ものづくり補助金は圧縮記帳が可能!仕組みや要件、仕訳例を解説

ものづくり補助金を受給すると、補助金は会計上「収益」として扱われるため、税負担が増える場合があります。
「圧縮記帳」はこの負担を調整できるように税法で定められている制度です。
この記事では、ものづくり補助金における圧縮記帳の基本的な知識から、メリット・デメリット、専門家へ相談する際に確認したいポイントまでわかりやすく解説します。
当社・中小企業経営支援事務所は、補助金支援に精通した少数精鋭の専門スタッフが、申請時の事業計画策定だけでなく、採択後に必要となる各種手続きまで継続してサポートしています。
圧縮記帳を含む税務面のサポートも行っておりますので、不安な点がある方はお気軽にご相談ください。初回相談無料で受け付けています。
目次
ものづくり補助金は圧縮記帳が可能
ものづくり補助金は、一定の要件を満たすと圧縮記帳を行うことが可能です。圧縮記帳をすれば、補助金受給年度の税負担を軽減できます。
圧縮記帳とは
圧縮記帳とは、課税を将来へ繰り延べるための会計処理のことです。
通常、利益が増えると課税所得も増え、税負担も大きくなりますが、圧縮記帳では対象資産の取得価額を減額することで、その年度の課税所得を抑えることができます。
ただし、取得価額を減らした分だけ、対象資産の減価償却費も少なくなります。そのため翌年度以降については、課税所得が増えることになります。
圧縮記帳は、課税所得が増えたときに大きくなった税負担を、次年度以降に分散させる制度といえます。
圧縮記帳をするとものづくり補助金の税負担が軽減される理由
補助金は会計上「収益」として計上されるため、一時的に利益が増え、税負担が大きくなることがあります。
例えば、ものづくり補助金で500万円の補助金を受給した場合、他の利益状況によっては法人税等の負担が数十万円単位で増える場合があります。
このとき圧縮記帳を行い、補助金を活用して取得した設備の帳簿価額を減額することで、課税所得を圧縮し、補助金受給年度の税負担を抑えることが可能です。
その結果、補助金受給年度の法人税や所得税の負担を抑えやすくなり、設備投資直後の資金繰り改善にもつながります。
補助金は圧縮記帳と特別償却の併用ができる
ものづくり補助金を受給するときに一定の要件を満たせば、圧縮記帳と特別償却を併用できる場合があります。
圧縮記帳が補助金によって増加した利益に対する税負担を調整する制度なのに対し、特別償却とは、通常より多くの減価償却費を計上できる税制優遇制度です。設備投資を行った年度に多くの費用を計上できるため、課税所得を抑えられます。
どちらを優先すべきか、あるいは併用したほうが有利かは、企業の利益状況や今後の事業計画によって変わります。
ものづくり補助金で圧縮記帳を行うメリット
ものづくり補助金で圧縮記帳を行う大きなメリットは、補助金受給によって増加した利益に対する税負担を軽減できる点です。
設備投資直後は機械導入費や運転資金などで支出が増えやすいため、当期の税負担を抑えられることは、資金繰りの安定にもつながります。
補助金受給年度の税負担が抑えられる
補助金受給年度は一時的に利益が大きくなるため、想定以上の税負担が発生する場合がありますが、圧縮記帳を行えば補助金受給年度の税負担を抑えやすくなります。
せっかく補助金を受給したのに、税金の支払いによって大きな投資に活かせないとなれば本末転倒です。圧縮記帳はまさにそうした改善するための制度といえます。
設備導入後の資金繰りを安定させやすい
設備導入後は、機械の運用費用や人件費、追加投資などで継続的に資金が必要になります。
圧縮記帳によって当期の税負担を抑えることで、手元資金を確保し、設備導入後の事業運営を安定させることが可能です。
特に、中小企業ではキャッシュフローが経営へ与える影響も大きいため、資金繰り対策として活用されています
ものづくり補助金で圧縮記帳を行うデメリット・注意点
ものづくり補助金での圧縮記帳は、減価償却費の減少や経理負担の増加を考慮する必要があります。
目先の税負担だけで判断せず、自社の利益状況や事業計画を踏まえて検討しましょう。
