小規模事業者持続化補助金の災害支援枠を徹底解説!審査観点や注意点も
令和6年能登半島地震で被災した中小企業や小規模事業者を支援するため、「小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)」の募集が行われています。地震で直接的・間接的な被害を受けた中小企業の事業再建の取り組みを、経費の一部を補助することで支援する補助金です。
この記事では、小規模事業者持続化補助金の災害支援枠についてわかりやすく解説します。
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠以外にも、令和6年能登半島地震で被害を受けた中小企業を支援する補助金を紹介します。被災された中小企業の経営者様は、ぜひ参考にしてください。
なお、当社・中小企業経営支援事務所は、ものづくり補助金や事業再構築補助金の申請サポートを行っています。ものづくり補助金・事業再構築補助金への申請をお考えの経営者様は、以下のメールフォームからぜひお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。
お問い合わせ先:https://www.sme-support.co.jp/contact/
この記事は、2024年2月1日発表の公募要領(第2版)をもとに作成しています。申請の際は、最新版の公募要領をご確認ください。
もくじ
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠とは
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠とは、令和6年能登半島地震で被災した小規模事業者の「事業再建の取り組み」を支援する補助金です。
対象は、能登半島地震により生産設備や販売拠点が損害を受け、直接的・間接的な被害を受けた被災区域4県(石川県、富山県、新潟県、福井県)の小規模事業者です。
被災した小規模事業者が自社の経営を見つめ直し、事業再建に向けた計画を作成、計画に基づいた事業再建の取り組みにかかる経費の一部が補助されます。
また、小規模事業者持続化補助金の災害支援枠は、事業を営んでいる地域が商工会議所地区か商工会地区かで書類の提出・問い合わせ先が異なります。
以下から、自社の所在地が該当するほうを選び、参考にしてください。
商工会議所管轄地域→小規模事業者持続化補助金<災害支援枠(令和6年能登半島地震)>
商工会管轄地域→令和5年度補正予算 小規模事業者持続化補助金 災害支援枠(令和6年能登半島地震)
補助対象者の要件
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠の補助対象者は、以下の要件に当てはまる事業者です。
参照:令和5年度補正予算 小規模事業者持続化補助金「災害支援枠(令和6年能登半島地震)」【公募要領】
- 石川県、富山県、福井県、新潟県に所在する、令和6年能登半島地震の被害を受けた事業者であること
- 小規模事業者であること
- 本事業への応募の前提として、早期の事業再建に向けた計画を策定していること
- 資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接又は間接に100%の株式を保有されていないこと(法人のみ)
- 確定している(申告済みの)直近過去3年分の「各年」又は「各事業年度」の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと
- 商工会議所(商工会)の管轄地域内で事業を営んでいること
- 小規模事業者持続化補助金「災害支援枠(令和6年能登半島地震)」の補助金交付を受ける者として不適当な者(暴力団と関係がある者)に該当しないこと
- 【小規模事業者持続化補助金〈一般型〉などにおいて、採択を受けて、補助事業を実施した場合】各事業の交付規程で定める様式第14「小規模事業者持続化補助金に係る事業効果及び賃金引上げ等状況報告書」を原則本補助金の申請までに受領された者であること
小規模事業者かどうかは、以下のように業種ごとに従業員数で判断されます。
業種 | 常時使用する従業員の数 |
---|---|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
サービス業の内宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
また、「3.本事業への応募の前提として、早期の事業再建に向けた計画を策定していること」と記載されている計画を作る際は、商工会議所や商工会に相談し、アドバイスをもらうことができます。
応募にあたっては、商工会議所や商工会から、経営計画の確認を受けることが必要です。なお、この補助金を受けるには、商工会議所や商工会の管轄地域内で事業を営んでいる必要がありますが、必ずしも商工会議所・商工会の会員である必要はありません。非会員でも応募できます。
