事業継続力強化計画とは?策定のメリットや申請方法を分かりやすく解説
災害発生時でも事業を継続できるよう、防災や減災に取り組む中小企業の計画を国が認定する制度である「事業継続力強化計画」。認定を受けた事業者は、ものづくり補助金などの補助金の審査で加点されたり、税制優遇を受けられたりなど、さまざまなメリットがあります。
この記事では事業継続力強化計画の概要や策定するメリット、策定方法を経営コンサルタントの中小企業経営支援事務所が詳しく解説します。事業継続力強化計画を策定し、ものづくり補助金や事業再構築補助金、IT導入補助金などの申請に役立てたい経営者様は、ぜひご一読ください。
なお、当社はものづくり補助金採択率100%(2021~2023年)と全国トップクラスの採択実績を誇ります。初回相談は無料ですので、補助金の申請をお考えの中小企業の経営者様はぜひお気軽にお問い合わせください。
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もくじ
事業継続力強化計画とは
事業継続力強化計画とは、中小企業が防災・減災に取り組み、事業活動の継続に向けた計画を策定し、経済産業大臣が認定する制度です。事業継続力強化計画の策定により、自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)がどのような災害リスクに直面しているかを認識できるのはもちろん、災害発生時に適切な対応ができ事業継続に役立ちます。
想定する災害は地震や水害にとどまらず、感染症やサイバー攻撃も含めることができます。
さらに、認定を受けた中小企業は税制優遇や低利融資、補助金の審査における加点などの支援策が受けられる点も大きなメリットです。
また、事業継続力強化計画には1社で策定する「単独型」と複数の企業が連携する「連携型」の2つのタイプがあり、自社の状況に合わせて選べます。
策定が求められる背景
日本は世界でも有数の地震多発地帯であり、近年の異常気象により想定外の豪雨や台風も増加傾向にあります。ひとたび災害が起きれば、地震で社屋が倒壊し社員がケガを負う、倉庫が浸水し在庫に影響が出るなど、事業へのダメージは数えきれないでしょう。
災害はいつどこで起きるか分からないものであるため、平時から災害時のリスクを減らせるよう対応策を決めておくことが重要です。
また、昨今は自然災害以外にも感染症やサイバー攻撃のリスクも顕在化しています。新型コロナウイルスのように市民の外出自粛による売上減少や、ランサムウェアなどによるサイバー攻撃も、中小企業が想定し対策しておくべきリスクといえます。
BCP(事業継続計画)との違い
企業が防災・減災に取り組み、事業を継続できるよう定める計画には、BCP(事業継続計画)があるのをご存じの方も多いかもしれません。
事業継続力強化計画はいわばBCPの入門編であり、中小企業も取り組みやすいものです。BCPには特定の書式がありませんが、事業継続力強化計画はA4用紙5枚程度の書式で完了し、策定の負担が少なくて済むため、BCPの前段階と捉えられます。
事業継続力強化計画の対象者
事業継続力強化計画の認定を受けられるのは、中小企業や小規模事業者です。中小企業等経営強化法で、事業継続力強化計画の認定を受けられる事業者の規模は以下のように定められています。
業種分類 | 資本金の額または出資の総額 | 常時使用する従業員の数 |
製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
政令指定業種 ①ゴム製品製造業 ②ソフトウェア業または情報処理サービス業 ③旅館業 | 3億円以下 | 900人以下 |
3億円以下 | 300人以下 | |
5千万円以下 | 200人以下 |
なお、「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する従業員の数」の両方の基準を満たす必要はなく、いずれかを満たせば中小企業に該当します。
事業継続力強化計画を策定する5つのメリット