将来の減価償却費が減少する
圧縮記帳では、固定資産の取得価額を減額するため、その後の減価償却費も少なくなります。
例えば、1,000万円の機械を導入し、500万円の補助金を受給した場合、圧縮記帳を行うことで「500万円の機械を取得した」として処理が可能です。
これにより補助金受給年度の課税所得を抑えられる一方、将来計上できる減価償却費は500万円分となるため、翌年度以降は経費計上できる金額が少なくなり、課税所得が増加します。
圧縮記帳を行う場合は、当期の税負担だけでなく、中長期的な資金計画も踏まえて利用を判断することが大切です。
経理処理の負担が増える
圧縮記帳を適用すると、通常の会計処理に加えて追加の経理作業が発生します。例えば、圧縮損の仕訳処理や圧縮後の帳簿価額にもとづく減価償却費の再計算、法人税申告時の別表作成などです。
特に積立金方式(詳細後述)を選択した場合は、毎期の圧縮積立金の取り崩し処理が必要になり、税務と会計の帳簿価額に差異が生じるため申告調整の手間もかかります。経理担当者が不慣れな場合、処理ミスが起こるリスクもあり、誤った仕訳や申告は税務調査で指摘される可能性があります。
ものづくり補助金で圧縮記帳を利用したほうがよいケース・しないほうがよいケース
ものづくり補助金における圧縮記帳は、企業の利益状況や資金繰りによって、利用したほうがよいケースとしないほうがよいケースがあります。
| 圧縮記帳したほうがよいケース | 圧縮記帳しないほうがよいケース |
|---|---|
| ・補助金受給年度の利益が大きい場合 ・当期の税負担を抑えたい場合 ・設備投資後の資金繰りを安定させたい場合 ・手元資金をできるだけ残したい場合 | ・今後赤字になる可能性がある場合 ・将来的な減価償却費を確保したい場合 ・他の税制優遇を優先したい場合 ・税額控除や特別償却のほうが有利な場合 |
圧縮記帳は、「当期の税負担を抑えたい企業」と相性が良い制度です。
一方で、将来的な減価償却費を重視したいときや、他の税制優遇を活用したいときは、圧縮記帳を行わないほうが適している場合もあります。
ものづくり補助金で圧縮記帳を利用するための要件
ものづくり補助金で圧縮記帳を利用する際は、事前にいくつかの要件を確認する必要があります。
- ものづくり補助金が設備や機械などの固定資産取得に充てられているか(技術導入費、専門家経費等に充てられた部分の金額は対象外となる)
- 補助金の目的に沿って固定資産を取得・改良しているか
- 補助金額の確定通知を受けているか
- 確定申告書に必要事項(圧縮記帳の適用額や対象資産の内容など)を記載できるか
- 圧縮記帳の対象額や処理方法に誤りがないか
要件を満たしているかは、補助金の交付状況や取得した資産の内容によって変わるため、申告前に専門家へ相談しておくと安心です。
ものづくり補助金で圧縮記帳を利用したときの仕訳例
ものづくり補助金で圧縮記帳を行う場合は、まず補助金を「収益」として計上し、その後補助金を使って取得した固定資産の金額を減額する処理を行います。
圧縮記帳には複数の処理方法があり、代表的なものが「直接減額方式」と「積立金方式」です。どちらの方式が適しているかは、法人・個人事業主の違いや会計処理方法によって異なります。
各方式について、次の条件の場合の仕訳例を交えて紹介します。
- 1,000万円の機械装置を購入
- 翌事業年度に500万円の補助金を受給
- 設備の耐用年数は5年
- 減価償却の方法は定額法
直接減額方式
直接減額方式は、設備の帳簿価額から補助金分を直接減額する方法です。仕訳は以下のようになります。
・設備を取得したとき
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 機械装置 | 10,000,000 | 現預金 | 10,000,000 |
| 減価償却費(※1) | 2,000,000 | 機械装置 | 2,000,000 |
・補助金を受給したとき
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 現預金 | 5,000,000 | 国庫補助金収入 | 5,000,000 |