補助率・補助上限額
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠の補助率と補助上限額は、以下のとおりです。
補助率 | 補助対象経費の2/3以内 | |
補助上限額 | 直接的な被害があった事業者 | 200万円 |
間接的な被害があった事業者 | 100万円 |
直接的な被害とは、「自社の事業用資産の損壊等」であり、間接的な被害とは売上減少を指します。また、以下の要件をすべて満たす場合の補助率は定額となります。
1.過去数年以内に発生した災害(※1)で被害を受けた以下のいずれかに該当する事業者
①事業用資産への被災が証明できる事業者
②災害からの復旧・復興に向けて国等が実施した支援を活用した事業者2.過去数年以内に発生した災害以降、売上高が20%以上減少している復興途上にある事業者
3.交付申請時において、過去数年以内に発生した災害からの復旧又は復興に向けた事業活動に要した債務を抱えている事業者
引用:令和5年度補正予算 小規模事業者持続化補助金「災害支援枠(令和6年能登半島地震)」【公募要領】
(※1)過去数年以内に発生した災害とは、過去5年以内を目安に発生した災害であって災害救助法の適用を受けたものです。
スケジュール
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠のスケジュールは、以下のとおりです。
公募開始 | 令和6(2024)年1月25日(木) |
1次申請受付開始 | 令和6年2月1日(木) |
1次申請締切 | 令和6年2月29日(木)締切日当日消印有効 |
補助事業実施期限 | 令和6年8月30日(金) |
実績報告書提出期限 | 令和6年9月9日(月)事務局必着 |
「※2次公募以降については追って公表します」と記載があるため、申請のチャンスは一度ではないとみられますが、準備ができた方は早めの募集に応募したほうがよいでしょう。
補助対象事業
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠の補助対象となる事業は、以下の要件を満たすものです。
参照:令和5年度補正予算 小規模事業者持続化補助金「災害支援枠(令和6年能登半島地震)」【公募要領】
- 「計画」に基づいて実施する事業再建のための取組であること
- 商工会議所(商工会)の支援を受けながら取り組む事業であること
- 国が助成する他の制度と同一または類似内容の事業でないこと
- 事業の完了後、1年以内に売上につながる見込みのある事業であること
- 公的な支援を行うことが適当でないと認められるもの(賭博、性風俗関連など)でないこと
地震被害からの事業再建と関係のない復旧・買い換え費用は補助対象外です。
また、「事業の完了後、1年以内に売上につながる見込みのある事業であること」とあるように、早期に市場取引の達成が見込まれる事業活動でなければなりません。
補助対象経費
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠で補助の対象となる経費は、以下の3つの要件をすべて満たすものです。
引用:令和5年度補正予算 小規模事業者持続化補助金「災害支援枠(令和6年能登半島地震)」【公募要領】
- 使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
- 交付決定日以降に発生し対象期間中に支払が完了した経費
- 証拠資料等によって支払金額が確認できる経費
具体的には、以下の内容の経費が補助の対象です。
引用:令和5年度補正予算 小規模事業者持続化補助金「災害支援枠(令和6年能登半島地震)」【公募要領】
各費用 各費用の説明 対象となる経費の例 ①機械装置等費 事業の遂行に必要な機械装置等の購入に要する費用 ・高齢者・乳幼児連れ家族の集客力向上のための高齢者向け椅子
・ベビーチェア・衛生向上や省スペース化のためのショーケース など②広報費 パンフレット・ポスター・チラシ等を作成および広報媒体等を活用するために支払われる経費 ・チラシ・カタログの外注や発送
・新聞・雑誌等への商品・サービスの広告 など③ウェブサイト関連費 事業再建を行うためのウェブサイトやECサイト、システム(オフライン含む)等の開発、構築、更新、改修、運用をするために要する経費 ・商品販売のためのウェブサイト作成や更新
・インターネットを介したDMの発送 など④展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む) 新商品等を展示会等に出展又は商談会に参加するために要する経費 ・展示会出展の出展料等
・運搬費(レンタカー代、ガソリン代、駐車場代等は除く)
・通訳料
・翻訳料⑤旅費 経営計画(様式2)に基づく事業再建(展示会等の会場との往復を含む)等を行うための旅費 ・展示会への出展や、新商品生産のために必要な原材料調達の調査等に係る、宿泊施設への宿泊代 など ⑥新商品開発費 新商品の試作品や包装パッケージの試作開発にともなう原材料、設計、デザイン、製造、改良、加工するために支払われる経費 ・新製品・商品の試作開発用の原材料の購入
