経営改善計画とは?経営改善計画策定支援事業を申請する流れを解説
経営改善計画とは、資金繰りが厳しい場合など自社の経営状態に問題がある場合、返済条件の変更や新規融資を申請するために必要な計画のことです。ただし、自社で策定することが難しい場合、経営改善計画策定支援事業に申請して審査に通れば、認定支援機関に支援してもらうことが可能になります。さらに、経営改善計画の策定支援にかかる費用を国に負担してもらえます。
この記事では、経営改善計画の内容や経営改善計画策定支援事業と早期経営改善計画策定支援事業との違い、申請の流れと注意点について解説しています。
中小企業経営支援事務所は、経営改善計画策定支援事業に関する支援のエキスパートです。経営改善計画策定支援事業の支援や認定支援機関探しについてお困りの人は、ぜひお問い合わせください。相談無料で受け付けています。
お問合せフォーム:https://www.sme-support.co.jp/contact/
もくじ
経営改善計画とは
経営改善計画とは、事業者が資金繰りや経営の課題を解決することを目的とし、経営改善のための具体的な施策や実施時期などを記載した計画のことです。事業者が現状を理解し、将来的な取り組みを計画することで、金融機関から金融支援を取り付けること、そして自社の事業が改善する可能性を社外に示すことが目的です。
経営改善計画の内容は、主に以下を含む必要があります。
・債務者概況表(財務内容および問題点、業績推移など)
・事業所の概要(課題・問題点、計画の基本方針、計画期間・改善目標など)
・企業集団の状況(事業者の資本関係や取引関係の説明資料)
・ビジネスモデル俯瞰図(事業者のビジネスモデルを説明できる資料)
・資金繰越実績表
・計数計画(損益計算書・課税所得、製造原価報告書、販管費の内訳、貸借対照表、キャッシュフロー計算書、金融機関別返済計画、金融支援計画、金融機関別保全状況)
・実施計画(経営改善計画に関する具体的施策や予測できる効果、モニタリング効果)
・その他必要書類
借入金の返済などで資金繰りの問題を抱えている場合、金融機関に返済条件の変更を申請したり、新規融資を依頼したりする際には、この経営改善計画を提出しなければなりません。
ただし、自社の財務状況を正確に把握し、経営改善に向けた施策を考える必要があるため、事業者自らが経営改善計画を策定することが困難な場合もあるでしょう。そのような際に、経営改善計画策定支援事業を活用することで、経営改善計画を策定するための支援を受けることが可能になります。
経営改善計画策定支援事業とは
経営改善計画策定支援事業とは、新型コロナウイルス感染症などの影響により財務上の問題を抱えた中小企業・小規模事業者の経営を支援することを目的とした事業のことです。事業が開始となった2012年度補正予算額が405億円であるため、「405事業」とも呼ばれます。
事業者は、中小企業等経営強化法に基づく認定経営改革等支援機関(以下、認定支援機関)の支援を受けて、経営改善計画の策定やその後のモニタリング(策定した経営改善計画の進捗を定期確認する取り組み)を受けながら、財政上の問題を解決して経営の改善を目指します。
認定支援機関とは、中小企業支援に関する専門知識を持ち、かつ一定の実務経験がある法人、または個人のことです。国の審査・認定を受けている税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会会議所、金融機関などの支援機関などがあげられます。
認定支援機関に依頼する経営改善計画の策定とモニタリングにかかる費用のうち、3分の2(上限額合計300万円:経営改善計画策定支援の上限額200万円+伴走支援の上限額100万円)を国が負担してくれることが経営改善計画策定支援事業の特徴です。
経営改善策定支援事業を活用することで、以下のメリットを得られる可能性があります。
・経営が改善し、売上増加やコスト削減につながる
・従業員のモチベーションや生産性が向上する
・経営改善計画により業績アップが見込めて、金融機関や取引先との関係性がよくなる
・借入金の返済条件が緩和される
なお、経営改善計画策定支援事業の他に、これまで経営改善計画を策定したことがない事業者を対象に早期経営改善計画策定支援事業も用意されています。
早期経営改善計画策定支援事業との違い
早期経営改善計画支援事業とは、財政上の問題が悪化して経営に影響が出ることを防ぐために、資金繰りなどの課題を解決し、基本的な経営改善を目指す事業所を支援する事業のことです。
