IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠とは?通常枠との違いを解説

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠とは、ECや決済機能などを持つITツールの購入費用の一部を補助する制度の申請枠を指します。企業間のやり取りを効率化し、インボイス制度の導入をスムーズに進めることが目的です。申請するためには対象となるITツールを理解し、スケジュールや流れを確認しなければなりません。

 そこでこの記事では、IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠の概要や通常枠との違い、スケジュールと申請の流れ、よくある質問と答えを解説しています。

 中小企業経営支援事務所は、ものづくり補助金や事業再構築補助金といった補助金申請支援のエキスパートです。補助金についてお困りの人は、ぜひお問い合わせください。相談無料で受け付けています。

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IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠とは?

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠とは、中小企業や小規模事業者が導入する会計ソフトや受発注ソフトなどの費用の一部を補助する制度の申請枠のことです。企業同士のやり取りをデジタル化し、インボイス制度への対応を促すことを目的に制度化されました。令和3年度補正予算で実施されたIT導入補助金2022より、通常枠とは別に新設されています。

 デジタル化基盤導入枠には、デジタル化基盤導入類型複数社連携IT導入類型という2つの類型が用意されています。

 デジタル化基盤導入類型と複数社連携IT導入類型の主な違いは、下表のとおりです。

デジタル化基盤導入類型複数社連携IT導入類型
IT導入支援事業者の事前登録
複数社による申請
補助対象・ソフトウェア、オプション、役務・ハードウェア・ソフトウェア、オプション、役務・ハードウェア・事務費
補助上限額350万3,000万

 複数社連携IT導入類型は、サプライチェーンや商業集積地などの複数の中小企業や小規模事業者が連携してITツールを導入するための費用やコーディネート費用、外部専門家に依頼する費用を支援する制度です。ただし、同一の補助事業を実施するグループを10者以上で構成しなければならないなどの要件を満たさなければなりません。

 この記事では、1社でも申請できるデジタル化基盤導入枠の「デジタル化基盤導入類型」について、引き続き解説していきます。

IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の補助対象と補助額

①補助対象

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の補助対象は、以下のとおりです。

ソフトウェア費(会計ソフト、受発注ソフト、ECソフトなど)

ハードウェア購入費(PC、タブレット、プリンター・スキャナーおよび複合機器、POSレジ、モバイルPOSレジ、券売機など)

最大2年分のクラウド利用料

導入関連費

 ただし、ードウェア購入費はソフトウェアと同時に導入する場合が対象となります。また、ソフトウェアの販売元が提供しているハードウェアでなければなりません

 他にも、以下の経費は補助対象外となります。

・入力したデータを帳票やグラフ・表などに印刷するなどの単一の処理機能しかないもの(例:請求書を作成する機能のみのソフトウェアなど)

・購入済みのソフトウェアを増台する、リビジョンアップに対する費用

・業務プロセスに影響を与える可能性がある大幅なカスタマイズ

・業務の効率化を目指すのではなく、事業者が販売する商品やサービスに付加価値を与えることを目的とするもの

 また、本事業の目的や趣旨に沿っていないと判断されたものなどが補助対象外となるので、自社事業が適しているかどうかなどの疑問は専門家に聞くのがおすすめです。

②補助額

 補助額や補助率、機能の要件は下表のとおりです。

IT導入補助金2022(令和3年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業)公募要領 p.5丨サービスデザイン推進協議会 より一部抜粋

 ITツールの場合、「導入したツールは会計・受発注・決済・ECのうち何種類の機能を有しているのか」「導入経費がいくらなのか」によって、実際に申請できる補助額が異なります。

Ⅰ:導入したツールの機能が1つの場合

「導入経費×3/4」か「50万円」のどちらか低い額

Ⅱ:導入したツールの機能が2つ以上の場合

・導入経費が66万6,669円以下の場合、「導入経費×3/4」か「50万円」のどちらか低い額

・導入経費が66万6,670円以上の場合、「50万円+(導入経費-66万6,667円)×2/3」か「350万円」のどちらか低い額

 例えば、100万円のツールの場合は以下のとおりです。

Ⅰ:導入したツールの機能が1つの場合100万円×3/4=75万で、50万円より高いので、申請可能額は50万円
Ⅱ:導入したツールの機能が2つ以上の場合50万円+(100万円-66万6,667円)×2/3=72万2,222円で、350万円より低いので、申請可能額は72万2,222円