・新たな包装パッケージに係るデザイン費用⑦資料購入費 補助事業遂行に必要不可欠な図書等を購入するために支払われる経費 ※取得単価(税込)が10万円未満のものに限ります ⑧借料 補助事業遂行に直接必要な機器・設備等のリース料・レンタル料として支払われる経費 商品・サービスPRイベントの会場を借りるための費用は、「⑧借料」に該当します ⑨設備処分費 事業再建の取組を行うための作業スペースを確保する等の目的で、当該事業者自身が所有する死蔵の設備機器等を廃棄・処分する、又は借りていた設備機器等を返却する際に修理・原状回復するのに必要な経費 ・既存事業において使用していた設備機器等の解体・処分費用
・既存事業において借りていた設備機器等の返却時の修理・原状回復費用(賃貸借契約が締結されており、使用者であることが法的に確認できることが必要です)⑩委託・外注費 上記①から⑨に該当しない経費であって、補助事業遂行に必要な業務の一部を第三者に委託(委任)・外注するために支払われる経費(自ら実行することが困難な業務に限ります。) ・店舗改装・バリアフリー化工事
・利用客向けトイレの改装工事
・製造・生産強化のためのガス・水道・排気工事 など⑪車両購入費 事業の遂行に必要不可欠であり、もっぱら補助事業で取り組む特定の業務のみに用いることが明らかな車両の購入に必要な経費(事業に供する車両が被災した場合に限る) 道路運送車両法第2条第2項に定める「自動車」および同条第3項に定める「原動機付自転車」が対象
このような経費が補助対象として認められるには、事業再建に向けた取り組みに必要な費用であると説明できなければなりません。さらに、発注や引き渡し、支払いが補助事業期間中(8月30日まで)に行われることはもちろん、事業再建に向けた取り組み自体も8月30日までに実施される必要があります。
また、経費の支払い方法は銀行振り込みが原則であるため注意しましょう。
申請方法・必要書類
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠は、郵送のみの受付です。持参や宅配便、電子申請は認められていません。
申請は、以下の手順を踏んで行います。
- 市町村に罹災証明書やセーフティネット4号における認定書などの証明書類の発行を依頼する
- 申請書類をダウンロードし、各様式を記入する
- 商工会議所・商工会に経営計画書(様式2)の写しを提出し、後日確認書を受け取る
- 必要書類を補助金事務局へ郵送する
申請に必要な書類は、以下のとおりです。
参照:令和5年度補正予算 小規模事業者持続化補助金「災害支援枠(令和6年能登半島地震)」【公募要領】
応募対象者確認シート 被害状況やこれまでに小規模事業者持続化補助金を受けたことがあるかを回答 申請書(様式1) 代表者の連絡先や会社名などを記載 経営計画書(様式2) 被災前の売上に戻すための事業再建計画と、計画を実施するための経費計画を記載 支援機関確認書(様式3) 商工会議所や商工会が発行するもの※受け取りに1週間程度かかる場合があります 補助金交付申請書(様式4) 採択となった場合のみ、受理されます 車両購入の理由書(様式5) 車両を購入する場合のみ必要 被害状況又は売上減による被害状況がわかる資料 直接的な被害を受けた場合:罹災届出証明書間接的な被害を受けた場合:セーフティネット4号における認定書または売上減少の証明書 【法人の場合】賃借対照表および損益計算書(直近1期分) 【個人事業主の場合】直近の確定申告書「第一表、第二表、及び収支内訳書(1・2面)もしくは第一表、第二表及び所得税青色申告決算書(1~4面)」(税務署受付印のあるもの)または開業届(税務署受付印のあるもの)
なお、事業を営んでいる地域が商工会議所の管轄か、商工会の管轄かで様式が異なります。自社の所在地を確認の上、様式をダウンロードしてください。
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠の活用事例
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠は、以下のようなケースでの活用を想定しています。
活用事例①
被災により失った椅子やテーブル、厨房機器などを新たに購入するとともに、店舗改装と合わせて新しいデザインの看板を作成。リニューアルオープンにより、集客向上をはかった。活用事例②
引用:石川県、富山県、福井県、新潟県の皆様へ 令和5年度補正予算「小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)」
店舗が入居していた貸しビルが全壊し、自宅の敷地で営業再開。新商品開発のほか、チラシ・フリーペーパーでの宣伝を行い、被災前の売上げまでに回復。
また、具体的な経費の例は、以下のとおりです。
・新商品等を陳列するための陳列棚や什器等の備品の購入
