容を重視するのかが定められています。加点項目も理解したうえで、書類を作成することが重要と言えます。審査を有利に進めるためにも、専門家に相談することがおすすめです。

Q.過去にものづくり補助金の審査に通った事業所も申請できるのか?

 A.申請できます。ただし、応募締切日から過去3年以内に交付決定を1回のみ受けた事業者は、減点の対象となります。なお、過去3年以内に2回以上の交付を受けた事業者は対象外です。

Q.他に提出された事業と極めて似ていると指摘を受けた。再度、申請できるのか?

 A.14次締切より、指摘を受けると次回の公募に申請できないと決められています。また、指摘を2回以上受けた場合は、次回と次々回への申請が不可能になります。

Q.従業員の人数を算出する方法は?

 A.申請時点での常勤従業員数を算出してください。なお、常勤従業員には、日雇い労働者、2ヶ月以内の労働期間が定められた者、4ヶ月以内(季節的業務)の労働期間が定められた者、試用期間中の者は含まれません。

Q.補助金の対象となる事業の実施場所は、審査に通ってから決めてもよいのか? 

A.実施場所は事前に確定させて応募してください。審査に通り、交付を申請する際に実施場所を変更することは原則として認められていません。


ものづくり補助金のデジタル枠への申請を検討中なら中小企業支援事務所にご相談を

 ものづくり補助金のデジタル枠は、通常枠よりも補助率が優遇されているため、ぜひ検討したい制度と言えます。ただし、新設された申請枠なので今後、要件などが変更となる可能性もあるでしょう。なおこの記事では、14次締切の要件をもとに作成していますので、実際にものづくり補助金のデジタル枠に申請する場合は、最新のものを確認してください。

 さらに、ものづくり補助金のデジタル枠に申請できない事業者や補助対象とならない事業内容、補助対象外の経費に注意する必要があります。また、14次締切のものづくり補助金では、デジタル枠で審査が通らなかった場合の通常枠による再審査が廃止されています。そうなると、次回の公募まで待つ必要があります。

 一度の申請で通りたいのであれば、専門家にサポートしてもらうことも選択肢の1つです。

 中小企業経営支援事務所(当社)では、ものづくり補助金のデジタル枠の申請サポートや、認定支援機関として経営改善計画の策定支援を行っています。

 ものづくり補助金のデジタル枠の申請が通るための丁寧なアドバイスや、経営者様の想いを汲み取り、中小企業基盤整備機構がより納得しやすい事業計画の策定を心がけているので、ものづくり補助金のデジタル枠に関してお困りでしたら、ぜひ当社にお問い合わせくださいませ。

お問い合わせ先:https://www.sme-support.co.jp/contact/

そのテレワークは大丈夫?補助金を活用してセキュリティ対策を見直してみよう

コロナのパンデミック以降、テレワークが急速に普及しました。

しかし、セキュリティに対して深く考えていなかった、結局導入出来ていない。そんな状況が続いてはいませんか?

情報漏洩を防止するためには、セキュリティ対策もしっかり行わなければなりません。

セキュリティ設備導入に対しても、IT導入補助金が使える場合があります。今一度、社内のセキュリティ対策、見直してみませんか?

テレワーク環境設備に使えるIT導入補助金

引用:IT補助金2022

概要

中小企業や小規模事業者の方々に向けた、業務効率向上や課題解決を目的とします。

ウイルスなどからパソコンを守るセキュリティソフトの導入などに活用することが出来ます。

最大補助金額と補助経費

最大補助金額(補助率)

  • A類型:150万円(1/2)
  • B類型:450万円(1/2)
  • デジタル化基盤導入類型:350万円 (2/3)