 申請可能額に関しては、サービスデザイン推進協議会のIT導入補助金サイトにある「補助金シミュレーター」で簡単に確認できるので、よければ活用してみてください。

そもそもIT導入補助金とは

 IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者がITツールを導入するために利用できる補助金制度のことで、正式名称は「サービス等生産性向上IT導入支援事業」です。中小企業や小規模事業者に必要なITツールを導入を促し、業務効率化や売上げアップを支援することを目的としています。

 IT導入補助金を活用した例として、「勤怠・労務管理ツール」を導入し、出先から出退勤の打刻を可能にしたことで、残業時間の削減や人事担当の業務効率改善がみられたことが挙げられます。

デジタル化基盤導入枠と通常枠の違い

  IT導入補助金には、通常枠とデジタル化基盤導入枠を含む4つの申請枠が設けられています。

・通常枠(A・B類型)

・セキュリティ推進対策枠

・デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)

・デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)

 このうちIT導入補助金の通常枠とは、自社に適したITツールを導入する費用に対する補助金の申請枠を指します。通常枠はA類型B類型に分けられ、ソフトウェアに必要な業務プロセス数や賃上げ目標の要件などによって、補助額が異なります。

 デジタル化基盤導入枠と通常枠の違いは、補助率が優先的に引き上げられていることや、導入するツールに要件が設けられているなどの点があげられます。補助対象のITツールの機能が「会計」「受発注」「決済」「EC」を1種類以上含まない場合は、通常枠(A・B・類型)の申請枠が申請対象です。

 なお、要件を満たせば、通常枠とデジタル化基盤導入枠を併願することも可能です。ただし、2022年のIT導入補助金の要件なので、最新のものを確認する、または専門家に相談するとよいでしょう。

IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠を交付申請する流れ

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠に申請するときの大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 自社が補助対象事業者であるか申請要件を確認する
  2. IT導入支援事業者・ITツールを選定する
  3. gBizIDプライムのアカウントを取得する
  4. SECURITY ACTIONを宣言する
  5. 交付申請する

順に詳しく解説します。

自社が補助対象事業者であるか申請要件を確認する

 まず、自社が補助対象の事業者であるか申請要件を確認してください。

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠の対象となる中小企業や小規模事業者は、下表のとおりです。

【中小企業】

業種分類定義
製造業、建設業、運輸業・資本金または出資の総額が3億円以下・従業員数300人以下の会社、および個人事業主
卸売業・資本金または出資の総額が1億円以下・従業員数100人以下の会社、および個人事業主
サービス業・資本金または出資の総額が5,000万円以下・従業員数100人以下の会社、および個人事業主
小売業・資本金または出資の総額が5,000万円以下・従業員数50人以下の会社、および個人事業主
ゴム製品製造業・資本金または出資の総額が3億円以下・従業員数900人以下の会社、および個人事業主
ソフトウェア業または情報処理サービス業・資本金または出資の総額が3億円以下・従業員数300人以下の会社、および個人事業主
旅館業・資本金または出資の総額が5,000万円以下・従業員数200人以下の会社、および個人事業主
上記以外の業種・資本金または出資の総額が3億円以下・従業員数300人以下の会社、および個人事業主
医療法人、社会福祉法人従業員数300人以下
学校法人従業員数300人以下
商工会・都道府県商工会連合会および商工会議所従業員数100人以下

【小規模事業者】

業種分類定義
商品・サービス業従業員数5人以下の会社、および個人事業主
サービス業のうち宿泊業・娯楽業従業員数20人以下の会社、および個人事業主
製造業その他従業員数20人以下の会社、および個人事業主