引用:令和5年度補正予算 小規模事業者持続化補助金「災害支援枠(令和6年能登半島地震)」【公募要領】
・商品サービスを訴求するためのチラシ、冊子、パンフレット、ポスター等の制作
・新規ネット販売・予約システム等の導入
・新商品サービスの開発に当たって必要な図書の購入
・事業再建の取組に必要となる機械等の導入
・販売のスペース増床のため、所有する死蔵の設備機器の処分
・事業再建の取組のための車両の購入
・新商品開発等に伴う成分分析等の検査・分析の依頼
・商品PRイベントの実施
・ブランディングの専門家から新商品開発に向けた指導、助言
・店舗改装(小売店の陳列レイアウト改良、飲食店の店舗改修を含む。)
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠の審査
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠の採択審査は、有識者によって構成される審査委員会において、以下の観点で行われます。
引用:令和5年度補正予算 小規模事業者持続化補助金「災害支援枠(令和6年能登半島地震)」【公募要領】
基礎審査 ①必要な情報がすべて確認できること
②補助対象者、補助対象事業の要件に合致すること
③補助事業を遂行するために必要な能力を有すること
④申請者自身が主体的に活動する取組であること加点審査 ①事業再建に向けた取組として適切な取組であるか
②令和6年能登半島地震による被害の程度
③その他、自社分析の妥当性や計画の有効性、積算の透明・適切性
まず基礎審査では基本的なチェックが行われ、すべてを満たすもののみが加点審査に進みます。加点審査では上記の項目で審査が行われ、総合的な評価が高いものから採択されます。
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠の注意点
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠に申請する際は、以下の点に注意しましょう。
- 申請方法は郵送のみ
- 商工会議所・商工会の確認書が必要であるため、手続きに余裕を持って行うこと
- 外部のコンサルタントに丸投げしたような内容は不採択になる
申請には市町村の罹災証明書や商工会議所・商工会の確認書が必要になるため、書類がそろうまでに時間がかかる場合があります。申請方法も郵送のみであるため、手続きは時間に余裕を持って進めましょう。
外部のアドバイスを受けることは問題ありませんが、事業者自らが検討していないと判断されるものは、評価にかかわらず不採択になります。
能登半島地震で被災した中小企業向けの補助金は他にも
令和6年能登半島地震で被災した中小企業向けの補助金は、小規模事業者持続化補助金の災害支援枠以外にも、「なりわい再建支援事業(中小企業特定施設等災害復旧費補助金)」があります。
なりわい再建支援事業は、令和6年能登半島地震で被災した石川県、富山県、福井県、新潟県の中小企業や小規模事業者が行う施設・設備の復旧を支援する補助金です。
補助率と補助上限額は、以下のとおりです。
補助率 | 中小企業・小規模事業者 | 3/4以内、一部定額補助 |
中堅企業等 | 1/2以内、一部定額補助 | |
補助上限額 | 石川県(A類型) | 15億円 |
富山県(B類型) | 3億円 | |
福井県、新潟県(C類型) | 3億円 |
なりわい再建支援事業で補助対象となる経費は、原則として事業の用に供する施設・設備の原状回復にかかるものです。ただし、施設・設備の原状回復では事業の再開・継続・売上回復が困難な事業者は、「新分野需要開拓等を見据えた新たな取組」による施設・設備の整備費用も補助対象となります。
このように、なりわい再建支援事業は補助の規模が大きく、新分野事業への支援も可能です。今後、詳細が固まっていく予定であるため、申請を検討している方は最新情報をチェックしましょう。
参照:令和6年能登半島地震 中小企業特定施設等災害復旧費補助金(なりわい再建支援事業)の概要 令和6年2月16日 中小企業庁
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠を活用して、事業再建を
小規模事業者持続化補助金の災害支援枠は、令和6年能登半島地震で被害を受けた小規模事業者の事業再建の取り組みにかかる経費の一部が補助される制度です。
申請には、経営計画を策定し、商工会議所や商工会の確認を受ける必要があります。商工会議所や商工会の確認書を受け取るのに1週間程度かかる場合があるため、2月29日(木)の締切に間に合うよう早めの準備を心がけましょう。
当社・中小企業経営支援事務所は、ものづくり補助金や事業再構築補助金の申請をサポートしている経営コンサルタントです。ものづくり補助金・事業再構築補助金への申請をお考えの中小企業の経営者様は、ぜひお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。