| 圧縮損(※2) | 4,000,000 | 機械装置 | 4,000,000 |
| 減価償却費(※3) | 1,000,000 | 減価償却費 | 1,000,000 |
※3 補助金受給時の減価償却費は、(固定資産の取得価額 – 補助金額)× 定額法償却率で算出。(1,000万 – 500万)× 0.2 = 100万
補助金受給の翌期以降も、「固定資産の取得価額 – 補助金額」をもとに減価償却を行うことになります。
積立金方式
積立金方式とは、取得価額のまま記帳し、補助金を「積立金」とし、減価償却の期間中にそれを取り崩しながら管理する方式です。企業会計の原則に沿った処理方法とされています。
仕訳例は以下のとおりです。
・設備を取得したとき
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 機械装置 | 10,000,000 | 現預金 | 10,000,000 |
| 減価償却費(※4) | 2,000,000 | 機械装置 | 2,000,000 |
・補助金を受給したとき
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 現預金 | 5,000,000 | 国庫補助金収入 | 5,000,000 |
| 繰越利益剰余金(※5) | 4,000,000 | 圧縮積立金 | 4,000,000 |
| 減価償却費(※6) | 2,000,000 | 機械装置 | 2,000,000 |
| 圧縮積立金(※7) | 1,000,000 | 圧縮記帳積立金取崩益 | 1,000,000 |
※6 減価償却費は圧縮記帳前の取得価額で算出。1,000万 × 0.2 = 200万
※7 圧縮積立金は「※6の減価償却費」-「※3の減価償却費 」で算出。200万 – 100万 = 100万
複雑な記述となりますが、「直接減額方式」と最終的な損金の計上(上記の例だと100万円)は変わりません。
ものづくり補助金の圧縮記帳を専門家へ相談する際のポイント
ものづくり補助金の圧縮記帳は、企業の利益状況や設備投資計画によって有利・不利が変わります。また実際の仕訳においても「直接減額方式」と「積立金方式」と2種類があり、どちらにすべきかはケースによって異なります。
そのため、圧縮記帳を活用するときは専門家へ相談するのがおすすめです。ここでは専門家へ相談する際のポイントを紹介します。
税額控除・特別償却も含めて相談する
設備投資では、圧縮記帳だけでなく、税額控除や特別償却を利用できる場合があります。
制度によって税負担への影響は異なるため、「どの制度が最も有利か」を含めて相談してみましょう。
補助金関連税務の実績を確認する
補助金関連の税務処理は、通常の会計処理とは異なる点が多くあります。
ものづくり補助金の支援経験や、圧縮記帳の対応実績があるかを事前に確認しておきましょう。
相談前に決算書や設備投資資料を整理する
決算書や固定資産の購入予定資料、見積書、補助金交付決定通知書などを整理しておくと、設備内容や利益状況を共有しやすくなります。
設備投資計画書がある場合は、あわせて準備しておくと相談が進めやすいでしょう。
ものづくり補助金の圧縮記帳作成支援の依頼を検討していたら中小企業経営支援事務所にご相談ください
ものづくり補助金の圧縮記帳は、補助金受給年度の税負担を抑えられる一方で、税額控除や特別償却との比較、中長期的な利益計画まで踏まえて判断する必要があります。
当社・中小企業経営支援事務所は、ものづくり補助金に関する支援実績をもとに、補助金申請だけでなく、採択後の圧縮記帳や税務面も含めてサポートしています。
「自社は圧縮記帳を利用したほうがよいのか」「他制度と比較してどの方法が有利なのか」など、初回相談無料でご相談いただけますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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