 また、財団法人や社団法人など上記以外にも対象となる事業者があります。詳しくは専門家に相談したほうがよいでしょう。

 そして、以下の申請要件を満たしているかを確認してください。

・日本国内で法人登記されており、日本国内で事業を営む法人または個人である

・交付申請の直近月で、事業場内の最低賃金が法令上の地域最低賃金以上である

gBizIDプライムアカウントを取得している

SECURITY ACITONの「★一つ星」、または「★★二つ星」を宣言している

・訴訟や法令遵守上において、補助事業の遂行に支障をきたすような問題を抱えていない

 ただし、以下の事業者は、申請要件を満たしていても対象外となります。

・発行済株式の総数、または出資価格総額の1/2以上を同一の大企業が所有している中小企業、小規模事業者など

・発行済株式の総数、または出資価格総額の2/3以上を大企業が所有している中小企業、小規模事業者など

・大企業の役員、または職員を兼任している者が、役員総数の1/2以上を占めている中小企業、小規模事業者など

・申告済みの直近過去3年分の各年、または各事業年度における課税所得の年平均額が15億円以上である中小企業、小規模事業者など

 ほかにも満たさなければならない申請要件や、対象外の条件があります。公募要領をよく確認したうえで、専門家に相談することがおすすめです。

IT導入支援事業者・ITツールを選定する

 次に、IT導入支援事業者とITツールを選定します。IT導入支援事業者とは、IT導入補助金を申請する事業者のサポートを目的として、事務局や外部審査委員会が選んだ事業者のことです。ITツールの説明や導入、運用方法などの相談、また事務局に提出する各種申請もサポートしてくれます。

 IT導入支援事業者とITツールは、自社の経営課題を解決するため、または業務効率化を図るために必要なものを選ばなければなりません。検索する際には、IT導入補助金・ITツール検索のサイトを利用してください。

 なお、IT導入支援事業者が認定を受けたITツールのみが補助対象となるので、申請を検討する際には気を付けましょう。

 対象となるITツールは、下表のように分類されています。

大分類Ⅰ:ソフトウェアソフトウェア
大分類Ⅱ:オプション・機能拡張・データ連携ツール・セキュリティ
大分類Ⅲ:役務・導入コンサルティング・導入設定、マニュアル作成、導入研修・保守サポート
大分類Ⅳ:ハードウェア・PC、タブレット、プリンター、スキャナー、および複合機器・POSレジ・モバイルPOSレジ・券売機

 さらにITツールを選ぶ際には、以下の要件を満たす必要があります。

・選択したITツールは、大分類Ⅰ:ソフトウェアに該当し、「会計」「受発注」「決済」「EC」の機能を必ず1種類以上含んでいる

・大分類Ⅱ:オプション、大分類Ⅲ:役務、大分類Ⅳ:ハードウェアの導入に関連する経費もあわせて、補助対象として申請する場合は、上記の要件を満たさなければならない

・ハードウェアを補助対象経費として申請する場合、そのハードウェアがソフトウェアの利用に関係しているものである

gBizIDプライムのアカウントを取得する

 申請要件の1つである、gBizIDプライムのアカウントを取得してください。gBizIDとは、補助金の申請や事業報告書の提出など、さまざまな行政サービスを1つのアカウントで利用できる認証システムのことです。gBizIDプライムとは、その認証システムで利用するアカウントの1つを指します。

 gBizIDプライムのアカウントを登録していない場合は、gBizIDのホームページから取得する必要があります。なお、gBizIDプライムのアカウントの登録完了までは、2週間程度かかります。申請スケジュールに間に合うように早めに済ませておきましょう。すでに取得していれば、新しく登録する必要はありません。

SECURITY ACTIONを宣言する

 続いて、SECURITY ACTIONの宣言を実施してください。SECURITY ACTIONとは、情報セキュリティ対策に取り組むことを中小企業が自己宣言する制度を指します。IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠では、「★一つ星」、または「★★二つ星」の宣言が要件として定められています。

 交付申請を進める際には、宣言済みアカウントのIDを入力することが必須です。SECURITY ACITONの申し込みページから済ませておきましょう。

交付申請する

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠を交付申請するために、IT導入支援事業者事業計画を策定する必要があります。