補助対象経費

  • ソフトウェア購入費用
  • クラウド利用料
  • 導入関連費
引用:IT補助金2022

補助金受取までの手順

GビズIDの取得

電子申請を行うために、GビズIDと言われるIDが必要です。

クイックマニュアル GbizID プライム編に沿って申請手続きを行いましょう。

マニュアルはこちら

※IDの取得には1週間程度の時間がかかる場合があります。出来るだけ早く申請しておきましょう。

導入するITツールの選択

IT導入補助金では、使う予定のITツールを事前に登録申請する必要があります。

  • ソフトウェア
  • オプション
  • 役務
  • ハードウェア

この4つの大分類に分かられ、更に細かくカテゴライズされています。

4つのITツール大分類の詳細

① ソフトウェア

  • ソフトウェア関連

②オプション

  • 機能拡張
  • データ連携ツール
  • セキュリティ

③役務

  • 導入コンサルティング
  • 導入設定・マニュアル作成・導入研修
  • 保守サポート

④ハードウェア

  • PC・タブレット・プリンター・スキャナー及びそれらの複合機器
  • POSレジ
  • モバイルPOSレジ
  • 券売機

カテゴリー内の更に詳しいITツールの概要は、ITツール登録要領の6ページから確認出来ます。

審査~補助事業の実施

申請後、採択が決定した後にITツールを導入し、実際に運用を始めます。

ITツールを導入したことが分かる証明書類は、全て補助金受け取りに必要になります。

  • 納品書
  • 契約書
  • 領主書
  • 振込明細等

事業実施が完了した後に、事務局へ申請を行います。

補助金の受け取り

補助金額が決定すると、受取りの申請が可能となります。

専用の申請ページより、申請手続きを行います。

IT導入補助金受け取りまでのサポート

中小企業経営支援事務所では、IT導入補助金の申請サポートを行っております。是非、お気軽にご相談ください。

中小企業経営支援事務所

テレワークセキュリティ強化の手順

テレワーク方式の確認

会社支給

テレワーク推進のため、会社から支給されたパソコンやスマートフォンが該当します。

個人所有

自宅のパソコンやスマートフォンを使ってテレワークを行う場合に該当します。

テレワーク方式チェックリスト

こちらのフローチャートに従い、自社のテレワークの方式がどの分類に該当するのか確認してみましょう。

引用:中小企業等担当者向け テレワークセキュリティの手引き 第2版

それぞれのテレワーク方式により、導入すべきセキュリティ対策があります。以下のテレワークセキュリティの手引きを参考に、優先度別に判断してみましょう。

30ページに、どのような対策が必要になるか記載があります。

引用:中小企業等担当者向け テレワークセキュリティの手引き 第2版

セキュリティ対策の優先度

優先度高

重要性が高く、導入難易度が低いものです。

マルウェア対策といったウイルス感染防止に対するソフトウエアの導入や、ハードウェアを物理的に守る設備が挙げられます。

優先度中

重要性が高く、導入難易度が中レベルのものです。

アクセス制限を設け、担当者以外のアクセスを禁じる対策や、紛失におけるデータ保護等が挙げられます。

セキュリティ対策導入例

Googleドライブ

引用:Googleドライブ

有料プランでは、個人アカウント毎にアクセス制限を設けることが可能です。外部アクセスを防ぎ、データ保護を目的とします。

ソフトウェアの導入

ウイルスバスター等の、セキュリティ対策ソフトウェアを対象端末全てに導入を行います。

まとめ

今回の記事では、テレワーク普及に伴うセキュリティ導入について解説しました。

セキュリティ対策にはIT導入補助金が有効活用出来ます。

補助金申請には、ID取得や申請書類の作成が必要になるため、セキュリティソフトの導入予定がある場合は早めに動いておくことをおすすめします。

自社にはどんなセキュリティ対策が必要になるのか、テレワークの方式から確認すると何のセキュリティ対策が不足しているか浮き彫りになります。

これからますます普及するテレワーク、設備導入のコストを出来るだけ押さえ、安全な環境を作り上げていきましょう。

補助金と助成金の違いとは?メリットデメリットを簡単に解説【おすすめ有り】

企業にとって、是非有効活用したい制度が補助金助成金ですよね。

しかし、自分が一体どの分野に取り組んでいいのか、いまいち分からなくなることはありませんか?