早期経営改善策定支援事業を活用することで、早期改善計画の策定からその後1年間のモニタリングまでを認定支援機関に依頼する費用のうち、3分の2(上限額合計25万円:経営改善計画策定支援の上限額15万円+伴走支援の上限額10万円)を国が補助してくれます。ポストコロナ持続的発展計画事業とも呼ばれます。
経営改善策定支援事業と早期経営改善計画策定支援事業との違いをまとめると、下表のとおりです。
経営改善計画策定支援事業 | 早期経営改善計画策定支援事業 | |
対象者 | 借入金の返済などの影響による財政上の問題がある事業者 | 金融支援は必要とせず、資金繰りや採算の管理など、基本的な経営改善を目指している事業者 |
目的 | 返済の条件変更や、新規融資などの金融支援 | 金融機関との連携を強化する |
主な計画書の内容 | ・債務者概況表・事業所の概要・企業集団の状況・ビジネスモデル俯瞰図・資金繰越実績表・計数計画・実施計画(5年程度) | ・ビジネスモデル俯瞰図・資金繰越実績表、または資金予定表・計数計画(損益計算書のみでも可)・実施計画(1〜5年で任意) |
補助費用 | 総費用の3分の2(上限300万円) | 総費用の3分の2(上限25万円) |
モニタリング期間 | 3年間(1〜12ヶ月ごとに実施) | 1年後に1回 |
経営改善計画策定支援事業を申請する流れ
経営改善計画策定支援事業を申請する流れを解説していきます。
経営改善計画策定支援事業の対象か確認する
まずは、自社が経営改善計画策定支援事業の対象かどうかを確認しなければなりません。対象となる事業者は以下の要件を満たしている必要があります。
・中小企業・小規模事業者である
・借入金の返済が負担である、または金融支援が必要な状況である
・事業者自らでは経営改善計画の策定が難しいが、外部の専門家(認定支援機関)の支援を受けることで、金融機関の返済条件変更や新規融資などが見込める
なお、個人事業主や医療法人(従業員が常時300人以下に限る)、農業や漁業など一次産業の事業者も対象です。
ただし、以下は経営改善計画策定支援事業の対象外となります。
・社会福祉法人
・特定非営利活動法人
・一般社団法人
・一般財団法人
・公益社団法人
・公益財団法人
・農事組合法人
・農業協同組合
・生活協同組合
・LLP(有限責任事業組合)および学校法人
認定支援機関を探す
認定支援機関を探す方法は以下のとおりです。
・主要金融機関に紹介してもらう
・顧問税理士が認定支援機関であれば、そのまま依頼する
・中小企業庁の認定経営革新等支援機関検索システムを利用する
認定支援機関を決定した後は、経営改善計画策定支援事業の活用や経営の方向性について話し合います。
利用申請書の作成・提出
次に、経営改善計画作成支援事業利用申請書を作成し、認定支援機関と連名で中小企業活性化協議会に提出します。
その他の記入書類や添付書類は以下のとおりです。
記入書類 | 添付書類 |
・申請者の概要・自己記入チェックリスト・業務別見積明細 | ・履歴事項全部証明書(登記簿謄本)の原本(個人事業主の場合は開業届または確定申告書の写し)・認定経営革新等支援機関であることを証する認定通知書等(写し)・認定経営革新等支援機関ごとの見積書および単価表・申請者の直近3年分の確定申告書(写し)・計画策定支援に係る工程表(ガントチャート)・主要金融機関の確認書面 |
なお、認定支援機関とは別に主要金融機関(メイン行・準メイン行)の連名も必要です。認定支援機関に主要金融機関が含まれない場合は、経営改善計画策定支援事業を利用する事業者に対して、金融支援を検討することを確認した書面を用意してください。
中小企業活性化協議会が審査し、経営改善計画策定支援事業の利用が適切であると判断された場合は、依頼した認定支援機関に通知が行きます。
また、認定支援機関への自己負担額(3分の1)については、認定支援機関が業務の委嘱を承諾した日以降に支払わなければなりません。
経営改善計画の策定・金融機関との合意形成
利用申請が通った後、事業者は認定支援機関の支援を受けながら、「1.経営改善計画とは」で解説した経営改善計画の策定に取り組みます。
そして、経営改善計画を策定した後に、各金融機関から経営改善計画策定支援事業に関する金融支援を行うことへの合意を得る必要があります。
金融支援の合意を得る手段は、以下のとおりです。
・取引がある各金融機関にそれぞれ訪問して合意を得る
・事業者がバンクミーティング(取引のある各金融機関などが特定の日時に同じ場所に集まる話し合い)を開催し、計画について説明する
・経営サポート会議(各県に設置)を活用する
・中小企業再生支援協議会(各県に設置)を活用する
支払申請書の作成・支払い決定
経営改善計画に関して金融機関から合意を得られた後、経営改善計画策定支援事業費用支払申請書を作成し、認定支援機関と連名で中小企業活性化協議会に提出します。