事業継続力強化計画を策定する上でチェックしておきたいのが、税制優遇や金融支援などの支援策です。
ここでは、事業継続力強化計画を策定すると得られるメリットを5つ紹介します。
メリット①税制優遇が受けられる
令和元(2019)年7月16日から令和7(2025)年3月31日までの間に、事業継続力強化計画の認定を受けた事業者は、計画に記載した防災・減災設備について特別償却18%が適用できます(中小企業防災・減災投資促進税制)。
認定を受けた日から1年を経過する日までに、計画に記載した設備を取得し事業の用に供することが必要です。
中小企業防災・減災投資促進税制の対象となる設備は、以下のとおりです。
減価償却資産の種類 (取得価額要件) | 対象となる物の用途または細目 |
機械および装置 (100万円以上) | 自家発電設備、浄水装置、揚水ポンプ、排水ポンプ、耐震・制震・免震装置 |
器具および備品 (30万円以上) | 自然災害:全ての設備 感染症:サーモグラフィ装置 |
建物附属設備 (60万円以上) | 自家発電設備、キュービクル式高圧受電設備、変圧器、配電設備、電力供給自動制御システム、照明設備、無停電電源装置、貯水タンク、浄水装置、排水ポンプ、揚水ポンプ、格納式避難設備、止水板、耐震・制震・免震装置、架台(対象設備をかさ上げするために取得等をするものに限る。)、防水シャッター |
(参照:中小企業庁・中小機構「事業継続力強化計画認定制度の概要」)
特別償却は減価償却費とは別で経費を計上できるため、当面の税負担を軽減できます。
メリット②金融支援が受けられる
事業継続力強化計画の策定により、以下のような金融支援が受けられる可能性があります。
- 日本政策金融公庫による低利融資
- 信用保証枠の拡大
- 中小企業投資育成株式会社からの投資
- 日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット
これらの金融支援の対象となるのは、事業継続力強化計画に記載された取り組みのみですが、税制措置のように導入設備に関する細かな定めはありません。
金融支援の活用を検討している場合は、事業継続力強化計画の申請を行う前に、希望する支援策の関係機関に相談してみましょう。
メリット③補助金の優先採択や加点が受けられる
事業継続力強化計画の認定を受けた事業者は、以下の補助金で加点措置を受けられます。
これらの補助金で採択を勝ち取りたい方は、審査でプラスに働く事業継続力強化計画の策定をぜひ検討してみてください。
メリット④損害保険料の割引が受けられる
事業継続力強化計画の認定を受けた事業者のリスク実態に応じて、保険料の割引を行っている損害保険会社があります。詳しくは、「事業継続力強化計画認定制度の概要」をご確認ください。
メリット⑤ロゴマークの使用で防災対策をアピールできる
事業継続力強化計画のロゴマーク
(引用:中小企業庁・中小機構「事業継続力強化計画認定制度の概要」)
事業継続力強化計画の認定を受けると、上記のロゴマークを名刺やホームページ、会社案内に掲載でき、防災・減災に取り組んでいることをアピールできます。
事業継続力強化計画の事例
災害発生時に、具体的にどのような被害を想定し、どのような対策を取るのかをイメージできるように、事業継続力強化計画のモデルケースをみてみましょう。
- 倉庫内への浸水が想定されるため、止水板や排水ポンプを導入する
- 停電に備えて、自家発電機を導入する
- PCが浸水で使用できなくなる事態を想定し、データをクラウドにバックアップする
- 早期に事業を再開できる目標を立て、関係先との連絡網を構築し、従業員の安否確認や工場の復旧などの手順を定める
止水板や排水ポンプ、自家発電機などの防災・減災設備を導入した場合は、要件に当てはまれば特別償却ができ、節税につながります。
実際の企業の取り組み事例が以下のページで公開されていますので、策定する際の参考にしてください。
- METI/経済産業省関東経済産業局「我が社が事業継続力強化計画を作った理由(事業継続力強化計画モデル事例紹介)」
- 中小企業基盤整備機構「事例紹介|BCPはじめの一歩 事業継続力強化計画をつくろう」