 そして、以下の流れで交付申請を進めていきます。

・IT導入支援事業者から「申請マイページ」の招待を受けて、申請者の基本情報を入力する

・交付申請に必要な情報を入力し、書類を添付する

・IT導入支援事業者にて、導入するITツールの情報と事業計画値を入力する

・「申請マイページ」で入力内容を確認し、申請に対して宣誓した後に事務局へ提出する

 なお、以下の添付書類も必要です。

【法人の場合】・履歴事項全部証明書(発行から3カ月以内)・法人税の納税証明書その1、またはその2(税務署の窓口で発行された直近分)
【個人事業主の場合】・運転免許証、運転経歴証明書、住民票(発行から3ヶ月以内)のいづれか1つ・所得税の納税証明書その1、またはその2(税務署の窓口で発行された直近分)・確定申告書Bの控え(税務署が受領した直近分)

 交付申請が完了した後、審査に通過すれば事務局から「申請マイページ」に交付決定の連絡が来ます。この際に、交付決定の連絡が来る前に、ITツールを発注・契約・支払いなどを済ませた場合、補助金が受けられないので注意が必要です。

 IT導入支援事業者に交付決定を報告したら、ITツールを発注し、補助金の対象となる事業を開始します。そして、事業実績報告期限までに、事業実績をまとめた書類を提出してください。

IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠を申請する際のよくある質問と回答

 最後に、IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠を申請する際によくある質問と回答をまとめるので参考にしてください。

Q.ホームページの制作費は補助対象となるのか?

 A.情報の入力や保存、検索、表示などの簡易的な機能しかないホームページなどの制作費は、IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠の補助対象外す。ホームページ制作ツールやブログ作成システムなどで制作した簡易的なものも補助対象外となります。ただし、分析機能や演算処理などのプログラムは補助対象です。

Q.現在、運用しているECサイトのリニューアル費用は補助対象となるのか?

 A.ECサイトは新規制作のみが補助対象です。既存のホームページに新たにEC機能を実装する場合、その導入費用が対象になります。

Q.IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠の交付申請において、同一事業者は何回まで申請できるのか?

 A.IT導入補助金の公募期間中に、1つの事業者(個人事業主)が通常枠(A・B類型)とデジタル化基盤導入枠にそれぞれ申請し、補助金を受けることは可能です。ただし、これまでの公募で不採択となっている場合や、辞退などの理由で交付申請を取り下げている場合は、申請できません。また、法人の支社や支店などによる個別の申請は不可です。

 なお、2022年のIT導入補助金における要件です。申請する際には最新の要件を確認してください。

Q.過去のIT導入補助金で補助金を交付されたが、デジタル化基盤導入枠に申請できるのか?

 A.公募要領に記載されている要件を満たせば申請できますが、過去3年間にIT導入補助金2019・2020・2021の交付を受けている場合は、審査の際に減点措置が講じられます

Q.他の助成金や補助金と併用できるのか?

 A.国が実施している他の助成金や補助金とは併用できませんただし、申請する補助対象の事業内容が重複していない場合は申請できます。

Q.審査内容はどのようなものか?

 A.審査内容は下表のとおりです。

審査項目審査事項
事業面・自社がインボイス制度に向けて、生産性の向上につながるツールが導入されているか・自社の経営課題を理解しており、経営改善に向けた具体的な問題意識があるか
政策面・生産性向上や働き改革に向けて、国が推進する関連事業に取り組んでいるか・国が推進するセキュリティサービスを選定しているか・給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させるなどの賃上げに取り組んでいるか

 申請する際には審査内容を満たすための提出書類を作成しなければなりません。専門家からアドバイスをもらうことがおすすめです。

IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠をお考えなら中小企業支援事務所にご相談を

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠は、会計・受発注機能などを持つITツールを導入したいのであれば、ぜひ検討したい制度です。しかし、対象となるITツールには機能要件があり、補助対象事業者は細かい要件を満たさなければならないなど、重要なポイントが多くあります。また、審査内容を踏まえた事業計画を策定するには、専門家によるサポートが欠かせないでしょう。

 中小企業経営支援事務所(当社)では、交付申請の事業計画を策定するサポートや、認定支援機関として経営改善計画の策定支援を行っています。

 IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠の申請が通るための丁寧なアドバイスや、経営者様の想いを汲み取り、金融機関がより納得しやすい計画の策定を心がけているので、IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠に関してお困りでしたら、ぜひ当社にお問い合わせくださいませ。

お問い合わせ先:https://www.sme-support.co.jp/contact/

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