その他に必要な記入書類と添付書類は以下のとおりです。
記入書類 | 添付書類 |
・経営改善計画・自己記入チェックリスト・業務別請求明細書・従事時間管理票(業務日誌) | ・認定支援機関ごとの請求資料・外部委託先からの請求書類・申請者と認定支援機関が集結する経営改善計画策定支援事業に係る契約書など・金融機関などの同意書・経営改善計画策定支援における着眼点実施確認表 |
中小企業活性化協議会が支払申請書を審査して適切と判断されると、認定支援機関に通知が行き、経営改善計画策定費用(3分の2)の支払いが決定されます。
認定支援機関によるモニタリングの実施
事業者は経営改善計画に沿って、財務上の問題を解決しながら経営を改善することに取り組みます。その実施状況については、認定支援機関に共有しなければなりません。さらに、認定支援機関は計画策定後の3年間、計画どおりに進んでいるかどうかを定期的にチェックし、必要な支援業務を実施していきます。
なお、モニタリングの実施中に計画よりも高い実績を継続して示している場合は、認定支援機関がモニタリングを必要ないと判断し、さらに中小企業活性化協議会も同様に判断した際には、事業者と同意すればモニタリングを終了させることも可能です。
モニタリングに対する申請書の作成・支払い決定
事業者は認定支援機関からのモニタリングを受けるごとに、経営改善計画策定支援事業伴走支援費用支払申請書を作成し、認定支援機関と連名で中小企業活性化協議会に提出します。
その他に必要な記入書類と添付書類は以下のとおりです。
記入書類 | 添付書類 |
・伴走支援報告書・自己記入チェックリスト・業務別請求明細・従事時間管理票(業務日誌) | ・申請者と認定経営革新等支援機関が締結する伴走支援に係る契約書・認定経営革新等支援機関ごとの請求書類・申請者による伴走支援費用負担額(3分の1)の支払いを示す証憑類・伴走支援レポート・伴走支援における着眼点実施確認表 |
中小企業活性化協議会が申請書を確認して申請が通ると、認定支援機関に通知が行き、モニタリングに対する費用(3分の2)が支払われます。
経営改善計画策定支援事業の注意点
最後に、経営改善計画策定支援事業に関する注意点をまとめるので参考にしてください。
経営改善計画策定支援事業は複数回利用できないが例外もある
基本的には経営改善計画策定支援事業を一度利用すると、複数回利用できません。ただし、新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢、原油価格の高騰などの影響を受けて業況が悪化している場合は、過去に経営改善計画策定支援事業が適用となった事業所でも対象となります。なお、費用負担の実績が引き継がれるため、一事業者の上限額は合計300万円となることに注意が必要です。
認定支援機関が出資している事業者は出資率で対象・対象外が決定する
認定支援機関の出資比率が20%未満であれば、経営改善計画策定支援事業の対象となります。20%以上の場合、認定支援機関が出資している事業者に対して財務や営業に影響を与える可能性が高いとみなされるため対象外となります。
営業実績が12ヶ月未満の事業所は支援を受けられない可能性もある
営業実績が12ヶ月以上あることを証明できる確定申告を提出できない場合は、対象外です。一方で、一事業年度で12ヶ月の決算を実施していれば、経営改善計画策定支援事業の対象となります。なお、法人を設立する前に個人事業主として、同様の事業を12ヶ月以上継続しており、それらの実績を確定申告などで証明できる場合は対象となります。
経営改善計画策定支援事業の申請をお考えなら中小企業支援事務所にご相談を
経営改善計画は、自社の財務状況を正確に把握したうえで、実施計画を作成しなければなりません。時間的に余裕がなく、事業所自ら策定することが難しい場合もあるでしょう。その際には、経営改善計画支援事業を利用することで、認定支援機関による経営改善計画の策定支援や、その後の費用をおさえて受けることが可能です。
まずは、自社が経営改善計画策定支援事業の対象となるか確認してください。ただし、この記事で紹介した事業所でも対象外となる可能性もあります。詳しくは、中小企業活性化協議会に問い合わせてみましょう。
なお、中小企業経営支援事務所(当社)では、経営改善計画策定支援事業の申請サポートや、認定支援機関として経営改善計画の策定支援を行っています。
経営改善計画策定支援事業の申請が通るための丁寧なアドバイスや、経営者様の想いを汲み取り、金融機関がより納得しやすい計画の策定を心がけているので、経営改善計画策定支援事業に関してお困りでしたら、ぜひ当社にお問い合わせくださいませ。