事業継続力強化計画の策定方法
事業継続力強化計画は、以下の5つのステップを踏んで策定していくことがすすめられています。
STEP①事業継続力強化計画の目的の検討
まずは事業継続力を強化する目的を明確にしましょう。
ひとたび災害が起こり自社の事業がストップしてしまえば、従業員やその家族、顧客・取引先、地域の人々に大きな影響が及びます。そのため、事業継続力強化計画の目的を記載する際は、経済社会に与える影響を軽減する観点が重要です。
STEP②災害等のリスクの確認・認識
自治体や国土交通省が出しているハザードマップなどを活用し、事務所や工場が立地している地域の災害リスク(地震や水害、土砂崩れ)を把握しましょう。
被害想定を基に、以下の4つの切り口から自社に及ぶ影響を考えます。
- ヒト(人員)
- モノ(建物・設備・インフラ)
- カネ(リスクファイナンス)
- 情報
STEP③初動対応の検討
災害発生直後の初動対応について確認し、以下の取り組みを検討します。
- 人命の安全確保
- 非常時の緊急時体制の構築
- 被害状況の把握・被害状況の共有
とくに人命の安全確保については、従業員の避難方法、安否確認の方法などを明確にしておきましょう。
STEP④ヒト・モノ・カネ・情報への対応
STEP②で検討したヒト・モノ・カネ・情報への影響を踏まえ、事前にどのような対策を取るのか検討します。それぞれの経営資源について、具体的な取り組み内容を記載してください。
STEP⑤平時の推進体制
事業継続力の強化には計画のみならず、平時の避難訓練などの取り組みも重要です。訓練や教育の実施、計画の見直しは年に1回以上行うことが推奨されています。
事業継続力強化計画に記載する内容
各ステップで検討した内容を基に、事業継続力強化計画には以下の内容を記載します。
- 事業継続力強化に取り組む目的の明確化。
- ハザードマップ等を活用した、自社拠点の自然災害リスク認識と被害想定策定。
- 発災時の初動対応手順(安否確認、被害の確認・発信手順等)策定。
- ヒト、モノ、カネ、情報を災害から守るための具体的な対策。※自社にとって必要で、取り組みを始めることができる項目について記載。
- 計画の推進体制(経営層のコミットメント)。
- 訓練実施、計画の見直し等、取組の実効性を確保する取組。
(引用:中小企業庁・中小機構「事業継続力強化計画認定制度の概要」)
「事業継続力強化計画策定の手引き」には各項目の記載例が紹介されていますので、自社の状況と照らし合わせつつ参考にしてみてください。
事業継続力強化計画の申請方法
事業継続力強化計画の申請は、基本的に「事業継続力強化計画電子申請システム」を利用した電子申請で行います。システムの利用には、GビズIDが必要です。
GビズIDの取得に2週間程度、事業継続力強化計画の認定に45日程度かかりますので、補助金の申請を予定している場合は早めの準備がおすすめです。
連携事業継続力強化計画(連携型)については、所在地を管轄する経済産業局に申請書を提出します。
事業継続力強化計画の策定が加点になる「ものづくり補助金」の採択なら
事業継続力強化計画は、中小企業が自然災害や感染症、サイバー攻撃などが起きても事業を継続できるような計画を策定し、経済産業大臣が認定する制度です。認定を受けた事業者は、税制優遇や金融支援、補助金の審査における加点などの支援策を受けられます。
革新的な新商品・新サービス開発のため設備投資を行う中小企業を支援する「ものづくり補助金」において、事業継続力強化計画の認定は加点要素です。ものづくり補助金の採択率は約50%(14次)であり、採択されるために加点要素は見逃せません。
ぜひこの記事を参考に事業継続力強化計画を策定し、ものづくり補助金の申請に活かしましょう。
当社はものづくり補助金の申請サポートを行っています。中小企業診断士や経営コンサルタントが丁寧なヒアリングを行い、経営者様の想いを汲み取り事業計画書に反映させます。
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