実は補助金と助成金には近しいようで、違いがあります。

今回の記事では、補助金と助成金の違いと、それぞれどのような申請枠があるのか、おすすめの案件をご紹介します。

是非、当てはまるような事例がありましたら、是非チャレンジしてみてくださいね。

補助金と助成金の違い

全体像

項目補助金助成金
主体経済産業省厚生労働省
審査有り無し
公募上限有り無し
財源税金雇用保険料
交付額低~高

助成金

目的

企業の内部的な課題解決に使われます。例えば以下のような事例です。

  1. 雇用環境の改善
  2. 人材育成
  3. 働き方改革の取り組み

助成金のメリット

  • 公募の難易度が低くい
  • 条件達成で必ず交付される
  • 返済が不要

助成金のデメリット

  • 給付金額が比較的低い
  • 給付までに1年程度時間がかかる

補助金

目的

国の経済回復や拡大が念頭にあります。

業績向上、機材導入実績等の達成が条件です。例えば以下のような事例に対して、達成見込みや意欲のある企業に対して支払われるものです。

  • コロナウィルスの影響により売上悪化を回復させる
  • 生産性の向上のためシステム・機材の導入
  • 経営の継続が難しい企業に対する復興支援

補助金のメリット

  • 交付額が大きい
  • 返済が不要
  • 幅広く、マッチする分野が多い

補助金のデメリット

  • 不採択のリスク
  • 補助率がある
  • 交付資料の作成が手間

補助率とは

補助率例

補助率が1/2の場合
1,000万円の補助金を受取るには、2,000万円の経費申請が必要。

このように、規模の大きい補助金の場合は、それなりに大きな事業計画が必要なため、勇気も必要です。

おすすめの助成金

①両立支援等助成金

最大補助額:57万円

働くお父さん、お母さん達の支援を目的とする助成金です。

  • 仕事と育児の両立
  • 仕事と介護の両立

これらの両立を目的とし、労働者の育児休暇や介護休暇が取りやすい職場づくりを促進する助成金です。

詳しい内容はこちら。
両立支援等助成金

②キャリアアップ助成金

最大補助額:最大57万円

有期雇用や派遣労働者を正規雇用へキャリアアップすることを促進する助成金です。

労働者の意欲や技術向上を目的とし、社内の生産性アップを目標としています。

詳しい内容はこちら。
キャリアップ補助金

③働き方改革推進支援等助成金

最大補助額:100万円

残業時間の縮小や、有休消化を促進するための助成金です。規定の労働時間内において、生産性の向上を目指すものです。

詳しい内容はこちら。
働き方改革促進支援等助成金

おすすめの補助金

①事業再構築補助金

最大補助額:1億円

コロナウィルスの影響で、経営に打撃を受けた企業、個人事業主に対しての救済補助金です。過去史上最大の補助額となっており、非常に注目を集めています。

特に飲食、宿泊施設等、影響の大きい業種は挑戦する価値があります。

詳しい内容はこちら。
事業再構築補助金

②IT導入補助金

最大補助額:450万円

中小企業や小規模事業者が、業務環境において非効率なシーンをITツールの導入で効率化を図るための補助金です。

アナログをデジタルに切り替えをお考えの方は、是非挑戦してみましょう。

詳しい内容はこちら。
IT導入補助金

③小規模事業者持続化補助金

最大補助額:50万円

働き方改革や賃上げ等、小規模事業者にとって苦しい制度変更に対応するための補助金です。国や自治体の制度に対応するためには、環境を変化させたり、新たに構築したりすることが求められます。

そのような環境構築を支え、持続的に経営を行えるようにサポートする補助金です。

詳しい内容はこちら。
小規模事業者持続化補助金

まとめ

助成金とは
厚生労働省が主体の、会社内部環境を良くするためのお金。

補助金とは
経済産業省が主体の、経済の安定を目的としたお金。

このような違いがあります。

また、おすすめの助成金と補助金を3点ご紹介しました。

【おすすめ助成金】

【おすすめ補助金】

どの分野も企業にとっては非常に有効活用出来るものです。助成金や補助金の申請をお考えの際に是非参考にして下さい。

株式会社中小企業経営支援事務所

〒162-0802

東京都新宿区改代町27-4-1 クレスト神楽坂2F

TEL 03-5946-8609

もくじ